Side 昴
黒歌さんが家族になってからもう数ヶ月がたった。
その間に僕達は黒歌さんの情報を頼りに悪魔が管理している土地に家を買い、そこをこの世界の拠点として使っている。
けど未だその悪魔とは遭遇したことがない。
次にこの世界でも僕達の結社の活動を始めた。
僕は高校卒業と同時に新たな結社を設立した。
僕をトップに補佐のエリカさんと馨さん。
そして配下に赤銅黒十字と沙耶宮家。
主な活動はまつろわぬ神関連の対応とそこで出た被害を僕達自ら引き負う事。
後はいろんな所からやって来る依頼をこなす事。
これは裏の仕事。
被害を自ら引き負うって事はかなりの額が飛んでいく。
だから僕達は表向きパオロさん達に元金を出してもらい銀行まがいの事をしている。
でも表でも僕の信念に則って活動している。
どこの企業からも見捨てられた会社の立て直し。
殆ど無いに等しい利子での融資。
もちろん僕達の不利益になるような事はやっていない。
エリカさん達の腕もあって今では一流と言われる会社になっている。
そんな僕達の結社の名前は『ディスガイア』。
そしてこの世界でも表の仕事を始めた。
あまり表だって動く事はしていないけど、巷で噂になっているらしい。
その間家から出られない黒歌さんは神藤流の魔力コントロールの稽古中だ。
最初は僕が付きっ切りで教えていたけど、数週間もたったらその必要もなくなった。
今では魔力コントロールだけならエリカさん達と同レベルだ。
黒歌さんは『仙術』と呼ばれる物を使うらしい。
これは自身の魔力だけではなく、周囲に漂っている魔力を自身に取り込んでより強力な物として使う術らしい。
けれど危険も多いらしい。
周囲に漂っている魔力には邪気と呼ばれる体に取り込めば毒となる物も含まれているらしい。
それを選別して取り込むのは難しいとの事。
けれど神藤流の魔力コントロールを会得した黒歌さんは容易くそれらが出来る様になった。
今は今迄出来なかった術にも挑戦している。
今の生活を楽しんでくれているようで何よりである。
そうして過ごしていたある日の事。
今日は今迄集まった情報の整理をしようという事になった・・・のだが。
「うぅ・・・何でこういう時だけ負けちゃうんだろう。」
僕は現在話し合うにはまず甘い物でしょうという女性陣の提案により、じゃんけんに負けて買い出しに出かけていた。
こういう時に限ってお菓子を切らしているし、こういう時に限ってじゃんけんに負ける。
・・・いつもだったら負けないのに。
コンビニに入り適当にお菓子を買う。
急いで帰ろうとなるべく早くコンビニを後にする。
家に向かっている時ふと近くで激しい魔力のぶつかり合いが感じられた。
気になった僕はエリカさん達に悪いと思いながらもそちらに足を向けるのだった。
Side ソーナ
私、支取蒼那ことソーナ・シトリーは悪魔である。
幼馴染であるリアスと一緒に人間界にある駒王学園とその地域一帯の管理を任されている。
私達は日中を、彼女達は夜を担当している。
新年度に入り、忙しくなって来ていた今日この頃。
珍しく私達が配った召喚用のチラシに反応があった。
幾ら夜の仕事をリアス達に任せているといっても私達も悪魔。
自分達の力を高める為に悪魔の仕事もしなくてはいけない。
ですが今日は本当に珍しく私の指名。
いつもなら忙しくてお断りするのですが、今日はあまり仕事も無かったので行ってみようと思います。
「呼ばれたのでちょっと行ってきますね。」
「はい、お気を付けて。」
私の女王である真羅 椿姫に一声かけて転移する。
転移した先は薄暗いどこかの廃工場だった。
偶にいるのだ、何かに凝って人目のつかない所で召喚して来る人が。
今回もそういった人だと思い周囲を見渡してみるが誰もいない。
そこに突然後ろから悪魔の気配がした。
すぐに振り向くとそこに居たのは、顔は獅子であるのに体は人という異形の姿をした者だった。
「ッ!!!!
