正義の魔王 inハイスクールD×D   作:しらこつの

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第03話 黒歌

Side 黒歌

 

目を覚ますと体に痛みが走った。

色々と限界だったから体は猫になってしまっている。

怪我は治療されて包帯を巻かれている。

 

私は痛みを我慢しながら体を起こし、辺りを見回す。

そこは見知らぬ部屋。

猫という小さな体に不釣り合いな大きなベッドに横になっていたみたいだ。

 

あの後私は如何したんだっけ?

 

追っ手に追われて、罠に掛かって、傷つけられて・・・。

もう動けなくなって・・・・確か気を失う前に誰かの後姿を見た気がしたにゃ!!!

・・・いや・・・・たぶん気のせいだにゃ。

まだ死んでないって事はあいつ等に捕まったのかにゃ・・・。

生きている事は嬉しいにゃ。

けど、今後の事を思うとあの時死んでいた方が良かったのかもしれないにゃ。

逃げたくてもまだそんな力は戻ってないにゃ。

それに・・・それにもう疲れたにゃ。

 

そう思って体をベッドに倒す。

何も考えたくなくてもう一度眠ろうとした時、部屋の扉が開く音がした。

 

「おや?

 目が覚めたのかい?」

 

入ってきたのはスレンダーで中性的の顔立ちの女(?)の人。

優しそうな笑顔でこっちに近づいてくる。

警戒して立ち上がろうとしたけど、体が動かない。

 

「体の調子はどうかな?

 お腹も空いているだろうし少し待っているといい。」

 

彼女(?)は私の様子を見て頭を一撫でするとすぐに部屋を出て行った。

何かされると思って警戒していたのに優しくなでられ、呆然としている私。

 

いったいどうなってるにゃ?

 

 

 

 

Side 昴

 

僕達はそのままにしていた林の扉を潜り、家へと帰り着いた。

まずは黒猫の治療だ。

魔術で直してもいいけど、何か弊害が出てもいけないから普通にする。

消毒をして包帯を巻いて終了。

何処も骨に異常はないからこれで大丈夫だ。

それにしても衰弱が激しい。

・・・いったい今までどんな環境で過ごしてきたんだろう。

 

もともとは女性だったことも考えて、空いている部屋のベッドに寝かせておいた。

時々様子を見て起きた時に話を聞けれるようにしておく。

 

「それにしてもあの子はいったいなんなんでしょうか?」

「・・・さあ、わからないわね。

 でもこの世界特有の生き物なのは確かね。」

「・・・この世界はどんな世界なんでしょう。」

「あの子から何か話が聞けるといいわね。」

 

今はひと段落して、アンナさんが入れてくれたお茶を飲みながらくつろいでいる所だ。

 

「新しい権能の方はどうだったの?」

「あ、はい、あの権能の本当の能力は空間と空間をつなげて扉を作ることだと思います。」

「扉を作る?」

「はい、僕の感覚で、ですけど。

 多分ですけど一度扉を作っておけば、何処からでも僕の氣を使って、その扉を通り移動することが可能です。

 後はさっきみたいに何もない所に扉を作ると、僕の信頼している人しか見えないんだと思います。

 だからすでに僕の眷属であるエリカさん達はいつでも扉を通る事ができると思いますよ。」

「あら、かなり便利ね。」

「そうでもありませんよ?

 将来はどうなるかわかりませんけど、今の段階では消費する氣が多すぎます。

 新しく扉を2つ作ったその日、まつろわぬ神が現れたらやばいですね。」

「だったら扉を作るのは一日ひとつが限界って事ね。」

「そう言う事ですね。

 ああ、扉をつなげて通るのは大して氣を使わないので、心配ないですよ。」

「あら安心したわ。」

 

エリカさんと話していると部屋の扉が開き、馨さんが入ってくる。

馨さんは黒猫の様子を見に行っていた。

 

「昴君、彼女目を覚ましたよ。」

「本当ですか。

 安心しました。」

「そうだね・・・でもかなりこちらを警戒しているみたいだ。

 怪我をしているから攻撃は出来ないし、逃げられる心配もないだろうけど、なるべく早く話をした方がいい。」

「それもそうね。

 彼女も混乱しているでしょうし・・・それじゃあ早速行きましょうか。」

 

僕達は彼女を寝かせている部屋へと向かった。

部屋へ入るとびくっ、と体を震わせ警戒するようにこっちを見つめる黒猫の姿があった。

僕はなるべく怖がらせないようにゆっくり近づきながら声を掛ける。

 

「体の方は大丈夫ですか?」

「・・・・。」

 

警戒しているのか反応がない。

猫の姿だと話せないのかな?

