夜間飛行   作:おわる美砂

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夜間飛行~上条靖子・その4~

「そうか…よかったぜー。」

 

悪戯っぽい笑みを浮かべ、仗助は靖子の頭をわしわしと撫でた。

縁は立ち上がると、先ほどアスファルトにたたきつけられた『それ』に視線を向けた。

びくびくと痙攣していた『それ』は、ぐったりとアスファルトの上に身を横たえた。

縁は、注意深く近づく。

すると、『それ』を覆っていた漆黒の体毛がぞぞぞっと引いていき、その下から白い肌が覗いた。

 

「え!?」

 

縁の声が響く。

そこに倒れていたのは、靖子とそう変わらない年頃の少女だった。

 

「…スタンドが暴走したのかしら…。」

 

縁はそう呟きながら、その少女の首筋に指を当てて脈を取る。

微かに脈が伝わってくるのを感じ、縁は小さく息を吐いた。

 

「おい、縁~…そいつ大丈夫かぁ?」

「ん、なんとか生きてるわ。」

 

二人の会話を聞きながら、靖子はその少女の顔を覗き込んだ。

 

「…真衣ちゃん…?」

 

それは、去年まで同じクラスだった真衣(まい)だった。

春休みがあけてから登校しておらず、隣のクラスの担任が心配していたのを思い出した。

 

「知り合いなの?」

「…うん」

「じゃー、とりあえず治さないといけねーよな…。」

「治す…?」

 

不思議そうに首をかしげる靖子を尻目に、仗助は真衣の近くへ膝をつく。

仗助の背後から、先ほど異形の姿になっていた真衣を殴り飛ばした「何か」が再び現れ、真衣に触れる。

すると、真衣の体の傷はきれいに消えていた。

だが、目を覚ますまで安心できないというように、仗助と縁は真衣の顔を覗き込んでいた。

しばらくすると真衣は目を覚ました。

先ほどまでのことを覚えていないようで、きょとんとして辺りを見回していた。

そんな真衣に、靖子は「帰り道で会って、一緒に帰る途中で真衣が転んでしまい、気絶した真衣を偶然通りかかった二人が介抱してくれた」と説明した。

その説明でどうやら真衣は納得したようで、真衣は仗助と縁にお礼を言うとふらふらと歩いていった。

そんな真衣を見送ってから、靖子ははっとした。

 

「あ!…い、今何時ですか!?」

「今?…ええと、5時50分ね。」

「きゃあああ!も、もう帰らないと!」

 

あわてて立ち上がり、靖子は倒れていた自転車を起こす。

そして、仗助と縁にぺこりと頭を下げ、立ち去ろうとした。

 

「…あ…ねぇ!」

 

その時、縁が呼び止めた。

靖子は、その声に一度立ち止まると「何ですか?」と言う様に首を傾げてみせた。

 

「あなた、名前は?」

 

知らない人にいきなり名前を聞かれ、靖子は戸惑ったが、相手は悪い人ではない…そう感じていた。

靖子は少し間を置いて、口を開いた。

 

「靖子…上条靖子です!」

「…!上条…靖子…?」

 

靖子の名を聞くと、縁と仗助は顔を見合す。

靖子は不思議そうに首をかしげる。

 

「…どうかしました?」

「!!ああ、ううん…なんでもないの…靖子ちゃん、気をつけて帰ってね…?」

「はい!ありがとうございました!」

 

そういうと、靖子は自転車に跨り、走り出した。

それを見送り、二人はしばらく立ちすくみ、お互いの顔を見合わせていた。

 

「…まさかあの子が…。」

「あぁ…DIOの娘かもしれない子…なんてな…。」

 

見えなくなった靖子が行った道を見つめ、二人は呟く。

そんな二人の間を、風が吹き抜けていく。

まるでこれから起こる「何か」を予感させるように…。

 

 

 

―上条靖子・完―

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