あなたはA級はぐれ悪魔のレジオ!!!!」
「そうだその通りだ。
お前の姉につぶされた悪魔の戦車だ。」
それだけ言うと襲い掛かってくる。
「くっ!!!!」
かなりの速さだったが何とか転がるように避ける。
恐らく姉が粛清した悪魔の眷属の一人だろう。
いい噂を聞かない悪魔だったし仕方なない事だと思う。
その中の眷属の一人が逃げ出したと教えてもらい、気を付けてとも言われていた。
それがこいつだ。
「俺は必ずセラフォルーを殺す。
その為にお前を人質にさせてもらう。」
またしても殴り掛かってくる。
次も避け様としたけど、体制を整えておらず完璧に避けきれなかった。
少し掠っただけなのに吹き飛ばされてしまった。
何とか立ち上がるも自分の体を見てみると切られていて血が出ていた。
レジオの手を見てみるとそこには鋭い爪が見えた。
あれで切られたのだろう。
一人では無理と判断して自分の眷属達を呼ぼうとしても相手がそれを許してくれない。
次から次へと攻撃してくる。
次第に避けられない回数が増えていく。
すでに体中切りつけられている。
それでも致命傷が無いのは甚振られているからだろう。
「そろそろ詰まらなくなってきたな。
もう終わりにしてやろう。」
私は最後の力を振り絞り攻撃魔法を放つ。
けれどレジオは嘲笑うかのようにそれを躱し、すでに私の目の前にいる。
私はやられると思って思わず目を瞑ってしまった。
しかし襲ってきたのは痛みではなく謎の浮遊感と、優しく包まれている感覚だった。
「貴様、何者だ。」
近くからレジオの声がする。
私は訳が分からず目を開ける。
そして状況を理解する。
知らない男の人に抱きかかえられている。
それもお姫様抱っこと呼ばれるものだ。
「大丈夫でしたか?」
話しかけられさらに自分の状況を鮮明に理解してしまう。
顔が熱くなるのがわかる。
ちらって顔を見たけど今まで見た事ないほどかっこよかった。
って今はそんな事をしている状況じゃない。
「あ、ありがとうございます。
で、ですがここは危険です、早く逃げてください。」
そう促してみても、気にする素振りもなく、私を床に降ろしてくれた。
彼は振り返り、レジオを見据えながら聞いてくる。
「あれは、はぐれ悪魔というものでしょうか?」
「!!!!どうしてその事を!!!!」
「どうやら当たりみたいですね。
けど彼女以外のはぐれ悪魔を始めてみたな。」
彼は小さい声で何かを呟きレジオの方に向かって歩いていく。
「き、危険よ。」
「大丈夫ですよ、すぐ終わりますから。」
私の注意喚起も軽く流してそのまま向かって行く。
「邪魔しやがって。
ただの人間が調子に乗るなよ。」
レジオは彼にすぐさま殴り掛かる。
それを彼は避ける素振り無い。
レジオの攻撃が当たると思ってその時、彼がぶれたかと思うと、いつの間にか彼はレジオの後ろにいた。
そしてレジオは・・・。
「うぐぅぅ・・・・ぐわぁぁぁ!!!!」
いきなり呻き声を上げるとはじけ飛んだ。
唖然とそれを見つめる私。
そんな私に彼が再び近寄ってくる。
「来るのが遅くなってすみませんでした。
立ち上がれますか?」
「は、はい、ありがと・・・・いたっ。」
優しく声を掛けてくれ手を差し伸べてくれる。
唖然としていた私は警戒するのも忘れて、その手を取り立ち上がろうとするけれど、足を挫いたのか痛くて立ち上がる事が出来ない。
そんな私を見て、
「足を挫いているみたいですね。
・・・・・少し失礼しますね。」
彼は先程と同じように私の背中と膝裏に腕を入れて抱え上げたしまった。
「ひゃ!!
