西域の旅を終え、平穏な暮らしを続けていた三蔵。
安穏と日々を過ごしていた三蔵はある日、三仏神に呼び出され、妙な力を発する珍しい色をした石の調査を言い渡される。
自室に戻った三蔵は、取り敢えず手に取って眺めて観察することから始めるが、結局何も分からずじまい。ふと、昔のことを思い出す。
三蔵がまだ江流であった頃のことだ。幼い頃から冷めた性格をしていた自分に対して、光明は良かれと思って河原で遊ぶと称して自分を連れて出かけたとき、形の良い石ころを人のいい笑顔で差し出してきた。
今となっては懐かしい出来事。当時は自分でも愛想のない餓鬼であったと思い返し、苦笑した。
しかし、だ。もし、もしこの身が光明に預かられることにならなかったとしたならば、自分の人生はどう転んでいたのだろう? このご時勢だ。十中八九、何れ暴走し始める妖怪どもの手にかかるだろう。
当然、自分のことであろうから、何らかの抵抗を試みることであろうが、無駄だろう。それはいい。力ない者の、当然の理である。
しかし今行なっているのは空想、妄想の類だ。どんな非常識な例え話だろうが心配はいらない。普段の自分の柄ではないが、だからこそ好きに考えてみよう。
例えば、ここではないどこか。つまり、この桃源郷とは違う別の世界であったならば?
光明のように、誰か自分を拾ってくれるのか? もしくは全く違うパターン。誰かが、産んで育んでくれるのだろうか? そこまで考え、やはり無いと思い直す。馬鹿らしい。
そもそもあの光明のような変わり者以外に、誰が自分のような人間を好き好んで・・・・・・そんな変わり者が万一にも存在するのだとしたら、拝んでみたいものだ、顔を。
そう思ったときだ。突然、掌の内にあった石が発光し始め、それは次第に大きくなって三蔵を飲み込んだ。
三蔵は思考する間も与えられることなく、そのまま意識を奈落の底へと落としていった・・・・・・。