壊剣の妖精   作:山雀

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▼前回のあらすじ


 やっとこさ出陣するしんせーみれにる部隊。


021. 広域戦闘

「――クソッ!! セフィ! 用意はいいか!」

「…………はい!」

 

 緊張感を伴ったライガットさんの最終確認――私は今一度心身と機体の状態を確認し、問題無く“いける”と判断します。

 

「よし……ロギン! 俺が先行して味方を包囲している敵の数を減らす!!」

 

 私の返事を確認したライガットさんは、デルフィングの隣に並走する土色のファブニル――ロギンさんのゴーレムにさっき即席で立てた作戦の変更を告げる。

 

『駄目だライガット君! こちらの部隊配置はまだ完了していない!!』 

「このままじゃ味方部隊が保たねぇ! 作戦通り隊長達の攻撃を待つ余裕も無いだろ!! それにデルフィング(こいつ)の足ならあいつらがやられちまう前に助けに入れる!!」

『だがそれでは――』

「先に行くぞ! セフィ!!」

「…………はい!」

 

 威勢の良い掛け声に、私の返事にも熱が入るというものです。

 

 ライガットさんの操作に従って、デルフィングはそれまでマントのように纏っていたシートをバサリと脱ぎ捨てます。

 そして現れたのは、一見すれば異形のゴーレム――前回の戦いで装備した多重装甲形態をより洗練し、昇華させた新式多重装甲を装備したデルフィング第四形態とも言える古代巨兵です。

 

 その全体を覆うように重ねられた若干丸みを帯びた装甲と、機体前方に長く突き出ている形となる四角錐状の衝角が特徴的。

 前回のファブニルの廃材を利用して急遽製造された多重装甲と比較しても、格段に攻撃時の破壊力・突破力・防御力を向上させた形態となっているのです。

 

「ッ!!」

 

 デルフィングは力強く大地を踏み込み、こちらを制止させようとするロギンさんのゴーレムを振りきり、現在味方の死地となっている荒野に向かって一気に加速に入ります。

 その際のGに私の息が詰まりますが……大丈夫、戦闘に支障はありません!

 

 

 場所はクリシュナ中央部のアラカン荒野。

 こうして予定していたよりも少々早く、荒涼とした大地の上で私達の戦争は始まったのです。

 

 

――――――

 

 

 

 ――事の起こりは少し時を遡ります。

 

 デルフィングの稼働時間の都合上、通常のゴーレムの進軍時よりも休憩を頻繁に取りながら西方の国境地帯へ向かっていた私達ミレニル部隊。ですがその道中、デルフィングのカメラが遠方で睨み合うゴーレム群を発見してしまったのです。……勿論、クリシュナとアテネスのゴーレム部隊ですよ。

 

 ライガットさんと一緒に風景を拡大させて観察したところ、荒野の高台に布陣するクリシュナのゴーレム部隊が大体七十台、それに見下ろされる低地に陣取るアテネスのゴーレム部隊がやや少なく五十台前後と、もしこのまま戦闘に入ればクリシュナの有利に動く状況が見て取れました。

 それぞれが大地の起伏に機体を隠すように展開して動かない……ちなみに、クリシュナのゴーレム部隊の指揮官はバルド将軍のようですね。ライガットさんがちゃんと機体を確認していましたので。

 

『……状況から判断して、防衛戦を突破した敵の動きを察知したバルド将軍が待ち構えていたと見るべきだろう。このまま動かずにアテネス側の出方を伺い、手堅く動くだろうな』

 

 というのが、ライガットさんから報告を受けたナルヴィ隊長の意見。確かに折角地の利を得ているのですから、それを利用するように動くべきでしょう。

 敵が攻めてくれば高所から狙い撃ち、敵が逃げれば逆落しで追撃……どちらに転んでも私達としては美味しい展開というもの。

 

『んで、どうすんだよナルヴィ! このまま将軍の部隊に合流すんのか!?』

『そうね……』

 

 ナイル義兄様がナルヴィ隊長に確認と提案を兼ねた声をかけています。新生部隊としては初陣となるので、華々しい戦果を上げるにはどう動くべきか考えていらっしゃるようで――あら?

 

「……たい……ちょ……」

『何かあったのか?』

「…………敵……動く……」

「ホントだ、陣を広げるみたいだぜ」

『何だと!?』

 

 見れば、アテネス側のゴーレムは高台の左右に向かって展開しようとしています。そのままクリシュナのゴーレム部隊を挟撃する陣形をとるようですね。でも高所で敵陣を俯瞰できる相手に、そう上手くいくものでしょうか?

