Side 昴
授業参観から数日、今日はついに三大勢力会談の日となった。
数日前にソーナさんから当日時間になったら駒王学園に来てくれと言われている。
その為時間になった今準備を済ませエリカさん・馨さん・黒歌さんを連れて学園に向かっていた。
エリカさんと馨さんは僕の側近として、黒歌さんは自分の判決を聞く為。
学園に到着したらソーナさんとその眷属の子達が待っていた。
「お待たせしました。」
「早速ですが、会場の方にご案内させて頂きます。」
少しぎこちないのは緊張しているからか、それとも僕達が魔王の客として此処にいるからか・・・。
それは兎も角僕達はソーナさん達の案内で会談会場へ案内された。
連れて行かれた場所は職員会議室。
室内には巨大な机が置かれ、周りに幾つかの椅子が並べられていた。
中は既に数人椅子に座って待っていた。
サーゼクスさんとその後ろに控えるグレイフィアさん、その隣に座るセラフォルーさん。
そして見知らぬ金色の翼を生やした男性と白い翼の女性・・・彼らが天使かな??
僕達が中に入るとセラフォルーさんが立ち上がって駆け寄って来た。
「いらっしゃい、昴さん。
昴さんの席はこっちだよ。」
案内されたのはセラフォルーさんの席を1つ開けた場所。
取り敢えず言われた通りに席に着く。
エリカさん達は当然の様に僕の後ろに控える。
その様子にサーゼクスさんと名前の分からない2人が興味深そうに観察してくる。
セラフォルーさんはそれに気付かないふりをしてソーナさんの方に体を向ける。
「ソーナちゃんは私と昴さんの間ね!!」
「・・・わかりました。」
うん、ソーナさんは緊張しているみたいだね。
まぁ、魔王に天使の偉い人が此処にいて、もう少ししたらアザゼルさんも来るんだから仕方ないか。
なんて考えていると再び扉が開き二人の男が入って来た。
「遅くなって悪かったなぁ。」
そう言って悪びれもせず入って来たのはアザゼルさん。
その後ろから銀髪の蒼い目をした少年が続く。
だがアザゼルさんは室内を見渡すといきなり溜息を吐いた。
「何だよ、まだ全員集まってないじゃねぇか。
もうちょっとゆっくりしてくれば良かったぜ。」
そんな事を言いながら僕の隣の席に着いた。
話し掛けて来るかと思ったが、そこは組織のトップ。
場を弁えているのか僕を見て笑みを浮かべるだけだった。
少年の方は一瞬僕を見たがすぐに視線を逸らしアザゼルの後ろの壁に寄り掛かりながら腕を組んで目を閉じた。
この少年あの時の・・・コカビエルを連れて行った白い鎧の少年だ。
あの時から思っていたが、彼からは悪魔と人と龍の気配がする。
恐らく悪魔と人間のハーフで、神器から溢れ出る力が龍の気配だろう。
そしてその後すぐノックと共にグレモリーさん達が入って来た。
グレモリーさん達もソーナさん達同様、緊張している様に見える。
「遅くなって申し訳ありません。」
「構わないよ・・・それじゃあ、全員揃った事だし三大勢力会談を始めようか。」
遂に悪魔・堕天使・天使・・・そして神殺しの会談が始まった。
「まず確認しておくが、此処にいる全員が神の死を知っている。
その事を踏まえた上で今回の会談を進めて行く
そしてその事を誰にも話すな・・・いいな??」
「あぁ。」「いいよ。」「はい。」
アザゼルさんの確認から始まった会談。
僕達も聖書の神「ヤハウェ」の死については事前に聞いていた。
神が死んだ事で色々と厄介な事になったらしい。
まず天使が生まれなくなった事。
さらに前大戦の所為で天使の数も少なくなっているから深刻な問題になっている。
そして神器のシステムがおかしくなった事。
祐斗君の神器はコカビエル戦で「禁手(バランスブレイク)」・・・所謂パワーUPを果たした。
しかしそれが普段ならあり得ない進化を遂げた。
聖魔混合・・・相反する力である2つが合わさったのである。
早くシステムを正常に戻さなければ今後この様な有り得ない進化を遂げる神器が増えていくとの事。
教えてくれたアザゼルさんは神器を研究が趣味らしく、この事にとても喜んでいた。
