正義の魔王 inハイスクールD×D   作:しらこつの

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第24話 家族

Side 馨

 

昴君達がこの場を去った後僕達は改めてアザゼルさんから話を聞き始めた。

 

その話を簡単に纏めるとこうだ。

アザゼルさんは部屋からカテレアを追って飛び出した後、そのまま彼女と戦闘を続けていた。

不意に背後から白龍皇の襲撃を受けた・・・その時に白龍皇が敵側に寝返ると宣言。

丁度近くに居た兵藤君達が駆けつけて白龍皇の興味は因縁の相手である赤龍帝である兵藤君へ移る。

そのままアザゼルさんはカテレアと、兵藤君は白龍皇との戦闘に入った。

 

アザゼルさんはカテレアとの戦闘中にテロ組織『禍の団(カオス・ブリザード)』のトップが『無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)』・・・名をオーフィス・・・である事に確信を得た。

さらにオーフィスから力を貰ったカテレアは戦闘中にパワーアップ。

アザゼルは『禍の団』の幹部はこの力を受け取っているだろうと推測している。

敵のドーピングにも何とか対応し、勝利まであと少しという所でカテレアの自爆に巻き込まれ腕を一本失った。

彼は最後にしくじってしまったと笑っていた。

 

兵藤君は最初白龍皇の猛攻に為す術も無くやられていた。

だが戦闘中ある言葉を切っ掛けに彼は『禁手(バランスブレイク)』に目覚めた。

・・・この話をしている時のリアスは何故か顔を真っ赤にしていた。

『禁手』に至った御蔭で何とか相手と対等に戦い事が出来た兵藤君だったが、地力の差は歴然。

次第に追い込まれて行った所に『禍の団』の一員と見られる男が現れる。

その男は自らを闘戦勝仏の末裔・・・名を美猴と名乗り、白龍皇と共に姿を消した。

 

 

 

彼等から聞かされた話を聞き終わった所で三大勢力のトップ達の顔付きは険しい物になった。

敵の戦力がどの程度か分からない事、敵のトップの正体、そして白龍皇の離反。

三大勢力が和平を結んだ所にこの騒ぎ・・・険しい顔付きになるのも仕方のない事だろう。

 

「・・・早急に手を考える必要があるね。」

「まったくだ・・・和平を結んどいて良かっただろ??」

「アザゼルに言われるのは癇に触りますが・・・確かにその通りですね。」

「後懸念事項があるとすれば・・・。」

 

そう言ってサーゼクスさんは僕に視線を向けて来た。

その視線に少しばかり圧力を感じたが、気に留める事も無く一歩前に出た。

 

「僕達に関する事でしたら後日、日を改めてと考えています。」

「・・・それは君達の事を話すつもりはあると思っていいのかな??」

「状況は弁えています。

 敵か味方か分からない存在を放っておく事は避けたいと御考えでしょう・・・勿論それは僕達も同じです。」

「これから私達は忙しくなる・・・出来れば早い方がいい。」

「わかりました、連絡の方はセラフォルーさんとアザゼルさんを通じてやらせて頂きます。」

 

僕の言葉に2人は頷き返す。

サーゼクス・ルシファーもそれで納得したのか何も言わなかった。

だがミカエルだけは口を開く。

 

「1つ聞きたい・・・というか確認したい事があります。」

「・・・何でしょうか??」

 

真剣な眼差し・・・辺りに緊張が走る。

1拍置いた後ミカエルは問う。

 

「・・・あなた方は以前よりアザゼルと面識があったのですか??」

 

僕はチラッとアザゼルさんの方を見る。

そこでは罰の悪そうな表情で首を横に振る彼の姿があった。

そう言えば彼は僕達に接触しないと言う約束を破って会いに来ていた。

そんな彼の様子に溜息を一つ吐く。

・・・こんな事で嘘をついて彼らとの関係を悪くするのは馬鹿らしい。

 

「そうですよ。

 以前我慢出来なくなったとか言って突然僕達の家まで来られました。」

「なっ!!馨嬢、どうして言っちまうんだよ!!」

 

慌て出すアザゼルさんであったが構わず続ける。

 

「その時に幾つか話をして、僕達の事に付いてもお話ししました。

 証人でしたらセラフォルーさんもその場におられました。」

「そうなんだよ!!