 ……そう思っていたら高台の手前の位置で別れた部隊が止まってしまいました。なんで?

 

『……アテネスの連中は高台の味方に対して誘いをかけているようだな』

 

 えっ、そうなんですかナルヴィ隊長?

 

「本当かよ……」

『おそらくは、だがな。お前のゴゥレムの“目”なら、バルドを釣る為の“餌”が確認出来ないか?』

「どれ……む、確かにそれっぽいもんが見えるな。高台から見て左右に伸びた包囲の先……あの岩場に少数だけどゴゥレムが居る――たぶん指揮官機だな」

 

 むむむ、岩陰に確かに機影が見えますが……あれたったの数台しかいませんよ!? 

 

『指揮官――まさかボルキュスか!?』

 

 ナルヴィ隊長が口にしたその名前は、私達に大きな衝撃を与えました。

 ボルキュス将軍……ゼスさんが来ると予告していた、アテネスでも屈指の戦上手にして残酷な作戦も容赦無く決行する、まさにクリシュナにとっての疫病神です。

 

「な、なんでそんな大物がいきなりこんな所に出てくるんだよ!?」

『あの状況……奴が囮なら納得が行く! バルド将軍が引っ掛かるような罠とも思えないけど、私達はアテネスのゴゥレムに悟られないように接近するぞ! 各自派手なゴゥレムの動きは控えるように!!』

 

 ……そうですね。とりあえず近付かないと何も出来ませんので異存無しです。

 でもあれが罠って、不気味ですね……大口開けたワニの口に腕を突っ込むみたいなものじゃないですか。本当に効果あるんですかね?

 

 

……

 

 

 ――そんなことを思っていたらですよ。

 クリシュナのゴーレム部隊の一部が敵指揮官を目掛けて吶喊し、そのまま敵を一台も落とせないまま全滅してしまったようなんです。

 しかも両翼のゴーレムの援護抜きだったので、数十台のゴーレムがあの数台の敵に軒並み倒されてしまった、ということになります。

 えらいこっちゃですよ……そしてアテネスのゴゥレム強過ぎじゃありませんこと!?

 

『あいつらやられちまったぞ!? どうすんだよナルヴィ!!』

『――各員、一旦足を止めて聞け!! これから私達は二手に分かれ敵を攻撃、バルド将軍の部隊を援護する!!』

 

 将軍の部隊に合流せずにこのまま攻撃を開始する、ということでしょうか? 個人的に味方は多いほうが心強いんですが。

 

『まず私とナイル兄、そしてジルグが高台の左側――敵の右翼に攻撃を仕掛ける!! 地形を上手く利用して進めば、奴らの側面か背後を取って奇襲できる!』

『――あいよ!』

『……了解です。隊長殿』

 

 あの……見たところ二十台以上敵のゴーレムが居るんですが、それをたった三台で相手するつもりなんですか?

 

『それに続いてロギンとライガットの二人は逆に右側――敵左翼に攻撃(アタック)!! ライガット! お前はデルフィング単騎で敵陣を盛大に蹴散らした後、適切なタイミングで戦域を離脱しろ!! 残り時間を見誤るなよ! ロギンはライガットの援護を!!』

『了解した!』

「りょ、了解!」

 

 お、おおう……目の前でめまぐるしく作戦が組み立てられていきます。

 ちなみに私の存在はこういう時スルーされるのが基本です。所詮は副搭乗士ですからね、でもちゃんとお話は傾聴しております。

 

『バルドなら私達の動きに呼応して絶対に攻撃に転ずる……よって挟撃成立! 以上、何か質問はッ!?』

 

 ありません!

 

『ならば散開!! 各員の幸運を祈る!!』

 

 

 

――――――

 

 

 

 ――この慌ただしい流れがつい先程のお話。

 

 あの後、作戦通り二手に分かれて進軍していた私達ですが、どういう訳か高台に布陣していたクリシュナのゴーレムほぼ全てが突撃に入っちゃったんです。なんでぇ……?