最初の議題はコカビエルによる強襲。
事に当たったグレモリーさんとソーナさんが緊張しながらもあの時の状況を報告していく。
アザゼルさんはコカビエルの独断だと話、捕えたコカビエルは『地獄の最下層』で永久冷凍の刑になったとの事。
そしてその話の流れで三大勢力の和平の話になって行った。
「さっきも言ったが今回の件はコカビエルの独断だ。
俺は元々戦争なんかに興味はねぇ。」
「だが君は神器所有者を集めていると聞いた。
戦争する準備をしているのではないのか??」
「俺が神器の研究を趣味にしている事は此処にいる全員が知っている事だろ。
何だったら研究資料を一部ずつお前らに渡してやるよ!!」
ここでアザゼルさんは言葉を切り、深く息を吐く。
そして真剣な表情で周りを見渡すと再び口を開いた。
「・・・まどろっこしいのは止めにしよう。
お前らも最初からそのつもりで来たんだろう??
結ぼうじゃねぇか・・・和平をな。」
アザゼルさんは深刻そうな表情で言葉を続ける。
「・・・次に戦争をすれば俺達は共倒れするだろう。
そうなれば人間界にも影響を及ぼす・・・世界の危機だ。」
この世界は多くの種族がバランスを取って保たれている。
恐らくどれか1つの種族が絶滅したらその他の種族も生きて行くのが厳しくなるだろう。
それでなくとも神はすでに亡くなっているのだ。
和平が成立しなければはっきり言ってこの世界はやばい事になる。
・・・アザゼルさんの話によれば他にもきな臭い勢力があるらしいし。
その後二天龍の兵藤君とヴァーリ君にも意見が聞かれたりした。
その時よく分かった・・・兵藤君は自分の欲望(エロ)に忠実である事が。
薄々と気付いていたけどあれ程大っぴらに宣言するとは思わなかった。
・・・我が家の女性陣が退いていた。
白龍皇として紹介されたヴァーリ君は戦闘狂の気があるみたいだった。
それに・・・・・彼については色々と気に掛けていた方がいいかもしれないな。
「和平の事はこれ位でいいだろう。
他にも話さなくちゃいけない事があるしな・・・そうだろ、セラフォルー??」
「それもそうだね。
この場を少し借りて私から言わせて貰おうかな。」
和平についてどの勢力も一通り意見を出し終えた所で話題が切り替わった。
アザゼルさんの言葉にセラフォルーさんが反応を示し僕達の方を見る。
「ソーナちゃんの隣に座っているのがさっき話にも出たコカビエルを倒した張本人・・・神藤 昴さんだよ!!
昴さんは元々私とソーナちゃんの契約者で、その契約に則ってコカビエルを討伐してくれたんだよ。」
セラフォルーさんの紹介に僕は立ち上がり頭を下げる。
「紹介に与りました神藤 昴です。
金融会社『ディスガイア』の社長を務めております。
この度はこの様な場に呼んで頂き嬉しく思っております。」
「・・・この場で君の事を詳しく教えてくれるという事でいいのかな??」
頭を上げるとサーゼクスさんの鋭い視線を浴びる。
僕は笑顔でそれを受け流しながら答える。
「全て・・・という訳には行きませんが答えられる所は答え様と思っています。」
「此処にいるメンバーを信用出来ない・・・そう言っているのかな??」
「誰を・・・とは言いませんが、そう取って貰って構いません。
実際此処にいる人達の中には初対面の人もおりますので・・・。」
僕の言葉に諦めた様に息を吐くサーゼクスさん。
ソーナさんとグレモリーさん達は戦々恐々として様子で僕達のやり取りを見守っていた。
自らの陣営のトップの1人である人と言葉を交わしていたのだ・・・不安になって当然だね。
「まぁまぁサーゼクスちゃん、落ち着いて。
皆も昴さんの事は気になると思うけど、先に黒歌ちゃんの事に付いて話させて貰うね。」
黒歌さんは一瞬肩を震わせたが深く深呼吸すると一歩前に出た。
それを確認したセラフォルーさんが話しを続ける。
「SSはぐれ悪魔の黒歌、知ってる人も多いよね。
彼女は主殺しとしてはぐれ悪魔となった。」
「・・・最初から不思議でしたがどうして彼女が此処にいるのですか??
