Side 昴
光が収まり玄関の先には僕の家の目とは全く違う風景が広がっていた。
どこかの林の中みたいだ。
「成功したみたいね。」
「そうみたいだね。
とは言ってもあまり僕達の世界と変わっていないみたいだけど・・・。」
まだ詳しい事は調べてみないとわからないけど、現状特に変わった所は見当たらない。
「ここはどんな世界なんでしょうか?」
「わからないわね。
それにいつまでも此処にいてもしょうがないわね。
辺りを調べてみましょう。」
エリカさんの言葉に同意して僕達は歩き出した。
僕が開けた扉はそのままにしている。
この扉は僕が許可した人にしかわからない様になっている。
長い間神殺しとして生きてきた経験でわかる。
暫く歩いていても特に何もなく、魔法を使って辺りを調べてみようかという話になった頃、近くで魔力の行使されたのを感じた。
「どこかで魔法が使われていますね。」
「という事はこの世界にも魔法があるってことね。」
「そう言う事だね。
場所も近いし行ってみよう。」
この世界でどういった使われ方をしているかわからないので、なるべく早く確認した方がいいと判断して、僕達は急いで移動を開始した。
Side 黒歌
「とうとう追いつめたぞ、SS級はぐれ悪魔黒歌。」
私は黒歌、とある理由ではぐれ悪魔になってしまった。
いつもなら簡単に逃げられるはずなのに、相手側に罠にかかってしまい私を追って来ていた悪魔達に囲まれてしまっている。
くっ!!!
もう一度白音に会うまで死ぬわけにはいかない。
今は一緒にいないけど、いつか必ずまた一緒に暮らすんだ。
そう思い力の入らない体に鞭打って悪魔達から逃げようとする。
立ち上がろうとした時、体に衝撃が走り吹き飛ばされてしまった。
「うっ・・・はぁはぁ・・・。」
「逃がすと思ったか?
お前はここで終わりなんだよ。」
とうとう力が入らなくなってしまった。
・・・ごめんね白音。
本当に駄目なお姉ちゃんで・・ごめんね・。
「これで終わりだ。」
そんな声が聞こえる。
ここまでなんだと思い目を閉じる。
「ぐぁっ!!!!」
しかし止めの一撃が来るのではなく、聞こえてきたのは悪魔の呻き声。
どういう事か目を開けて確認してみると、そこに居たのは私を庇って立っている一人の男の姿だった。
Side 昴
魔力を頼りに移動していると、そこには着崩した着物を纏っている女性が傷ついて倒れていた。
その周りには5人ほどの背中から羽を生やした奇妙な男達がその女性を囲んでいる。
「これで終わりだ。」
その言葉と共に、その中の男の一人が手に魔力を集めているのが確認できた。
それを確認したその時には体が動いていた。
足に氣を纏わせ一気に加速。
男の手を蹴り上げそのまま女性の前に庇うように立つ。
「き、貴様何者だ。」
男の一人が吠える。
「あなた達こそなんなんですか。
こんな綺麗な女性に寄って集って攻撃するなんて。」
「たかが人間には関係のない事だ。
邪魔をするならお前も死ね。」
そう言うと蹴られた男も含めた全員が攻撃態勢に入った。
碌に話も聞いてもらえない。
仕方ないから少し黙ってもらおう。
僕は後ろについて来ていたエリカさん達の方に顔も向けずに声を掛ける。
「彼らを少し黙らせます。
彼女の事をお願いします。」
「わかったわ。」
僕は返事を聞く前に動き出していた。
男達の内3人が攻撃魔法を放とうとしていたし、2人は剣を手に持ちこっちに向かって切り込んできている。
まずは魔法がエリカさん達の方を狙ってない事を確認。
僕を狙ってきているのですぐに切りかかって来ている方に意識を向ける。
この程度なら氣を使う必要はないな。
僕はそう判断して、切りかかってくるのを待つ。
「バカめ、死ねぇ!!!!」
何て言いながら剣を振り下ろす。
大したスピードでは無いので余裕を持って躱し、カウンター気味に2人の顎を打ち抜く。
切りかかってきた2人はその場で意識を失って倒れた。
「なっ!!!!
くそっ、よくも!!!!」
倒れた仲間を見て魔法の準備をしていた3人が魔法を放ってきた。
避けるとエリカさん達に当たってしまうので、拳に氣を纏わせて全て撃ち落とした。
うまく撃ち落とす事はできたけど、少し氣の量を間違えて爆発させてしまった。
「はっ!!人間ごときが我等に逆らうから!!」
何て声が聞こえた気がした。
相手を確認せずに気を緩めるなんてなってないな。
僕は爆発時に出た煙から飛び出し、一瞬の内に残った3人に接近する。
3人とも笑っていたけど、気にせず素早く脳を揺らし意識を刈り取った。
その場にいた5人全員倒した事を確認してエリカさん達の方を振り向く。
するとそこには驚いた表情でエリカさんの手の中を見ている2人の姿があった。
でもそこに襲われていた女性の姿がない。
僕は不思議に思って近寄る。
「二人ともどうしたんですか?
それにあの女性の人は?」
「そ、それが・・・。」
今戦闘が終わった事に気付いたのか二人がこちらを振り向く。
こちらを向いたエリカさんの手の中には、傷ついた黒猫が抱きかかえられていた。
「??その黒猫はいったい??」
「・・・私達も信じられないのだけれど、あの女の子が気を失ったかと思ったら突然この黒猫に姿が変わったのよ・・・。」
「・・・はい?」
そう言われて改めてじっくり件の黒猫を見てみる。
確かにさっきの女性と同じ氣だ。
それじゃあやっぱり・・・。
「と、とりあえず怪我もしているみたいですし、調査はここまでにして一旦帰りましょうか。」
「そ、そうね、それがいいわ。」
「後ろに倒れている人達はどうする?」
「死んでいるわけではないですし、そのうち目を覚ましますよ。」
僕達は男達を放って家に帰るため林の中を歩き始めるのだった。