※後々世界観を主人公が解説・考察するエピソードもありますので、原作知らない人もなんとなーくご覧になって頂ければ幸い。
※なお、本回は「読むの面倒」とか思ったら読み飛ばして次回、次々回から御覧ください。
要は、ある若者が単独でとある別世界に転生することになったというお話です。
(……む、ここは?)
俺の目が覚めて、いの一番に考えたことは、ここが何処か分からないという事である。
何しろ真っ暗である。何も見えない。
その上、体の各所の感覚が一切無いときたもんだ。
「む、起きた? 起きました? 起きましたですよね?」
……そう思っていたら、人の声が聞こえた。優しそうな女性の、それも少々幼気な声色だった。
暗闇の中で上下左右から等しく聞こえるというのは、実に不思議な感覚だ。
「えへへ、優しそうな声ですか……好印象で何よりです!」
(! 声に出していない筈だが、相手に意思が伝わった!?)
「はい、聞こえますよ。こっちはあなたの考えてることがちゃんと分かります」
……便利だなー。
(出来ればこの状況がどうなってるのか、教えて欲しいんですが)
「はいはい。えっと簡潔に言うとですね、あなたは死にましてですね。これから別の世界に旅立ってもらいます」
(はい?)
急展開である。
~閑話休題~
(――つまり、ここは死後の世界で、貴方は神様ってところでしょうか)
「うーん。そこまで突飛な存在ではないけど、とりあえずそんな所でいいですよ。あなたを生きながらえさせる存在って意味だと間違ってないですし」
と、いうことらしい。
(そうか、とりあえず恩にきる。未練が無いってほど生きてなかったようだし。もう一度生きられるなら、それに越したことは無いです。ハイ)
少なくとも、30の誕生日は迎えられなかったことは間違いないようだ。
(……あの、生前の記憶がはっきりしないところがあるんですが、その辺り補完してもらうことは可能ですか? あと、何で転生するのかその辺りの理由も教えて欲しいんですが……)
そうなのだ。今の自分の記憶にはところどころ、靄がかかったように思い出せない記憶があるのである。どうにも気になって仕方がない。
一応、真っ当な男として人並みに生きたようではあるのだが。
「……えっと、それはちょっと、こちらでも手が出せません。申し訳ありません」
(……そうですか)
「ええ、色々と理由は思いつきますけど。多分、記憶に残っているとよろしくないと判断されたメモリだったのかもしれません」
(いえ、事情があるのなら仕方無いです)
正直不安だが、出来ないものはしょうが無い。一応、我が身の為を思っての事情があるようだし。
ただ、若干苦笑いしてる雰囲気を感じるし、一から十まで間に受けるのは止めた方が良さそうだけれども。
「いえいえ、お構いなくです。それで、貴方には先程お話したように別の世界に行ってもらいたいのですが」
(はい、大丈夫です。こっちとしては問題無い……と思います。でも、いいんですかね?)
「え? 何がですか?」
女神(仮)が、頭上にハテナを浮かべている光景が目に浮かぶ。
(別の世界とやらに、俺みたいな人間が入り込んだら、何か面倒なことになるんじゃ?)
自分がそこまで無茶苦茶なことをする人間ではないことは自覚しているのだが、絶対そうとは言い切れないし。
「ああ、その辺りはちゃーんと考慮してありますので問題ありませんよ」
ふーん。なら、俺がいちいち気にしても仕様がないか。
「と、言うわけであなたの魂を別世界に派遣することになりましたとさ。パチパチー」
まぁ、もう一度人として生きられるだけでも御の字というところだろう。それ以上高望みする訳にもいかない。
「じゃあ、最初の派遣先を決める希望調査はじめますねー」
(……え? 『派遣先』?)
~~~
「――問目。実は死ぬのが好きである」
(……嫌です)
いい加減に飽きた。
先程から、実にもならないような質問が多いこと多いこと。
途中、好みの女性のタイプとか、恋人に求めることとかいう項目が存在するのは、本当に意味があることなのであろうか?
「ふむふむ、では次です。魔法かロボット。扱うとしたらどっちがいいですかー?」
おっ、ちょっと興味ある質問だ。
(……ちょっと迷うが、やはりロボットだな。うん)
「ははあ、ちなみにどうしてでしょうか?」
(男の子だから、としか言いようが無い)
あとなんか魔法とかって、曖昧なイメージがあってイマイチ信用出来ないし。
あ、でもロボットと言えば戦争が付きものじゃないですか、やだー。
最近の魔法とかもやたら物騒なパターンが多いけど、どうしよう?