それに神藤さんと一緒に入って来た事も気になります。」
疑問点を指摘したのは天使の男性・・・ミカエルさん。
彼は警戒する事も無くただただ疑問に思っているだけの様だ。
「それも含めて、改めて彼女にこれまでの経緯を話して貰おうかな。」
「・・・わかったにゃ。」
そして黒歌さんが話し始める・・・無理やり悪魔になった所から今までに至る経緯を。
話を聞いていた人達はその表情を暗くしていく。
全てを話し終えて黒歌さんが口を閉ざすと重たい空気が会議室に流れる。
「黒歌ちゃんの話は聞いての通りだよ。
これが本当だったとしたら重罪である主殺しであったとしても情状酌量の余地はある。
そこで昴さんが私とソーナちゃんにある契約を持ち掛けたんだ。」
「・・・それが彼がコカビエルと戦った理由かい??
もし良かったら、その契約内容を教えてくれないだろうか??」
「うん、今回は昴さんの許可を貰っているから元よりそのつもりだよ。」
セラフォルーさんはそう言うとソーナさんに目を向ける。
ソーナさんも事前に打ち合わせをしていたかの様に立ち上がり僕との契約内容を話していく。
「以前私がはぐれ悪魔に襲われた際助けてくれたのが昴さんでした。
その縁でお姉様と出会い黒歌さんの事をお聞きしました。
そこで昴さんは私達にある契約を持ち掛けました。
それは・・・私が危険に陥ればどんな状況だろうとも必ず助ける・・・そういった物でした。」
僕達が交わした契約内容に全員が絶句する(アザゼルさんは除く)。
魔王にたかが人間がそんな契約を持ちかけたのだから。
「条件として提示されたのが昴さんの正体を他人に話さない事・・・そして黒歌さんの再調査の2つです。」
「この契約を下に黒歌ちゃんの再調査を始めたんだ。
そしてその結果をここで発表しようと思うよ。」
全員がセラフォルーさんに注目する。
中でも黒歌さんは真っ直ぐセラフォルーさんを見つめている。
「元々黒歌が殺した悪魔は評判がよくなかったんだ。
調べたら出るわ出るわ、はっきり言って屑だったね。」
そしてセラフォルーさんはしっかりと黒歌さんを見据えて言葉を紡ぐ。
「その調査を鑑みて黒歌に対する判決をここで発表します。
黒歌ちゃん、今まで大変だったね・・・今日を持ってはぐれ認定を解除します。
但し・・・主殺しが重罪なのは変わらない。
よって条件としてはぐれ悪魔等懸賞金が掛けられている者達を100人討伐して来て貰うよ。
それまでは監視を付けさせて貰うけど・・・いいよね??」
事前にはぐれが解除される事を聞いていた黒歌さんだったが、改めて告げられた判定を噛み締めるように受け止めている。
そして真っ直ぐセラフォルーさんを見つめて口を開いた。
「・・・わかりました。」
「もう少し不自由な生活になっちゃうけど我慢してね。
それも条件をクリアすればすぐに解除するから頑張って。
後、監視の事だけど黒歌ちゃんは今迄通り昴さんの所で生活してもらって構わないよ。
その代わりに監視役の子が昴さんの家に一緒に暮らす事のなってるから!!」
・・・・・今大事な事を言われた気がしたな。
監視役の子が一緒に暮らす事になってる??
