――――ガウン、ガウン、ガウン!!
立て続けに三発発砲された、魔力で構成された弾丸が全て命中し、一発命中するたびに皸が入っていった瓦礫がついに四散する。
それによって切り開かれた進路へとまた足を進めていく。
周囲の可燃物を飲み込んで、更に規模が大きくなっていく火の手を潜り、時に砲撃で吹き飛ばして、コウリュウは愛用の煙草さえ咥えずに走っていた。
「クソ――――」
突然の爆発で、一気に炎の勢いが強まり、廊下を駆け抜けようとしていたコウリュウを左から襲う。
コウリュウは即座に炎に向かって左手の掌を突き出し、最速で最低限の規模のシールドを展開。迫り来る熱波を大雑把に防ぐ。
少々の漏れは有るが、気にしてはいられない状況だ。今回は例によってバリアジャケットを展開しているので、見た目の軽装ほど防御力は薄くない。それによって、多少の炎を気にも留めずに済む。よって、足を止める理由などはない。
何より、コウリュウにとってはいくら己に害が及ぼうと、今回ばかりは面倒くさがってもいられない。
平時ならば「関係がない」とひと言で切って捨てるほどの彼でさえ、現状は軽視ないし無視できる事態ではなくなっていたのだ。
「手間かけさせやがって。どこに居やがる・・・・・・ギンガ、スバル――――」
――――ゲンヤの仕事風景を見学にやって来る手筈であったギンガとスバル。その二人が、現在突如発生した火災によって、ここ空港に取り残されているのだ。
現在において、既に管理局への道を進み始めていたギンガは、全くの初心者(スバル)とは違い、陸士候補生として多少の心得は持ち合わせている。その為、マニュアル通りに行動してくれてさえいれば、少なくとも無事でいられるだろう。
連絡を取った際、ギンガははぐれてしまったスバルを助けに行くと自分から言いだした。定時連絡も取っていたし、元より真面目さを絵に描いたような奴だ。コウリュウも余計な心配事は逆に迷惑だろうと、あまり苦言はしなかった。
――――しかし、つい先ほど起きた大きな爆発音から、ギンガからの定時連絡、その他一切が通じなくなってしまったのだ。
コウリュウは、右手に持つ小銃型のデバイスを掲げ、それに向かって怒鳴りつける。
「オイ、ガンロック。アイツ等の居場所の特定はどうなってやがる!?」
《うっせ、さっきからやっているだろうが! まだ出てねぇ、もうちっとばかし待ちやがれ! それと――――》
ガンロックは一度言葉を途切れさせると、少し声色を変える。
《コウリュウ。お前、らしくねぇんじゃねぇか? 今日みたいな日でも、お前がこんな――――》
「チ――――俺らしいって、なんだ? 知ったような口、聞きやがるンじゃ・・・・・・」
《――――コウリュウ!! いいから周りに気ぃ配れ! いつも通り、冷静に、ドライに! 周りの温度にやられて頭まで沸騰させるんじゃねぇよ》
「分かってんだよ、ンなことは・・・・・・」
《――――やっと出たぜ! 場所は・・・・・・》
――――割とここから離れていない場所に一人。ここなら・・・・・・!
「・・・・・・間に合わせる。サーチさぼるなよ、ガンロック」
《――――ッたりめぇだ!》
――――きゃああぁぁぁ!!
