壊剣の妖精   作:山雀

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▼前回のあらすじ

 ナルヴィさんの歴史教室


※前半はシギュン様視点
※超難産回だったり



018. 出陣前日 前編

――――――

 

 

「え、武器?」

「――(コクコク)」

 

 先日発足した新生部隊の出陣が日一日と迫る中、ライガットのデルフィングの操縦技能向上とセフィの知識習得の早さには、私は脱帽せざるを得なかった。

 特にこの子――セフィはここ十日程の間にせっせと西大陸語の習得に励んでいたらしく、私が気付いた時には一般的な会話や読解はなんとかこなせているレベルに到達していたようだし、他国との関連性も含めクリシュナという国の情勢も大方つかめているようである。

 上達速度が明らかに早すぎる。結論から言えばこの子は『並』ではない、しかし『上等』と表現するにも不足している。はっきり言えば異常だ。

 それでいて大人しく勉強ばかりしている少女であるかといわれればそうにあらず。

 身体は不自由であるのに行動は活発であるというか、本人にとって必要とあらば無茶を無茶とも思えない行動を起こす人間であることは確かなようだった。

 そして今日の朝、顔を合わせて突然言い出すことがこれなのだから……私が困惑するのも無理はないだろう。

 今度は何かしら、自分が使う為の武器が欲しくなったらしい。どうしてそんなものを欲しがるのか――視線で問いかけるも、セフィは負けじとこちらを熱く見つめるだけである。

 一応、この子でも常に持ち運びが出来て、最低限の自衛意思が示せる程度の物でいいというので、考え無しに手を広げようとしているという理由ではないようだけれど……

 

「……でも、貴方が何を持っても今更という気がするのだけれど?」

 

 流石に視線だけではどうにもならなそうなので、敢えて言葉で忠告を行う。セフィの視線が一瞬だけ泳いだのを見逃さなかった。

 おそらくは生身での戦闘経験も無く、十分な体力も無く、発声もまともに出来ず、それ以前に歩くことにさえ不自由しているこの子は基本的に彼女にとっての害敵、悪意に対して極めて脆弱な存在である。

 魔力無者であることも相まって、プレスガンすら扱うことが出来ないので筋金入りだ。しかも特徴的ながらこの上なく容姿端麗の美少女。彼女の存在を認めた、何か良からぬことを考えている輩によって狙われたとしたら、まともに抵抗すら出来ずに餌食になってしまうだろう。

 正直こんな子を戦場に送り出してもしものことがあったらと、ある意味ライガット以上に心配になる存在であった。素直に殺されることだけは無いと思われるが、とてもではないが無事で済むとは思えなかった。

 彼女が言うことには、勿論自分がアテネスの軍人と生身で戦うことは考えていないし、四六時中信頼できる人間の傍にはいるようにするとのこと。しかしながら、どうしても戦闘する手段が必要になる場面があるかもしれないので安心したいという。

 私が暫く渋っていると、遂には速やかに自殺する手段を兼ねて、などということまで全身で表現しだしたので、呆れるやら感心するやら……

 つい先日まで非戦闘員だった少女の考えることとは考えにくい。本なり同僚からなり、余計な知恵を仕入れてしまったのだろう、と見当をつける。

 

「はぁ……分かりました。軍の配給品の中から貴方でも扱える物を見繕っておきます。ただし、城内や都市内では持ち歩かないこと。それでいい?」

 

 仕方無く、武器の携帯を認める許可を出すことにする。彼女の手に合うサイズと重さの物があればいいのだけれど。

 無論、セフィに自殺の手段を与えるなどというつもりは毛頭無く、この子が精神的に不安定になる要素を排除するという意味合いが大きい。ナイフなら調理なり工作なりで戦闘以外での役立つ機会はあるでしょう。

 私は頬に手をやりながら、僅かに頬を紅潮させ無表情で喜んでいるらしい少女を見る。私やライガットの手が空かず、彼女の相手をしにくくなるという懸念からある程度の行動の自由と庇護を与えて間もないというのに、どうしてこうなったのかしら……