 で、ライガットさんは作戦を一部前倒しして、デルフィングを突撃させようという腹積もりなのです。先程おっしゃっていたようにこのままだとバルド将軍達が全滅しかねませんから。

 

(後少し、バルド将軍が突撃を遅らせてくれれば万全というものだったのですけど……)

 

 今更言ってもどうしようもないことです。ライガットさんが信頼するバルド将軍のことですから、全員揃って攻撃に移らなければならない理由があったのでしょう。

 久々の高速移動を駆使して、デルフィングは敵の左翼に接近していきます。岩陰や峡谷っぽい地形を利用して、敵に見つからないように――

 

(よし……敵の背後をとりましたよ!)

 

 奇しくも、敵の両翼が突撃したバルド将軍達に集中攻撃しているタイミングで攻撃開始位置につきます。あわわわ、味方が釣瓶撃ちにされちゃってますです……

 揃ってこちらに背を向けて銃撃に集中している敵軍を睨みつけます。許すまじ!

 

 さて、ここまでくれば今のデルフィングがすることは一つ――

 

「突撃を開始する! セフィ、道案内は任せたぞ!!」

「――(コクリ)」

 

 任されました、ライガットさん。

 さあ、クリシュナの切り札たるデルフィングの力、彼らに披露してあげようではありませんか。

 

 

 私は敵左翼の中腹を穿つルートをライガットさんのモニターに表示させます。奇襲において最も効果的な初撃です――美味しく頂いちゃいましょう。

 

「……行くぞ!!!」

 

 ライガットさんがペダルを踏み込み、デルフィングの巨体が戦場へと飛び出します。それは私の提示したルートに沿ったもので――

 

「ぬぉぉぉ!!」

 

 デルフィングの装甲に弾かれ、鋭く尖った衝角で貫き、さらに別のゴーレムを巻き込んで、一気に三台の敵を仕留めました。

 

『な、なんだとぉッ!?!?』

 

 敵が狼狽する声が聞こえますが……無視無視。あ、ライガットさんそこで一旦ストップです!

 

(ふむ……上手くど真ん中を撃ち抜けましたか。機体にダメージ無し、上出来ですね……)

 

 それに私自身の訓練の成果もあって、無理なくデルフィングの挙動についていけています。……これなら!

 足を止めて後ろを振り向いたデルフィングの中、私は先程の戦果を確認しそのまま次のルート選択に入ります。ライガットさん、ここからはもうノンストップで駆け回りますよ!

 

『――うッ、撃てえッ!!!』

 

 足を止めたデルフィングに一斉にプレスガンの銃口を向けてくるアテネスのゴーレム軍団……まあ、そうなりますよね。

 このままだと集中砲火を浴びてしまいます。それは流石にマズイ――

 

(――ですので、ここはクレオさんの戦術を拝借させて頂くとしましょうか!)

 

 私は一瞬だけ視線を戦場に閃かせると、再度突撃するルートをライガットさんに提案します。

 

「グゥッ――うらぁ!!」

 

 衝角を突き出すようにして、敵のゴーレムを破壊。バッチリです。以後は一台一台確実に仕留めていきましょう。

 

 ――ええ、このデルフィング第四形態の長所を活かした突撃……私とライガットさんは役割分担をして、前回の突撃より効果的な攻撃を実施しています。

 ライガットさんは装備の維持と機体の操縦に専念してもらい、私が突撃ルートを選択し彼に提示するという戦法をとっているのです。

 

 その突撃ルートですが無闇に近い敵を選んでいるという訳ではなくてですね、一応私が地形・敵の位置等を元に脳内で弾き出しています。

 デルフィングの踏み切りに耐えられそうにない地面や敵ゴーレムの残骸を避け、同士討ちを恐れて敵が攻撃しにくい位置を通り、偉そうな指揮官っぽいゴーレムを優先排除する、という具合ですね。

 勿論、ライガットさんがより好ましいと感じるルートを選べるよう、二つか三つのルートを同時に提示しています。大変ですが、今の私ならなんとかこなせる仕事量です。

 相手が多数だったのでさらに効果的ですね。まさに入れ食い状態と言って良いでしょう。

 私は休まずルートの選定を続けております。この乱戦の中では常に動き続けるのが最善です。でないと四方八方から袋叩きに合ってしまい、いくら重装甲を纏っているデルフィングでも消耗を強いられてしまいます。

 

『く、くそ!! 何なんだこいつはッ!?』

 

 ……敵も混乱しているようですね。突然こんな得体のしれないゴーレムが現れて陣形をしっちゃかめっちゃかにされてしまったら、たまったものではないでしょう。

 ですが敵方も一方的に攻撃されているわけでもなく、体勢を立て直した何台かはこちらにプレスガンを連射してダメージを加えてきています。

 事実、三層構造となっているデルフィングの追加装甲第2層まで被害が及んできています……えっと、確か――

 

(「いい? 二人共、3層まで抜けたら外部装甲を固定しているフレームに損傷が出ていると思っていい。すぐにパージして、戦場から離脱して……」)

 

 ――さもないと装甲を失った上で戦場の真ん中で孤立して危険……でしたよね、シギュン様!

