正義の魔王 inハイスクールD×D   作:しらこつの

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お待たせしました。
楽しんで頂けたら光栄です。


第28話 お披露目会

Side 昴

 

次の日・・・ソーナさん達は準備に追われていた。

ソファーナさんはドレスを用意していると言うし、ソーナさんは制服でいいと言うし・・・。

セラフォルーさんがソーナさんに抱き着いて邪魔をすれば、ソーナさんもそれに態々付き合ってしまう。

 

そんな彼女達を横目に僕達はというとゼラルさんに城の中を案内して貰っていた。

何処も彼処も豪華な造りになっていて、見ているだけで楽しかった。

使用人達も僕達が人間だからと蔑にする事無く、丁寧に接してくれた・・・行き届いた教育に感心するばかりだ。

しかも彼等の中に不満を持っている人が全く見受けられなかった事にも驚いた。

・・・本当にゼラルさんは最高にいい悪魔だ。

今は仕事で留守にしているが、次の機会には彼の眷属達を紹介してくれると約束した。

 

 

 

そうしている内にお披露目会の会場に出発する時間になった。

ソーナさん達の服装は結局制服になったみたいだ・・・ソファーナさんは少々不満そうにみえた。

 

今回のお披露目会にはゼラルさん達も招待されている。

娘の晴れ舞台なのだから当たり前だ。

最初は汽車で行く事になっていたが、思ったより準備に時間を食い魔法で移動する事になった。

 

 

現在エントランスに全員が集まっている。

緊張した面持ちのソーナさんとその眷属の皆。

笑みの絶えないソファーナさんとセラフォルーさん。

隅の方で大人しくしている僕達と、転移の用意をしているゼラルさん。

今回黒歌さんとミッテルトさんはお留守番して貰う事になっている。

理由はそれぞれ、黒歌さんはまだ正式にはぐれ認定が取れていないから、ミッテルトさんは堕天使だからだ。

 

「よし、準備が整ったよ・・・全員問題ないかい?」

 

口々に了承の返事を返すとゼラルさんは頷き、転移魔法を発動させた。

 

この時僕は最大限自身の『氣』を内に留め、ゼラルさんの魔力を受け入れる。

そうしないと、神殺しの強い魔術抵抗によって魔法を弾いてしまうからだ。

これは現在の神殺しの中では、ずば抜けた魔力コントロール技術を持つ僕にしかできない方法だ。

 

目の前が強く光ったと思ったら目の前の光景が変わっていた。

転移した先はシトリー家とはまた一味違った趣のあるお城だった。

初めて他人の力で転移したけど、僕の権能とはやはり違った感じがした。

 

到着早々声を出したのはセラフォルーさんだった。

 

「うん、無事に到着したね。

 じゃあ、此処からは皆別行動だよ。

 まずソーナちゃん達は他の若手悪魔達が集まっている控室に向かってね・・・場所は大丈夫?」

「はい、大丈夫です。」

「それじゃあ、もう向かった方がいいよ・・・多分他の子達はもう既に来ていると思うから。」

「わかりました、では私達は先に失礼します。」

 

ソーナさんはそう言うと眷属の子達を引き連れて城の中に入って行った。

その時ちらっと僕の方を見たので僕は力強く頷いておいた。

・・・「見てますよ、頑張って下さい」という思いを込めて。

 

「お父さん達は貴賓席ね。」

「分かっている。

 では、昴君達・・・また後で会おう。」

 

そう言うとゼラルさんもソファーナさんを連れて去って行った。

残った僕達はというと・・・。

 

「それじゃあ、私達も行こうか。」

「私達は何処に連れて行かれるのかしら?」

「魔王の控室だよ・・・サーゼクスちゃんも昴さん達に会いたいって言ってたから。

 それに、人間である昴さん達が此処に居る事をよく思わない悪魔もいるから・・・。

 なるべく私の傍から離れないでね。」

「わかりました。」

 

僕達はセラフォルーさんの忠告を受けて早速移動を開始した。

移動中、使用人の人達には擦れ違ったが他の悪魔に遭遇する事は無かった。

その使用人全員がセラフォルーさんを見た時、脇にずれて頭を下げるのだ。

それを見た時、初めて彼女が魔王だった事を実感した。

 

「此処だよ。」

 