「なるほどなるほど。……はい、以上で調査終了ですー。お疲れ様でしたー。必ずしも希望通りの世界に行くことになるとは限りませんので、あしからずー。それでは、早速作業に入りますよー」
どうやら、訂正するタイミングを逃したようだ……って、え? なんだって――って、痛たたたたたっ!!
「あ、やば」
そして俺は、唐突に発生した猛烈な頭痛に意識を持って行かれたのである。
―――――――――――――――
「つ、痛覚切るの忘れてた……。大丈夫です?」
慌てて作業を中断して、先程独断と偏見で選んだ人間の魂を観察する。
「」
「あああ、完全に意識途絶えちゃましたかー。粗方希望は訊けましたから、問題無いと言えば無いんですが……」
こんなところでうっかりが発動してしまうとは……。
嫌われたでしょうか? 出来れば見逃して欲しいところだ。でなければ、手をつくしてここに招いた意味が無くなってしまう。
「ま、まぁ気を取り直しまして……、魔法とかにも興味ゼロってわけじゃなかったみたいですし、魔法とロボが融合した世界観……」
軽く頭を捻って該当する世界観を思い浮かべるが、ダメだ。あんなエログロ満載の世界に放り出す訳にはいかない。
(わ、私の将来の同僚になるんだし、ちゃんと魂を磨き上げる世界観は選ばないといけませんね、うん。あんまり過激な性格になっちゃったりしたら困るし)
そう考えながら、頭を振りかぶって思考をリセットする。
「うう、あまり事情を説明できない理由があるとしても、このまま送り出すのはかなり心苦しいものが有ります……」
そもそもこの転生、神族になる試験も兼ねてるからあまりに突飛な行動されるとこちらとしても困るのです。
いくつもの他世界への介入を繰り返した後、首尾よく進めば彼は私達と同じ存在になれるんですが。
「まぁ、将来的にそうなるかもとしか言えませんけど。精神的に耐えられなくなって途中でドロップアウトする人も多いですし」
かと言って、死にたてホヤホヤの人間をイキナリ多次元世界に手を出せる存在にするのは不安あるらしい。どんな人柄か見定める意味でも、この過程が必要になるのだそうで。
……まさか、死後にも新入社員研修をする羽目になるとは、この人も思ってもみなかっただろう。
「うーんうーん……あらっ?」
この世界なんてどうでしょうか。大きく彼の希望からも外れてはいなさそうであるし。
「ふむ。よし、決定です」
さて、これから彼を送り出す世界は、元々は創作物として確立しかかっている世界を元にしている世界である。
完全に確立していないのは、何やら事情があるとか。元の世界の平行世界と言っていいかもしれませんね。
「うーん、この世界結構絶妙な戦力バランスで成り立ってるようですし。滅茶苦茶になってしまうようでは本末転倒ですし……」
人死も結構あるようですし、折角送り出して早々に死なれては困りますけど、私が手を出してあれこれ束縛するのもなんか嫌ですー。
そもそも一旦送り出したら、こちらからはただ観察するだけで、こっちからはそれ以上干渉出来ないですし。
あくまでそれぞれが自発的に動いて、元とはちょーっとだけ違った世界になるには……
「――に影響しないよう――ったりしないように仕込みを――じゃあこれも若干リサイズして――」
さてさて、あとはどんな存在として送り出すか、ですが。
うーん、この世界に無くて、追加しても大丈夫そうな存在……
「ロリですね! 折角だから超美形の! ええ、そうしましょう!」
性別を変えることに若干不安はあるが……元々男だった訳だし、多少調整すれば
む、むしろ百合百合しい展開が待っているかもしれないが、それはそれで見ている私が美味しいので構わない。
多少私の嗜好が混ざっているのは否定しない――というか、男らしい、暑苦しい人間が苦手だからこそ中性的で綺麗な魂を担当してるのだし。
そしてホ○はお断りだが、私は彼の過去の女性関係までは追求しないので、そこら辺りはちゃんと弁えてくれるように願う。
私は実に寛大な女なのだ。ええ、間違いありません。
「……となれば、一般人だと色々と不都合ありますし……ここをこうして、こうかな? そして意識を……」
……ちょっとハードだが、まあ問題無いだろう。たぶん。
さて、あとは野となれ山となれ、である。
出来ればちゃんと言葉を交わしてお別れしたかったところだが、自業自得として諦めるしかない。時間も無いことだし。
「それでは、またここでお会い出来ることを願っていますよ――――そおぃッ!」
そして、私は少々運命にテコ入れし、ちょっぴり祝福を施した彼の魂をその世界に華麗にシュートしたのであった。
――――――――――――――――――――――――――――――
(――――……あや?)