 つまり、『そろそろ装甲が保たなくなるので身軽になって退場しないと』ってことなんですが……

 

「――やるしかッ」

 

 お? 猛々しい顔付きで何事でしょうか、ライガットさ――

 

「やるしかないんだッ! 慣れるしかないんだろ!? 人殺しにッ!!」

 

(……ぁぅ)

 

 うん、まあ、あれです。とりあえず今は戦闘に集中しましょう。

 そう思った矢先、ガクンという衝撃とともにデルフィングの突進が止まってしまいます。

 

「うッ!!」

(しまった……浅かったッ!)

 

 何が起こったかと言うと、デルフィングの正面に居た敵のゴーレムが腹部に衝角で穴を穿たれつつもその場に踏ん張って、こちらを取り押さえにかかってきたのです。ご丁寧に足元に直剣を突き刺し、こちらの足を殺しにきています。どうやら、方向転換した直後、まだ速度がのっていない瞬間を狙われてしまったようです。

 

(す、すいませんライガットさん! まさか捨て身で突進の勢いを殺してくるとは予想外で!)

 

 内心言い訳をしていますが、これは私が焦っている証拠です。

 側面からもう一台のゴーレムがこちらに近づきながらプレスガンを連射してきているので、内部にしっかり衝撃が結構響いてるんです。ゴリゴリと装甲も削られていっている模様。

 

「――チィッ!!」

 

 こちらのすぐ側まで近寄ってきた一台に狙いを定めたのか、ライガットさんが細かく操縦桿を操作――それに従いデルフィングが腰のホルスターから取り出したのは、シギュン様謹製の新装備の一つ……石英製三節棍(連結鎖:長)でございます!

 相手はこちらの攻撃を警戒して盾を構えましたが、この武器ならそんな防御お構いなしです。丁度真ん中の棍を防御されましたが、先端部の一棍が盾を回りこむように動いて敵ゴーレムの頭部を叩き潰します。

 首尾良く一台目を無力化したライガットさんはそのまま三節棍を横薙ぎにし、こちらの動きを抑えていた敵の足を打ち払う。相手は派手に回転しながら飛んで行きます。……うわぉ。

 

『そいつから離れろぉッ! 撃て!!!』

 

 纏わり付いていた二台を撃破したのはいいんですが、今度は盾になるゴーレムがいなくなってしまったので周囲に残っていた敵の集中砲火が襲いかかります。

 

「グッ!!!」

「――ッ!! (ぬわー!!)」

 

 ガンガンと激しい衝撃が機体全体に襲いかかります。ちょ、これはたまりませんよ!

 

「くそッ……パージも何も……装甲がここまでか……!! セフィ! 跳ぶぞッ!!」

「――ッ(コクコク)」

 

 りょ、了解! 脱出ですね!

 私が無言で頷くや否や、デルフィングは一際大きい駆動音を鳴り響かせ、装備していた装甲をパージしながら地を蹴り空高く飛び上がりました。――って、高過ぎです! 荒野一望できちゃいます!

 

『なッ……なんだ!? こ、この高さはッ……』

『逃げるつもりかッ!? ね、狙え!!』

 

(あ、こちらの跳躍性能に驚いて、敵の動きが止まりましたね。好都合です! やっちゃってください!)

 

 私の声なき声援が届いた訳では無いでしょうが、空中で三節棍を所定の位置に収納したライガットさんは、腰部のホルスターからネイルダーツを展開――私達に銃口を向けていた一台に三本まとめて投擲し、見事命中させました。

 ……凄いですね。訓練開始当初、あれだけ外しまくっていたのが嘘みたいです。ちゃんと敵の頭部と胴体に突き刺さって無力化に成功してます。

 

『くッ……盾を出せ!! 守りつつ距離を詰めろ!!』

 

 続けて第二射、第三射を決行、あわよくばとは思っていましたが……残念ながらそれぞれ避けられたり盾で受け止められたりしちゃってます。残念。

 

