Side 黒歌
昨日突然やって来たセラフォルーのおかげで白音の授業風景を見に行ける様になった。
その為今日は朝からテンションが高い。
今昴と一緒に白音の居る学校に向かっている。
いつもの服装では行ったらダメだとエリカさん達に言われたから今日はちゃんと着物を着た。
・・・少し苦しいが白音の為に我慢。
暫く歩くと駒王学園が見えてきた。
ここにはコカビエルから白音を守る為に来た事がある。
あの時は必死だったから回りを見る余裕が無かったけど、改めて見ると大きい。
学校かぁ・・・実は通ってみたかったりする・・・昴達には内緒だけどね。
ここで今回私を監視する人が待っていると昴が言っていた。
私はまだはぐれ悪魔という事になっている。
今回は特例として監視付きで参加させて貰えるのだ。
白音の授業参観に行く為だからこれ位は我慢する。
校門を潜ると私の監視役が誰かすぐにわかった。
私の着物より目立つメイド服を言う格好で私達を待つ人物・・・魔王サーゼクス・ルシファーの女王にして悪魔界最強の女王とも言われているグレイフィア・ルキフグス・・・その人が待っていた。
彼女も私達に気付いたみたいで此方に歩み寄って来る。
「あなた方が神藤 昴様・・・そしてはぐれ悪魔の黒歌ですね。」
「あなたが今回黒歌さんを監視する・・・。」
「私はグレモリー家にメイドとして仕えているグレイフィアと申します。
この度サーゼクス様の指示ではぐれ悪魔黒歌の監視を仰せつかりました。」
丁寧にお辞儀をしてくるグレイフィア。
その圧倒的な存在感に気押されていると隣で昴が普段通りに挨拶をしていた。
「神藤 昴です。
今日は黒歌さんの事よろしくお願いします。」
「よ、よろしくお願いします。」
私も慌てて頭を下げる。
それと同時にいつも通りの昴に安心する。
やっぱり昴はすごいにゃ!!
私が頭を上げるとグレイフィアは昴さんの方を見ながら口を開く。
「神藤様にはセラフォルー様からの要望もあり監視が付きません。
しかし・・・リアス様を始め誰かに何かあれば・・・。」
その言葉と共に私達に凄まじい殺気が送られてくる。
・・・これが魔王に匹敵する実力者の殺気。
コカビエルとは比べ物にならない殺気に体の震えが止まらない。
私が震えているのが伝わったのか昴が私を庇う様に一歩前に出てくれた。
・・・御蔭で少し楽になった。
「ご心配なく・・・僕も黒歌さんも授業参観に来たんです、そんな事はしませんよ。」
グレイフィアの殺気を受けても平然としている昴に流石の彼女も驚いていた。
だが彼女もサーゼクス・ルシファーの女王・・・すぐに表情を元に戻す。
「申し訳ありませんでした。
もう授業が始まりますので、ご案内いたします。」
「わかりました・・・でも中に入る前に黒歌さん。」
未だ体の震えが止まらない私に昴が優しく語り掛けてくる。
「何かあればすぐに駆けつけますから安心してください。」
「わ、わかったにゃ。」
「後ははしゃぎ過ぎない事と言葉遣いにも気を付けてください。
・・・白音さんに嫌われてしまいますよ。」
「き、気を付けるにゃ。」
昴の声が私の不安を消していく・・・最後の注意もあったけど。
私が頷くと最後に頭を撫でてくれた。
とっても優しくて力強い手で・・・残っていた不安を拭い去ってくれた。
「お待たせしました。」
「いえ、それでは行きましょう。」
グレイフィアについて学校の中に入って行く。
昴とはすぐに別れた。
昴はソーナの所に、私は彼女と白音の所に・・・。
無言で歩き続ける彼女の後ろを付いてく。
もう授業は始まっているのか、廊下では授業をしている教師の声と私達の足音しか聞こえない。
少し歩くとグレイフィアが立ち止った。
「こちらが塔城 小猫さんの教室です。」
「あ、ありがとうございます。」
「先程神藤様も仰られていましたが、授業中はお静かに。
私は廊下の方で待たせてもらいますので・・・。」
そう言って彼女は扉の横に立つ。
恐らく私の隣にいると心休まらないと気を使ってくれたんだろう。
・・・実は優しい人なのかにゃ??
