漸く4巻部分が完成いたしました。
今日より毎日更新が続きます。
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第18話 総督
Side 昴
コカビエル襲撃から数日後セラフォルーさんから連絡が入った。
急遽ソーナさん達が通う駒王学園で悪魔・天使・堕天使による三大勢力会談が行われ、それに参加して欲しいと要請が来た。
話し合われる内容は今回のコカビエル襲撃について。
その為コカビエルを倒した本人である僕に参加要請が来たのだ。
そしてその場で黒歌さんの正式な処分を言い渡すとの事。
これについては僕が断れない様にする為だろう。
さらに僕について説明して欲しいと魔王「サーゼクス・ルシファー」からの要請もあった。
人でありながら堕天使の幹部を倒した僕に興味を持った様だ。
内心では僕達の事を危険視しているのかもしれない。
だが黒歌さんの事がある為不参加はあり得ない。
セラフォルーさんは私が何とかすると言ってくれたが断った。
今回の事でどの陣営にも僕達の事が知れ渡ってしまった。
それならば厄介事が増える前にこちらから歩み寄る方がいいと僕は考えた。
この辺りは後でエリカさん達と相談しなくちゃいけないけどね。
それからまた数日が経った。
その間にソーナさんが改めてお礼に来たり・・・。
セラフォルーさんが三大勢力会談の準備が忙しいと愚痴りに来たり・・・。
アルジェントさんがミッテルトさんを訪ねて遊びに来たり・・・。
白音さんと木場君が黒歌さんとエリカさんに稽古をつけて欲しいと頼みに来たり・・・。
木場君は以前の事を土下座してエリカさんに謝っていた。
エリカさんも真摯に謝る木場君を許し、再び彼に稽古を付けて上げていた。
・・・あの時よりも厳しく。
そんな日常を過ごし、三大勢力会談の日程が近づいて来ていたある日。
ピンポーン!!
仕事も一段落していて全員で寛いでいた時、来客を知らせるチャイムが鳴った。
「うちが出て来るッす。」
それにはミッテルトさんが出てくれた。
彼女はアルジェントさんとの仲が戻った事もあり、すごく明るくなった。
それに伴い一層稽古に励む様にもなった。
その為この所メキメキと実力が上がっている。
この調子なら近い内に彼女の腕を元に戻す事が出来るだろう。
ガタッ!!
突然玄関の方で大きな音がした。
ミッテルトさんは今ではもう優秀な家政婦だ・・・案外アンナさんはスパルタだった。
来客に失礼な事をするとは思えない。
部屋にいる全員が不思議に思っていると・・・。
「っ!!」
突然力を持つ者がこの家に侵入して来た事を感じた。
僕は急いで玄関へと向かう。
そこに居たのは浴衣を身に纏ったワイルドな男性。
そしてそれを床に座り込み、震えながら見つめるミッテルトさんの姿だった。
男性はこちらに気付いたが僕はそれを無視しミッテルトさんに近寄る。
そっと震える肩を触ると彼女は体を強張らせこちらに振り向く。
僕の顔を見ると安心した表情を浮かべ、その眼には涙を溜めていた。
「大丈夫ですから、もう下がっていいですよ。」
「・・・すみませんっす。」
彼女に手を貸し立ち上がらせると後ろに付いて来ていた馨さんに任せる。
そして彼女達か部屋に下がった事を確認して、僕は来客に向き直る。
「・・・堕天使の方が何の用ですか。」
この人の気配とミッテルトさんの様子から堕天使と判断する。
実力はコカビエル以上・・・という事は堕天使の中でも幹部クラスという事になる。
・・・ミッテルトさんが腰を抜かし怯えていた理由はこれだろう。
「ほう・・・一目で俺が堕天使だと気づいたか。」
「それも『神の子が見張る者(グリゴリ)』の中でも幹部クラスの実力者なあなたが・・・。」
「相手も力量も正確に把握できていると・・・。
コカビエルの野郎を倒したってのも嘘じゃなさそうだな・・・。」
来客は面白い物を見つけた子供みたいに目を輝かせる。
「おっと、自己紹介がまだだったな。
俺は『神の子が見張る者(グリゴリ)』の総督のアザゼルってもんだ。
コカビエルを倒したのが人間だっていうから、気になって気になって会談まで待てなかったから会いに来たぜ。」
とアザゼルと名乗った男はいい笑顔で名乗った。
アザゼルと言えば聖書にも出てくる大物だ。
実力を見ても堕天使のトップと言うのもあながち嘘ではないだろう。
「会いに来たというのは?」
「言葉通りの意味さ。
コカビエルの奴も実力は本物・・・それを倒したのが人間ときたもんだ。
そりゃあ、誰だって気になるぜ。
ちょっと話でもしないか?」
