IS~インフィニット・ストラトス~Resurrection 作:白姫彼方
自己紹介が終わり、一夏が参考書を開こうとすると声を掛けられる。
「……ちょっといいか?」
声を掛けた女子生徒は身長がやや高めで、艶やかな黒髪をポニーテールした女子生徒だった。
「……あぁ、箒か、久し振りだな」
彼女の名前は
「あぁ、久し振りだな……ところで廊下でいいか?」
「いや、廊下で話しても出歯亀が出張ってくるだろうし、ここでいいだろ」
「む……、それもそうか」
一夏の言葉に箒は同意すると、一夏が今度は話題を振る。
「それにしても、6年振りか……あぁ、去年、剣道の全国大会で優勝したんだったな。おめでとう」
「な、何故知ってるんだ」
「そりゃ新聞で読んだからだ」
「なっ何故新聞を見てるんだっ!」
一夏は箒の言葉を聞いて苦笑する。
「そりゃ、今の俺の立場ならどんな些細な情報でも必要だからだ。それこそ裏の裏まで知っていないと、俺の身に危険が及ぶからな、当然の事だ」
箒はその言葉に微妙な表情をして答えると、チャイムが鳴る。
「まぁ、ここまでだな。また後でな」
「あ……あぁ、また後で」
挨拶を済ませた一夏は次の授業の準備を始めたのだった。
◆
「――――であるからして、ISの基本的な運用は現時点で国家の認証が必要であり、枠内を逸脱したIS運用をした場合は、刑法によって罰せられ――――」
山田教諭の授業が進む中、一夏は考え事をしていた。
(早いところ白式を手に入れねぇとな……。まぁ、今の所は何も打つ手なしかねぇ……)
一夏が溜息をつくと、山田教諭にさされる。
「織斑君、何か解らない所がありましたか?」
「いえ、解らない所はありません。問題ないので続けてください」
「そっ、そうですか……解らない所が出てきたら言ってくださいね! 私は先生なので!」
何故かやる気等が一気に上がった山田教諭を見て、一夏は溜息をついた。
そんな様子を見ていた千冬は放課後に少し話しでもするかと、心に決めたのだった。
そして二時限目が終わり、一息つこうとした一夏の元に、また女子生徒が近寄り、声を掛けた。
「ちょっと、よろしくて?」
一夏が視線を向けるとそこには、僅かにロールをかけた金髪で瞳は青い白人特有の白さを持った女子生徒がいた。
「何か用か?」
「まぁ! なんですの、そのお返事。
その言葉を聴いた一夏は溜息をつく。
「たかだか一介の代表候補生程度で何を偉そうにしてるんだか……」
「何ですってぇ!?」
「この世に代表候補生がどれだけ居ると思っている? 専用機を持っているからエリート? 代表候補生に選ばれたからエリート? 候補生に選ばれるのだから、相応の努力、資質が必要だろうさ。だがな、俺から見ればお前なんかはただの卵の殻を尻につけたヒヨッコだ」
「な……あ、貴方ねぇ……!?」
女子生徒が何か言おうとした時、始業のチャイムが鳴り、その女子生徒は席に着くのだった。
「それではこの時間は実践で使用する各種装備の特性について説明する」
1時限目と2時限目とは違い、千冬が教鞭をとる様だ。だが、千冬は何か思い出した様に言う。
「あぁ、その前に再来週行われるクラス代表戦に出る代表者を決めないといけないな」
千冬の言葉に一夏は今じゃなくて別の機会でも良いのではと思ったが、口に出さないようにした。
「クラス代表者とは簡単に言えば、クラス委員長のことだな。委員会や生徒会が開く会議に出席が主の仕事だ、クラス代表戦とは、各クラスの実力推移を測るものだ。今の時点でたいした差はないが、競争は向上心を生む。一度決まれば今学年中は変えられないからな」
千冬がそう言うと、クラスメイトが手をあげる。
「はいっ、織斑君を推薦します!」
一人のクラスメイトが一夏を推薦すると、後に続く様に一夏を推薦し始める。それを聴いていた一夏は気付かれない様にそっと溜息をつくと、バンっと大きな音が鳴ったので、視線を向けると、先程の女子生徒が怒りに満ちた表情で立っていた。
「待って下さい! 納得がいきませんわ!