私は彼女を横目に教室に入る。
教室内では内容は分からないがグループ事に集まって話し合いが行われていた。
その所為か保護者の方に視線を向けている生徒も多くいた。
私が教室に入ると着物を着ていた事もあり注目を浴びてしまった。
「おい、後ろ見てみろよ。」
「うわっ!!あの着物の人すげー綺麗だな!!」
「若いよね・・・誰かのお姉さんかなぁ。」
少し騒がしくなった教室内。
白音も騒ぎの原因が気になったのか私の方を向いてくれた。
そして私に気付いた白音はその動きが止まった。
・・・驚かせる事に成功したにゃ!!
教師の注意で他の生徒達が授業に戻った頃に白音に向けて小さく手を振る。
固まっていた白音も顔を赤くして慌てて授業に戻った。
その後は何事もなく授業は進み、私は白音の姿を見守っていた。
授業が終わると保護者も生徒達も放課後のそれぞれの予定に向けて動き出した。
私も帰ろうとしたけど、白音に「待ってください」と口パクで言われて待つ事にした。
教室の中が私達を除いて数人になった頃、白音がこちらに歩み寄って来た。
「・・・どうしてお姉様がここに居るんですか。」
白音は目を細めて睨み付けてくる。
・・・ぞくぞくするにゃ。
まぁ、そんな態度を取ったら嫌われるからしないけど・・・。
彼女の質問に答えたのはいつの間にか私の隣に立っていたグレイフィアだった。
「サーゼクス様のご配慮で私の監視の下学園への立ち入りが許可されました。」
「グ、グレイフィア様。」
・・・驚いたにゃ。
突然横に立たないでほしいにゃ・・・。
それは白音も同じだった様で目を見開いて驚いていた。
そんな私達に関係なくグレイフィアが話す。
「それよりも場所を移しては如何でしょう。
ここではゆっくり話す事も出来ません。」
「・・・それもそうですね。
お姉様・・・部室に行きましょう。
まだ部長達にお姉様の事を紹介していませんでしたから。」
少し悩んだ白音が私を誘って来た。
何かグレイフィアの策略を感じるが、最愛の妹の誘いを断る事は出来ない。
「わかったわ。」
一瞬怪訝な顔をした白音だが、すぐに元の無表情に戻る。
私の返事を聞いてグレイフィアが先頭になって歩き出す。
その時満足げに口元を緩めていた事に私は気付かなかった。
校舎を出て古びた建物・・・旧校舎にやって来た。
ここにリアス・グレモリーが部長を務めるオカルト研究部の部室があるらしい。
此処まで歩いて来たが放課後とはいえメイド服と着物を着た人が歩いていて目立っていた。
その為白音と話している間、昴達に注意されていた言葉遣いに気を付けていた。
だがその言葉遣いは白音には違和感を覚えられたのか気持ち悪いと言われてしまった。
理由を説明したら部室まで話さないと言われてしまった。
・・・ショックだにゃ。
部室らしき部屋の前に到着した。
中から複数の悪魔の気配がする。
その内の1つに奴の気配があるのが分かった。
体が強張るのを感じるが今更引き返す事は出来ない。
覚悟を決めてグレイフィアが開けた扉から白音に続いて中に入った。
「あら小猫、遅かったじゃ・・・どうして黒歌が此処にいるのかしら??」
最初に声を掛けて来たのはソファに座るリアスだった。
白音の後に続けて入って来た私を見て怪訝な視線をこちらに向ける。
他の人は多種多様な態度で私に接してくる。
リアスの隣に立って警戒する女王の姫島 朱乃。
悩んでいる兵士で今代の赤龍帝の兵藤 一誠。
不思議そうに私を見つめる見た事の無い女子生徒。
よく昴の家に遊びに来るアーシアは笑顔で私に挨拶。
同じくエリカさんに稽古を付けて貰いに来る祐斗はお辞儀をしてきた。
そして魔王サーゼクス・ルシファーはリアスの隣で私を笑顔で見つめていた。
「・・・部長、遅くなりました。
それで・・・その・・・。」
「それはもういいわ。
それよりもどうして黒歌が此処にいるのかよ。
あなたの事は小猫からもお兄様からも聞いているわ。
でもまだ要監視だったはずよ。」
