第08話 結婚
Side ソーナ
私は今日も生徒会室で仕事に追われている。
最近忙しくなって昴さんの所に行けていない。
偶に連絡は取り合ったりもするからいいけれど・・・。
許せないのが、お姉様がしょっちゅう昴さんの家に遊びに行っている事だ。
魔王の一人であるお姉様が人間を処に入り浸っていると知られたら、またいらない批判を受ける。
それでなくともあんな恰好をしていて周りからの評価は低いというのに。
悩みの種がもう一つある。
この事に昴さんは関係ない。
リアスの事である。
何でも最近結婚の話が上がってきているらしい。
私達は純血悪魔だ。
その血を守る為には必要な事であり、仕方のない事だとわかっている。
だが約束が違う。
約束ではリアスの大学卒業まで待つという事だったと聞いている。
それをいきなり反故にして今回の話が舞い込んできた。
グレモリー家にも事情があるのはわかるが、その相手が許せない。
ライザー・フェニックス
フェニックス家の三男で、彼も純血悪魔だ。
フェニックスの特性である不死を利用して『レーティングゲーム』でも連勝を重ねているほどの強さも持っている。
しかしその才能に慢心し碌な努力もしない。
さらに素行が悪い。
多くの女に手を出しており、恐らくリアスの事も自分のハーレムの一員としか思っていない。
そんな奴がリアスの婚約者、ましてや結婚など幼馴染として喜べるわけがない。
その事を耳にして以来心配が絶えない。
考え込みながら仕事をこなしている時、生徒会室の扉が些か乱暴に開けられた。
何事かとそちらに目をやると椿姫が息を切らして入って来ていた。
「どうしたのですか?そんなに慌てて。」
「ソーナ様、大変です!!」
「何があったの?」
「リアス様がライザー様との結婚を賭けてレーティングゲームで勝負するとの事です。」
「なっ!!」
いったいどうしてそう言う話になった。
普通ならあり得ない。
レーティングゲームは成人した悪魔が行う物だ。
それをまだ成人していないリアスとあんな奴でも実力は高いライザーでは勝負にならない。
私は立ち上がり、
「詳しく話を聞く必要があるみたいですね。
椿姫行きますよ。」
リアスのいる旧校舎へと向かう。
旧校舎にあるリアスが部長を務める部活「オカルト研究部」。
少々彼女の趣味に疑問を持つ。
部室の扉をノックして入室する。
「・・・・ソーナ。」
「どういう事ですかリアス。」
突然やってきた私にリアス含め部員全員が驚く。
私は気にも留めずリアスに詰め寄る。
「ど、どうして生徒会長がここに。」
「彼女は部長の幼馴染、そして部長と同じ上級悪魔だよ。」
「えっ!!」
「というより生徒会は全員生徒会長の眷属だよ。」
後ろで私の事を兵藤君に教えているリアスの騎士の木場 祐斗。
そう言えば兵藤君とは初対面でした。
でも今は・・・。
「椿姫に聞きました。
何があったのですか?」
リアスは1つ息を吐くと、
「ライザーとレーティングゲームをする事になったわ。
お父様が強引に話を進めたら、ライザーがそれに乗ったみたいね。
でもそれをお兄様が止めて、最終手段としてレーティングゲームで決める事にしたみたいなのよ。」
「・・・・そうですか。
ライザーは一筋縄ではいきませんよ。」
「・・・わかっているわ。
それにハンデとして十日もらったわ。
その間に特訓して力をつける。」
ため息しか出ない。
・・・この幼馴染はこんなに残念だっただろうか。
「・・・リアス。
あなたはどうして・・・。」
「・・・ど、どうしたのソーナ。」
私の様子がおかしい事に気付いたのだろう。
心配そうに尋ねる。
「あなたはたかだか十日の特訓にライザーに勝てるとでも思っているのですか。」
「なっ!!」
「それにハンデが少なすぎます。
あなたは初心者なのですよ、準備期間ももっと貰えた筈です。
フェニックスの涙だって相手は使えない様にするとかもできたはずです。」
「・・・・わ、わかったわ。
私が軽率だったから・・・ね・・ち、ちょっと落ち着いて。」
少し取り乱しすぎた。
深呼吸をして気持ちを落ち着ける。
「・・・・それで勝算はあるのですか?」
「・・・わからないわ。
でも鍵はイッセーだと思っているわ。
そして負けるつもりはない。」
「・・・それはそうでしょう。」
そう言って兵藤君を見る。
兵藤君は自分が突然呼ばれて驚いている。
二天龍の1つを封じた神器「赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)」を持つリアスの新たな眷属。
確かに力をつければライザーと渡り合う事が出来るかもしれない。
でも・・・・。
「・・・・足りませんね。」
「・・・・・・どう言う事かしら。」
「確かに兵藤君の持つ神器は協力です。
ですが博打が過ぎます。」
「私のイッセーを馬鹿にするの!!」
「落ち着いてください。
あなたは兵藤君一人に頼るつもりですか。
そんな事をしたら彼が潰れてしまいます。」
「っ!!