その女子生徒――――セシリア・オルコットの発言の途中で一夏は嗤った。
「な、何が可笑しいのですか!?」
「なぁに、どれ程お前が無知で傲慢で身の程知らずで愚かなのかが解ってな、これ程までに愚者を見た事はないよ。
「なんですってぇ!?」
「そんな愚者にも解り易いヒントをあげよう。 まず一つ目、ISを開発した篠ノ之束博士はどこの人間だ? 二つ目、その博士の母国は? 三つ目、このIS学園を実質運営しているのは? 四つ目、初代ブリュンヒルデは何処の誰で何処の所属装着者だった? これでもう解っただろう?」
一夏の言葉を理解したのか、オルコットの顔色が見る見る青白くなっていく。
「更に、お前は国家差別、人種差別、性差別を発言したんだ。 その落とし前はどう着ける? 確かに、イギリスは近代化に置いて一躍は買ったがそれまでだ。それに最近じゃあ、女尊男卑が蔓延しているが何処の誰がそんな風潮を推奨した? 更に日本が島国というのは当たり前だが、イギリスも同じだろうが、さてさっきも言ったが、その落とし前はどう着けるつもりだ? お前が国家代表候補生を降りて専用機を返してはい、終わりじゃすまないぞ? これが公になれば、イギリスは非難の嵐にあい、イギリス国籍を持つ生徒は強制送還、ISコアも全て取り上げられる。 国家代表や候補生に登り詰めた者達の努力を無にすることになる。 それを踏まえてもう一度聞こう、この落とし前をどう着けるつもりだ! 答えろ! イギリス国家代表候補生セシリア・オルコット!」
オルコットの目には涙が溜まっていき、泣き出す寸前だったが、そこで千冬が止めに入る。
「織斑、そこまでにしておけ、今回のことは私が預かる。織斑もそれでいいな?」
「……まぁ、織斑先生がそこまで言うなら、従いますよ」
「よろしい、では1週間後の月曜日の放課後にクラス代表決定戦を行う! 織斑とオルコットは準備をしておけ! それでは授業を再開する」
千冬がそう締め括って授業を再開したのだった。
◆
そして時は過ぎ、放課後になり各々が寮に移動をする中、一夏は教室にまだ残っていた。何をしているかというと自宅から持ってきた端末で、裏の情報を洗っていたからだ。
(やはりまだ何も動きはなし……いや、既にサイレント・ゼフィルスは奪取されていたか、早めに亡国機業は潰しておくべきだな。だが、つぶすにしても専用機が白式であるなら、無理か……ならどうするかだな)
一夏はそう考えながらも、情報を見つつ今後の事を考えていると山田教諭と千冬が入ってくる。
「あぁ、織斑君。まだ教室に居たんですね。よかった」
「山田先生と織斑先生が此処に来たって事は、俺は即日入寮って事で間違いないですか?」
「はい、その通りですけど、もしかして
「いいえ、可能性として考えていましたので」
「ほう? にしては準備がかなり良かったようだが? あぁ、荷物に関してはあのまま寮の方に入れておいたからな。あとで確認をしておけ」
「手間を掛けさせて申し訳ございません。織斑先生」
「何、構わんさ、あの位ならばな。織斑、この後時間はあるな? 少々話したいことがある」
千冬の言葉に合点がいった一夏は同意する。
「解りました。では、盗聴や盗撮が出来ない部屋で良いですか? 織斑先生」
「それなら生徒進路相談室がいいだろう、山田先生。私は織斑と話があるので、先に戻ってください」
「はい、解りました織斑先生。では、織斑君また明日」
山田教諭はそう言って少しお辞儀をすると、教室から出て行った。その後少ししてから一夏と千冬は生徒進路相談室に向かい、部屋に入ると鍵を閉める。
「それで、織斑先生。話したい事とは?」
「あぁ、この部屋なら普段の生活通りで良いぞ、一夏」
「解ったよ、千冬姉。それで話って何なのさ?」
「まず一夏、お前に何があった? この間とは雰囲気や言葉遣いがかなり違ったぞ。包み隠さず全て言うんだ」
千冬の言葉に一夏は少し考え、この人になら平気かと考える。前の世界でもこの人は味方だったからだ。
それを踏まえて口に出す。
「解ったよ。但し、これはから言うことは誰にも言わず、墓まで持って行ってくれ。でないと俺は話さないぞ」
「解った、誰にも言わないさ」
「そうだな……これから言うことは俺の妄想でも、実際に体験したことだ。と言ってもこの体になる前の話だから――――」