友好的で別に敵意がある訳じゃ無い。
敵意を隠している様子もない。
彼は興味深そうに僕を観察している。
彼の言葉に嘘は無かった・・・と言うよりも・・・。
・・・少し話をしてみてもいいかもしれない。
「・・・わかりました、どうぞ。」
そう言って入室を促す。
するとアザゼルはそれにひどく驚いた。
「えっ・・・いいの?」
「構いませんが・・・やめますか?」
「い、いやいや、邪魔するぜ。」
そう言って先程の戸惑いも何のその、遠慮なく家に上がって来た。
僕は皆さんが待機している部屋を通り過ぎ、客間へ案内する。
「それにしても面白い家だな、此処は・・・。
人間に堕天使・・・それと悪魔も居るみたいだな・・・。」
「・・・全員僕の家族ですから。」
「家族・・・ね。
あぁ、そうだ・・・一つ聞いてもいいか?」
「・・・何でしょう。」
アザゼルのそれまでの笑顔はなりを潜め、真剣な表情へと変わる。
こう言う所を魅せ付けられると、彼が堕天使のトップだと認識させられる。
「あの堕天使は以前この地で好き勝手振舞っていた一人だろ??
しかも彼女達はサーゼクスの妹に全て処分されたと報告が上がっている。
・・・それがどうして此処に居る。」
「・・・・・あなたに関係あるのですか?」
「仮にも堕天使のトップなんだ。
堕天使の事は把握しておく義務がある。」
「・・・わかりました。」
僕はミッテルトさんの事を掻い摘んで教えた。
その話をアザゼルはじっと聞いていた。
「・・・現在この家の手伝いをしているという事です。」
「・・・なるほどな。
あんたはあいつの話を信じたってのか。」
「えぇ、彼女の言葉に嘘は見られませんでしたから。」
「・・・根拠は。」
「僕は仕事柄、人と関わる事が多いですから。
・・・人を見る目に自信があります。」
彼は僕をじっと見つめながら、ぽつりと呟く。
「・・・ただのお人好しか?
いや・・・それでも堕天使を迎え入れるリスクが高すぎる。
絶対の自信があったって事か・・・。」
アザゼルは視線を鋭くさせながら僕に問い掛ける。
「お前は神器所有者か?」
「いいえ、違います。」
「なら嘘を見抜くお前特有の力があるってのか!!」
「そんな大げさな物ではありませんよ。」
声を荒げるアザゼルと、それを意にも掛けない僕。
暫く二人の睨み合いが続く(僕はただ見つめているだけ)。
先に視線を逸らしたのはアザゼルだった。
「俺のプレッシャーに平気な顔して逆に睨み返して来るなんてな・・・。
・・・お前本当に何者だよ。」
・・・僕は睨んでいたつもりはありません。
「お前はあの堕天使に何をした?」
「・・・どういう事でしょう。」
「報告ではこの地で暴れていた堕天使は全員が下級堕天使だったはずだ。
だがあいつはもうすぐ上級クラスに届きそうだったぞ。
それも片腕片翼を無くした状態でだ・・・普通だったらあり得ない。
だから聞いているんだ・・・お前何をしたんだ。」
「少し鍛えてあげただけですよ。」
僕がそう言うと、アザゼルは頭を抱え込んでしまった。
「あれが少しってレベルかよ。
・・・こいつホントに人間か。」
アザゼルは暫くそのままの状態で考え込んでいた。
そして顔を上げると僕に頼んできた。
「あいつと少し話をさせてくれないか?」
「・・・話・・ですか?」
「あぁ、はぐれとなったあいつを処分するなんて考えてねぇ。
ちょっと相談したい事があるんだ。」
彼の言っている事は嘘ではない。
何か企んでいる事は間違いないが、ミッテルトさんにとって害のある事では無いだろう。
「・・・彼女の意思次第でよければ。」
「あぁ、それで構わない。」
僕はミッテルトさんに話をしようと立ち上がろうとした時だった。
「こんにちは~~。」
と大きな声が玄関から聞こえた。
・・・まさか、このタイミングで来るとは。
思わず僕が頭を抱えそうになってしまった。
「・・・ら、来客が来たみたいですね。
す、少し失礼します。」
断りを入れて急いで向かう。
玄関では出迎えに出ていた馨さんと来客・・・セラフォルーさんが話していた。
「遊びに来たよ!!」
「いらっしゃい・・・と言いたい所だけど・・・。」
「??どうかしたの??」
「・・・今ちょっと厄介なお客さんが来ていてね。」
「ん??・・・あっ!!」
セラフォルーさん気付いちゃったかな。
馨さんを押しのけ部屋から出てきた僕に詰め寄ってくる。
「どうして此処にアザゼルちゃんがいるのかな??」
・・・やっぱり気付いちゃったか。
と言うより気配だけで気付いたって事は顔見知りなのかな??