 あれだけ会談まで待ってって言ったのにアザゼルちゃんってば勝手に会いに行っちゃってたんだよ!!」

 

視線を向けられたセラフォルーさんはその時の事を思い出して可愛らしく怒っている。

当の本人はというと・・・この場に居る全員から白い目で見られていた。

 

「・・・そんな事だから、信頼出来ないと言われるんですよ。」

「し、仕方ねぇだろ、気になって我慢出来なかったんだから。」

「彼等の事が気になっていたのは私達全員がそうです。

 それをあなたは・・・。」

「それを言うならサーゼクスだってそうじゃねぇか。

 あいつも昴とは会談前に会っていた筈だ。」

「あ、あれは不可抗力だよ。」

 

三大勢力のトップが小さな事で言い争いを始めた事により緊迫していた空気は緩やかな物になった。

僕は1つ安堵した。

今回の様な緊張感のある話し合いは久し振りだった・・・最近ではエリカさんに任せ切りだったから。

暫く味わって無かった緊張感に少しばかりの疲労を感じながらひと息吐くのだった。

 

 

 

 

 

Side 昴

 

家に辿り着くと黒歌さんはそのまま倒れ込んでしまった。

恐らく精神に負担がかかっていたのだろう。

倒れてしまった黒歌さんを駆けつけたアンナさん達の手を借りてベッドまで運び寝かし付ける。

ベッドに横たわる彼女にいったい何があったのか・・・。

現状では何があったのか想像すら出来ない・・・彼女は目を覚ますまで待つしかない。

 

黒歌さんが目を覚ますまでに僕もあの時の事を把握しておかなくてはならない。

戦闘していて疲れもあるであろうがエリカさんには悪いがあの時何があったのか話して貰った。

 

 

 

「・・・やはり彼は戦う場を求めてアザゼルさんの下を去ったんですか。」

「貴方には予想がついていたの??」

「ある程度は・・・会談の時から彼には違和感がありましたから。」

「・・・という事は今回の襲撃はある意味好都合だったという事ね。」

 

あのまま僕達の事情を話していたらこれから敵対するかもしれない組織に全て漏れていた事になる。

それだけは回避出来て良かったと思う。

 

「アザゼルさんにとって彼はただの部下という訳では無かったみたいですから・・・。」

「アザゼルも一つの組織のトップに立つ男よ。

 どんな事情があるにせよ、ちゃんと自分の立場を理解している筈よ。」

 

その時丁度あの場に残ってくれていた馨さんが帰って来た。

そのまま彼女も僕達の話し合い参加・・・アザゼルさんの心配はいらない事が判明した。

馨さんから聞いた話はエリカさんから聞いた事と殆ど変わらなかった。

そして今後の事も話し合う。

 

「不安要素だったヴァーリ君が居なくなったから何の憂いも無く全てを話せますね。」

「そう簡単な話ではないわよ。」

「そうだよ、会談前も話したと思うけど昴君は本来彼等を討伐する立場にあるんだから。」

「セラフォルー達は理解を示してくれたけど、普通だったら警戒されるか問答無用で攻撃されるかよ。」

「そ、そうでした。」

 

大切な事を忘れてしまっていた。

そんな僕を見て馨さんは微笑みを浮かべながら口を開く。

 

「まぁ、昴君が彼等なら全てを話せると判断しているのなら大丈夫だろうけどね。」

「直接会って判断出来たのは大きいわね・・・実際の所どうだったの??」

「サーゼクスさんとミカエルさんは大丈夫だと思います。

 ・・・どっちに転ぶか分からないのがグレイフィアさんとミカエルさん一緒に居た女性天使の方です。」

「彼女達はずっと私達の事を警戒していたわね。」

「護衛として来ていたのだから仕方ない所もあるだろうけど・・・。」

「・・・やっぱりセラフォルーさん達と同じ様にある程度契約を結ぶのがいいのでしょうか??」

 

僕の言葉にエリカさんは顔を顰める。

 

