Side 昴
「・・・・・どういう事ですか?」
塔城さんの視線が絶対零度。
空気がピリピリしている。
「言葉通りですよ。
お姉さんに会いたくないですか?」
「・・・・・どうしてあなたが私の姉を知っているんです。
・・・・・あなた本当に何者ですか。」
警戒が強くなる。
・・・いきなりすぎたかな。
「僕は僕ですよ。
そうですね・・・黒歌さんとの出会いから話しましょうか。」
僕は勝手に話し出す。
警戒しながらも話を聞いているって事は興味があるんだな。
無関心って訳じゃなくて良かった。
彼女がずっと逃げ続けていた事。
襲われている所を僕達が助けた事。
彼女から妹である白音さんの話を聞いた事。
今でも塔城さんの事を思い続けている事。
そして黒歌さんが自分の主を殺した本当の訳。
全てを話し終わった後・・・。
「・・・・・信じられません。
・・・・・お姉様は、ぼ、暴走したって。
・・・力に飲み込まれたって。」
「黒歌さんはそんなに弱くありませんよ。
自分のお姉さんが信じられませんか?」
「っ!!
・・・・・・信じられる訳が。」
「もう一つ言えば今とある方に黒歌さんの事件を再調査してもらっています。」
「えっ!!!」
「もうすでにある程度進んでいて、条件付きではぐれ認定が解除される可能性が高いそうです。」
「っ!!!」
彼女に顔に不安が広がる。
今まで悪だと思ってきた姉が全部自分の為にやった事だったからか。
それとも姉に会うのが怖いのか。
「・・・もう一度聞きます。
黒歌さんに会いたいですか?」
「・・・・・・・・・・。
・・・・・わかりません。
・・・少し・・・少し時間をもらえませんか?」
悩んでいる。
多分以前はお姉さんの事が大好きだったんだろう。
そんな姉が目の前で殺しをして逃げた。
僕の話を聞いて何を信じればいいのか分からなくなっているんだろうな。
「・・・わかりました。
けど忘れないでください。
今のあなたには時間が無い事を。
今日はもう出来そうに無いので明日から修業を始める事にします。」
「・・・はい。」
今にも壊れそうな背中で別荘の方に歩いて行く塔城さん。
そんな彼女に最後に声を掛ける。
「もし決心が決まったら、僕の部屋に来てください。
何時になっても構いませんから。」
反応無くそのまま歩き去って行った。
見送る僕に近くに待機していたソーナさんとアンナさんが寄ってくる。
「・・・よかったのですか?」
「確かに辛い事でしょうけど、彼女にとってはこれが強くなる一番の近道です。
それに黒歌さんの妹です。
必ず前を向いてくれます。」
「・・・そう・・ですね。
黒歌さんの為ですしね。」
「僕達も行きましょう。
夕食の準備をしなくては。」
「はい!!」
僕達も塔城さんの後を追う様に別荘に向かった。
Side エリカ
私は担当の生徒である木場 祐斗を連れて回りに木が無い空間に来ていた。
ここなら存分に剣が振れる。
「ここでやりましょうか。
改めて自己紹介するわね。
私はエリカ・ブランデッリ、あなたを指導する事になったわ。
よろしくね。」
「よ、よろしくお願いします。」
「今日はそんなに厳しくしないから安心して。
まずはあなた自分の短所がわかっているかしら?」
突然な問いに答えが出ない。
考える時間を与える為に少し間をとる。
「・・・速さに比べて極端に力が弱い事です。」
「それもあるわ。
確かにあなた速さはあるけどそれだけよ。
速さに技術が伴っていないから剣に力が伝わらないの。
厳しい事を言うようだけど、あれじゃあ剣術とは呼べないわね。
ただ木の棒を振り回しているのと同じよ。」
この言いようにはさすがに顔を顰めた。
「まぁ、さすがに言いすぎたわ、ごめんなさい。
今日からもう一度基礎をしっかりやって、徐々に速さを上げていきましょう。
あなたならそれだけでワンランク上の戦いが出来る様になるわ。
それともう一つ。」
「・・・もう一つですか?」
「あなたの神器の事よ。
あなたの神器は応用の利く物よ。
どんな魔剣も作り出せる。
という事はどんな状況でもそれに応じた魔剣を作り出して対応する事が出来る。
もちろん自分の短所を無くす事も長所を伸ばすことも出来る。」
「!!そんな考え方があったなんて!!」
「イメージと反復、後は魔力のコントロールね。
神器についてはこれに限るわ。
どんな魔剣なのか明確にイメージしなさい。
そしてそれを繰り返す事によって、精製スピードと剣の威力・耐久力も上げなさい。
さっき確認したけど、神器を使うのに魔力を使っていたわ。
だから追加で魔力の使い方も覚えてもらうわ。
以上が今の所私があなたに教える事よ。」
他にも直す事はあるのだが、今回はこれくらいだろう。
はっきり言って時間が足りない。
そして対戦相手の力量もわからないから大方の目安で鍛えるしかない。
今回の事で私達にとって一番難しい所だ。
私の言っている事が意義のある事だと理解したのだろう。
いい表情をしている。
「それじゃあ早速はじめましょうか。」
「はい、お願いします。」
私が剣を構え向かって来る様に指示すると、彼も気合十分に挑んでくるのだった。
Side 馨
「君達に言える事は全員魔力の使い方が甘い。」
「どういう事かしら?」
「まずはやって見せた方がいいね。」
僕は指先から小さな魔力の球を作り出す。
これは小さいが中にかなりの魔力を込めている。
だからこれをさっきグレモリーさん達がやったみたいにすると、
ドーン!!