異変――この場合は物音と衝撃である――に気付き、
というのも転生して以降、私は自由に睡眠時間を調整出来るようになったらしい……時計も日光も見えないのにそれだけは妙な自信がある。
さて、軽くこれまで分かったことをお浚いするとしよう。
まず、私が他の世界に転生したと思われる時点での話だが……
(一体これはどういうことなのでしょうかね……)
この新しい世界に(恐らく、あの死後の世界での出来事が妄想でないのならだが)生まれ直してから考えるのは、専らそんなことであった。
なにせ目覚めて以来、視界は真っ暗。光一筋刺さず。
体は指一本動かせず、首すら動かせず。
身体の一部がどこかに触れているような感覚すら無いときたもんだ。
……それなのに頭の中だけはやけに回る回る。正直苦行である。
(でもこの状態でどないせーっちゅーねん、あの女神様は)
人間の赤ちゃんになっているとしても、オギャーと泣くことさえ出来やしない。
兎にも角にも、状況が変わらないことにはどうしようもない。不幸中の幸いというべきか、これ以上環境が悪化する気配はないし、おとなしく果報は寝て待つとしよう、という結論に至った。
(寝ることは元々苦にならない性格だし、ね)
私は唯一自由な意識の中で、そんな呑気なことを考えていたのである。
……まさか百年千年単位でこの状態が続くとは思ってもいなかったけれど。
~~~~~
――コホン。えー、とりあえず言える事として、新しい私のこの体はまず人間ではなかろう、ということがある。
イキナリ何を言ってるのだと思われるかもしれないが、何も飲み食いせずに生きられるどころか、このままじっとしているままでも寿命が尽きる気がしないのだ。
このことが判明した時に発狂しなかった自分の精神を褒めてあげたいものです。
転生して以来、長い間ひたすらいじけていたり、あの女神を罵ったりしていた記憶もあるが、フッ、最早そんなことは遙か昔のことです。今はもう、ただ過ぎ往く時間の流れを感じるままである。
……我ながら、精神が変な方向に成長し過ぎてしまったようだ。
最初はどこぞに封印された吸血鬼あたりかと見当をつけていたのだが、飢餓感さえ一切覚えず、百年千年を超えて生きるあたり、現在は仙人か精霊かといった線が濃厚である。
実にファンタジックな話だが、そういう展開もありか、と最終的には納得した。納得せざるを得なかったのだ。
(さて、前回最後に覚醒した時は――確か地震か何かだったかな?)
何らかの振動を感知して一時的に覚醒したのを覚えている――そしてそれも数百年は過去の話だし、地震というのもただの推測に過ぎない。
そんなことを幾度も幾度も繰り返していた私は、軽く絶望して深い眠りにつくことにしたはず。
(そして、そんな中から覚醒するということは――)
感じたのは、大きな衝撃。
ゴゥンゴゥンと、重厚な音と衝撃がこの体に響いているのを感じる。
これまでに無い、大きな刺激を感じたのであった。
次いで、重くて重ね着した衣類を盛大に脱ぎ捨てたような爽快感。
そしてさらに、五感以外でもう一つ感じる事がある。
……なんだろう、ひどく曖昧な表現になるが、久しく抜け落ちていたピースの一つがやっと嵌ったような、不思議な充足感があるのだ。
ワクワクするような、淡い期待を込めて何百回、何千回と繰り返してきたように閉じていた眼を開ける。
その度に闇黒しか見えず、落胆に苛まれていたのだが。
目に飛び込んできたのは、膨大な量の光と――
(な、なんですとお!?)
私に向けて暗い、そして特徴的な正方形の銃口を向ける、黄色いカラーリングのロボットの姿だった。
(そう来ましたかあああああああああああ!?)
怒涛の勢いで我が身に降りかかる、ひたすら待ち続けた情報の奔流に曝されながら。
当惑と喜びを声ならぬ声として張り上げ。
――私はこの世界に生まれてようやく産声を上げたのである。
▼まとめ及び特記事項
1.一応TS転生
2.主人公の他に転生者は存在しません
3.多分もう神様や死後の世界の出番は無い(※回想を除く)
4.ブレイクブレイド原作と比較して、展開の都合上、作中の出来事の発生時期が前後したり捏造設定が含まれたりします。ご留意。
次回、宜しくお願いします。