先を歩いていたセラフォルーさんが立ち止り、ノックもせずに扉を開ける。

躊躇なく入っていく彼女の後を僕達も追うとそこには、サーゼクスさんとグレイフィアさん。

そして、見慣れない2人の男性悪魔の姿があった。

 

「遅かったね、セラフォルー・・・そして・・よく来てくれた、昴君。」

「ごめんね、ちょっと準備に手間取って・・・。」

「本日は御招き頂きありがとうございます、サーゼクスさん。」

 

にっこりと微笑むサーゼクスさんとその後ろでグレイフィアさんが静かに頭を下げていた。

僕達に気付いた残りの2人も僕達の方に歩み寄って来た。

 

「・・・彼がお前達の言っていた人間か?」

「あぁ、昴君、紹介するよ。

 彼等が四大魔王の『アジュカ・ベルゼブブ』と『ファルビウム・アスモデウス』だ。

 2人共、彼が僕とセラフォルーの契約者の神藤 昴君だ。」

「初めまして、神藤 昴と言います。

 この度は人間でありながらこの様な席に着かせて頂く事、大変有り難く思っております。」

「そんなに畏まる事は無い、俺はアジュカだ、ベルゼブブの名前を貰っている。」

「僕はファルビウム・アスモデウスだよ。

 そんな事より、君には何か特別な力があるのかな?

 とてもそうは見えないけど・・・。」

 

アジュカさんは緑の髪の妖艶な顔付きの美青年。

ファルビウムさんは・・・覇気がない・・・けれど僕の事をじろじろ観察してくる目は真剣そのものだ。

 

「2人共、彼に聞きたい事があると思うがそろそろ時間だよ。」

「あぁ、分かってる。」

「う~~ん、面倒くさいなぁ。」

 

挨拶もそこそこにお披露目会の時間が迫っているらしく、到着早々部屋を出る事になった。

・・・僕達の到着時間は本当にギリギリだったみたいだ。

サーゼクスさんを先頭に部屋を出た僕達は一番後ろでセラフォルーさんから再び注意を受けていた。

 

「さっきも言ったけど、人間である昴さん達に文句を言って来る人が居ると思うの。

 けど昴さん達には指一本レヴィアタンの名に懸けて触れさせないから・・・安心して。」

「そんなに心配してくれなくてもいいですよ。

 ソーナさんの晴れ舞台・・・潰す様な真似はしません。」

「何か言われるのは私達も想定済みよ。」

「よっぽどの事が無い限り大丈夫だよ。」

 

彼女は僕達の言葉に安心したのかその後は何も言わず歩き続けた。

僕達も黙って彼等の後を付いて行くのだった。

 

 

 

 

 

Side ソーナ

 

私達が控室に到着した時、室内はとんでもない事になっていた。

まず目に付いたのはこれから出番だと言うのにボロボロに傷付いた『ゼファードル・グラシャボラス』。

彼は自身の眷属達に懸命に手当てをされている。

そんな彼等を横目に私は状況を確認する為に集まっていたリアス達の下へ向かった。

 

「・・・何があったの?」

「あら、ソーナ・・・遅かったわね。」

 

声を掛けた事でそこに居た全員が私達に気付いた。

今回参加する全員の姿を確認出来た事に私達が一番遅かったのだと認識し少し恥ずかしくなった。

 

今日参加するのは私とリアス。

後は『サイラオーグ・バアル』と『シーグヴァイラ・アガレス』と『ディオドラ・アスタルト』。

最後に部屋の隅に転がっている『ゼファードル・グラシャボラス』だ。

此処に居る全員が上級悪魔で、更に各名家の出でもある。

だからこそ大々的に今回の様な場が開かれる事になったのだ。

 

「久し振りだな、ソーナ。」

「えぇ、久し振りね、サイラオーグ・・・それにシーグヴァイラも。」

「御久し振りです、ソーナさん。」

 

この場に居る上級悪魔は皆、顔馴染みだ・・・だからこそある程度は為人を理解していた。

容易に想像の付く控室の状況を改めて聞いて、部屋の隅で治療される男に視線を向ける。

 

やはりこの状況を作ったのは、素行の悪い事で有名な彼が原因であった。

シークヴァイラに手を出そうとした所をサイラオーグに止められたらしい。

言葉だけで止まらなかったからこそのこの状況だ。

場を弁えず、相手の力量すら見誤る彼に呆れて物も言えない。

その後他愛のない会話で暫し親睦を深めていたが、1人の女性の登場が全員の動きを止めた。

 