木に当たった瞬間大爆発。
威力は二人よりもあっただろう。
「わかってもらえたかな?
君達は大きな器に少ししか魔力が込められていないんだ。
これは魔力の使い方がなっていないから。
これを学べば発動スピードは速くなるし威力も上がる。」
ただの人間に負けている事に悔しさをにじませている。
アルジェントさんだけは真剣に聞いてくれている。
「アルジェントさんの神器にも同じ事が言えるよ。
さっきの木場君が発動させた神器を見たけど、少量だけど魔力が使われていたからね。
だからアルジェントさんにもこの特訓は有効なはずだよ。」
「は、はい。」
突然降られた話に驚きながらも、ちゃんと返事を返してくれた。
「時間は少ないからね。
早速はじめようか。」
三人を促し特訓を始めるのだった。
Side 昴
日も落ち始め、特訓をしていた皆が別荘に帰って来た。
兵藤君にも追いかけている魔力を通して呼び掛け今日は終了だと伝えておいた。
みんなボロボロだ。
中でも兵藤君と木場君の疲労は激しい。
兵藤君は走っている途中に転んだり、雷を落とされたりしていたのを知っていたからわかるけど、どうして木場君が?
初日は軽めにするって話だったのに。
「エリカさん、何があったんですか?」
気になって小声で聞いてみた。
「あぁ、それは、彼が望んだ事なのよ。
だから私も手を抜かずにやってあげたわ。」
「そうでしたか。」
彼らだけでなく女性陣にも疲労が見える。
感じられる魔力が少ない。
「馨さんの方はどうでしたか?」
「僕の方は予定通りだよ。
グレモリーさんが思っていたより不器用だけど、心配するほどじゃない。
アルジェントさんも初心者ながらにがんばっている。
このまま行けばいい所まで行くんじゃないかな?」
「ゲームの中で何が起こるかわかりませんから、余裕が見えれば変更しても構いません。」
「元よりそのつもりだよ。」
グレモリー眷属はソーナさんと話している。
「あの人達本当に何者なの?」
「詳しくは話せません。
ですが信頼できる人達ですよ。
それに充実した訓練になったでしょう?」
「・・・確かにそうだけど。
私達では考えもしない鍛え方だったわ。
でも今日一日で成長を実感できた。」
「僕もです。
手も足も出ませんでしたけど、指摘してくれるところは的を射ていて、今までで一番成長を実感できました。」
「お、俺は今日一日走り回っていただけでした。」
ホント兵藤君は疲れているなぁ。
明日からもっときつくなるのに大丈夫かなぁ?
「アルジェントさん、君の練習はこれからが本番だよ。」
「ど、どう言う事でしょうか?」
「君の神器は傷を癒す物だろう?
神器をさっきに練習みたいに意識して使って、それを自分の物にしなくちゃね。」
「わ、わかりました。
そ、それじゃあイッセーさん私が怪我を治します。」
「お、おう、よろしく。」
馨さんの指示でアルジェントさんが一番怪我の酷い兵藤君に神器を使う。
彼女の手が輝いたと思うと、光が当たった所から怪我が治っていく。
へぇ~すごいな。
あれは怪我だけじゃなくて疲労もとっているみたいだ。
「どうですかイッセーさん。」
「ありがとう、アーシア。
体が軽くなったよ。」
疲労ともなるとちょっといただけないな。
「アルジェントさん。
明日からは怪我だけを治すように心がけてください。」
「えっ?