「それは最後の手段とした方がいいわ。

 ずっとこの世界に掛かりきりになる訳にはいかない事は分かっているでしょ??」

「この世界に縛られるのはなるべく控えて、話し合いで手を打てるのならその方がいい。」

「・・・確かにそうですね。」

「こればっかりは実際に話して彼等の反応を見てみるまで分からないわね。」

 

その後細かい事を話し合って今日は解散となった。

僕がお風呂から戻ってきたら2人が僕のベッドで寛いでいたのは言うまでもない。

理由を聞いたら・・・今日は頑張ったからご褒美が欲しいんだそうだ。

 

 

 

翌日朝になっても目覚めなかった黒歌さんだったが、昼頃になり重たい足取りで僕達の前に現れた。

 

「おはようございます、黒歌さん。」

「・・・おはようにゃ。」

 

昨日と同様いつもの元気が見られない。

取り敢えず食事を取って貰ってから昨日何があったのか聞く事にした。

 

「・・・昨日の事を話して頂けませんか??」

「・・・・・。」

 

黒歌さんは口を開いたり閉じたりを暫く繰り返し、最後には下を向いてしまった。

そのまま僕達は待つ・・・彼女の決心がつくまで。

黒歌さんは顔を俯かせたまま重たい口を開いた。

 

「私が林に入って其処に居た奴等を片付けていた時にゃ・・・突然二人組の男が現れたにゃ。」

「2人組の男??」

「そいつ等は自分達の事を『禍の団』の『英雄派』だと名乗ったにゃ。」

 

『英雄派』・・・聞いた事の無い言葉だ・・・後でアザゼルさんにでも確認しておかないと。

そして『英雄派』と言う位だから『禍の団』も一枚岩という訳では無さそうだ。

それもそうか・・・他種族が自分の利益の為に一時的に手を組んでいるに過ぎないのだから。

 

「そんな奴等がどうして黒歌さんの所に??」

「・・・・・奴等は私を『禍の団』に勧誘して来たのにゃ。」

 

 

 

 

 

Side 黒歌

 

グラウンドに飛び出したはいいが、此処ではエリカさんと祐斗が戦っていて既に敵の数は少ない。

私は新たな敵を求めて・・・賞金首を探して一路林の中を進む。

この林は白音の所属する部活・オカルト研究部に続いていた筈だ。

リアス達が眷属を助けに行ったという事はそっちに敵が流れていると判断して林の中を駆け回る。

 

予想通り多くの敵を見つけそのまま鎮圧に入る。

私にはどれに賞金が掛かっているのか判断が出来ないので、後の為顔を傷つける事無く意識を奪って行く。

 

粗方倒し終わった所でさっきから聞こえていた大きな戦闘音のする方へ移動しようとした時だった。

突然周囲を霧が包み込み、晴れたかと思うとそこには二人の男の姿があった。

いきなり現れた二人に警戒心を高めながらも感じ取る。

魔術師のローブに身を包む男はそれほどではないが、その隣の漢服を羽織った黒髪の男・・・かなり強い。

 

「・・・S級はぐれ悪魔の黒歌だな。」

「お前達は何者にゃ!!」

「そんなに警戒しなくてもいい・・・と言ってもそれは無理な相談だな。

 俺達は『禍の団』・・・君達の言う所のテロリストと言った立場の人間だ。」

 

それを聞いた瞬間、彼等を捕える為動き出そうとした所で体が動かない事に気付いた。

自分の体を見てみると先程の気持ち悪い霧が私を包んでいた。

 

「あぁ、少しばかり拘束させて貰った・・・こうでもしないと話も出来そうに無いからな。」

「・・・一体何が目的だにゃ。」

 

体が動かせない以上相手を刺激しない様にして隙を窺うしかない。

そう判断して警戒を解く事はせず、彼らの話を聞く事にした。

 

「賢明な判断だな。

 ・・・俺達は『禍の団』の中でも『英雄派』と呼ばれているチームの一員だ。」

「英雄派??」

「そうだ・・・歴史に名を残した偉大な英雄達を先祖に持つ人間が集まった一派だ。

 俺達は英雄の子孫としてこの世に人ならざる者が蔓延る事を良しとしない。」

 

人並みならぬ闘志をその眼に宿して語る男。

要するに悪魔や天使・堕天使を倒したいって事かにゃ??

