Side 昴
朝食にやって来た塔城さん。
昨日心配かけた事を全員に謝っていた。
その表情は昨日までとは打って変わって晴れやかな物になっていた。
黒歌さんは僕達の事も話したそうだ。
妹に隠し事はしたくないと言っていた。
今朝会ったとき誰にも言わないと塔城さんも言ってくれた。
「これからはいつでも遊びに来るといいよ」って言ってあげたら姉妹で喜んでいた。
早速今日も特訓の開始だ。
昨日と同じように木場君はエリカさんと。
グレモリーさんと姫島さんとアルジェントさんは馨さんと。
兵藤君は今日も山を走り回る。
そして塔城さんは・・・。
「今日から塔城さんも特訓に入りましょう。
他の人より遅れていますから少しきつめにいきますよ。」
「はい、よろしくお願いします。」
「まずは今の実力を見せてください。」
手招きしてかかって来る様に指示する。
黒歌さんに聞いただけとはいえ僕の力を知っている塔城さんは遠慮せずに挑んでくる。
速さは騎士である木場君には劣っている。
体術も我流だろうか?
せっかくの力が逃げてしまっている。
「ここまででいいですよ。」
そう言って殴って来た塔城さんを受け止め、体勢を崩し、体を浮かせる。
木場君みたいに地面に落とすのは躊躇われた為受け止める。
体が小さいから軽いなぁ。
優しく降ろして今回のメニューを話そうと顔を向けると、そこには顔を赤くした塔城さんの姿があった。
「どうかしましたか?」
「・・・い、いえ、何でもありません。」
気にしてもしょうがないか。
「塔城さんは・・・」
「小猫。」
「はい?」
「小猫と呼んでください。
それともし良ければ二人きりの時は白音と。」
「・・・わかりました。
それじゃあ僕の事も昴と呼んでください。」
「昴・・さん。」
噛み締める様に言ったそれはどこか嬉しそうだった。
「それじゃあ白音さん。
あなたは戦車という特性上力は強いですが、それを活かし切れていません。
まずは我流である戦い方をちゃんとした物にします。」
「・・・はい。」
「心配しなくても大丈夫です。
黒歌さんが言っていましたよ、自分以上の才能を秘めているって。」
「・・・ほ、本当ですか。」
「信じてください。
尊敬する姉の言葉を、そして自分自身を。」
「・・・わかりました。」
「それじゃあ始めましょう。」
まずは基本的な事から。
体に使い方を覚えさせる様に何度も何度も。
間違っている所があればすぐに指摘し直させる。
1時間もしない内に汗だくになっている。
それでも休ませず続けさせる。
稽古できつい思いをしていれば本番でそうなっても乗り越えられる事がある。
今回の戦いはそう言った物になると予想して稽古はきつくしている所もある。
2時間もたてば倒れて起き上がれなくなった。
「午前中はここまでですね。
お疲れ様。」
「・・・・・はい、あり・がとう・・・・ござい・・ました。」
起き上がる事さえできない白音さんを抱き上げ別荘に戻る。
アンナさんに声を掛け、白音さんを預ける。
まだ昼食まで時間があるので兵藤君の様子を見に行く事にした。
兵藤君はまだ山の中を走り回っていた。
それがメニューなんだけど・・・。
でも今日は昨日と様子が違っていた。
どこか覚悟を決めているように見えた。
何か心境の変化でもあったのかな?
