黒龍を宿した少女(ドラゴンとは言ってない)   作:コカ・と栗鼠

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お宅訪問する第三話

 悪魔や天使や堕天使や、神様と呼ばれる存在は知っている。だが、それらがどんなものなのかは今一きちんと理解しているとは言い難い。

 ですので、それを知ってそうな方々に聞いてみることにしました。

 

「羽背負ってなんかケンカしてる奴らだよね?」

 

 うん。これは訊く人を間違えた。

 

「私達未満の者共ですね。流石に普通の魔人よりは強いでしょうが、我等アウターには及ばないでしょう」

 

 流石は元戦闘集団の副長。戦うこと前提ですか。

 

「不味い。それ以上でも以下でもないの。鶏肉は美味いのだが、あれらは余分なものが多すぎる」

 

 食欲魔人に訊いたのが間違いだった。やめてください、人間の方が余程美味いとか……。冗談に聞こえ――ああ、マジですか。

 ともあれ、かつて天使や悪魔なんかをしっちゃかめっちゃかにした方々なんだし、多少は詳しく知っているだろうと思い訊いてみたのですが……。あのヒトたち無関心過ぎる。

 せめて、かつて部隊を率いて異界からこの世界に侵攻しようとしたエスティさんくらいは、もうちょっと詳しい情報を持っていて欲しかった。そんなだから途中で失敗して勇者たちにフルぼっこにされてみーこ様たちの小姓に成り下がるんだ。

 いやまぁ、あのヒトは解っていてあえて情報を開示してくれないだけかもしれませんが。むしろその可能性がバリ高ですね。

 心配性ですよね。私、死ねないのに。

 けど、そんな気遣いがちょっとうれしい。お兄ちゃんがいたら、こんな感じなんですかね。

 そんな風なことを考えつつ、頼れない上位者の代わりに気軽には呼べないが請えば助力してくれる人に連絡を取ってみる。

 駒王町に住んでいる私たち側の関係者は私、カッコ、エスティさんに、たまに起きてくるみーこ様の四人います。更に日本という括りでは他に二人。海外には三人。この内直ぐに来てくれそうな心当たりは二人です。

 しかし……、

 

『おかけになった番号は――』

 

 もう何度目だかのトライに返ってきた答えは聞き慣れた音声ガイダンスのソレです。

 ――そう、聞き慣れているのです。

 

「あんにゃろう共め~。常時サイレントマナーで放置とかなんのためのケータイですか!?」

 

 機械的に音声を繰り返すケータイを思わず叩きつけたくなるが、グッと我慢してスカートのポケットに仕舞う。

 落ち着け私。物は大切にしましょう。ただでさえ特定の誰か様のせいでお金の消費がとんでもないんだから。

 すていすてーい、と心中で落ち着く呪文を唱える。

 ――何故、急に援軍を要請しようとしているか。

 確固たる理由はありませんが、予感がするのです。面倒なことになる、と。

 実際、私はそこらの人外連中にやられない自信はありますし、それはみーこ様も保証してくれています。それこそ、みーこ様もちょっと本気になる必要があるという程度には。

 ですがそれは防御力とかHPとかが高いとかそういう話で、一方で攻撃力が致命的に足りていないのです。本来であれば相応に攻撃力がある筈なのですが、どうも偏って適合したとかなんとか。

 とは言え、足りないなら補えば良いというのは当たり前の発想で、事実私には足りない攻撃力を補って余りある神器を与えられています。しかしどうにも不器用らしい私はそれらを未だかつて使いこなせた事がありません。エスティさんやカッコが微妙な顔で匙を投げる始末です。

 そんな訳で保険として私なんかより数段強い方に助力をと試みた次第ですが……。結果はこれこの通り。そもそも連絡がつかないという、出だしで躓く始末です。

 ため息を一つ。

 まぁダメならダメで良いです。それならそれで行動するだけですので。

 ショートパンツにパーカという動き易い格好になり、レッグポーチにナイフと鞭を突っ込み装備完了。

 さぁて昨日の今日でなんですが、廃教会襲撃と行きましょう。援軍を呼べれば多少作戦も練りますが、単独であるなら電撃作戦一択です。そもそも私はあれこれ考えるよりも、とりあえず動く系の女子です。なにより、