「それはついては私から説明しよう。」
リアスからの激しい追及に困っているとサーゼクスが割って入ってくれた。
全員の視線が彼に向けられる。
「彼女の来校については私が許可を出した。」
「どういう事ですか。」
「実は昨夜セラフォルーから相談を受けてね。
何とかして彼女を塔城さんの授業参観に行かせてあげられないかってね。」
「・・・それをお兄様が許可をしたという事ですか??」
「彼女のはぐれが解除されるのは条件付きであるけれど確定しているからね。
もちろん何かあっては困るから監視にグレイフィアを付けさせたよ。」
その監視役はいつの間にかサーゼクスの隣に立っている。
・・・全然気付かなかったにゃ。
「そんな大事な話どうして教えて下さらなかったのですか!!」
「何分急な話だったからね・・・リーアに伝える時間が無かったんだ、ごめんね。」
彼の反応にリアスも溜息を吐いてしまう。
相手は実の兄であれ魔王だ。
あんな笑顔で言われたら何も言えないだろうに・・・。
変な空気が流れている部室内で白音が口を開いた。
「・・・今日はお姉様を皆に紹介する為に連れてきました。
・・・私の実の姉の・・・黒歌お姉様です。」
白音の言葉で私に視線が集中する。
視線を一身に浴びながら私は一歩前に出る。
「白音・・・小猫の姉の黒歌だにゃ。」
「あぁーーーー。」
私の自己紹介に大声を出して反応したのは兵藤 一誠だった。
それには全員が驚いた。
「い、いったいどうしたの、イッセー。」
「あ、あの人は・・・あの時小猫ちゃんを助けてためちゃくちゃエロいお姉様!!」
「・・・はぁ。」
と、突然何を言い出すかと思ったら、ハレンチにゃ!!
今代の赤龍帝がこんな男だったなんて・・・ショックだにゃ。
付き合いの長いオカルト研究部のメンバーでさえ苦笑いをしている状態。
「・・・お姉様をそんな目で見ないで下さい。」
「えっ・・ち、ちょ・・待っ・・・・・ぐへぇ!!」
いつの間にか彼の隣に移動していた白音が思いっきり殴り飛ばしていた。
彼はそのまま壁にぶち当たって動かなくなってしまった。
・・・よくやったにゃ、白音!!
リアスも溜息を吐きながら私に謝って来た。
「ごめんなさい、私の眷属が・・・。」
「いいにゃ、白音の御蔭でスッキリしたにゃ!!」
満足そうに鼻を鳴らす白音。
殴られた彼は祐斗とアーシアが介抱していた。
アーシアは心配そうに、祐斗は苦笑いだったが・・・。
イッセーが目覚めた後改めて自己紹介をしてくれた。
その時好きに呼んでくれと言われたのでそうする事にした。
今は朱乃が入れてくれたお茶を飲みながら寛いでいる。
「そう言えば彼は今日参加していたのかい??」
そう口にしたのはサーゼクスさん。
そしてそれに反応したのは白音だった。
「・・・お姉様、もしかしてお兄様も来ているんですか??」
「そうにゃ・・・し、白音??
どうしたのにゃ・・・ちょっと怖いにゃ。」
隣で羊羹を食べていた白音が私の方に迫って来ていた。
その迫力はコカビエルを越えていた。
「お兄様??・・・って神藤 昴の事!?」
「今日の授業参観セラフォルーに頼まれて来ていた筈なのだが・・・。」
サーゼクスさんはグレイフィアさんに視線を向ける。
彼女は困惑気味に口を開く。
「神藤様は黒歌さんと共にいらっしゃいましたが・・・。」
「教室に彼の姿は無かった様に思えたが・・・。」
「・・・私も気付きませんでしたわ。」
あぁ、ここでも彼の異常性が出てしまった。
恐らくサーゼクスさんに見つかると面倒な事になると考えて気配を隠していたのだろう。
リアス達が頭を悩ませていると白音に上目使いでお願いされた。
「・・・お兄様に挨拶がしたいです。」
「今すぐ呼ぶにゃ!!」
私は妹の願いを叶える為すぐさま昴に電話を掛ける。
その電話はすぐに繋がった。
『もしもし。』
「もしもし、昴??
今白音に誘われてリアスの所でお茶してるにゃ!!」
『そうですか・・・もう少しゆっくりしていきますか??』
「そのつもりにゃ!!