・・・・そ、それは。」
「・・・少し待っていてください。」
私はあの人に連絡をするために部屋を出た。
もう頼れるのは彼しかない。
許可を貰い部室へ戻る。
「遅くなってごめんなさい。」
「何をしていたの?」
「あなた達を鍛えてくれないかとある人にお願いしてきました。」
「ソーナ!!
何を勝手に!!」
「リアス!!
あなたこそ現実を見なさい!!」
私の喝に全員が背筋を伸ばした。
「サーゼクス様がレーティングゲームで決められるようにしてくださって、あなたにもチャンスがあるように見えますが、今のままでは99%あなたは負けますよ。」
「そ、そんな事やってみないとわからないじゃない。」
「だから現実を見なさいと言ったでしょう。
恐らくグレモリー家もフェニックス家もあなたが勝つとは思っていないでしょう。
当たり前です。
ライザーと貴女の力が違いすぎます。
もちろん眷属の強さも。
レーティングゲームは誰か一人強い人がいても勝てない事はわかっているでしょう。」
言葉も出ないリアス。
悪魔の中で人気のゲーム。
リアスも何度も観戦した事がある。
私の言っている事が正しいとわかっているはずだ。
「・・・特訓は何処で?」
「グレモリー家の別荘で明日からやろうと思っているわ。」
「それではその彼を私がそこまで案内します。
彼に師事を受けるかどうか、最終的に決めるのはあなたです。」
それだけ言うと椿姫を連れて部室を後にする。
出ようとした時リアスから声を掛けられた。
「・・・ありがとう。
最後に一つ聞かせて・・・その人は誰なの?」
私は振り向かずに答える。
「私の命の恩人です。」
Side リアス
ライザーとのゲームが決まった次の日。
私達は特訓をするためグレモリー家の持っている別荘へ移動していた。
「ぶ、部長、重たいっす。」
「すでに特訓は始まっているのよイッセー。
それに祐斗も小猫もあなたよりたくさん持っているの。
泣き言言わずに頑張りなさい。」
「ひぇ~~~」
イッセーの叫びが後ろから聞こえたが気にせずに歩き続ける。
今考えているのは昨日のソーナの言葉。
昨日は感情的になってしまったが、ソーナの言っている事は正しい。
今考えてみればハンデが少なすぎる。
たった十日しかないのだ。
全員を鍛えるにしては時間が足りない。
それに鍛えるといっても自主練習が主になる。
やはりそれでは限界がある。
そう考えると鍛えてくれる人が必要になってくる。
ソーナには感謝してもしきれない。
いつも私の事を助けてくれる。
いつか恩返しがしたい物だ。
しかしひとつ懸念がある。
彼女が言っていた私達を鍛えてくれる人だ。
ソーナは自分の恩人だといった。
そう言われて思いつく人は、はぐれ悪魔からソーナを守ったという人間。
・・・まさかね。
考え事をしている内に別荘に到着した。
着いたらすでにイッセーはダウンしていた。
私達はすぐに着替えて特訓の準備をする。
一人になりたくて先に外に出る。
ソーナは決定権は私にあるといった。
断る事も出来る。
もし相手が私の考え通り人間だったらどうする。
そこで思考は止まってしまう。
後ろから声が聞こえる。
振り返れば私の可愛い下僕達が全員ジャージに着替えて歩いて来ている。
そんな彼らを見て心を決めた。
確かにあと十日しかない。
しかし私達だけでは限界がある。
ソーナが言ったようにイッセーに負担をかけるよう事をしたくはない。
それに紹介者はソーナだ。
彼女が信頼のおけない人を紹介するとは思えない。
「みんな揃ったわね。
今日からの特訓だけれど昨日ソーナが言っていた人に鍛えてもらう事にしたわ。」
「リアス・・・それでいいのですか。」
朱乃が心配そうに聞いてくる。
「不安はあるけど、私達だけじゃやっぱり限界があるわ。
藁にも縋る思いで信じてみましょう。
いいわね。」
「「「「はい!!」」」」
全員からいい返事が聞こえた時私の後ろで魔力の気配がした。
ソーナの物だ。
振り返るとそこにはソーナとその他に4人いた。
一人は男、残りは女性だ。
女性が一人メイド服を着ている。
その他はスーツ姿だ。
そして全員人間だった。
ソーナがこちらに向かってくる。
その後ろに彼らが続く。
「遅くなりました。」
「いいえ、私達も今来た所よ。
・・・それよりも・・彼らが。」
「ええ、紹介します。」
ソーナがそう言うと男が前に出る。
きっちり着こなしたスーツが良く似合う、容姿の整った男性。
「彼が私の恩人で今回あなた達の事を頼んだ神藤 昴さんです。」
ソーナの紹介に彼は頭を下げる。
「紹介にあずかりました。
神藤 昴です。」
その顔は見惚れるほどの笑顔だった。