僕は立ち上がってセラフォルーさんに問い掛ける。
「ち、ちょっと待ってください、そんな話聞いてませんよ。」
「??エリカさんにちゃんと了承は取ってけど・・・聞いてないの??」
僕はエリカさんに向き直る。
名前の挙がった彼女はしれっとした顔で僕に告げた。
「この話を聞いたのは昨日の事だし、昨日は昴も忙しそうだったし、断る理由も無かったから。」
「せ、せめて一言教えて欲しかったのですが・・・。」
「ごめんなさい・・・忘れていたわ。」
とってもいい笑顔で言われてしまった。
僕をはじめ多くの人がそれに唖然としている。
そして僕は気付く・・・確信犯だと。
エリカさん、わざと僕に黙っていたな。
・・・・・まぁ黒歌さんの為だから断るつもりは無かった。
それにエリカさんが許可したのなら監視役の子も信頼で来る人だという事だ。
でも・・・でもせめて一言教えておいて欲しかった。
多分だけど家の中で知らなかったのは僕だけだ。
だって全員セラフォルーさんの言葉に皆驚いてすらいなかったから。
僕は1つ息を吐くとセラフォルーさんに向き直る。
「・・・それで監視役というのは誰ですか??」
「あぁ、それはソーナちゃんだよ!!」
まぁ妥当な所だし、予想は付いていた。
よく僕達の家に出入りしていて、友好関係を築いている中で監視役に一番適しているのは彼女なのだから。
ソーナさんの方に視線を向けると彼女は頬を少し赤く染めていた。
「ソーナちゃんにはこの会談が終わったら昴さんの家に移って貰うよ。」
「・・・わかりました。
その事に付いて僕から言う事はありません。
ソーナさんこれからよろしくお願いしますね。」
「こちらこそ、お世話になります。」
僕達の言葉に満足したのかセラフォルーさんは笑顔で頷いた。
「ならこの話はこれで終わりだね。」
「やっと終わったか。
それなら早速次に移ろうぜ・・・此処に居る殆どがお前に付いて興味があるんだからよぉ。」
アザゼルさんがそう言うとこの場に居る全員が僕に視線を向けて来た。
うん・・・こういう視線はあまり体験した事がない。
僕達の世界では神殺しというのは恐怖の象徴でもある。
だからこうやって好奇の目に晒される事が殆ど無い。
「神藤 昴君・・・君の事を教えてくれるかな??」
サーゼクスさんの問い掛けに黙って立ち上がる。
今日話す事に付いてはエリカさん達と話し合って2パターン決めて来ていた。
全員信用できる場合と信用できない人がいる場合。
今回に至っては後者だ。
僕は話す内容を確認して、口を開こうとした瞬間・・・突如迫り来る氣を感じ取った。
僕は瞬時に自身の氣を放ち、この室内を覆う。
僕の突然の行動に驚きを隠せないソーナさん・セラフォルーさん・アザゼルさん。
警戒しながらも行動に移さないサーゼクスさん・グレモリーさんとその眷属・男性天使・ヴァーリ君。
動きを見せたのはグレイフィアさんと男性天使の後ろに控えて居た女性天使だった。
彼女達は凄まじい殺気と共に僕目掛けて襲い掛かる。
それに対処するのはエリカさんと馨さん。
2人の間に割って入りそれ以上彼女達を近付かせない。
エリカさん達の力量を感じ取ったグレイフィアさん達は動きを止め警戒を強めながら此方を睨みつけてくる。
突然の事だったから仕方ないけど誤解を招く行動をとってしまった。
僕は別の意味で警戒を強めながら口を開いた。
「皆さん突然すみません・・・緊急事態だったもので。」
「・・・どういう事だい??」
多分に警戒しているサーゼクスさんの鋭い視線を受けながら答える。
「僕が話すより外を見て頂いた方が早いと思います。」
サーゼクスさん達は警戒して動く事は無かったが、僕の事を理解してくれているアザゼルさんとセラフォルーさんが何かに気付いて窓に駆け寄りカーテンを開いて外の様子を確認した。
そして二人の表情が瞬時に真剣な物へと変わったのだった。