「!? 今の、悲鳴か・・・・・・!?」
《さっきの所だ。急げ、コウリュウ!》
「分かっている!」
再び始めたコウリュウは、マルチタスクを用いてマップを確認しながら、悲鳴が上がった場所――つまりはギンガかスバルが居る場所、もしくは逃げ遅れた一般人らしき生体反応の元へと向かった。
恐らく、そこにいるのはギンガかスバル、そのどちらかだろう。とコウリュウは既に当たりをつけていた。
実は事前に、なのはやフェイトからの報告が来ていた。他に逃げ遅れた誰か、もしくは個人の行方は無事確認できている。コウリュウの妹二人以外は全員救助されたとのことだった。
距離も段々と近づいている。反応はもう数十メートル先にあり、己の鍛えた脚力を持ってすれば容易に間に合う位置。
そうだ、真っ直ぐ行って、左の角を曲がった廊下に出さえすれば――――
「――――ッ」
《マジかよ・・・・・・》
コウリュウの胸の内を代弁するかのように、ガンロックの苦々しい呟きを頭の中で聞いた。
「む? 何者だ――――局員か。よもや、こんな場面で相対するとはな」
廊下を曲がった先、約五メートル前方に、それが居た。
一見すると、ギンガやスバルと同じくしてこの火災に巻き込まれてしまった、ただの一般人と思えるかもしれない。
確かに、見た目は幼い少女だ。気兼ねなく振り返った姿は実に自然。まるで、その辺で道を尋ねる様な軽い雰囲気。だが、
「・・・・・・ただの小娘が、こんな場所で平気で立っていられるか」
《同感するぜ。どう見ても管理局員でもねぇしな。ありゃ、完全にクロだ》
「は――――」
――カチリ。
撃鉄を起こす。
本来、拳銃に必要な手順であるが、魔法を弾丸としているので普段なら使用することはない。コウリュウが持つ小銃型デバイス、ガンロックの場合は、
「・・・・・・カートリッジ」
《load》
「ほう。早くも臨戦態勢か、カートリッジシステムまで使用とは、念の入ったことだ」
そう、つまりはそういう事。
魔導士の切り札とも言える機能『カートリッジシステム』。本来持つ魔導士本人の魔力量を越えた魔力行使を可能とする、近年まで実用化が立っていなかった、かつては危険とまで言われたシステムだ。
要は一時的なブースト機能。それを使って、コウリュウは幾度なく窮地を脱してきた。
そのいずれも、コウリュウの直感で危険と判断した相手と対峙した場合のみ、使用してきた。今回も、それに準じている。
コウリュウは目の前に映る少女へと紫暗の瞳を睨むように向けるが、対する少女は相も変わらず自然な体制のまま崩さない。しかし、どうせあちらも心構えはとうにできているのだろう。一色触発の気配を漂わせたまま、二人が一歩も動かないのがその証拠だ。
すると、一度口を聞いたきり開かなかった口を、少女は開いた。
「なあ、管理局の魔導士よ。私は、やるべき事が終わった身なので帰りたい。できれば見逃して欲しい所なのだが、」
「お前、魔導士か?」
「こちらの意見は無視か、まあいいが。予想はしていた」
「二度は言わせるな」
既に収束砲撃の準備が整った状態のガンロックの銃口を少女へと向けたまま、コウリュウは低く呟いた。
対する少女は武装らしきものが無い。身に纏うコートらしき物の影に何を仕込んでいるのかは知らないが、少なくともこの体制ではそれも使えまい。取り出そうと素振りをわずかでも見せようものなら、途端に引き金にかける指が動く。そのほうが明らかに早い。
糾すかのようなコウリュウの言葉に、やがて諦めたかのように少女はため息をついた。
「厳密に言えば、魔導士というカテゴリには当てはまらないな。そもそも私達は、元はといえば君たち魔導士に対抗するべく存在する筈であった者だからな」
「? どういうことだ」
「それ以上は言えないさ。・・・・・・さあ、どうする? まあ、ここから先はどう向かっても、」
少女がコートを翻す。これでは狙いが定まらん――!
「こういう解決の仕方に転ぶだろうな!」
踊るように開いたコートの中と空中から現れた数十本のナイフが、コウリュウ目掛けて飛来するのを視認した――――速い!