 

「なーんか嫌な予感がするのです。この感じ、なんなんでしょーね……」

 

 呟き、行動を開始します。

 ちなみに学校はズル休みました。

 大丈夫。この程度でどうにかなるほど私の学校での猫被りは甘くないのです。

 ………………

 …………

 ……

 すたこら走ってやって来ましたよ廃教会。改めて見るとやはりボロいですね。こんな場所にアーシアちゃんみたいな美少女住まわせるのは、やはりいけませんね。もう見るからにいかがわしいです。

 さーて、やはりこういう場所に乗り込むからには相応の作法があるというもの。それは古今東西の映画やマンガが示してくれています。

 すなわち。

 

「せーのっ、ごめんくださーいっ!」

 

 蹴破り押し入り突撃どーん!

 

「え? る、瑠々子さん!?」

「おやアーシアちゃん。おはようございます」

 

 廃れているだけあり満足に整備されていないのは外観通りらしく、蹴破った扉が飛んでくのに合わせて埃が舞います。

 そしてその向こうにはシスター服でびっくり顔のアーシアちゃんが。ううむ、まさかこんなスタート直後に目的とご対面とは。気勢が削がれますね。

 

「早速ですがアーシアちゃん。私と一緒に来てください」

「え? ええと……?」

 

 ふむ。混乱していますね。そりゃそーだ。逆の立場なら私でも混乱するでしょう。

 

「いいですかアーシアちゃん。私の勘が告げるに、貴女が此所にいるのは良くありません。取り返しのつかないことになる前に、私を信じて私と一緒に来てください。昨日出逢ったばかりの見ず知らずの他人の言葉、信じられないのはわかります。ですが、私に貴女を害する心算は――」

「そこまでにしてもらいましょーかねぇ」

 

 私の説得の言葉を遮るように、どこか軽薄さを感じる声が響きました。

 声のした方を見れば、そこには白髪に鋭い目付き、整った顔つきながら薄っぺらさと狂気を等分に滲ませた顔の神父服の少年がいました。

 

「あーあー、ぼっろい教会とは言え天にまします我等が父に祈りを捧げる神聖な教会に、なんつーことを……。こりゃあアレだわ、死んでこの罪償えやコラァ!!」

 

 言うや否や、取り出した拳銃をブッ放す似非神父。

 詳しいことは知りませんが、拳銃なんかの弾速でも音速は超えるらしいです。それはもう音が鳴ったら当たってるくらいの体感で、しかも似非神父と私の距離は精々十数メートルとかそこらへん。まぁ避けられるわけもなく。

 

「い、いやあああああ! フリード神父なんてことをっ!?」

 

 ――と言うか、避ける必要もなく。

 

「うーん、確かにちょっとお行儀の悪いお宅訪問だと自覚はありますが、問答無用で死罪とか聖職者的にどうなんでしょう?」

「え? ……るるこさん……?」

「はーい、瑠々子さんは無事ですよー」

 

 出会って間もない私の無事を案じて涙を流すアーシアちゃんの聖女めいた優しさに感動しつつ、私は無事を主張して軽い調子で手をヒラヒラと振ってみる。

 堕天使の光の槍が効かないように、ピストルの弾丸もまた私には効かないのだ。マテリアルもアストラルもマギステルも、私には害足り得ない。

 

「チッ! なんだなんだなんなんですかぁ!? なんで生きてんですかねぇテメェ!」

「ふっふーん、なぜでしょー?」

 

 必殺を確信した攻撃が効かなかった時の相手の顔ってのは、何時見ても微妙に愉快な気分になれます。思わずドヤ顔にもなろうと言うものです。

 そんな私のドヤ顔が気に入らなかったのか、わっと驚くような速さで彼我の距離を詰める似非神父。今度はピストルを持つ手とは逆の手に握った某星戦争ちっくなビームソードで斬撃一閃。避け“なかった”私の身体を袈裟斬りに斬りつけます。

 

「アァ!? どういうことだそりゃあ!」

 

 フ○ックとか叫びそうな調子で毒づく似非神父の目には、私の身体どころか服まで一緒に瞬間再生される不条理な光景が写っているのでしょう。

 