 いろいろとコミュニケーション不全なこの子を表に出すのは時期尚早かと思ったのだけれど、ライガットやホズルの勧めもあって限定的ながら行動の自由を認めたのは結果的に間違っていなかったとみえる。

 突飛な行動はとることがあるけれど、こちらに迷惑らしい迷惑をかけることもなく日々過ごしているし、自身のことについて誰にも話していないという約束事も守っていると報告を受けている。

 

(この子を見つけた時は、どうなることかと思ったけれど……)

 

 初めてデルフィングの搭乗席でこの子を見た時はよく出来た人形か、もしくは新鮮な死体だと思った。あまりに色白で死んだように眠っていたから無理も無いことだった。

 落ち着きを取り戻してライガットから事情を聞き、少し考えればただの死人程度の事態などではないのは明白だった。古代人の末裔どころか、どうにか長い歳月を生き延びてきた古代人そのものと目される少女――どう考えても厄介事の種でしかない。

 ましてや、このクリシュナという国は戦時下。眠り続ける少女に構っている余裕など私達にはなく、拘束と監視だけは実施して、当座は放置せざるを得ない――

 

(そう考えていたのが、あっさりと無に帰したのよね。いきなり私達の前に現れて、不可解な流れでデルフィングに乗り込んで……)

 

 そして私はそれ以降、覚醒して動き出したこの子の事を怪しみ、そして警戒した。あの状況でそうならないほうがおかしい。

 それはおそらくホズルやバルド将軍、あのライガットでさえも同様で、後々セフィの表向きの事情を知った城内のほぼ全ての人間に当てはまることでしょう。

 例え私が味方だ身内だと言い張ったとしても、どう見ても不可思議なこの子はそうすんなりと他人に受け入れられるような存在ではない。一見の容姿で彼女の異質さは理解出来るし、そして次に大まかな内情を知れば必ずそうなると言っていい。

 

 しかし矛盾するようではあるが、そんなこの子を手放すような考えは、私の中に微塵も無かった。状況からの推測でしか無いが、あの子はデルフィングにとって重要な役割を果たしている歯車の一つであると私は考えている。であれば、彼女をデルフィングから――あの副搭乗席から引き剥がして何処かに放逐する訳にもいかなかった。今の私達に、あの古代巨兵の力は絶対に必要となる力だから。

 

 だからこそ私達はこの子にセフィという名を与え、知恵を与え、役割を与え、そして居場所を与えたのだ。

 この子を縛り付けるようなその行為が、果たしてこの子にとって幸せなのか、などということなど二の次にして……

 

 ――そしてその方法は幸運にも、間違ってはいなかったのだとは思う。

 結果的に私達は彼女の事を知る事ができ、そして彼女は私達の事を知るに至った。それも極めて穏便な流れの上で、である。

 セフィは、デルフィングに乗ってさえいなければ――いや、乗っていたとしても脅威とはならない無力でいたいけな少女でしか無かった。ともすれば、何かささいな拍子で死んでしまうのではないかと思えるほどに脆弱な女の子。

 この子に察知されないように監視を残した上で自由にさせてみても、この国にとって害毒となる行動は一切取らない。むしろ微力ながら力を尽くして周囲の人間の為にあれこれ励んでいたり、自身の無知を改善しようと努力したりしているようだった。

 

 そのことを知った時は、あれこれ考えて警戒しているのは無駄なのではないかとはっきり言って拍子抜けしたものだ。

 ライガットなどは早々にこの子に対する警戒心など捨て去ってしまったようで、彼女のことをあれこれ世話を焼いたり、人間関係その他の事を心配して私に相談に来たり……

 私はそんな二人の関係を見てやきもきしながら、「兄妹か」と誰かに言った記憶がある。事実、今ではあの二人はそれに似た関係を築いているし、周囲の人間もそう見ているフシがある。

 なにしろ魔力無者であるライガットと大抵一緒に居る、同じ魔力無者の少女だ。それだけで二人の関係を色々と邪推する人間も出てくるのは自明の理というもの。事実、大なり小なり二人が親しい関係であるという噂が存在することは聞き及んでいる。