でも・・・もし良かったら昴も来てくれないかにゃ??」
『どうかしたんですか??』
「実は白音が昴と話したいって言っているにゃ。」
『わかりました。
今からそちらに向かいますね。』
「昴!!ありがとにゃ!!」
手早く言いたい事を伝えて電話を切る。
昴が来てくれる事を白音に伝えようとしたらリアス達の視線が私に向いている事に気付いた。
「ど、どうかしたのかにゃ??」
何故こんなに注目を集めているか分からない。
困惑している私に、私より困惑しているサーゼクスさんが話し掛けてきた。
「・・・い、今の電話は神藤君だよね??」
「そうにゃ。
・・・それがどうかしたのかにゃ??」
「彼は今何処に??」
「・・・聞いてないにゃ。
でも今こっちに向かっているにゃ!!」
それに一番早く反応したのはやはり白音だった。
「本当ですか!!」
掴みかかる勢いの妹を宥めながら頷く。
それを余所にサーゼクスさん達は真剣な表情をしていた。
「・・・どういう事だ??」
「わかりません・・・ですが何らかの方法でサーゼクス様達の目を欺いたとしか・・・。」
「・・・彼は本当に何者なんだろうね。」
そう言った彼の表情には笑みが浮かんでいた。
Side 昴
生徒会室を出た後、ソーナさんの案内でグレモリーさんが部長を務めるオカルト研究部の部室に向かった。
向かった先には古びた建物が・・・今は使われていない旧校舎の一室を部室に使っているらしい。
確かにあの建物からは複数の悪魔の気配を感じられる。
・・・いや一つだけ別の部屋にいる。
・・・何かうまく気配が感じ取れないなぁ。
・・・封印されているのかな??
疑問に思いながらもそれを口に出す事は無くソーナさんの後に付いて行く。
「ここです。」
ソーナさんの立ち止まった扉にはオカルト研究部と書かれていた。
ソーナさんが扉をノックすると、中から「どうぞ」と返事があった。
「失礼します。」
そう言ってソーナさんは扉を開け中に入る。
僕もそれに続くが・・・。
「昴~~!!」
「っ!!ひやぁぁぁ!!」
僕の名前を叫びながら黒歌さんがソーナさんに飛び掛かった。
突然の事にソーナさんは対処できず2人揃って倒れてしまう。
黒歌さんも飛び付いた相手がソーナさんとは気付かず、その胸に顔を埋めている。
この出来事に僕を含めたほぼ全員が固まってしまった。
・・・ただ1人だらしない顔で2人を見つめていた男子生徒がいたが。
いち早く自分の状況に気付いたソーナさんは顔を赤くしながら黒歌さんを引き剥がそうとする。
「く、黒歌さん、離れてください!!
私は昴さんではありませ・・・ひゃっ!!胸に顔を埋めないで下さい!!」
「す~ば~る~。」
必死に剥がそうとするソーナさんに未だにソーナさんを僕と勘違いして離れない黒歌さん。
この部屋にいるほぼ全員が呆気に取られている中、白音さんはそれを無視する形で僕に近寄って来た。
・・・まぁ、彼女にとって姉の奇行は日常茶飯事となってきているから仕方ないか。
「・・・お久しぶりです、お兄様。」
「最近時間が合わなかったからね、久しぶり白音ちゃん。」
下から見上げてくる彼女に対して頭を撫でてあげる。
彼女は気持ち良さそうに目を細めている。
そんなほのぼのとした空気が僕達の周りだけ漂い出した頃に僕に助けを求める声が掛かった。
「ちょ・・昴さん、助け・・・。」
未だに黒歌さんに抱き着かれているソーナさん。
・・・さすがにこれ以上はソーナさんが可哀想だ。
他の人達も我に返ったのかこの状況に戸惑っている。
アルジェントさんと祐斗君は慣れているので苦笑しているが・・・。
「黒歌さん、黒歌さん・・・そろそろソーナさんを離してあげて下さい。」
「うにゃ~~・・・ん??」
僕の声に反応を示した黒歌さん。
やっと間違えている事に気付いたかな??
「・・・どうして後ろから昴の声が・・・あっ!!ソーナ、こんな所で何やってるにゃ??」
「あなたが昴さんと間違って飛び掛かって来たのでしょう!!