 

「少しお話をしませんか?」

 

僕はそういうとベッドに腰掛け黒猫を見つめる。

僕から離れようとしたのか体を動かそうとして顔を顰めている。

まだ傷が痛むようだ。

傷に触れない様に優しく黒猫の体を撫でていく。

いきなり触れられて体を強張らせていたけど、僕に敵意がないのが分かったのか緊張が解け、気持ちよさそうにしている。

 

「あの時あなたが襲われている時に助けに入ったのが僕達です。

 エリカさんの話だとその時にはすでに気を失っていたみたいだから覚えていないでしょうけどね。」

 

黒猫を撫で続けながらあの時の状況を放していく。

気持ちよさそうにしていた体が一瞬震えた。

それを安心させるように続ける。

 

「大丈夫ですよ。

 彼らは僕がちゃんと懲らしめておきました。

 それにここにいれば安全ですからゆっくり休んでください。」

 

撫でられながら話を聞いていた黒猫だったが、僕が懲らしめたと言ったっ瞬間驚いたようにこちらに顔を向けた。

その時痛かったのか顔を歪めていたけど・・・。

 

「ほ、本当にあなたが倒したのかにゃ?」

 

わかっていた事だが猫がしゃべった。

それに語尾が可愛い。

 

「ええ、そうですよ。」

「ただの人間にしか見えないのにゃ。

 神器でも持ってるのかにゃ?」

 

聞きなれない単語が聞こえた。

恐らくこの世界特有の物の事だろう。

僕は優しく微笑んで、

 

「詳しい事はまた明日にしましょう。

 さっきも言ったようにここに居れば安全です。

 あなたはかなり弱っているみたいですし、ゆっくり休んでください。」

 

最後にもう一撫でしてベッドから立ち上がり毛布を掛けなおす。

目覚めたといってもまだ体力も戻っていない。

黒猫はすぐに目を閉じて寝息を立て始めた。

 

「今日はここまでにしましょう。」

「そうね、敵ではないとわかってもらえたみたいだしね。

 無理させても悪いわ。」

 

小声で声を交わしながら部屋を出る。

そして僕達も今後の事は彼女の話を聞いてから、という事になりその日は休むことにしたのだった。

 

 

 

次の日、いつものように起き稽古をして汗を流す。

昨日使った氣もちゃんと回復している。

稽古を早めに切り上げて黒猫の様子を見に行く事にした。

 

なるべく音を絶てないように扉を開ける。

しかしそこは猫、気配には敏感なのか目を開けてこちらを見た。

まだ寝ぼけ眼で覚醒はしてないみたいだ。

怪我はまだ治ってはないけど、体力の方はそれなりに戻っているのがわかる。

昨日に比べて顔色もいい

 

「起こしてしまいましたか?」

 

彼女は体を起こしながら返事をしてくれた。

 

「ありがとうにゃ。

 一晩ゆっくり休む事ができたにゃ。」

「それは良かったです。

 体は動かせますか?朝食に消化にいいものを用意してもらっているんですけど。」

「大丈夫だにゃ。

 ちょっとは痛いけど、動かせないほどじゃないにゃ。」

 

そう言ってベッドから飛び降りると、黒猫が突然光り出した。

光が収まるとそこには、昨日襲われていた女性が立っていた。

 

「と、突然ごめんにゃ。

 で、でも食事をするならこっちの方がいいのにゃ。」

 

彼女は顔を赤くしながらそう訴える。

綺麗な黒髪に着崩した着物。

着崩している所から見える白い肌はとても扇情的だ。

そして最大の特徴は頭についている猫耳とお尻の辺りから生えている2本の尻尾だ。

ピコピコと動く耳と、振り振り揺れている尻尾が何とも可愛らしい。

 

「そ、それじゃあ行きましょうか。」

 

そう言ってリビングへと案内する。

リビングに入るとすでにエリカさん達が待っていた。

 

「あら、もう平気なの?」

「だ、大丈夫にゃ。」

 

声を掛けてきたエリカさんにつっかえながらも返事をする猫耳娘。

彼女様に準備してある席の椅子を引き着席を促す。

 

「どうぞ座ってください。」

「ありがとにゃ。」

 

彼女が座ったのを確認して僕も席に着き、朝食を食べ始める。

 

