Side ソーナ
嫌な予感が的中した。
旧校舎前で兵藤君と木場君が戦ったそうだ。
相手は教会からの使者である聖剣エクスカリバーの保持者2名。
詳しい内容は分からなかったが、両名とも敗れたそうだ。
先程リアスが来て教会側の人間が来た経緯と戦闘になった理由を教えてくれた。
教会側の保管している聖剣エクスカリバーが盗まれた。
本来一本だったが、大昔の対戦で完全に折れ今は7本に分けて保管されている。
教会が保管していたのが6本、その内3本が盗まれた。
それを追って教会側が派遣したのが今回の2名、名はゼノヴィアと紫藤イリナ。
盗んだ犯人は大戦の生き残りである堕天使コカビエル、歴史に名を残すほどの堕天使だ。
彼女達がリアスに会いに来た理由は1つ。
今回の件で悪魔が介入するなという警告だ。
教会は悪魔が堕天使と結託してエクスカリバーを盗んだと考えているらしい。
この話をしている時、思い出したのかリアスも怒っていた。
もちろん私もだ。
私達は魔王の妹だ、魔王の顔に泥を塗るような真似するはずがない。
一方的にそれだけを告げ帰ろうとした所で一悶着あり、兵藤君と木場君が彼女達と戦う事になって、結果敗北したらしい。
兵藤君は紫藤イリナと、木場君がゼノヴィアと。
ライザーにも勝った彼らがそう簡単に負けるとは思わなかったが、兵藤君は幼馴染である紫藤イリナをいざとなったら攻撃できなかった。
木場君は感情的になり自分本来の戦いが出来なかった。
これらが敗れた原因だ。
リアスは私達に害が無い限り不干渉を決めたらしい。
この事よりも木場君の事の方が心配な様子だった。
彼に何があったのかは知らないが眷属を辞めるなんて事にならないといい。
この話を聞いたのが昨日の事。
現在は皆で生徒会の仕事をしているが匙が一向に来ない。
何かあったのだろうか、無断で休むような子ではないのだけれど・・・。
と考えているとこの辺りで魔力が使われている反応があった、それもかなり大きな。
しかもこの魔力は・・・匙?
心配になり後の事を他の子達に任せて椿姫と共に転移しようとした時、突然部屋の扉が開いた。
入って来たのはリアスと朱乃、二人とも深刻そうな表情だ。
「ソーナ手伝って欲しいの。」
「この魔力の事ですか?
匙がここにいるみたいなので私も行こうと思っていた所です。」
「なら話が早いわ、早速行きましょう。
朱乃!!」
「はい。」
そして素早く朱乃の展開した魔方陣の上に乗り転移した。
着いた先は公園。
もうすでに戦闘は終わっていて、今にもどこかに走り出そうとしている兵藤君と塔城さん、そして匙がいた。
「くそっ!!
今すぐ木場を追いかけ・・・」
「何を追いかけるって、イッセー?」
リアスが声を掛けた瞬間全員の動きが止まった。
壊れた人形のように少しずつ後ろを振り返る。
全員が恐ろしい物を見るように顔を強張らせていた。
「随分勝手な事をしていたみたいね、イッセー?」
そんな彼にとてもいい笑顔で問いかけるリアス。
私も自分のやるべき事をしよう。
「匙・・・あなたはどうしてこんな事に首を突っ込んでいるのかしら?」
「ひ、ひぃぃぃぃぃ!!?
イ、 イッセー!!
こ、こういう時、真の男はどうすれば!?」
縋る様に兵藤君の方を見るが、彼もすでにリアスの前で塔城さんと正座させられている。
それを見て絶望の表情に変わる匙。
「聞いているのですか?
あなたはいったいどれだけ事をしたのか。
・・・匙・・・お尻を出しなさい。」
「へっ??」
「早く!!」
この子は事の重大さがわかっていません。
一歩間違えれば戦争になっていたかもしれないというのに。
私は手に魔力を込めてそれを匙のお尻に思いっきり振り下ろした。
バチーーンッ!!
うん、思っていたよりいい音です。
「あうぅぅぅ!!
会長ぉぉぉぉ、や、やめて、そ、それ洒落になりませんって!!」
「ええ、洒落になりません。
それだけの事をあなたは・・・あと一万回です!!」
そう言って再び手を振り下ろす。
・・・私は失念していました。
ここが誰もが通る公園だという事を。
人払いの結界を使わなかった事を。
・・・使わなかったとしてもあの人には効果が無かったと思いますが。
私は誰かが公園に入って来た事に気付けなかった。
再三振り下ろしていた手をもう一度振り下ろそうとした時、後ろから声を掛けられました。
「ソ、ソーナさん?」
その声を聴いて今度は私が動きを止めました。
Side 昴
木場君と遭遇して数日後、今日は白音さんが訪ねてきました。
何やら深刻なご様子。
話を聞こうとしたら、妹大好き黒歌さんが白音さんに抱き着こうと飛びつきました。
それをひらりと躱す白音さん。
避けられた黒歌さんは壁に激突。
白音に避けられたと言って拗ねて、アンナさんに慰められていました。
・・・最近では恒例の光景ですね。
今日はエリカさんに御用のようだ。
珍しい、仲が良くない訳ではないが、頻繁に話すほどじゃない。
会えばエリカさんから世間話をする程度だ・・・白音さんからは初めてじゃないか?