「舐めたマネしてくれんじゃねぇか――――ブレイズ、」
「ッ――――!?」
《canon!!》
迫り来るナイフの全てをごく僅かな動作で躱し、狭い廊下を覆い尽くす極太の砲撃魔法を放つ。
砲撃は必然的に命中し、激しい爆音と共に辺に砂塵が舞った。
通常ならば、この一撃でダウンさせられるが、しかし――――
「・・・・・・恐ろしい威力だな、これは。AMFを張っていたというのに、砲撃に対AMFの術式を組み込んでいるのか・・・・・・して、やられたよ。手酷いダメージを負った・・・・・・」
少女はやはり健在。それに長々と喋ることのできる程の余裕すらも持ち合わせているらしい。一体どんなカラクリなのか――――
「・・・・・・だから、これはほんの意趣返しだ」
《これは、やべぇ! コウリュウ、避けろ!!》
「――――クソ!」
「IS、ランブルデトネイター」
突如として少女の真下に浮かび上がった何十もの円が不規則に回転し、動き始める。
なにやら不吉なものを感じ取ったらしいガンロックが警告してくるが、その嫌な気配にもとうに気づいていたコウリュウも咄嗟に床を蹴り、後方へと退いた。
瞬間、先程まで立っていた床――そこにバラバラに刺さっていたナイフが全て、一斉に大爆発を起こした。
「ぐくっ!」
予想外に大きい規模の爆発を予測しきれなかったコウリュウは、爆風を受け、後方の壁に打ち付けられる。
続いてやって来るだろう追撃を制するべく、背を売った拍子に吐き出された空気を吸う間も惜しんで、ガンロックのグリップを握りしめ、直ぐ様視線を上げる――――が、予想していた追撃はやって来ることはなかった。
それもそのはず、自分を爆風で吹っ飛ばした張本人の少女は、その存在していた痕跡の一切を消してどこかへ消え失せていたのだ。残るのは、戦闘の余波で残る破壊の爪痕。それも、この場では火災によってできたそれとなんら変わりがない。ガンロックに爆発したナイフの破片を探させたが、それも結局全て消し飛んだらしく、見つかることはなかった。
つまり、逃げられてしまったのだ。
「――――痛(つう)ッ!」
《おい。無理すんなよ、結構ひでぇぞ》
「うるせぇ。どうってことねぇよ・・・・・・」
心配して声を上げるガンロックに強気に答えるも、やはり戦闘のダメージは拭いきれないのか、コウリュウはやや力なく手近にあった壁に寄りかかり、ずるずると腰を下ろしてしまう。
《あーあ、ったく。言わんこっちゃねぇって――――あ?》
その時、コウリュウ宛になのはからの連絡が入る。
朦朧と肩で息をしているコウリュウは、無言で受信了承を促すようにガンロックを見てなんとか頷いた。
『コウくん? なのはです――――って、どうしたのその怪我!?』
「気にするな。鬱陶しい」
『するよ! ――――っもう! この後すぐに迎えに行くから! それと、コウくんの妹さん達のことなんだけど』
「・・・・・・」
『無事、私とフェイトちゃんで保護しました。二人とも、今は念の為に病院の方へ搬送しましたが、目立った外傷もないし、変な兆候も見られないから安心していいよ?』
「そう、か・・・・・・」
『こ、コウくん? コウくん、しっかりして――――!』
妹二人は無事。その事実を聞いて満足し気が抜けてしまったのか、コウリュウは朦朧とした意識を保つことなく、そのまま手放すようにガクリと項垂れる。突然の事に、なのはは必要以上に声を張り上げて、コウリュウの意識を呼び戻そうとする。目の前にいれば、肩を引っ掴んで揺すられそうな勢いだ。
「――――うるせぇっての。傷に響くだろう、が・・・・・・・・・・・・」
僅かに残った意識を総動員してそれだけを呟くが、それはもはや響きだけで言葉にならず、必死に叫ぶなのはに全霊の文句が聞き届けられることはなかった。
□
――――翌日。
「それでね、すごいんだよ! なのはさんが、持った杖をこう――――構えて、どーん! って! それで、上におっきな穴が空いて、私を連れ出してくれて!」
「す、スバル。ここ病院だから、ね? お願いだから大人しく・・・・・・」
「傷に、響く・・・・・・うるせえ」
《近くの民家には届いてんじゃね? そら響くわ、ご愁傷様》