「そうだ、まだ自己紹介をしてなかったね。

 僕の名前は神藤昴。

 よろしくお願いしますね。」

「私はエリカ。

 エリカ・ブランデッリよ。」

「僕は沙耶宮馨だよ。」

「それであっちでお茶の用意をしてくれているのが、エリカさんの助手兼この家のメイドのアリアンナさん。

 よかったらあなたの名前も教えてもらえませんか?」

「く、黒歌って言うにゃ。」

「黒歌さんですか・・・素敵な名前ですね。

まあ、今は自己紹介だけにして、続きは食事が済んでからしましょう。

 僕達もですけど、黒歌さんも聞きたい事があるでしょうし。」

 

そして全員食べ終わりアンナさんが用意してくれたお茶を飲んで一息ついた処で話を切り出す。

 

「そろそろ話を始めましょうか。

 ・・・黒歌さん、どうして襲われていたのですか?」

「・・・そ、それは・・・わ、私がはぐれ悪魔だからだにゃ。」

 

悪魔・・・悪魔って言うとあの悪魔か?

僕も何度か戦った事がある。

でも彼女からそこまで強い力は感じないし・・・。

 

「・・・はぐれ悪魔というのはなんでしょうか?」

「にゃっ!!!!し、知らないのかにゃ!!!!

 ・・・は、はぐれ悪魔っていうのは・・・・。」

 

言い難い事なのだろうか?

そのまま黙り込んでしまった。

 

「大丈夫よ黒歌。

 例えはぐれ悪魔っていうのがどんな存在でも、私達はあなたに何もしないわ。」

 

エリカさんの優しい呼びかけに意を決したのか口を開く。

 

「・・・はぐれ悪魔っていうのは、主である悪魔の所から逃げ出したり、主の悪魔をこ、殺しちゃったりした悪魔の事を言うにゃ・・・。」

「・・・黒歌さんはどちらなんですか?」

「・・・・・後者にゃ。」

 

殺しか・・・。

悪魔の世界がどういった物か知らないけど、彼女が理由なく殺しをしたとは思えない。

カンピオーネの勘もそう言っているような気もする。

それに彼女から感じられる氣が穢れていない。

殺しなど犯罪に自ら進んで手を染めた人の氣は例外なく汚れているのだ。

この感覚は僕にしかわからないみたいだけど・・・。

 

自分のした事を告白してくれた黒歌さんは怯えたように下を向いてしまっている。

やっぱり何か理由があったんだろうな。

エリカさん達も優しい目で黒歌さんを見つめている。

 

「・・・黒歌さん。」

 

僕が声を掛けるとびくっと肩を震わせる。

僕は椅子から立ち、黒歌さんを正面から抱きしめた。

 

「大変でしたね・・・・・大丈夫です。

わかりますよ。

 主を殺したのも何か理由があったからでしょう。」

「ッ!!!!ど、どうして・・・。」

 

僕は何も言わず抱きしめ続けながら、背中をさする。

黒歌さんは今まで我慢してきたものが堰切れるように涙に目を浮かべながら言葉を紡ぐ。

 

「辛かった。

何度も諦めそうになった。

でも、でも、もう一度白音に会いたかったから。

 私はまた妹と静かに暮らしたかっただけなのにゃ。」

 

今まで溜まっていた物が零れ落ちる。

それを僕は黙って受け止める。

 

 

 

暫くして泣き止んだので、体を放し頭を撫でてあげると、状況を理解したのか顔が真っ赤になっていたのが可愛らしかった。

でもその表情はどこかスッキリしているように見えた。

 

「ありがとうにゃ。

 御蔭でスッキリしたにゃ。」

 

落ち着いた黒歌さんは僕達に初めて笑顔を見せてくれた。

その笑顔に見とれてしまったのは内緒だ。

 

「次は私から質問してもいいかにゃ?」

「いいですよ。」

「昴達は何者だにゃ?」

「そうですね・・・・・でしたら少し僕達の話をしましょうか。」

 

簡単に信じてもらえないかもしれないけど、僕は話す。

僕が何者で、僕達がどういった存在なのか。

昨日の内に彼女には全て話すと決めていたのでエリカさん達も黙って聞いてくれている。

僕の話に驚きを隠せない黒歌さん。

普通なら異世界から来たとか、自分は神殺しですとか、信じられるものじゃない。

 

「・・・そういった理由でこの世界に僕達は来ました。

 この世界の事を調べている時に、黒歌さんが襲われている所に遭遇して、助けに入ったって所ですね。

 だから僕達まだこの世界について何も知らないんですよ。」

「・・・・・し、信じられないにゃ。

 だ、だって昴達みんなただの人間にゃ。

 そんな世界を移動するだにゃんて・・・。」

「ああ、それだったら。」

 