「あら、私に用なの・・・いったい何かしら?」
「・・・祐斗先輩と話してくれませんか。」
彼の名前が出た瞬間、一瞬だがエリカさんが顔を顰めた。
それに気づかず白音さんは話を続ける。
今木場君は復讐に取りつかれている。
理由は彼の過去にある。
彼は生前聖剣エクスカリバーの所有者を作る研究対象にされていた。
多くの子供達がその計画に参加していた。
しかしその計画は成功せず、その子供達は処分された・・・不良品だと言われて。
命かながら逃げだした彼は死にそうな所をグレモリーさんに助けられ悪魔になった。
・・・たった一人の生き残りとして。
今この街に聖剣を持った教会の人が来ている。
その事によって復讐心が目を覚ました。
今のままでは木場君がグレモリーさんの所を離れてしまうかもしれない。
私達の話には聞く耳を持ってくれないから、前回師として接していたエリカさんに頼みに来たらしい。
「お願いします。」
「・・・この間私も彼に会ったわ。
でも、話をしようとしたら一方的に断られたわ。」
「っ!!」
もうすでに会っていた事と、ダメだった事の落胆を隠せない白音さん。
そんな彼女にエリカさんは優しく頭を撫でる。
「でも・・もう一度会ってみましょう。
こんな所で彼の才能を無くすのは惜しいしね。
それに・・・可愛い妹の頼みですもの。」
優しい言葉に思わずエリカさんに抱き着く白音さん。
僕は微笑ましく見ていたが後ろで黒歌さんが、
「白音の姉は私だけだにゃーーーー。」
と引き剥がそうとした。
アンナさんと彼女を止めながら僕も白音さんに声を掛ける。
「僕も手伝いますよ。」
「・・・ぐすっ・・・・・ありがとうございます、昴お兄様、エリカ・・お姉様。」
僕は以前から兄と呼ばれていたが、初めて呼ばれたエリカさんはとても嬉しそうだった。
・・・それを聞いた黒歌さんがまた暴れたが。
その後白音さんは兵藤君に呼ばれ出て行った。
恐らく兵藤君も木場君の事を心配して行動に移したのだろう。
僕達も僕達で動く事にした。
今エリカさんと二人で捜索中だ。
「昴の権能で探せないの?」
「はい・・・今この街変な氣で溢れていて個人を特定するのはちょっと・・・。」
「変な氣?」
「はい、僕にも何かわかりません・・・でも良くない物です。」
「ちょっと気になるわね・・・木場祐斗の事も気になるけどそっちも調べてみましょう。」
「そうですね・・・・・っ!!」
その時街の反対側で魔力の反応があった、しかも戦闘中だ。
さすがにここまで大きな魔力だと誰が使っているのかわかる。
兵藤君と白音さん、そして木場君だ。
あと数人知らない魔力があるが、恐らく今回の関係者だろう。
すぐさまエリカさんと駆け出した。
向かっている途中で戦闘は終わったみたいだが一応そこに向かっている。
そこは公園だった。
その入り口に足を踏み入れた時、
バチーーーン
と大きな音が響いた。
戦闘している様子ではないしいったい何の音だろう?
疑問に思いながら進んでいくと、見知った人達がいた。
正座をしている兵藤君と白音さん。
その前に仁王立ちしているグレモリーさん、その後ろに控えている姫島さん。
そして・・・。
「ソ、ソーナさん?」
以前会った生徒会の男の子のお尻を叩こうとしていたソーナさんだった。
・・・あれはこの音だったんだ。
僕が声を掛けた瞬間ソーナさんの動きが止まった。
壊れた人形のように振り向くソーナさん。
そして僕を見た瞬間顔を真っ赤にして慌てだした。
「す、す、す、昴さん!!
ど、ど、どうしてここに・・・あっ、えっ、い、いや、これは、その・・・。」
生徒会の子を放り出して手を振るソーナさん。
まぁ、こんなところ普通は見られたくないよな。
「・・・何も見ていませんよ。」
気を使ってそう言うと、真っ赤な顔がさらに赤くなって、
「・・・・・・・・・し、失礼します!!」
そう言って魔方陣を展開し転移してしまった。
それに驚いたソーナさんの後ろに控えていた生徒会の子も、
「ソ、ソーナ様!!」
突然の事に驚いてお尻を叩かれていた子と共に転移してしまった。
残された僕はエリカさんに呟く
「・・・悪い事をしてしまいました。」
「そうね・・・タイミングが悪かったわね。
後で私がフォローしておくわ。」
「・・・よろしくお願いします。」
落ち込む僕の所にグレモリーさんが近寄ってきた。
「久しぶりね昴さん、エリカさん。
今日はどうしてここに?」
「あ、はい、小猫さんに頼まれて木場君を探していたんです。」
「・・・小猫に?」
あ、あれ、まずい事を言ったかな?
グレモリーさんが怒りの視線を白音さんに向けているぞ。
気まずそうな白音さん。
「小猫・・・あなた神藤さん達まで巻き込んだの。」
「ご、ごめんなさい。」
すぐさま頭を下げる白音さん。
現在正座中の為土下座の姿勢になっている。
グレモリーさんは深く息をつくと白音さんから視線を外し僕に向き直る。
「ごめんなさいね、また私達の事に巻き込んでしまって。」
「いいえ、僕達も木場君に偶然会ったとき様子がおかしかったから心配していたんです。」
「あら、そうなの?
神藤さん達にまで心配かけるなんて、後でお仕置きが必要ね。」
グレモリーさんの笑顔が怖いです。
後ろで兵藤君達が震えていますよ。
すぐに普通の笑顔に戻ったグレモリーさん。
「またあなた達に迷惑かける訳にはいかないから、後は私達がするわ。
それに私の可愛い下僕の事だから・・・私が彼を救ってあげたいの。」
とても真剣な表情。
それだけ自分の眷属の事を大切に思っているのだろう。
「・・・わかりました。
でも、何かあれば言ってください、僕達でよければ幾らでも力になりますから。」
「ええ、ありがとう。」
そう言って公園を後にした。
僕も彼の力になれる事があればいいな。