「先程突然やって来たんですよ。」
「ふ~~ん・・・。
アザゼルちゃんの事だから昴さんの事が気になったからとかそう言う理由じゃない??」
「・・・その通りです。」
「もう!!会談まで接触しちゃダメだって言ったのに!!」
そしてセラフォルーさんはとてもいい笑顔で僕に告げる。
「わかった。
私に任せておいて!!」
「えっ・・・あ・・ちょっと!!」
セラフォルーさんはそう言うと、ずんずんアザゼルの居る部屋へ歩いて行き・・・。
「ちょっとアザゼルちゃん、こんな所で何してるの!!」
と扉を開け放ち大声で叫ぶのだった。
僕と馨さんも慌てて後を追う。
部屋を覗き込むとすごい勢いで問い詰めるセラフォルーさんと言い合うアザゼルの姿があった。
「やっぱりお前だったのか。
お前こそどうして此処に居るんだよ!!」
「私は昴さんとは契約してるからいいんだよ!!
アザゼルちゃんこそ会談前に昴さんに接触しちゃダメだって言ったじゃない!!」
「仕方ねぇだろ!!気になっちまったんだからっ!!」
叫びあう2人。
その様子に唖然としてしまった。
我に返り慌てて2人に声を掛ける。
「2人共、落ち着いてください。」
僕の存在にようやく気付いた二人だったが・・・。
「待っててね、今すぐ追い出すから!!」
「おい、こいつを何とかしてくれ!!
お前の契約者なんだろ!!」
とさらに騒ぎは大きくなってしまった。
・・・仕方がないか。
僕は1つ溜息を吐いて少しばかり氣を開放する。
その瞬間、二人の動きが止まる。
恐る恐る僕の方を振り向く二人の顔は汗を掻いていた。
「落ち着きましたか?」
「う、うん、ごめんなさい、昴さん。」
「さ、騒がしくして悪かったな。」
落ち着きを取り戻した二人はこそこそと話し始める。
「お、おい、何だよ、あれ・・・。」
「す、すごいでしょ??」
「凄いなんてもんじゃ無いだろう!!
あいつ本当に人間か!!」
「あ、あはははは・・・・・。」
聞こえてますよ・・・特にアザゼル。
まぁ、そう思うのも無理ないと思うので触れなかった。
「今お茶でも持ってきますから、二人は大人しく待っていてください。」
「「わ、わかった(よ)。」」
「馨さんは二人を見張っていてもらえますか。」
「了解した。」
僕はその場を馨さんに任せ、部屋を出る。
全員が集まっている部屋に戻ると、まずエリカさんが訪ねてきた。
「・・・大変そうね。」
「まったくですよ。
セラフォルーさんもタイミングが悪すぎます。」
「堕天使の方はどうなの?