いいから早く退けて下さい!!」
間違いに気付いた黒歌さんが退けて漸く解放されたソーナさん。
ソーナさんへの謝罪も済ませ黒歌さんは次こそはと僕に飛び付こうとして・・・その動きを止めた。
何故ならば既に僕に抱き着いている人物がいたのだから。
彼女は黒歌さんが起き上った瞬間、僕に抱き着いてきた。
これから行われるやり取りはここ最近姉妹の間でよく交わされる会話だ。
「し、白音!?も、もし良かったら昴から離れてくれないかにゃ??」
「嫌です。
お姉様は家ではいつも一緒に居るじゃないですか。
私は会える機会があまり無いんですからこういう時は譲って下さい。」
「わ、私だって昴は仕事で家に居ないから会えない時があるにゃ。
それにエリカさん達だって居るからいつも抱き着けるって訳でも無いにゃ。」
「それでも私よりかは機会が多いじゃないですか!!」
「うぅ~~お姉ちゃんに譲ってくれてもいいじゃにゃい!!」
この会話はいつも僕を挿んで行われる。
2人共可愛いから役得だとは思っているんだけど・・・。
いつもならエリカさんか馨さんのどちらかが止めに入ってくれるんだけど今日は残念ながらいない。
困っていると救いの手が舞い降りた。
「2人共いい加減にしなさい!!エリカさん達に報告するわよ!!」
ソーナさんの言葉を聞くと2人はすぐさま口を噤む。
・・・さすがエリカさんと馨さん、効果覿面だ。
固まった2人にソーナさんが諭す様に言葉を掛ける。
「2人が昴さんを慕っている事は知っています。
でも・・・場所を考えなさい。」
「・・・はい。」「ごめんにゃ。」
ソーナさんは大人しくなった2人を見て満足したのかそのままサーゼクスさんの方に振り返った。
僕も彼の方に顔を向けると、笑顔で面白そうに此方を見つめる彼が居た。
そんな彼に向かってソーナさんが口を開く。
「騒がしくしてしまい申し訳ありませんでした。」
「気にする事は無い、とても面白い物が見えたしね。」
そこで言葉を着るサーゼクスさん。
そして次の瞬間笑顔の質が変わった・・・それはとても暖かく優しい笑顔だった。
「コカビエルの時はあまり話す時間が取れなかったからね・・・元気そうで何よりだよ。」
「サーゼクス様とグレイフィア様も御代わり無い様で・・・。」
ソーナさんも魔王に対する対応ながらもその表情には笑みが浮かんでいる。
グレモリーさんと幼馴染だから彼等とも付き合いがあったのだろう。
彼等のその笑顔はもう1人の妹と接しているかの様だった。
しかしそんな笑顔もすぐに鳴りを潜め、真剣な物へと切り替わる。
「何処で彼と??」
サーゼクスさんは僕に視線を向けながらソーナさんに尋ねる。
その質問に彼女は首を傾げる。
「??・・・教室で来ている事に気付いて、その後生徒会室で少し話をしていましたが・・・。」
あぁ、これはまずい。
もしかして僕に気付いていなかったか??
・・・確かに気配消してたもんなぁ。
神を相手にしていると生半可な気配断ちでは役に立たない。
この世界の人が気付かないのも無理はないのだが・・・。
・・・ソーナさんが気付いたのは気配を消すのを止めたからだ。
「・・・まぁいい、改めて名乗ろうか。
リアスがとても世話になったみたいだね。
私は元四大魔王の一人でありリアスの兄のサーゼクス・ルシファーだ。」
真剣な表情が笑顔に変わり自己紹介をして貰った。
名乗られたのならば僕も名乗らなくては失礼にあたるだろう。
「この度は黒歌さんの授業参観の出席を認めてくださりありがとうございました。
私も改めて自己紹介をさせて頂きます。
金融会社「ディスガイア」代表にしてソーナさんと契約を交わしている神藤 昴と申します。」
丁寧にお辞儀をする。
相手は魔王・・・一応それなりの対応はしておかないと。
だってグレイフィアさんからエリカさん達と同じ雰囲気が漂ってるんだよなぁ。
・・・正直怖いです。
「色々と聞きたい事はあるが・・・まず1つ確認させてくれ。
君はリアス達の教室に居たのかな??」
「はい、ソーナさんを始めグレモリーさんと姫島さんの授業風景をしっかり見させて貰いました。」
「僕もその場にいたんだが・・・君が居る事に気付かなかったよ。