何があったにしてもいい傾向だ。
ああいうタイプはその時の感情が力に大きく関わってくる。
感情に左右されない強さも時には必要だが、兵藤君のようなタイプは土壇場で強い。
今のモチベーションを保てば、成長も早まるし、周囲にもいい影響を与えられる。
そして今回の戦いにも絶対に役に立つ。
そんな彼を少し離れた所で時間になるまで眺めているのだった。
午後。
ある程度回復した白音さんを連れ、僕の家の道場に来ていた。
「午後はここで黒歌さんと仙術の練習です。」
「私がしっかり教えるにゃ。」
白音さんのあまり顔色が優れない。
「心配かにゃ?」
「・・・・・はい。
もし暴走したらと思うと・・・。」
「大丈夫にゃ。
そうなったとしても私と昴がいるにゃ。」
「何かあっても必ず止めますから。
心配せず、練習してください。」
まだ少し不安そうだったけど練習を始めた。
黒歌さんが見守る中白音さんが周囲の魔力を自分に取り込んでいく。
僕も黒歌さんに多少仙術を習ったのでその様子がわかるようになった。
神殺しは自分の中にある力しか使えないから教えてもらっても習得は出来なかったけど・・・。
特訓は順調に進む。
時折邪気を取り込みすぎたりもしたけどすぐに黒歌さんがフォロー。
大事に至る事はなく時間になって今日の特訓は終わった。
合宿も中日に突入。
今日は中間報告という事で各自の成長度合いを確認する事になった。
最初は木場君。
初日と同じように僕に切りかかってくる。
速さ、正確性、バランス、力強さ、全てにおいて良くなっている。
神器の方も見てみたくて一度魔剣を折ってみた。
以前のように折れはしたけど、耐久性は上がっている。
木場君は焦る事無く一瞬の間に別の魔剣を作って挑んでくる。
こちらも精製スピード、性能、耐久性。
共に強化がされている。
このまま成長できれば、いずれドニさんの足元ぐらいには行けるだろう。
「とてもよくなっていたよ、これからもこの調子でね。」
「はい、ありがとうございました!!」
最後に褒めればとても嬉しそうにグレモリーさんの所に戻って行った。
次はグレモリーさん達。
彼女達も以前と同じ様に魔法を放ってもらった。
作られていく魔法は小さいく精製スピードも速い、そして内包されている魔力量は格段に増えている。
威力も前以上。
成長スピードが速い。
馨さんも楽しいだろうな。
「素晴らしいです。」
「ありがとう。
これも馨さんのおかげよ。」
「後は応用力を身につければ今回の戦いも楽になるでしょう。」
「その辺りも馨さんに教えてもらっているわ。
今はまだ人に見せられる段階じゃなかったのよ。」
「そうでしたか。
最終日が楽しみです。」
「楽しみにしていて。
あっと驚かせてあげるわ。」
次は白音さん。
特訓は僕が見ているため成長度合いは把握しているけど、グレモリーさん達に見せるために行う。
殴り掛かってくる白音さん。
速さ、正確性共に向上。
力を逃がさない戦い方が出来る様になっているのでパワーが上がっているように見える。
そして仙術、今日が初お披露目となる。
黒歌さん指導の下、毎日練習を重ねた結果少量だが使えるようになった。
その副作用で黒歌さんと同じように猫耳と尻尾が生えているけど、力もスピードも格段に上がった。
・・・耳と尻尾を見て兵藤君が興奮していた。
手合せを終えてグレモリーさん達に囲まれている。
「・・・小猫、大丈夫なの?」
「はい。
私の事を助けてくれた部長の為です。
出し惜しみして負けてしまったら部長に顔向けできません。
自分にできる事を精一杯やると決めました。」
「・・・そう・・・・・ありがとう。」
心からの感謝をこめてお礼を言ったグレモリーさん。
白音さんの言葉に姫島さんが顔を顰めたように見えた。
あの人も何かを抱えていそうだ。
アルジェントさんだが日々の特訓の中でその成果は確認済みだ。
彼女もグレモリーさんも納得しているので今日は無しだ。
最後に兵藤君。
不安げにグレモリーさんと僕を見ている。
そんな彼にグレモリーさんが、
「イッセー、あなたの成果を見せて頂戴。」
と優しい笑みを浮かべる。
それでもなお不安そうだ。
「兵藤君。
君の神器で限界まで倍加してみてください。」
「は、はい。
来い、赤龍帝の篭手!!」
兵藤君の腕に赤い竜の篭手が現れる。
そして、
『BOOST』
と声を上げる。
赤龍帝の篭手は10秒に一回しか倍加できない。
その為準備に時間がかかるという弱点がある。
その分効果も大きいので強力ではあるのだが・・・。
考え事をしている間にさらに2回倍加される。
その事に兵藤君は驚きを隠せていない。
「ま、前は2回の倍加で限界だったのに。」
「すごいじゃないイッセー。」
「以前より力も上がっているし、ちゃんと成果も出ているんじゃないかな。」
「・・・・先輩凄いです。」
「さすがイッセーさんです!!」
その間も倍加は進んでいく。
『BOOST』
『BOOST』
合計5回の倍加。
このあたりが限界でしょうね。
「もう大丈夫ですよ。」
兵藤君に神器を消させる。
そんな兵藤君は今にも泣きそうだった。
「お、俺、この中じゃ一番弱くて。
皆の、部長の足手まといになっているんじゃないかって、不安で。」
「・・・イッセー、そんな事ないわ。
だってこうしてあなたは自分の力を示したじゃない。
あと半分、さらなるレベルUPを期待しているわね。」
「は、はい!!」
涙をぬぐい、元気に返事をする兵藤君。
心配いらないみたいだな。
「兵藤君、今日から戦闘訓練に入りましょう。
午前中に戦闘訓練。
午後からは以前と同じです。」
「は、はい。
よろしくお願いします!!」
そうして今日も合宿は続いて行く。