だったらどうして悪魔である私にそんな話を・・・。

 

「おっと話が逸れてしまった、そろそろ本題に入らせて貰おうか。

 ・・・俺達は君を勧誘しに来たんだ。」

「か、勧誘??」

 

突然の事に頭が上手く働かない。

どうして私がテロリストに勧誘されなくてはならない。

困惑していると私の疑問に答える様に話を続ける。

 

「君の情報はある程度把握している。

 母が死に妹と二人で生きていた所に悪魔がやって来て、妹を守る為に悪魔になった。

 悪魔になってからは主の非道な行いからも妹の為に耐え続けていたが、妹が悪魔にされそうになった事で主を殺害・・・はぐれ悪魔となった。」

 

男の口から語られる話に動揺を上手く隠せない。

世間一般的には私が力を暴走させて元主を殺した事になっている筈だ。

どうして此奴らは本当の話を知っている。

 

「その後辛く厳しい逃走の日々が続く。

 やがて人間界まで逃げ延びて来たお前だったが、等々力尽き悪魔達に囲まれてしまう。

 そこに現れたのが今お前が共に暮らしている人間・・・神藤 昴。

 あの男に助けられたお前は神藤 昴の伝手で魔王に直接自身の境遇を話す事に成功した。

 そして今日漸く条件付きではあるがはぐれが解除された・・・と言った所か。」

「・・・そ、それがどうしたっていうのにゃ。」

 

男はそこまで話すと突然鼻で笑った・・・私の無知を嘲笑うかの様に。

 

「お前は本当に自由になったと思っているのか??

 そんな事実はありはしない。」

「な、何を!!」

 

私が反論しようと口を開くが男の話が止まる事は無い。

 

「お前は自分の価値を正確に理解していない。

 猫又の上位種族であるお前を、S級はぐれ悪魔であったお前を他の悪魔達が放っておく訳ないであろう。

 魔王と懇意にしている人間が傍に居るからと言って、そんな物は何の抑止力になりはしない。

 ・・・もしかするとお前欲しさにあの人間達は殺されてしまうかもな。

 例え魔王が抑止力になったとしても所詮は人間・・・あと数十年も経てばお前を守る者は居なくなる。

 そうなればお前はどうなる??

 所詮は元はぐれ悪魔・・・魔王を始めとした悪魔共に飼い殺しにされるのが落ちだ。」

 

どうして・・・どうしてにゃ。

昴達は私とずっと一緒に居て来るって言ってくれたのに。

白音とも仲直りできたし、これからはもう一人ぼっち何かじゃないとわかっているのに。

どうしてこんなにも心が不安でいっぱいになるにゃ。

その時の私は自分の事で頭がいっぱいで、男が私の様子を見て口角を上げている事に気付けなかった。

 

「こんな弱者にとっては生きにくい世界・・・変えようと思わないか??

 お前にはその資格が・・・それだけの力がある!!」

 

ぼぅっとする頭で男を見る。

・・・世界を変える。

今まで生きているのも辛かったこの世界を・・・私に優しい世界に。

 

「っ!!」

 

今何を考えてたにゃ。

以前はそうだったかもしれないけど、今は昴が・・・皆が居てとっても幸せだにゃ!!

・・・こんな奴の言葉に。

 

「曹操・・・そろそろ時間だ。」

「・・・わかった。

まぁ、今すぐ答えを聞くつもりは無い。

 いずれまた会いに来る・・・その時に嬉しい返事を聞ける事を祈っている。」

 

そう言って男達は姿を消した。

私は体が自由になったにも拘らず、暫く動く事が出来なかった。

我に返った私は胸の不安を抱えながら走り出した・・・私の大切な家族を求めて。

 

 

 

 

 

Side 昴

 

「そうですか・・・そんな事があったんですか。」

 

話し終えた黒歌さんの表情は暗い。

不安で不安で仕方がない・・・そんな表情をしている。

 

「・・・私はあの後色々考えたにゃ。

 昴達と一緒に居るととっても心が休まるにゃ。

 ここが私の居場所だって・・・こんな私なんかを家族だって。

 でも・・・私だってわかってたにゃ・・・彼奴の言っていた事も真実だって。」

 