僕はそう言って氣を少し開放する。

怖がらせないようにほんの少しだけど。

それを感じたのか黒歌さんはさらに驚いた表情をする。

 

「な、なんなのにゃ。

 こんな魔力感じた事ないにゃ・・・。」

「黒歌、驚きすぎよ。

 昴はほんのちょっとしか魔力を開放してないのよ。」

「こ、これでほんのちょっと!!!!」

「これで信じてもらえましたか?」

「さっきの魔力が本当に少しだけだっていうなら、昴はこの世界で最強にゃ。

 あのドラゴンにも勝てるのにゃ。」

 

まあ、なんとか信じてもらえたみたいだ。

 

「という事でこの世界の事を教えてもらえませんか?」

「わ、わかったにゃ。」

 

黒歌さんに説明してもらった事を纏めるとこんな感じだ。

この世界には遥か昔から神、天使、堕天使、悪魔、妖怪といった異形の者達が居る。

四大魔王が率いる悪魔勢と、天使が堕天した存在である堕天使が率いる『神の子が見張る者(グレゴリ)』と、中でも聖書の神が率いる天界とで戦争をしていた。

しかし二天龍との戦闘でどの陣営も疲弊、今は休戦状態らしい。

中でも四大魔王がその戦いで亡くなり、もともと繁殖力の弱い悪魔が絶滅の危機。

そこで悪魔の駒(イービルピース)と呼ばれる物を開発。

他種族でもこれを使えば悪魔に転生する事ができるようになった。

これにより少しずつだが悪魔人口も増えているそうだ。

 

「それじゃあ黒歌さんはもともと悪魔だったわけではないんですね。」

「そうにゃ。

 私はもともと猫又、妖怪だにゃ。

 力の強かった私に目を付けた悪魔がいて、妹の白音を人質にとられて無理やり眷属にされたのにゃ。

 私が言う事を聞いていれば妹には手を出さないって約束だったのに、あいつ白音にも才能がある事がわかると白音も悪魔にしようとしたのにゃ。

 ・・・白音を守るためにはああするしかなかったのにゃ。」

 

悪魔の駒を使って強引に自分の眷属にする奴らが多いみたいだ。

今ではそう言う事も規制されてきているって話だけど、黒歌さんは運が悪かったとしか言えない。

いやになって逃げたとしても、はぐれ悪魔認定されてしまって逃げ続ける事になってしまう。

はぐれ悪魔になると力に飲まれ狂暴化するケースが多い。

だから悪魔達ははぐれ悪魔を見つけたら始末する事にしている。

 

「だから黒歌さんは追われていたんですね。」

「・・・そうにゃ。」

「妹さんはどうなったの?」

「・・・途中までは一緒に逃げていたけど、いつの間にかはぐれてたにゃ。

 でも人間界にいるって耳にしたからやっとの思いでここまで来たのにゃ。」

「黒歌はこれからどうするんだい?」

「・・・いつまでもここに居たら迷惑がかかるにゃ。

 だから今日の内にでも・・・・・。」

 

黒歌さんはここから出ていくつもりらしい。

傷付きながらも妹さんのためにここまで必死になって生き抜いてきた。

ここで見捨てるなんてこと出来ないな。

 

「その必要はありませんよ。」

「・・・でも。」

「先ほども言いましたが、ここは黒歌さんの世界とは全く別の世界です。

 ここまで追手が来ることはありませんよ。

 まずはゆっくり体と心を休めてください。」

「そうよ。

それに私達の目的のためにもまだいろいろと情報が必要なの。

 あなたが居てくれると助かるわ。」

「それにこの世界には人間とは別の種族が居るからね。

 そちらとも接触しないとまつろわぬ神と戦う時になっていきなり邪魔してきても厄介だからさ。

 もしかしたら黒歌の誤解を解く機会もあるかもしれないだろ。」

「もちろん妹さんの捜索も手伝います。

 黒歌さんが外に出たらいつ襲われるともわからないですし・・・。

 そういう訳で黒歌さんは今日から僕達の家族の一員ですね。」

「えっ・・・いや・・・・・どうして・・・。」

 

困惑している様子の黒歌さん。

 

「これからは一人で頑張らなくてもいいんですよ。

 あなたの事は僕達が支えますから。

 一緒にがんばりましょう。」

 

そう言い聞かせるように言うと、黒歌さんは顔を歪めて、涙を零し声を上げて泣き出してしまった。

 

「うわあああぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・」

 

そんな彼女をそっと抱きしめ泣き止むまで優しく撫で続けてあげるのだった

 

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