「皆様、時間になりましたので会場の方に御越し下さい。」

 

私達が入って来た扉が音も無く開かれると、メイド服に身を包んだ女性が移動を促したのだ。

彼女の言葉に一同の緊張が高まったのが分かった。

これから魔王様を始めとした、悪魔界の重鎮達に御目通りをするのだから仕方がない。

この緊張感の中、真っ先に動いたのはサイラオーグだった。

 

「話はまた後だな・・・移動しようか。」

 

自身の眷属を引き攣れて歩き出した彼に我に返った私達も後に続いた。

 

「・・・私達も行きましょうか。」

「そうね。」「そうですね。」

 

ディオドラも何も言わず後ろを付いて来る。

その後ろからゆっくりとした歩みながらも、ゼファードルもついて来た。

ボロボロだった彼だが、今は眷属達の治療の甲斐あって人前に出られるレベルに回復している。

 

自業自得とは言えゼファードルの実力は確かの物だった筈だ。

そんな彼を容易く沈めた彼は・・・いったいどれ程の力を持っているのだろうか。

私は暫く見ない間に急激に力を付けた・・・『サイラオーグ・バアル』の大きな背中から目が離せなかった。

 

 

 

幾つかの疑問が頭を過る中、遂に会場となる一室に辿り着いた。

私達は横一列に、眷属をその後ろに並ばせる。

準備が出来た事を確認したメイドが横へ避けると、扉が静かに開け放たれた。

 

避けた先で頭を下げる彼女の横を通り過ぎながら中へ歩を進める。

その部屋は一種のコロシアムの様な作りをしていた。

中央のスペースを覆い階段状に設けられた席で、悪魔界の重鎮達が私達を見下ろしている。

そして私達が進み出た正面には四大魔王の姿があった。

 

私達は中央スペースの真ん中辺りまで来ると一斉に片膝を付き、頭を垂れる。

その時何人かの対応が遅れて目立っていた・・・後で匙は説教です。

私達の様子を見てひとりの魔王が立ち上がり口を開いた。

 

「楽にしなさい、これからを担う若き悪魔達・・・今日の主役は君達だ。」

 

サーゼクス様の言葉に頭を上げる。

いつもと同じ柔らかな笑みを浮かべていても、彼から感じられる圧力は魔王のそれだった。

更に周囲から突き刺さる数多の視線・・・それらに一層緊張感を高めながら気を引き締める。

 

正面に魔王として座るお姉様の後ろに昴さん達の姿も見えた。

目立たぬ様、お姉様の後ろに控える形で私達の事を見守ってくれている。

 

ふと目が合うと、優しい笑顔を向けてくれた。

 

その笑顔に顔が赤くなるのを感じたが、それ以上に体の硬さが取れた様に感じた。

思わず私自身も笑みを浮かべそうになった所で今の状況を思い出し、気を引き締める。

 

 

 

サーゼクス様の口から今回の趣旨が伝えられた。

将来悪魔界を背負う事になるであろう『名』と『実力』を持つ私達。

そんな私達を成人前にこの場を利用して各々方に紹介する事・・・それが私達が集められた目的だ。

 

 

 

私はこの式が一生忘れられない物になるとは思っていなかった。

 

 

 

事の発端は式の終盤・・・サーゼクス様の一言から始まった。

 

「・・・最後に若く希望溢れる君達のこれからの目標を聞かせて貰えないかな?」

「目標・・・ですか?」

「あぁ、僕達は君達には本当に期待しているんだ。

 だからこそ私達に君達のこれからの目標を聞かせて欲しいんだ。」

 

サーゼクス様の言葉に真っ先に反応したのはサイラオーグ。

自身の夢は「魔王になる事」と何の迷いも無く言い切る姿は、あの場に居た全員が感嘆した物だ。

 

次に発言したのはリアス。

レーティングゲームの覇者となり、眷属と共に精進していく事・・・。

それが彼女の近未来に向けての目標だった。

現在のレーティングゲームの順位は上位に殆ど変動が無い程レベルが高い。

そこで近い将来トップに立つと宣言したのだから、私達を囲む上級悪魔達も感嘆していた。

 

 

 