「見ての通りですよ。私ってば無敵なんで、攻撃が効きませーん」

 

 言いながらレッグポーチを開けて、某考古学ばりに取り出した鞭で床を叩きます。

 既に後ろへと跳躍して距離を開けている似非神父は鞭を見て顔色を変えました。

 

「――んだ、そりゃぁ? ただの鞭……じゃねぇな。かと言って『神器(セイクリッド・ギア)』でもねぇ」

「おや、わかりますか? ならばご褒美にお教えしましょうか。これは『神器(じんき)ミドガルズオルム』です。当たると超痛いですよ」

 

 これこそ攻撃力不足の私にみーこ様が持たせてくれた神器です。色々出来る上にかなり強いらしいですが、私には使いこなせません。使いこなせませんが、力任せに振り回すだけでそれなりに被害を発生させることは可能です。具体的には、この廃教会程度なら発破解体可能。ほら、さっきかるーく叩きつけた床板が弾け飛んでます。

 

「提案ですよ神父さん。私はそこに居るアーシアちゃんの友達(希望)です。彼女を大人しく渡してくれれば、私は以降あなたに敵対しないし、ここにも近づかないと約束しますよ?」

「……殺せねー奴相手にしても分が悪い、か。いいぜ、悪魔相手なら業腹だが、不可解ながら悪魔ではないみてーだしな」

「話のわかる方で助かります」

 

 降参とでも言うようにヒラヒラと手を振って奥に引っ込む似非神父を見送った後、呆然としていたアーシアちゃんに近づき笑顔で手を差し出します。

 

「行きましょう、アーシアちゃん。先程の続きですが、私に貴女を害する意思はありません。手前勝手ではありますが、私はお友達として貴女をここから連れ出したいのです」

「お友達……?」

「はい」

 

 ここぞとばかりに私の都合を押し付けてみましたが、これで断られたら私マジで泣きますよ。

 あーでも、私って聖職者的にどうなんでしょうか? 不死身っぽいって時点でかなりアウトな化け物でしょうか? 化け物呼ばわりも化け物認定も別に大した痛痒にも感じませんが、アーシアちゃんの友達になる条件外だったり? むー、キリスト教とかそこら辺の教義とかそう言うのを知らないのが悔やまれますね。保護者連中の無関心ぷりに呆れた私ですが、これは他人のことを言えません。

 

「私の、友達になってくれるんですか……?」

「むしろ私がなってほしいくらいですし、名前を呼びあったら友達だというマイナールールが存在するとかなんとか」

 

 何時だったかレオン兄さんが言っていたことを思い出します。たしか、何とか言う魔法少女がそんなことを言ってらしい。探したけど見付けられなかったんですよね、それ。

 そんな風にすぐに寄り道しだす思考に気を取られていると、アーシアちゃんのエメラルド色の瞳から涙がぽろぽろと――

 

「って、どーしたんですかアーシアちゃん!? も、ももももしかしてやっぱ私ってばアーシアちゃんの友達条件アウトですか!?」

「ち、ちがうんですぅ……。うれしくて、とっても、うれしくて」

 

 友達と呼んでくれることが嬉しいのだと、そう言いながら涙を流すアーシアちゃんに、思わず胸が痛くなる。

 友達が出来たことが嬉しくて泣く。それがどれほどのことなのか、私にはただ想像するしか出来ないし、そのことで同情するのはすごく失礼だろう。

 だから過去は無視して未来に思いを馳せよう。

 壊れものを扱うようにそっとアーシアちゃんを抱き締め、色々な提案をする。

 一緒に学校に行こう。

 一緒に遊びに行こう。

 一緒に服を買いに行こう。

 一緒に色んな楽しいことをして、一緒にたくさんの思い出を作ろう、と。

 そのためにも、未だ消えない嫌な予感が消えるように今後どう動くべきか真面目に頭を働かせる。

 まずは、先程の似非神父が居着くような廃教会にアーシアが居ることになった敬意を聞くべきかな。




この主人公は基本的に超アバウトです。きちんと理由もありますよ(明らかになるかは不明)。

アニメで明らかになったロキの百鬼夜行を率いてそう感
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