ダークメルヒェンとの交戦から数日。
あのときの少女のことで考え込むことが多くなった靖子は、その日は真衣と共に下校していた。
「靖子ちゃん、大丈夫?」
「え?…うん、真衣ちゃん、大丈夫だよ?」
空元気なのは、笑顔を見ればすぐに分かった。
しかし、真衣はそれにあまり触れず、「無理しないでね」とだけ声を掛けた。
しばらく歩いていくと、真衣は不思議な感覚を覚えた。
「…ねぇ、靖子ちゃん。」
「?」
真衣に呼び止められ、靖子は不思議そうな顔で歩みを止める。
しかし、すぐに何かを感じ取ったように辺りを見回した。
この感覚は、いったいどこからくるのだろう。
靖子が茂みの向こうを覗くと、小さな掘っ立て小屋がある。
…そこから、不思議な気配が漂ってくる。
「真衣ちゃん、あそこ。」
「え?あ…あそこからかなぁ?」
恐る恐る、その小屋に二人が近づく。
と、そこで一度靖子が立ち止まった。
「ねぇ、一応仗助さんたちとかに知らせたほうがいいよね?」
「あ、そうだよね…ちょっと待ってね…。」
そういうと、真衣はランドセルの中から和柄の巾着袋を取り出す。
そして、その中からケータイを取り出した。
「あ、ケータイ!」
「えへへ…内緒ね?」
そういいながら、真衣はケータイの電話帳を開くと、縁へと電話を掛け始めた。
『はいはーい?真衣ちゃん、どうかした~?』
「あ、あの…帰り道で変なとこに出くわしちゃって…もしかしてスタンドとか関係してたらいけないからと思って…。」
『え、ほんと?…今、どこら辺にいるかできるだけ詳しく』
■■■
縁に電話をした後、靖子と真衣は扉の前に立っていた。
縁には、仗助たちとそっちに行くまで何もしないようにといわれたものの、所詮好奇心旺盛な小学生。
どうしても中を覗きたくなっていたのだ。
丁度よく、隙間がある。
二人は、その隙間からこっそりと中を覗いた…。
「「!!?」」
思わず驚いて、二人は後ろの後ずさる。
そして、今見たものを二人でこそこそと話し出す。
「今…見た?」
「見た!」
「中…。」
「うん!」
「「ものすごく広かった!!」」
そう、明らかに四畳半もないように見えるその小屋の中が、その小屋の中に納まっているのがおかしいくらいの広さの部屋に見えたのだ。
「…気のせいかなぁ?」
「うーん…。」
そういいながら、再び中を覗く。
やはり、中は広い部屋が広がっている。
しかも、なにやら甘い香りが漂っている。
「…なんだろう、この匂い。」
「いい匂いだね…?」
こそこそと話しながら覗く二人。
すると…
「え!!?」
「きゃああ!?」
不意に扉が勢いよく内側に開き、二人は部屋の中に放り込まれる。
二人が中に入った途端、扉はまた勢いよく閉じた。
「…オヤ?」
二人が額をさすっているとき、自分たちの正面から、テノールの優しい声が聞こえてきた。