怪我だけですか?
今もそうしたつもりでしたけど・・・。」
「いいえ。
今のは疲れも一緒に直していました。
怪我だけを意識してみてください。
そうすればもっと回復スピードは上がりますよ。」
「疲れが取れてはいけないんですか?」
「今回に限ってはそうです。
それでは兵藤君の為にはなりません。」
「っ!!
わ、わかりました!!
明日からは気を付けてみます!!」
勢い込むアルジェントさん。
会話を聞いていて兵藤君は、
「あ、あの、神藤さん。
どうして疲れを取ったらいけないんですか?」
「筋肉の疲れをとるのはゆっくりやった方がいいんですよ。
体がそれを覚えてより強い体を作ろうとしますから。」
「そ、そうなんですか?」
「きついと思いますけど我慢してください。
これを乗り越えればかなりのパワーアップが望めますよ。」
よくわかっていないな。
彼は頭があまり良くないみたいだ。
「そろそろ食事にしましょう。
アンナさんが用意をしてくれていますから。」
「そんな事までしてくれているの?」
「もちろんです。
皆さんには鍛える事に集中してほしいですから。」
「・・・ありがとう。」
食堂に移動すると、料理がテーブルに並べられていた。
「皆さんお疲れ様でした。
たくさん用意いたしましたのでたくさん食べてくださいね。」
「おぉぉーー。
うまそぉ~~~。」
「本当だね。」
「あら?
小猫ちゃんはどうしたのかしら?
誰か知りませんか?」
「本当ね。
小猫はどうしたの?
食事にいないなんて。」
いろいろ思う所があるのだろう。
塔城さんは来ていない。
「搭城小猫さんなら疲れたから先に休むそうです。」
アンナさんがフォローしてくれた。
グレモリーさん達は不思議そうにしながらも、
「・・・そう?
あの子が食事もしないなんていったいどんな特訓だったのかしら?」
そう言って席に着いた。
食事が始まるとみんなお腹が空いていたのか一心不乱に食べ始めた。
「おいしいわね。」
「本当ですね。」
「うめぇ~~~~~。」
「おいしいね。
こんなにおいしい料理食べた事ないよ。」
「とってもおいしいです。」
口々にアンナさんの料理を称賛している。
アンナさんも嬉しそうだ。
食事にもひと段落ついた頃、今後の予定について話す事にした。
「今後の予定について話しておきますね。
まず木場君と姫島さん。
二人は各自師事している人の言う事を聞いてメニューを熟してください。
疑問に思ったことは何でも聞いてもらっても構いません。」
「「わかりました。」」
「次に兵藤君。
兵藤君、君は後4日同じメニューです。
一日中走り回ってもらいます。
中日に様子を見て戦闘訓練も入れようと思います。
基礎が大事になるので手を抜かないようにしてください。」
「えっ・・・あ、はい。」
「次はアルジェントさん。
あなたも姫島さんと同じように馨さんの言うメニューに従ってください。
そして明日から追加で練習終わりに皆さんの怪我の治療を行ってください。
一つ一つ丁寧に自分の感覚を研ぎ澄ますように。」
「わ、わかりました。」
「最後にグレモリーさん。
あなたは・・・。」
「私から説明するわ。」
全員がソーナさんの方を向く。
「リアスは夜になったら私とレーティングゲームについて勉強よ。
私達は成人になる前だからまだゲームについて勉強不足な部分が多い。
いい機会だから一緒に勉強しましょう。」
「ありがとうソーナ、助かるわ。」
「日中は学校があるから来られないけど、夜には時間を作りますから。
とりあえず今日から始めましょう。」
最後に聞いておかなくてはいけない事がある。
「グレモリーさんとその眷属の皆さん。
指導を担当するのが僕達でいいですか?」
「・・・最初は人間で驚いたわ。
けど三人とは人間とは思えない強さを持っている。
ソーナには感謝しなくちゃね。
こちらから改めてお願いするわ。
私達の指導お願いします。」
グレモリーさんが立ち上がり頭を下げる。
それに姫島さんが続くと、残りの人達も順次頭を下げた。
「こちらこそどれだけ力になれるかわかりませんが、よろしくお願いしますね。」
そうしてこの日は解散となり、各自部屋に戻ったり、お風呂に行ったりして今日の疲れを癒すのであった。