明日から5月の大型連休。
休みの間の注意事項などを言われ帰ってきた靖子は、部屋に入るとケータイのランプが点滅しているのに気が付いた。
何かと思ってケータイを開くと、メールが一件届いていた。
それを開くと、縁からのメールだった。
《連絡取れるようになったら電話ほしい》
短い、用件のみのメール。
何事だろうと思い、すぐに縁の番号へ発信する。
何度かの呼び出し音の後、相手の電話が通話状態になった。
『靖子ちゃん?』
「あ、はい。メール来てたので…。」
『ごめんなさいね?…あの、明日会えるかしら?』
「明日ですか?ちょっと待ってくださいね…えっと…。」
勉強机の隣に掛けてあるカレンダーに視線を移す。
明日には、とくに予定は入っていない。
家族で出かけるのは明後日からだ。
「明日は大丈夫ですよ。」
『ほんと?じゃあ…少し、手伝ってほしいことがあるんだけど…。』
「お手伝いですか?いいですよ?」
『じゃあ、明日…竜王大橋だっけ?そこまできてくれる?』
「はい、分かりました…じゃあ、明日。」
『うん、よろしくね。』
そういうと、縁の電話は切れた。
靖子は、明日の予定をカレンダーに書き込み、千鶴子にそれを知らせるために一階へ降りていった。
■■■
次の日、靖子は竜王大路へ来ていた。
朝のうちに、ケータイに時間を指示するメールが届いており、それに遅れないようにやってきていた。
そこには、真衣も来ていた。
「真衣ちゃんも呼ばれてたんだね。」
「うん。縁さんに、色々特訓してもらってるからね…。」
「特訓?」
「うん…スタンド、制御できるようにって。」
そういう話をしていると、縁達がやってくるのが見えた。
「ごめん、待った?」
「いいえ、さっき来たばっかりですから…ね、真衣ちゃん。」
「はい!」
そんな二人の答えを聞くと、縁は声を潜めて二人に話しかけた。
「…怖いお兄ちゃん増えてるけど、気にしないでいいからね。」
「聞こえてるぞ。」
「ふぉ!?露伴先生、いつの間に後ろに!」
いきなり現れた露伴に、二人は小さく頭を下げる。
そんな二人を一瞥すると、露伴はすぐにふいと顔をそらした。
「…で、二人に聞きたいことがあるんだけど…。」
■■■
縁たちは靖子と真衣の案内で、あぎと渓流まで来ていた。
縁が夢で見た景色を伝えると、二人は同じ場所を口にしたのだ。
「見つければいいけど…。」
「見つからないと困る。」
きっぱりと言い放つ露伴は、ずんずんと渓流の岸を上流に向かって歩いていく。
そんな露伴の様子に苦笑し、縁たちも歩いていった。
「…あ。」
かほりが不意に声を漏らす。
縁が何事かと思い、かほりの視線の先を見つめる。
「ッ!?」
露伴の歩く周囲の小石や岩が赤く染まっている。
「せ、先生…。」
「な…。」
露伴はかほりの声に立ち止まり、その赤い光景を見て思わず立ち止まった。
駆け寄ってその小石の一つを手に取ると、その小石には血で『みつけて』と書かれていた。
それを見てはっとした縁は、真衣のほうを向く。
「真衣ちゃん、ヴィジュアルⅢ使って!」
「え?」
「ヴィジュアルⅢで獣化すれば…これの臭いを探れるかも…。」
「あ、そっか…!」
縁の言葉に納得した真衣は、毛皮をまとうように自らのスタンドを身に着ける。
すると、見る間に真衣の体が漆黒の毛に覆われ、獣の姿へと変わっていく。
その鼻先にその小石を差し出すと、真衣はその血の文字の臭いを嗅ぎ、少し辺りを嗅ぎまわっていたが、すぐに走り出した。
「よし、追いかけよう。」
縁の声に、全員が真衣を追いかけて走りだした。
しばらく走り続けると、一度真衣が立ち止まる。
うろうろと辺りを嗅ぎまわっていたが、何かを感じたように先ほどとは別のほうへと駆け出した。
そして、蔦やむき出しになった木の根に覆われた洞穴の前で真衣の足が止まった。
その穴に向かって真衣が何度か吠える。
「…此処みたいね…。」
「そのようだな…小学生は、外で待っていろ。」
そういうと、露伴は小型の懐中電灯を持ってその洞穴の中へ入る。
あわててかほり、縁の順にそれに続く。
しばらく進んでいくと、いきなり露伴が立ち止まる。
それに思わずかほりがぶつかったが、それでも露伴は動かない。
「先生…。」
「…だめだ、見るな…。」
露伴の視線の先には…無残な姿で横たわっている少女の死体があった。
少女の周りには露伴の周りに現れたような血の文字がたくさん書かれていた。
「…わ、私…110番して、くる…。」
露伴の後ろからそれを垣間見たかほりは、絶句して両手で口を覆う。
縁は震える声で言うと、来た道を戻っていった。
露伴は、その死体に近づく。
その死体に近づいた途端、その手が露伴の手首を掴んだ。
「!?」
「ひッ…!」
その光景に、かほりから引きつった声が漏れる。
その手は幼子の力とは思えない力で、露伴を自分のほうへと引き寄せる。
そして、自分の顔まで相手を近づけると、その死体は一言だけ漏らした。
『みつけてくれて…ありが…とう…』
「な…っ。」
それだけ漏らすと、その死体の手はさっきまでの力が嘘のように簡単にほどかれ、その場に落ちた。