黒歌さんは今にも泣きそうになりながらも言葉を紡ぐ。

 

「だから・・・だから、私は・・・・この家を・・・。」

 

そこから先は言わせなかった。

彼女の体を強く抱きしめ、その唇を塞ぐ・・・僕の気持ちが伝わる様に。

突然の僕の口づけに彼女の顔が真っ赤に染まる。

ゆっくりと唇を放し至近距離で彼女の顔を覗き込む。

 

「それ以上言うと許しませんよ。

 誰が何と言おうとあなたの家はここです。

 あなたは僕達の家族です・・・あなたは此処に居ていいんです。」

「でも・・・私がいると昴達に迷惑が・・・。」

「そんな心配は私達には無用よ。」

「僕達・・・いや、昴君がいる限りこの家は世界で一番安全だから。」

 

エリカさん達も黒歌さんに近寄り声を掛け、頭を撫でてあげている。

恐る恐る黒歌さんは顔を上げ僕達を見つめる。

 

「それに僕を誰だと思っているんですか??

 僕は世界を牛耳る魔王の一人・・・神藤 昴ですよ??

 寿命だってどうとでもなります。

 これから先、何があっても僕達はずっと一緒ですよ。」

「す、昴っ!!

 う、うわぁぁぁぁぁ!!」

 

遂に堪え切れなくなったのか声を上げて泣き始めてしまった黒歌さん。

そんな彼女を強く、そして優しく抱きしめる・・・彼女の不安がなくなる様に。

 

 

 

その後黒歌さんはまた眠ってしまい、そして眠りについたと同時に猫の姿になってしまった。

僕はそんな彼女を膝に置き、エリカさん達と言葉を交わす。

 

「不安だったんでしょう。

 今までずっと一人だったですから・・・そう簡単に過去のトラウマを乗り越えられたら苦労はしませんよ。」

「でも、疑問もあるよね。

 黒歌さんは僕達の事情を全て知っていて、昴の強さも骨身に沁みて分かっている筈。

 どうしてあそこまで不安になってたんだろう??」

「・・・こうは考えられないかしら。

 最初に黒歌さんの過去を暴いて動揺を誘い、心が乱れた所に『洗脳』の魔術を施した。」

 

エリカさんの仮説に僕は顔を顰める。

 

「洗脳ですか??」

「何の証拠も無いけど、これだったら黒歌さんがあそこまで情緒不安定だった事も説明が付くわ。」

「もしそれが本当だとしたら・・・許せませんね。」

 

僕は拳を握りしめ、怒りに震える。

 

「黒歌さんの話だと、奴等はまたこの子に接触して来るわ。

 私達と話して落ち着いたから、テロリストになるなんて事は無いだろうけど・・・。」

「わかっていますよ、次奴らが現れた時は僕が直々に潰します。

 そして僕の家族に手を出した事を後悔させてやる!!」

「それでこそ私達の王よ。」

 

そう言ってエリカさんと馨さんが左右から擦り寄って来た。

僕はそんな彼女達を抱き締める。

 

「・・・僕の大切な人は・・・家族は・・・必ず守ります。」

 

僕の言葉に嬉しそうにさらに体を押し付けてくる。

エリカさんは僕に垂れかかり、馨さんは頬に口づけをしてくる。

いつもなら恥ずかしがる僕だけど、今日はそんな2人の感触に身を委ねていた。

・・・自分の大切な存在を再確認する様に。

 

 

 

その後夕方まで、アンナさん達をも加わって団欒していた時だった。

玄関のチャイムが鳴り響いた。

 

「漸く来たみたいね。」

 

エリカさんはそう言って僕の手を引き立ち上がる。

・・・・あっ、そうだった。

今日から黒歌さんの監視って事でソーナさんがこの家に住むんだった。

 

「・・・もしかして昴君忘れてたの??」

「い、いや~~そんな訳ないじゃないですか。」

 

我が家の女性陣から避難の目が向けられる。

うん、早くお迎えしなくては!!