・・・何かしたのかな??」
そう口にした彼からは僕を警戒している事が見て取れた。
それは後ろに控えているグレイフィアさんも同様だ。
「・・・正直に申しますと教室にいる間は気配を断っておりました。」
「それが本当だとしたら凄まじい事だ。
・・・そうした理由を聞いても??」
・・・これは答えなきゃまずいよなぁ。
言わなきゃ実力行使も持さないって顔に書いてある。
当たり前だ・・・魔王に気付かれない隠行。
敵として見れば恐ろしいなんて物じゃない。
気づかれない間に殺されていた・・・なんて事もあるかもしれないのだ。
セラフォルーさんと友好があると言っても彼等からはまだ信頼はされていない。
この警戒は然るべき物なのだ。
グレモリーさん達は空気ががらりと変わった事にまだついて行けていないみたいだ。
困惑気味にサーゼクスさんと僕を見つめている。
「・・・本当でしたら教室にいる間にお礼も含めてご挨拶しようと考えていました。
ですが・・・その・・・。」
「何か言い辛い事でも??」
彼は僕の態度に何か裏があると思ったのかすぐさま追求してくる。
グレイフィアさんなんて今にも襲い掛かって来そうな程の僕に殺気を向けている。
御蔭でこの部屋にいる人達が怯えてしまっている。
僕はこのままでは彼女達が持たないと判断し覚悟を決めて口を開いた。
「・・・気を悪くしないで下さいよ。
・・・・・カメラを用意して、しかも応援までしているあなたに声を掛ける勇気がありませんでした!!」
「・・・・・は??」
僕の言葉にこの場が凍った。
唖然としているサーゼクスさんとグレイフィアさん。
グレモリーさんとその眷属の子達も同様だ。
唯一違う反応をしているのは呆れているソーナさんと、笑いを堪えている黒歌さんの二人だった。
そんな中僕は言ってしまった事を後悔していた。
セラフォルーさん並みに親しかったら別だけど、ほぼ初対面のしかも魔王様相手に普通だったら言えないよ!!
もし機嫌を損ねたら襲われる可能性だってあるんだから!!
言わなくても襲われそうだったし他の人達が耐えられないと判断したから仕方なく言ったけど・・・やっぱり正直に言わない方が良かったかなぁ。
そんな事を思っているとグレイフィアさんから出ている殺気が膨れ上がった。
一瞬ダメだったかと思ったけど、でも殺気を向けている人物が違った。
彼もそれに気付いたみたいで顔色が悪くなっていた。
「リアス様・・・さっきの話は本当でしょか??」
恐ろしい雰囲気を醸し出しているグレイフィアさん。
彼女からの突然の問い掛けに、戸惑いながらもグレモリーさんは答えた。
「え、えぇ、本当よ。
確かに昴さんが行った通りの事をしていたわ。」
言っていて思い出したのか顔は少し赤く、最後は怒っている様だった。
グレモリーさんの言葉を聞いてグレイフィアさんは何事も無かったかの様に殺気を収めた。
殆どの人が安心している所に彼女は僕に顔を向ける。
「私達は用事を思い出しました。
できればもっと話を聞いてみたかったのですが仕方ありません。」
「い、いや、グレイフィア??何を言って・・・。」
「サーゼクス様は黙っていてください!!」
有無を言わせぬ迫力・・・サーゼクスさんご愁傷様です。
グレイフィアさんは自分の足元に魔方陣を展開しサーゼクスさんの襟元を掴む。
「それでは皆様、次は三大勢力会談でお会いしましょう。」
「ちょ、ちょっと待って・・・い、いや、本当に私が悪かったから。」
「問答無用です。」
そんなやり取りを残し彼等は消えた。
この後彼に襲い掛かるであろう出来事を思って心の中で無事を祈って置く。
室内には何とも言えない空気が漂っていた。
魔王様が去った後何とも言えない空気を断ち切ったのはソーナさんだった。
「それでは私は生徒会室に戻りますね。」
「ここまで案内してくれてありがとうございました。」
「私の方こそわざわざ来て頂いてありがとうございました。」
何故か視線を外せず見詰め合う事数秒。
後ろからの衝撃で我に返る。
「何2人して見詰め合ってるにゃ!!」
「っ!!私はこれで失礼します!!」
我に返ったソーナさんは顔を赤くして部屋を飛び出していった。