 最近はライガットと行動する機会が多少減っているとはいえ、部隊行動中にどうにも手持ち無沙汰になればこの子はライガットの傍に居るという現状も、セフィにとって彼が何かしら特別な存在であるという証拠だろう。

 

 そうなるとライガット同様に魔力無者である彼女を嘲る声も出そうなものなのだが、彼の場合と違ってそんなことは一切起きていないというのは、セフィにとって幸運なことだった。

 王族の庇護下にある存在だということはライガットも同じ――ならば幼い少女だとはいえ、美しき女性は総じて得をする実例がここにある、ということなのだろう。現金なものだ。

 それなのに皆、積極的に彼女に関与するわけでもなく……

 それぞれの内に残っている若干の警戒心と、触れれば壊れてしまいそうなセフィの儚い印象故だろう。

 

(……そうして結局は、「何事にも一生懸命な、健気で可愛い謎の女の子……だけどどうにも近寄り難い」あたりの評価に落ち着いているのよね)

 

 例外は……そうね、クレオくらいかしら?

 性根が優しくて軍人には明らかに向いていないアテネスのゴゥレム乗りの少女。セフィのことは多少経歴をごまかして紹介はしたものの、顔を合わせたその日に二人ははあっさりと仲良くなっていた。

 敵味方という関係ではあるけれど、それ故余計な前知識が無かったおかげか、もしくは彼女自身の気性がそうさせたのか、クレオはセフィをすんなり受け入れたし、セフィはクレオとは本来敵対する関係であるということをなんとも思っていない。今ではお互いに女友達か姉妹のように接していて、見ていて微笑ましい関係を築いている。

 そんなクレオが自分にとって得難い存在であるということは、セフィも無自覚に気付いてるのか心を開いてとてもよく懐いているようだし。

 

 これまでの出来事を統合して考えれば、彼女の存在は私達にとって確実にプラスになっている。

 特にライガットの精神面での補助をしてくれているのは大きい。セフィと一緒だとライガットに対する城内での直接的な陰口も明らかに減るし、彼本人もこの子との触れ合いは癒しとしているみたい。

 さらにホズルの話からすると、いろいろ私達が気付きにくいライガットの機微を察知してわざわざ忠告してくれている。そのおかげというか、私はホズルからもライガットの事を気にかけるように言われた。無論、そんなことは言われるまでもないことだったのだが、結果的に国王であるホズルのお墨付きが貰えたという意味に捉えると、今後ライガットの援助もやりやすくなるというものである。

 

 それに私自身としても、この子には身近に居て欲しい存在だと感じている――警戒していながらそんなことを考えているなんて矛盾しているようだが、それは確かなのだ。

 ある意味、彼女自身もデルフィングと同等かそれ以上の価値ある存在であることは明白で、この子も朧気ながら古代文明らしきものの記憶が残っているのか、デルフィングについて私と言葉少なに意見を交わすこともあった。

 他人にしてみれば、無意味で無価値な時間だったかもしれないけれど、その間は幼子が非現実的なお伽話に花を咲かせているような、俗世を離れて夢中になれるものだった。

 いつかこの国に平和が戻り、そしてこの子が普通に話せるようになる時が訪れるのならば……その時には一層話に花を咲かせてみたいものだ。

 

「……ではそのように手配しておきます。じゃあ――って貴方、まだ何か用があるの?」

 

 話を切り上げその場を離れようとした私の上着の裾をセフィが摘んでいる。

 ……やれやれ、まだ何かあるようだ。仕方無い、もう少し話を続けるとしましょう。

 

 

――

 

 

 く、苦労しました……武器一つ確保するのにこんなに心労を重ねる羽目になるとは……

 

(「……でも、貴方が何を持っても今更という気がするのだけれど?」)

 

 あはははは……あのセリフは正直堪えましたねえ……まあ、実質その通りですが。

 いくら武器を持っていても、経験も体力も無い私では豚に真珠というものでしょう。先制攻撃などもっての外。重い長物は持てないですし、プレスガンは扱えない。

 実際、私と同じ様にプレスガンを扱えないライガットさんはその辺り完全に開き直っているようです。現在生身での剣術体術の修業に励んでいる彼ではありますが、普段武器の類を身に付けているところを見たことがありません。おそらく出陣に際しても何も持たずに行くのでしょう。