だ、大丈夫ですから、お、降ろしてください。」
「無理してはいけません。
僕の家がこの近くですから、簡単な治療だけでもしてしまいましょう。
その後家の方に送りますから。」
そう言って私はなすがまま彼の家に連れて行かれるのだった。
・・・・・恥ずかしかった。
Side 昴
僕が魔力を感じた所に行ってみるとそこでは獅子の顔をした悪魔にこの近くの高校・駒王学園の制服を着た女の子(こちらも悪魔)が襲われている所だった。
僕はすぐさま駆け出し女の子を抱き上げその場を離れる。
突然の乱入に驚いた獅子は、
「貴様、何者だ。」
と言っているのが聞こえる。
それを無視して傷だらけの女の子に声を掛ける。
「大丈夫でしたか?」
その時女の子の顔をしっかり見たけど、とても可愛らしい顔つきをしていた。
黒髪はショートで端正な顔立ち、泥だらけで傷だらけだけど、その美貌は全く損なわれていない。
そんな彼女だがなぜか顔を赤くしている。
不思議に思っていると、
「あ、ありがとうございます。
で、ですがここは危険です、早く逃げてください。」
と僕の心配をしてくれた。
当たり前か、多分ただの人間だと思われているだろうし。
でも優しい人だ。
こんな状況で他人の心配が出来るんだから。
そんな事を思いながら彼女を優しく床に降ろす。
そして例の獅子に振り返る。
「あれは、はぐれ悪魔というものでしょうか?」
「!!!!どうしてその事を!!!!」
彼女は驚いているけど気にしない。
そして予想通りみたいだ。
「どうやら当たりみたいですね。
けど彼女以外のはぐれ悪魔を始めてみたな。」
そう呟きながら獅子の方に歩き出す。
氣が穢れきってしまっている。
・・・・・これが本当のはぐれ悪魔か。
「き、危険よ。」
心配してくれる彼女の声か聞こえ安心させるように僕も声を掛ける。
「大丈夫ですよ、すぐ終わりますから。」
そう言ってそのまま獅子に向き合う。
機嫌が悪そうに獅子が吠える。
「邪魔しやがって。
ただの人間が調子に乗るなよ。」
そのまま獅子が殴り掛かってくる。
この間の悪魔よりも遅い。
力はこっちの方が上かな?
でも怒り狂っているっていうか、我を忘れて自分の戦い方が出来てないっていうか、そんな感じがする。
これがはぐれになるって事なのかな?
勢いよく突っ込んでくる獅子に落ち着いて対応する。
黒歌さんの話だと普通のはぐれ悪魔破壊でしかないって話だし、殺しちゃった方がこの悪魔の為にもなるよね。
そう思い一撃で倒す事に決めた。
こちらに当たる直前、この間と同じようにカウンターで拳を素早く叩き込む。
その際相手に氣を送り込みその氣を獅子の体で暴発させる。
汚れたくはないので殴ってすぐ少し離れる事を忘れない。
「うぐぅぅ・・・・ぐわぁぁぁ!!!!」
獅子はすぐに呻きだし爆発した。
これが神藤流七乃型『爆』だ。
振り返り獅子が死んだ事を確認して女の子の方に向かう。
彼女は何やら驚いている。
「来るのが遅くなってすみませんでした。
立ち上がれますか?」
「は、はい、ありがと・・・・いたっ。」
そんな彼女に手を差し伸べる。
特に警戒する様子もなく僕の手を取って立ち上がろうとしたけど、足を痛めたのか立ち上がれない。
僕は少し考えて、
「足を挫いているみたいですね。
・・・・・少し失礼しますね。」
と言って彼女をさっきの様に抱き上げる。
彼女は怪我もしているしこのまま帰らせるわけにはいかない。
「ひゃ!!
だ、大丈夫ですから、お、降ろしてください。」
って言われたけどここは強引に行こう。
「無理してはいけません。
僕の家がこの近くですから、簡単な治療だけでもしてしまいましょう。
その後家の方に送りますから。」
そう言って歩き出してしまう。
でもやって後悔した。
帰り道じろじろいろんな人に見られた。
・・・・恥ずかしかった。