「ポンコツ。テメェ、クスラップに、されてぇかよ・・・・・・痛(つう)ッ」
「兄さん。だいじょうぶ・・・・・・?」
気がつけば病院のベッドに寝かされていたコウリュウは、早くから見舞いに訪れたゲンヤ、ギンガ、スバルの三人と話をしていた。
途中で仕事へ向かったゲンヤを除いて、その後たっぷりと事情を、嫌でも聞かされ続けた。
ギンガは、きちんとデスクワークの報告書のマニュアル通りの状況描写の下、至極シンプル且つ理解に容易な報告であった。問題は、まだ幼いスバルの方である。
年齢的には、TVでやっている日曜のヒーローモノが大好きなお年頃で、実際にスバルはそれが大好きだ。毎回見逃さず視聴しているほど。
必殺技、決め技的なものが、その年の子供にはどう考えてもドストライクだろう。そんなスバルが、あのなのはの収束砲を目の当たりにした、あまつさえそれで救出されたとなれば、その憧れも当然の如く引っ付いてくることは明白であった。
本当はそれだけではないのだが、今のコウリュウにはどの道知らぬことである。
「安全なところまで、一直線だから・・・・・・きゃ――――――!」
「ギンガ、そこの山猿をつまみ出せ・・・・・・!」
「に、兄さん。お願いだから、抑えて・・・・・・! ガンロックの起動はしないで!? スバルはもうちょっと周りを考えてってば!」
なのはの台詞らしきモノマネを始めて、勝手に自分で自己完結して悶えるスバル。その鬱陶しさに対し、ついにキレたコウリュウを必死になだめるギンガ。ところで、机に立てかけられていて、乱暴に引っ掴まれて強制的に起動させられたガンロックは終始無言のまま。
引き金をぎりぎりと引き絞ろうと力むコウリュウの人差し指の驚異的な握力を、センサー以外の全リソースを掛けて文字通り全力で阻止していたのだ。
主と、主が愛する者たちを守る使命を持つガンロック。間違っても、主に妹の額に風穴を開けさせるわけにはいかなかったのであった。もちろん、コウリュウの放とうとしているそれはデコピン程度の魔力弾なのだが。
ミシミシと軋むガンロック。そろそろやばいと感じ始めていたガンロックは、ついに救世主の存在を確認する。はやて、なのは、フェイトの三人の女性。ガンロック視点から見た彼女たちは、いつも通り、それぞれが蝶よ、花よと揶揄されても遜色ないほどの美少女たちだ。
「――――あれまあ。コウくんてば、ひどい事になっとるなぁ」
「でも、聞いた時よりも元気そうだね。よかった」
「あはは、なんだか・・・・・・今度は別の事で苦しんでいるみたいだけど」
三人の美少女は、一応友人であるコウリュウの為に態々貴重な休暇を消化してまで見舞いに来てくれたらしい。ガンロックは救難信号と同じ光信号をチカチカと送りながら、同時に救いの主達が現れたことに歓喜していた。
「あ、な、なのは・・・・・・さん、」
「スバルッ! ほら、立って! 一旦外に出るの!」
キーキーと騒ぎ立てていた先ほどとは打って変わって放心状態のスバルを、その場の空気で何かを悟ったギンガが、やや引きずる形で病室の外へと連れ出していったまま姿を消した。
コウリュウは騒音の音源が居なくなったことにホッと息を吐き、その様子を見たあとの三人が一様に吹き出した。
一頻り笑ったあと、重要な話があるとはやてが言う。が、その話をはやてが始める前に、まずはフェイトが話を切り出した。
「コウ。その後、怪我の具合はどうかな?」
「概ね、回復している。これに関しての心配は要らん」
「コウくんにその手の心配は、するだけムダやってフェイトちゃん」
「意地っ張りだもんねー」
「・・・・・・冷やかすんなら帰れ。三人揃って来る程の何かがあるのなら、さっさと用件を言え」
そやった、そやった。と、はやては一つ咳払いをして見せる。
「結構前から言っとったことやねんけど、私の夢。自分の部隊を持つっていうやつ。・・・・・・今回起きた空港火災の一件で、余計にその思いが強まってきてな」
「はやてちゃんがいつか自分の部隊を設立することになった時、私とフェイトちゃんも、その部隊に駆けつけようってことを話したの」
「それでね、なら皆一緒がいいよねっていう事で、コウも誘おうって皆で話していて・・・・・・」
「こうして、三人で来たっちゅうわけやねん」