 かと言って、優良健康男児であるライガットさんはそれでいいかもしれませんがこちらとしてはそうはいきません。いざとなったら拳と脚と口先と勇気があるライガットさんと違って、貧弱な身体の私は非武装でいるのは心理的に非常によろしくない。せめて一矢報いれる何か持って安心しておきたいのです。

 いざという時には自害するという手段も確保出来ます。豚とて真珠の価値も意味も分からずとも、飲み込んで気道を詰まらせ窒息することくらいは出来……あれ、出来ない?

 ……まあ、最も私はそんなことするつもりは毛頭ないので、あくまで方便ですよ、方便。

 渋るシギュン様に懇切丁寧にお願いし、軍用の既成品でいいからと半ば強引に話をまとめ、今日中に用意しておいてもらうことを約束してもらった。シギュン様にはそれで安心できるなら仕方ないわね、という顔をされた。

 

「……ではそのように手配しておきます。じゃあ――って貴方、まだ何か用があるの?」

 

 デルフィングの出陣を明日に控えて忙しいシギュン様。私との会話を切り上げようとしていた気配を察知し、裾を引っ掴んで引き止める。心苦しいところだが、こっちにはもう一つだけお願いが残っているのだ。

 ……というか私としてはこっちが本命であり、それでいて実現する可能性が低いお願いでした。

 

「それは……」

 

 案の定、お願いの内容を言った途端にシギュン様の顔が陰った。彼女としては想定外で、あまりいい話ではなかったのでしょう。

 無理は承知だが、そこをなんとか……と低頭平身でお願いする。このお願いは、私だけの問題で片付くものという訳ではありませんので。

 

 

――――――

 

 

『――訓練終了! 各ゴゥレムはハンガーへ! その後待機地点へ移動!』

「ふぅ……」

 

 ナルヴィ隊長の号令が響くと、ライガットさんは深く息を吐き出し、張っていた気を緩める。今日は十日間に及ぶ訓練日程の最終日――早いもので、明日には出陣となります。

 今日は訓練の締めくくりということで、簡単な部隊単位での行動確認の後、一通り武器の扱いを確認して終了です。

 これから皆のゴーレムは訓練用の装備を剥ぎ取られ、出陣の為の最終メンテナンスを施されます。単純に調子を見るだけでなく、個性や機体特製に合わせた装備の増減も含みます。

 具体的には、デルフィングは隠し球の新式多重装甲形態へのバージョンアップ、ナイル義兄様のゴーレムは全体的な速度向上を図るため上半身の装甲を減らす方向で調整するらしいです。エルテーミス級の速さに少しでも追い付くにはやむを得ないとのことで、義兄様も腹をくくったと見えます。

 

 ふと、私はライガットさんに確認しておかなければならないことがあったのを思い出しました。ちょいちょいと上着の裾を引っ張ってライガットさんの気を引く。

 

「ん? 何だ?」

 

 額の汗を拭っていたライガットさんに、今日これからどうするのか尋ねる。

 ナルヴィ隊長がおっしゃっていたように、ハンガーでのメンテナンスを終えた各ゴーレムは王都外縁の荒野で待機となります。ゴーレム部隊の出陣はそれだけで王都の人々の士気を向上させるのに一役買ってくれるので、通常なら王城から隊列を組んで出陣……と相成るのですが。

 これはまあ、デルフィングの稼働時間を節約するという当然の思惑があるのでしょう。それと総じて五台のゴーレム出陣は前回のものと違って見劣りしてしまうことですしね。将軍閣下も居ないですし。

 個人的に私達のゴーレムはパーソナルカラーが全員違っていて見ていて派手だなーと感じられる部隊なので、そういう晴れ舞台にはよく映えると思うのだけれど。

 

「……そうだな、デルを待機させたあとはいつも通りサクラ近衛大隊長(あのオバさん)と訓練だ。最終日だしってことでみっちりやるとさ」

 