ミッテルトから堕天使の総督だと聞いたけど・・・。」
「特に害はないですね。
本人もただ話をしに来たと言っていましたし、その言葉に嘘は見られませんでした。」
「まぁ、昴なら後れを取る事は無いでしょうしね。
でも何かあるといけないから、この後は私も同席するわ。」
「お願いします。」
エリカさんとの会話を終え、僕はミッテルトさんに向き直る。
彼女は体の震えは止まっているが顔色は優れない。
今もアンナさんが寄り添っている。
こんな状態の彼女には少々厳しいか・・・。
そう思いながらも先程のアザゼルの要望をミッテルトさんに伝える。
「アンナさん、人数分のお茶の用意をお願いします。
少し長くなりそうなので・・・。
それと・・・ミッテルトさん。」
僕の呼びかけにびくっと震えるミッテルトさん。
そんな彼女を心配そうに見つめながらもアンナさんはお茶を用意しにキッチンに向かった。
「アザゼルがあなたと話がしたいそうです。」
「う、うちとですか?」
僕の言葉にさらに表情が強張る。
「何か企んでいる様に見えましたが、あなたに危害を加える事は無いでしょう。
もし何かしてきたとしても、僕が必ず守ります。
会うか会わないか・・・どうしますか?」
しばらく考え込んでいたが、顔色を青くしながらも首を縦に振った。
「あ、会うっす。
うちははぐれになったけど・・・堕天使っす。
・・・堕天使の総督には逆らえないっす。」
「・・・わかりました。
でも、これだけは覚えておいてください。」
僕はミッテルトさんの手を取り告げる。
「例え何があっても・・・もうミッテルトさんは僕達の家族です。」
その言葉に彼女の顔のこわばりが少し取れた気がした。
最後に優しく頭を撫でてあげると僕はエリカさんとミッテルトさん、そしてお茶を持ったアンナさんを連れて再びアザゼル達がいる部屋へと戻った。
Side 馨
昴君が部屋を出た後の事。
「ホントにあいつ何者だよ。
あの魔力・・・俺達に匹敵するじゃねぇか。」
「凄いでしょ!!」
「・・・なんでお前が威張ってんだよ。」
そう言って呆れる堕天使の姿があった。
確かにかなりの実力者だ・・・あのコカビエルよりも上だろう。
僕は二人の会話に口を挿む事無く見張りを続ける。
「もしかしてそこに居る嬢ちゃんも、あいつ並みに強いなんて言わないよな。」
そんな時僕に話を振られた。
「いえ、僕に彼程の実力はありませんよ。」
「でもでも、馨ちゃんも強いよね!!
上級悪魔位は簡単に倒せるくらい!!」
「はぁ??」
セラフォルーさん、余計な事を・・・。
彼の視線が僕に突き刺さる。
「おいおい・・・ここは化物の巣窟かよ。」
「・・・あっ。」
遅いよ、セラフォルーさん。
何ともいえない空気になった所で昴君達が入って来た。
Side 昴
部屋に戻ると、やってしまったという顔をしているセラフォルーさんと、僕をじっと見つめてくるアザゼル、そしてすまなそうな馨さんがいた。
「・・・お待たせしました。」
不思議に思いながら部屋に入るとエリカさん達も続き、彼女達は僕の後ろに、アンナさんだけがお茶を用意して退室した。
ミッテルトさんは部屋に入った瞬間からまた顔色が悪くなった。
以前所属していたトップが目の前にいるのだから仕方ない。
「ほう・・・お前も来てくれたのか。」
僕に向けられていた視線をミッテルトさんに向ける。
それだけで彼女は体を震えさせるが、失礼の無い様何とか頭だけは下げた。
「ミッテルトちゃんも来たの??」
「あぁ、俺が頼んだんだ。」
「・・・今更彼女に何の用なの。」
「それをこれから話すんだよ。」
セラフォルーさんと話している間も視線をミッテルトさんから放さない。
その視線は彼女をじっくり観察している様だ。
・・・何となくアザゼルの考えている事が分かった。
「・・・ミッテルト・・だったか??」
「・・・はいっす。」
「お前の事はそいつから聞いたよ。
なんつうか・・・災難だったな。
本当だったら俺達上層部の方で調べてから対処する所を、悪魔の所有地だった事で全部悪魔側に任せちまった。
お前はちょっと運が無かったな。」
「・・・・・。」
ミッテルトさんはアザゼルに声を掛けられても何も話さない。
と言うよりどう返せばいいのか分からないといった様子だ。
そんな彼女の様子からアザゼルは早速本題に入った。
「・・・ミッテルト、お前『神の子が見張る者(グレゴリ)』に戻って来るつもりはないか??」
「えっ??」
心底驚いたのか彼女の目が見開かれた。
ミッテルトさんが何か言う前にアザゼルに噛み付いたのはセラフォルーさんだった。
「今更何言っちゃってんの、アザゼルちゃん!!」
「・・・お前だってわかってんだろ!!
俺達は先の大戦で絶対的に人手不足なんだ!!