そんな彼女を見送っていると後ろからグレモリーさん達の声が聞こえた。
「・・・ソーナもいい人を見つけたみたいね。」
「そうですわね・・・羨ましいわぁ。」
「まぁ、色々と障害がありそうだけど・・・彼女がそれを望むなら力になりたいわ。」
笑顔で話す彼女達に目を向けていると、後ろに抱き着いていた黒歌さんに話し掛けられた。
・・・いつの間にか僕の左腕には白音ちゃんが引っ付いていた。
「ソーナだけじゃなくて私の事も見て欲しいにゃ。」
耳元で話される艶のある声。
さらに強く抱き着かれた事で黒歌さんの豊満な胸がさらに押し付けられる。
背中が柔らかい感触で満たされていく。
何時に無く積極的な黒歌さんと背中の感触に戸惑っていると祐斗君が声を掛けて来た。
「御久し振りです、昴さん。」
黒歌さんの不満げな雰囲気を感じたけど祐斗君を無視する訳にも行かないので口を開いた。
「こんにちは、祐斗君。
エリカさんから聞いてますよ、また腕を上げたみたいですね。」
「そんなまだまだです。
エリカさんからももっと精進する様にと言われていますから・・・。」
「あら、あなた達そんなに仲が良かったかしら??」
祐斗君と話しているとグレモリーさんに問い掛けられた。
あれ??最近エリカさんに鍛えて貰ってるって聞いてないのかなぁ。
「実はエリカさんに頼んでまた稽古を付けて貰っているんです。」
「そうだったの!!」
「すみません、報告するのを忘れていました。」
グレモリーさんは驚きながらも部下の向上心に顔を綻ばせた。
しかしそれを見ていた兵藤君は・・・。
「おい、木場!!てめぇ・・・あんな綺麗なお姉さんと2人っきりで稽古なんて・・・羨ましいぞぉ!!」
詰め寄っていたが、言われた本人は何処か遠い目をしていた。
「ははは・・・だったらイッセー君も受けてみるかい??・・・地獄が見られるよ。」
「へっ??」
祐斗君の黒い笑みに兵藤君は思わず後退りしていた。
・・・いったいどんな稽古を付けて上げたんだ・・・エリカさんは。
やる気も根気強さもある祐斗君があんな顔をするなんて・・・。
その後少しの間だが他愛も無い会話をしながら寛いでいた
そこで新しい眷属となった子を紹介してくれた。
名前はゼノヴィアさん。
騎士の駒を使ってグレモリーさんの眷属として転生。
コカビエルとの戦いの時に居た子だった。
元々教会側・・・いわゆる宗教に深い信仰がある人だったけど、知ってはいけない事を知ってしまったから教会を追放されたとかなんとか・・・。
行く場所がない所をグレモリーさんが拾ってくれたらしい。
あの時助けてくれてありがとうとお礼を言われた。
暫くしたら学校が閉まる時間になったので僕達は帰る事になった。
・・・楽しい事は時間が過ぎるのが早いなぁ。
グレモリーさん達は悪魔としての仕事は夜が本番なのでそのまま残った。
帰り道・・・。
「そう言えば昴の正体について何も聞かれなかったにゃ。」
「そうですね。
彼女達の方がアザゼルさんよりよっぽど大人だという事ですよ。」
実際凄く聞きたかっただろう。
それをセラフォルーさんが会談まで待てと言っていた事もあって我慢したのだろう。
そう思うとアザゼルさんって本当に子供だなぁ・・・。
それにしてもグレモリー兄妹は懐が大きい。
もちろん金銭的な意味では無い。
合宿の時、プライドを捨ててまで人間に教わった。
眷属の子だけでなく、僕達まで心配してくれた。
事情を知っているとはいえ黒歌さんを校舎内に入れた。
僕の気配断ちを危険だと判断したのにすぐ襲い掛からなかった。
これだけでもあの2人を信頼する事が出来る。
・・・あとは天界からの使者が信頼できるかどうか。
その事に付いてはアザゼルさんに頼んであるから大丈夫だろうけど・・・。
それによっては僕達の事を全て話すかどうかが決まってくる。
下手に誑かしたり誤魔化したりすると信頼されない可能性がある。
でも・・・神殺しの事となると・・・。
そんな事を考えながら黒歌さんと2人家路につく。
近づいて来た三大勢力会談に頭を悩ませながら・・・。
・・・だってそうでもしないと腕から伝わる黒歌さんの胸の感触で色々と我慢出来なくなりそうだから。