 ご苦労様です。

 ライガットさんのこの十日間の訓練の成果は如実に出ていて、初日にカウンター一発で沈んでしまった残念な印象はかなり薄くなっている。

 今では生身、ゴーレムとも(手加減はされているだろうけれども)サクラ近衛大隊長と打ち合えるまでになっているようで、近接戦闘に限ればかなり強くなっています。

 そうは言いつつも、焦ると槍を振り回したりしてしまったり、イーストシミターの扱いが雑になったりするのは相変わらずなので、しばしばナルヴィ隊長やサクラさんに落ち着いて行動するように怒鳴られているようです。

 あと最近は、ライガットさんはデルフィングのことを『デル』と愛称で呼ぶことが多い。元々私が『デルフィング』と言うのに時間が掛かるので『デル』と言い始めたのだが、どういう訳かライガットさんも同じ様にこの子のことをそう呼び始めた。

 私に気を回したのか、単純に長い名前を一々呼ぶのが面倒くさくなったのか、それともこの子に愛着が湧いたのか……まあ、私に気を回して、ということは無いかな。単に言いやすいからだと思う。

 

「その後はホズルから食事と酒に付き合えって誘われてるし、そっちに行くつもりなんだが……」

 

 国王とサシでお酒ですが、相変わらずいいご関係で羨ましい。

 ホズル陛下は最近本当に忙しそうである。戦時下となった国内のあれこれだけに限らず、オーランドへの軍事的助力を依頼する懸命な努力を続けているようです。

 私は正直期待薄だと思います。彼の国が信頼出来ない国というのもあるというのも理由の一つですが、それ以上に私は嫌な予感がプンプンするのです。

 長期的に見ればアテネスに対する盾となるクリシュナという国が無くなることは、間違いなくオーランドにとっては不利になることなので完全に無視されはしないと思うのです。さもないといつかは国土が戦場になって国民が苦しむのはそちらですから。

 さらに言えば、百年前のような勢力図になることはオーランドも回避したいという思惑があるはずです。クリシュナとアッサムの資源が丸ごとアテネスの力になってしまう事態は避けたいでしょう。石英の運用技術が遥かに発展した現代において、独立戦争以前よりも石英資源の重要性は上がっているのですから。

 それは当然オーランドも承知している筈。ならば嫌でもクリシュナの援軍に来ないといずれオーランドも滅びることになる――

 

(――だと言うのに、嫌な予感しかしません)

 

 案外、あっさりこちらの援軍要請を無視されるような気がするんですよね。あの宗教国家は。

 それにアテネスと一戦交えて敗退した以上、アテネスよりも戦力的にオーランドが優れているということも無さそうです。援軍が来たとしても……

 どちらにしろ今は彼の国をあてにすることはしない方がいいでしょう。援軍に来てくれたらラッキーくらいに思っておいたほうが懸命というものです。

 

 閑話休題。

 そんな誘いをかけるということは、出陣を明日に控えてホズル陛下もライガットさんと話しておきたいことがあるのかもしれません。友人を死地へと送り出す最初の機会となるわけですしね。

 だが、敢えて私はそれに待ったをかけました。貴重なお時間だとは思うが、ライガットさんに少しだけその時間を割いてもらうようお願いする。

 実は私がライガットさんにこうやって願い事をするのは非常に珍しいことです。普段は何を言わずとも手を貸してくれる人なので。

 

「付き合うって、何処にだ?」

「あの……――――で――――」

「ッ!?」

 

 私がそこ(・・)の名を告げると、それまでくたびれ気味だったライガットさんの表情が一気にこわばる。まあ、そうだろうなぁ……

 

「……いや、俺は――」

「おね……がい…………」

 

 この人にとっても辛い事かもしれませんが――だからこそライガットさんに私と一緒に来てもらいたいと考えている場所なのだった。

 少々押し問答はありましたが、私はライガットさんと夕方頃の食事前にそこへ行く約束を取り付けることに成功したのです。

 

 




▼今回のまとめ・追記事項

1.なんだかんだで大切に想われています
2.出陣前日の出来事
3.次話も同日の出来事


次回、よろしくお願いします。
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