こいつは罪を犯したって言ってもほとんど関わって無かった。
腕と翼を片方ずつ無くしているのは痛いが、それでもこの実力なら『神の子が見張る者(グリゴリ)』でもかなりの戦力になるし、いい地位も得られる。」
「確かに人手不足なのはわかるけど・・・。
でも、一度見捨てたミッテルトちゃんを今更・・・。」
「つうか、お前は関係ねぇだろうが!!」
「そ、そんな事ないよ!!
彼女がこの昴さんの家族って事は私の家族も当然なんだから!!」
「どういう意味だよ!!」
アザゼルさんの突っ込みには僕も同意しますが、今は聞かなかった事にしましょうか。
「2人共、落ち着いてください。
セラフォルーさん、ミッテルトさんの事をそこまで考えてくれるのは嬉しいですが、これは彼女が決める事ですから・・・。」
「・・・うん、わかったよ。」
優しく諌めると彼女も納得してくれた。
次に僕はミッテルトさんに振り返る。
「と言う話ですが、どうしますか。」
「・・・・・。」
彼女は何も話さないが、その瞳は動揺に染まっていた。
僕はミッテルトさんの隣に寄り添うエリカさんに視線を向ける。
一度ミッテルトさんの様子を見るとエリカさんは首を横に振った。
・・・やはり今回は無理そうか。
これ以上は無理をさせてはいけないと判断し僕の方から断ろうとした時ミッテルトさんが声を発した。
「ア、アザゼル様・・・せ、せっかくのお話ですが断らせてもらうっす。」
「・・・理由を聞いても??」
「こ、こんなどうしようもない、う、うちを昴さんは助けてくれたっす。」
たどたどしくも自分の心の内を話し始めるミッテルトさん。
それを全員が黙って聞く。
「迷惑にしかならないうちをこの家に置いてくれたっす。
こんなうちに良くしてくれたっす。
こんなうちの事を家族だって言ってくれたっす。
うちは・・・うちは昴さんに・・この家に人全員に救われたっす。」
ミッテルトさんの瞳にはもう動揺は見られない。
その視線は真っ直ぐアザゼルを見ている。
「すごくいい話ですが・・・うちはこの人達に恩返しがしたいっす。
それに何より・・・うちはこの人達と一緒に居たいっす。
この人達の家族でいたいっす。
だから・・・。」
「あぁ、もういい、わかったよ。
変な事言って悪かったな。」
ミッテルトさんの言葉を継中で遮るアザゼル。
その表情はとても残念そうだ。
ミッテルトさんは僕達にとってとても嬉しい事を言ってくれた。
家族でいたい・・・僕達と居たい。
・・・そう思ってくれていたのか。
エリカさんと馨さんも嬉しかったのか、ミッテルトさんを抱きしめている。
・・・少し苦しそうだが。
セラフォルーさんは何故か泣いている。
それを見たアザゼルが引いていた。
セラフォルーさんもミッテルトさんと仲良くしていたからなぁ・・・一方的に絡んでいる様にしか見えなかったが。
それはそうと・・・この男・・アザゼルは信頼のおける人物だ。
組織のトップとしての力量があり、部下の事を思い遣る事も出来る。
最初に見た時からある程度そう感じていたが、大当たりだな。
こういった男がトップにいる組織は大抵成功する。
もちろんコカビエルの様に批判する者も出て来るだろうが、そんなの何処の組織も同じだ。
・・・少し予定が早まるけどいいか。
「アザゼルさん、この後のご予定は??」
「・・・何だいきなり。」
僕の突然の質問に訝しげに顔を顰めるアザゼル。
僕はそんな事は気にしない。
セラフォルーさんもきょとんとした表情で僕を見つめる。
「どうなんですか??」
「いや・・特に予定はないが・・・。」
「それは良かった。
もし良かったら、もう少し話しませんか??」
これにはさすがに警戒を露わにされた。
「どういう風の吹き回しだ??」
「いえ、大した理由はありませんよ。
ただ、僕もあなたに興味を持った・・・それだけです。」
僕の様子にセラフォルーさんは何かに気付いたみたいだ。
突然立ち上がり大声で僕に問いかける。
「まさか、昴さん!!」
そんなセラフォルーさんに笑顔を返す。
その笑顔を見た瞬間エリカさん達はもう手遅れだと悟った様だった。