その後も順に皆が発言していく中、等々私の番になった。

・・・私自身、この胸の内を告げればどういう反応をされるのか分かっている。

それでも・・・これが私の夢だから・・・。

意を決して顔を上げると私は口を開いた。

 

「私の目標は・・・冥界にレーティングゲームの学校を建てる事です。

 レーティングゲームの学校と言っても、現存する上級悪魔や特例の悪魔の為の施設ではありません。

 平民、下級悪魔、転生悪魔・・・悪魔が平等に学ぶ事の出来る学校を作る事・・・それが私の目標です。」

 

ひと息に言い切ると一瞬の静寂の後・・・会場は笑いに包まれた。

 

「「「ハハハハハハハハハッ!!」」」

 

笑い声と共に私に降注ぐ見下す視線。

・・・分かっている、これが現実だ。

 

「これは笑える、笑い話としては腹が捩れるぞ!!」

「言うに事を欠いて下級の為の学校?冗談としては中々の物だぞ!!」

「無謀にして傑作!!そんな物を語るのが正式な場でなくて良かったものだ!!」

 

馬鹿にされる事は承知していた。

彼等にとって私の方がおかしいという事も・・・。

それでも私は下を向く事無く、震える手を抑え付けながら口を開いた。

 

「私は・・・本気です。」

「本気ならば尚の事・・・その様な愚行は考え直されよ。

 いくら悪魔界が変革期に入っているとはいえ、下の者が力を示して伸し上がるのが我々の常だ。

 それを乙女の夢事の様に語っては旧家の顔も丸潰れでありますぞ。」

 

確かにそうだ・・・悪魔社会では力なき者は上に上がる事は出来ない。

だが、現実に上にのし上がった者の例は殆ど無い。

それは何故か。

簡単だ・・・上級悪魔達が自身の権力を維持したいが為に有望な者を握り潰すからだ。

だからこそ『はぐれ悪魔』と言う存在が生まれてしまうのだ。

 

自分の力を正常に評価して貰えない。

力はあるのに身分差の為逆らう事が出来ない。

 

真実を知ってしまったからこそ、私は人間界へ留学する事を決めたのだ。

悪魔と違い進んだ社会形成を持つ人間の知識を得る為に・・・。

私の想いは駒王に行く前に両親に伝えてある。

2人とも笑顔で「頑張れ」と言ってくれた。

 

・・・だからこそ、不甲斐無い姿を見せる事しか出来ない自分が許せない。

 

でもだからこそ視線を逸らす事はしなかった。

応援してくれる両親に、お姉様に・・・そしてあの人に格好悪い姿を見せたくは無かったから・・・。

私は嘲りの笑いを歯を食い縛り、拳を握り締めて我慢する事しか出来なかった。

だからだろう、自分の事で精一杯になり、眷属の行動を察知する事が出来なかった。

 

「何でっすか!?何でソーナ様の夢を馬鹿にするんですか!?

 例えそうであったとしても、貴方達に会長の夢を馬鹿にする権利があるんですか!!」

 

一歩前に出て反論してしまったのは匙だった。

匙は私の事を心から慕ってくれている・・・だから思わず体が反応してしまったのだろう。

私は慌てて匙の事を嗜めた。

 

「匙、やめなさい!!

 申し訳ありません・・・私の教育不足です。」

「ソーナ様っ・・・何で・・・。」

 

私は強引に匙を後ろに下げて頭を下げる。

そしてこの時にはもう、我慢していた物を押さえる事が難しくなっていた。

自分の不甲斐無さが、この子に・・・いや、この子達に惨めな思いをさせている事が悔しかった。

 

「・・・ふん、主が主なら下僕も下僕と言った所か。

 全く、これだから人間の転生者等たかが知れていると・・・。」

 

無情に響いた私の眷属を侮辱する言葉に、それに呼応する様に増えた嘲りの笑いに・・・。

私の瞳から堪えていた物が零れ落ちた。

 

 

 

 

その時だった。

突然、会場が身も凍る様な殺気に包まれたのは・・・。

会場に木霊していた嘲りは一瞬の内に静まりかえった。

 

 

 

 

 

そして次の瞬間・・・私は優しい温もりに包まれていた。

 

「素晴らしい夢です。

 僕にもぜひ手伝わせて下さい。」

 

耳元で囁かれたその言葉に、私はもう涙を堪える事が出来なかった。

 

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