「なるほどな」
「どうかな・・・・・・?」
ふむ。とコウリュウは顎に指を当てるようにして考える。極端に言えば、コウリュウ自身に断る理由はない。部隊の人数を揃える為の人脈を持っている訳ではないが、はやてが創る部隊だ。どうせ、身内を中心に固めた緩めの規則を敷くに違いない。
完全にフリーダムを許すような事はないと思うが、コウリュウは自分のような振る舞いをする人間がガチガチの規則で固められている団体内で、自分が嫌われないことがないことぐらいは分かる。なら、多少融通の効く場所へ身を置いたほうが己のためにもなるというものだ。で、あるのなら、話は一つ。
「勝手にしろ。呼びたければ呼べ、必要がないなら放っておけばいい」
「素直やないなぁ。まっ、交渉成立やね。楽しみに待っとってな!」
「それまでに・・・・・・皆が相応の実力、身に付けておこう?」
「母さんや兄さんたちに、アドバイスを貰うのもいいかも」
「できるんなら、かの三提督に、今度意見を伺いに行けるか交渉してみよか」
やはり素直にならない頑固者コウリュウは、今度は自分そっちのけで話を始める少女たちを見て、思う。
この馴染みある三人と共に所属する部隊。それは、確かにはや達の言う通り夢のある話だ。同時に実現も不可能では決してないだろう。はやてはそれに見合う努力を怠らなかったと聞いているし、周囲には信頼を寄せる人間も多く居ることを知っていた。
だが、コウリュウの危惧しているところがある。
”また、あの時のように成ってしまうのは・・・・・・”
脳裏に蘇るのは、コウリュウが未熟な頃。陸のエース、部隊長ゼスト・グランガイツ率いる部隊に母クイント共に所属していた時、体感した圧倒的な敗北感と喪失感を覚えさせられたとき。
自分を暗闇から救ってくれた光たち。それの全てが、たったの一日で奪われてしまった事を。
《おい、しっかりしろよ》
「む、」
それまでじっと黙って事を見守っていたガンロックが、コウリュウを念話で現実へと意識を連れ戻した。
「あれ? どうしたの、コウくん? ・・・・・・なんだか、顔色が悪いような」
「いや、別に気にすることはない。少し、な」
なのはが僅かに気遣うような視線を向けるが、コウリュウは誤魔化した。
これで貸し一つだかんな。とでも言いたげに本体のコアをチカチカと点滅させるガンロック。
心無しか、何時もの苛立ちは湧いてこなかった。今度、機会を作ってフルメンテにでも出してやろうか・・・・・・。などと、普段なら簡単に済ませる整備すら豪華にしてやろうと柄にもなく思案してしまう。
「傷が疼いてもうたんとちゃうか? というか、空港でコウくんが遭うた人って、管理局の方でも足を掴めへんかったからなぁ」
「私も。仕事の合間にそれらしい手掛かりは掴めなかったから・・・・・・」
「教導隊じゃあ、そういうお仕事は最近めっきりと来てないから、調べたくてもフェイトちゃんやはやてちゃんのようにはいかないんだ。ごめんね?」
「・・・・・・結局、手がかりらしいものを掴んでいるのは、現場に居た俺だけということだな」
「確か、銀髪で背の低い、一見すると普通の少女・・・・・・だっけ。主に使う武器はナイフと、何らかの手段を用いての爆発。これまでの事件を洗ってみてもそれと一致する情報は無かったし、八方塞がりだった」
フェイトが申し訳なさそうに俯く。彼女には、事前に情報を端末へ送って調べてもらえるよう伝えておいたのだが、やはり、相手方も早々に尻尾を掴ませてはくれないらしい。
「元々、俺が当事者のようなものだ。気負うことはあるまい」
「そっか。うん、ありがとう」
こうは言ったものの、この件に関して、コウリュウは諦める気はさらさらない。借りはきちんと返す、売られた喧嘩は全て買うのが自身の主義であるため、この怪我の分は問答無用で叩き返してやるつもりだ。
まあ、まずは――――
“私達、と言ったからには・・・・・・奴の他にもテロリストが居る可能性が必然的に存在する。その実体を暴く為に、今回の事例に近い状況の『表向きに事故』と記されている、らしい報告書を探すことから、だな”
そう思うコウリュウだったが、結局、その後に行った調査は碌な結果も得られずに停滞することになる。