居心地の悪いこの空気から逃げる為に素早く玄関へ移動した。

 

扉を開けるとそこには旅行鞄を手に持ったソーナさんの姿があった。

制服に身を包んだ彼女は真面目な顔をしていながらも少し顔が赤くなっている。

 

「きょ、今日からお世話になります。」

「お待ちしていましたよ。

 さ、どうぞ入って下さい。」

「お、お邪魔します。」

 

おずおずと玄関に入るソーナさん。

それを家に居る全員で迎える。

 

「よく来たわね、ソーナ。」

「はい、よろしくお願いします。」

 

まずは彼女の部屋に案内する・・・僕はどの部屋かすら聞いていないけど。

荷物を運び終えリビングに戻って改めて挨拶をする。

 

「今日から黒歌さんがはぐれ認定を完全に解除されるまでの間、此処に一緒に住む事になります。

 魔王セラフォルー・レヴィアタンの妹にして、シトリー家次期当主のソーナ・シトリーです。

 よろしくお願いします。」

「こちらこそ、よろしくお願いします。

 まぁ、そんなに硬くならずに自分の家だって思ってください。」

「は、はい。」

 

うん、硬いね。

そんな彼女にいつもの調子を取り戻した黒歌さんが声を掛ける。

 

「ソーナ、これからよろしくにゃ!!」

「く、黒歌さん??

 調子はもう大丈夫なのですか!!」

「そうにゃ、ソーナにも心配かけていたにゃ!!

 でも、もう大丈夫にゃ!!」

 

元気いっぱいの黒歌さんを見てソーナさんも安心した様だ。

エリカさん達もソーナさんに近寄って、耳元で何やら話している。

 

「チャンス何だからどんどん積極的に行きなさい・・・私達は応援してるわよ。」

「っ!!エ、エリカさん!!」

 

一瞬で顔が赤くなったソーナさん。

・・・一体エリカさんに何て言われたんだろう。

 

でもソーナさんとなら楽しく暮らして行ける事だろう。

セラフォルーさんとの繋がりも強くなる。

今後の懸念事項もあるし今回の件はいい事尽くしだと思う。

仲睦まじい彼女達を見つめながら、そう心に思うのだった。

 

 

 

その日の夜。

ベッドで休んでいると、誰かが居部屋に入って来た。

 

「・・・昴??」

「黒歌さん??

 どうかしたんですか??」

 

彼女はいつも来ている着物の色と同じパジャマに身を包み、もじもじしながら部屋の入口に立ち尽くしている。

その表所は何処か緊張している様にも・・・不安そうにも見受けられる。

 

「き、今日は一緒に寝てもいいかにゃ??」

「・・・まだ、不安なんですか。」

 

僕の言葉に彼女は黙って頷いた。

夜になってまた不安がぶり返したのだろう。

僕は布団を捲り彼女を招き寄せる。

 

「構いませんよ。」

 

黒歌さんは嬉しそうにベッドの中に潜り込んでくる。

布団を掛け直し彼女と向き合うと、彼女の綺麗で整った顔が目の前に浮かぶ。

 

「やっぱり昴の近くに居ると安心するにゃ。」

「そう言ってくれると僕も嬉しいです。」

 

暫く他愛無い話をしていると突然黒歌さんが僕に抱き着いて来た。

それもギュッと、力強く。

 

「きょ、今日昴にキ、キスされた時・・・びっくりしたけど、とっても嬉しくて・・・。

 それでいて、とても気持ち良かったにゃ。」

 

僕の胸元に顔を押し付けていた黒歌さんだその場で僕を見上げる。

色気のある表情で見つめられると・・・彼女が何を望んでいるのかわかってしまった。

そっと彼女顔に手をやり、顔を近づける。

黒歌さんも黙って目を閉じ、じっと待っている。

僕はそっと彼女に口づけを落とす。

 

「んっ・・・・・・ちゅ・・・・んっ・はぁ。」

 

今回はあの時よりも長く、じっくりとキスを交わす。

唇を放そうとすると黒歌さんが追い掛けて来る・・・まるでもっとと強請る様に。

漸く離れた二人の間には銀の橋が掛かっていた。

 

「昴、大好きにゃ!!」

 

彼女の口から零れた言葉に理性が吹き飛んだのは言うまでもない。

 

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