そう切り出して一夏は前の世界の事を時に暈しながら話し始めた。
◆
千冬との話が終わり、一夏は自身の寮部屋に向かっていた。
その話を聞いていた千冬は、最初は胡散臭そうに聞いていたが、次第に熱を帯びる様に語る一夏を見てこれは実際に一夏が体験したことだと感じ、理解した。
そうした上で、千冬はどうしたいのかと聞くと、一夏はまずは力が必要だと言い、今度の対オルコット戦に向けて自主練をすると言って、話は終わった。
そして今に至る訳だが、前の世界のことを思い出すと、入ることに躊躇する。そして、ノックをして中に入ると、水音がするので荷物だけ置き、寮部屋を出て食堂に向かう。
その途中で女子生徒がキャイキャイと騒ぐが、一夏は軽く苦笑をしながら歩き、時には手を軽く振るぐらいをして食堂に着く。
食券を買い、厨房から品物をもらうと席を探す。すると、隅の方が空いていたので、その隣の女子生徒に声を掛ける。
「隣、いいかな?」
「え? あ、うん……」
「ありがとう、失礼するよ」
一夏は一言言って、座る。隣になった女子生徒は一夏の食事の量を見て驚く。
「す、凄く食べるんだね」
「ん? あぁ、昼食を食べ損ねたからこんな量になっただけだよ。それと、俺は一組の織斑一夏だ」
「わ、私は四組の
「おう、宜しくな。んじゃ、冷めない内にっと」
軽く挨拶を交わした2人は各々の食事を始める。だが、一夏の食べるスピードを見た簪はそのペースの速さにも驚きながら、自身のペースで食べる。そして一夏がある程度食べ終えると、簪が一夏に声を掛ける。
「少し質問して……いいかな? 織斑君」
「ん? ……んぐ、なんだ? 更識さん」
「あ、苗字は嫌いだから、名前で呼んで……」
「ん……解った。俺の事は一夏って呼んでくれ、織斑先生と混ざるといけないからな。それはともかく、なんだ?」「えっと……おり……一夏君は織斑先生の弟だよね? その、織斑先生と比べられて、辛かったりしない……?」
一夏は簪の言葉を聞いて、少し考え、口に出す。
「確かに、テストとかで良い点とっても『千冬様の弟なんだからこんな事出来て当たり前』とか『流石千冬様の弟』って言われたり、逆に出来なかったら『千冬様ならこんなこと直ぐにできるのに何で出来ないの』とか言われたけどな」
「そう……なんだ」
「だけどな、はっきり言えば他人のそんな言葉はどうでも良いし、俺は俺だ。俺は織斑千冬の弟だが、織斑千冬ではないって言ったよ。有名人や天才とも言える身内を色眼鏡でしか見ることが出来ないどうしようもない、それこそそんな下種な奴等の言葉なんて聞く価値もない」
一夏はそう言って、苦笑する。そんな一夏を見た簪は少し意外そうに見る。
「強いんだね……一夏君って」
「強くはないよ、挫折や絶望を体験して、逆恨みを受けた結果、捻くれただけだよ」
「うぅん。本当に強い……。まるでヒーローみたい」
「
「そういうことにしておくよ」
簪はそう言うと、一夏と軽く笑い合う。
「ならさ、俺からも聞いても良いか?」
「え? うん……なにかな?」
「簪がこの質問をしたって事は、いるんだな? そう評価される兄か姉が」
「う……ん。いるよ、お姉ちゃんがこの学園の生徒会長だよ」
「そうか、何か言われたのかって言い辛いなら言わなくてもいいからな?」
「うぅん……その、ちゃんと聞いて欲しい……。お姉ちゃんは何でも出来て、自慢のお姉ちゃんだった。でもね、周りはいつも私とお姉ちゃんを比べてた。そんな時だったの、お姉ちゃんが『簪。あなたは何にもしなくていいの。私が全部してあげるから。だからあなたは、無能なままで、いなさいな』って言ったの」
それを聞いた一夏は言葉にし辛いかなり微妙な表情をした。
「なんて言うか……うん、どういう風に言いたいのかは解ったけど、その言い方は……なぁ」
「それもあって……私はお姉ちゃんが苦手になったから」
「なるほどなぁ、そりゃぁ苦手にもなるな。っとご馳走さまっと」
一夏はそう言って、席を立つ。
「まぁ、何か愚痴りたくなったら俺に言ってくれ、同じ姉を持つからさ」
「えっ、でも……その……迷惑じゃ」
「んなことはないさ、これも何かの縁だ。気軽にしてくれればいいよ。じゃぁまたな」
「うん……また……」
簪と挨拶を交わすと、一夏は食器を返し、寮部屋に向かうのだった。
如何でしたでしょうか?また次回♪