「ちッ……!! ネイルダーツは駄目だッ……刺さるだけで倒せないッ……」

 

 ライガットさんの仰るように、たしかに盾で受け止められると刺さるだけなんですが……でも個人的にはしょうが無いかなって思います。

 滞空中という不安定な状態での投擲ですので、さすがのライガットさんでも威力と命中率落ちちゃってるでしょうし、この状況で守りを固められたら牽制に使える程度でしょう。

 今は突撃時に衝角として使用していた重長槍を右腕部に固定しているせいもあり、投擲は左手だけで実施していますし、両手がフリーなら連射ももっとききます。

 現に初めの一台は倒せたんですから、ちゃんと使う場面とタイミングを見極めれば、ネイルダーツさんは存分に役立ってくれそうで――

 

(って、呑気に武器の評価なんてしてる場合じゃなかったあああああ!?)

 

 そうです、私達は今落ちながら戦ってるんですよ!

 落ちるということは、当然その後に着地というものが待っているのが道理……

 

『着地を狙えッ!』

『了解ッ』

「くそッ!!」

(やっぱり!!) 

 

 着地取りは基本……現実は厳しいものです。

 ライガットさんは初めて私がご一緒したあの日のように重長槍を盾代わりに構え、デルフィングに防御・着地体勢を取らせます。あとは運任せです。南無三!

 

『ッ!?』

『ぐあッ!!』

 

 その瞬間、敵のゴーレムが構えていたプレスガンが弾け飛びました。後方からは大きめのプレスガンの発射音が二度三度と響きます。

 

『――ライガット君! 十分だ! 離脱しよう!!』

「ロギン!」

 

 おお! ナイスタイミングです、ロギンさん!!

 少し離れた位置の高台に陣取ったロギンさんによる援護射撃に助けられました。おかげでデルフィングへの銃撃がかなり控えめになっています。

 

『新手か!? ロングプレスガンだと!?』

『動け!! 突っ立っているとモロに狙撃され――グワッ!?』

 

 どうやらロギンさんは敵を倒すよりも足止めを優先して撃ってくれているようです。

 間断なく脚部や武器を狙って、嫌らしい狙撃を繰り返しています。頼もしい限りです。

 そのまま少し控えめの跳躍を繰り返したデルフィングは、ロギンさんが隠れている近くの高台に避難しました。

 

『……見事な働きだったぞ、二人共! 敵左翼は崩れた……バルド将軍の本隊も巻き返し始めた!』

 

 ロギンさんが教えてくれた通り、追い詰められていたバルド将軍達が生き残っていた敵左翼を殲滅完了する光景が見えています。右翼側も確実に反撃を開始しています。

 とりあえず、これで一安心でしょう。こちらにとってはまともな野戦に持ち込める状況になっています。

 

「……ぐッ……く……はぁッ……」

 

 むっ……ライガットさんが胸元を押さえながら何やら苦しそうです。少々心拍数が大きい値を示しているようですが、大丈夫でしょうか?

 

……

 

(「――やるしかないんだッ! 慣れるしかないんだろ!? 人殺しにッ!!」)

 

……

 

(……あうあう)

 

 そそそ、そうでした! だ、大丈夫な訳ないですよ! ゲロマズですがな!!

 うわぁ……ヤバいですマズイです。どう考えても先日の墓地での一件が後を引いてるとしか思えないのです。

 いや、やる気になってるのは結構ですし、言ってることもそう的外れという訳ではない。

 現に今もこうやって敵の掃討を完了したわけなんですが。本当にこの人の戦うことに関する意識、どうしたものでしょう……

 

 そのライガットさんはデルフィングの活動限界に愚痴を零してます。

 

「……こいつも、ちょっと激しい動きをしたらこれだ……もって後六分か……ッ!?」

 

 そこで彼は何かを発見したようです。映像の一部を拡大して注視しています。え、何?

 その視線の先には、少し離れた断崖に佇む一台のゴーレム……マントを被っているので全容は掴めませんが、偉そうな雰囲気を纏っているので絶対に指揮官機だと思います。

 崖に取りついているデルフィングをじっと観察している様子なのが不気味でたまりません。

 

 ん? 指揮官機ってことは――

 

「――あれが……ボルキュス……?」

(え、ええー……ここでエンカウントですか!?)

 

 ナルヴィ隊長の予測が的中しているなら、あのゴーレムに搭乗しているのはボルキュス将軍であるはず……嫌な汗が流れますね。

 活動限界も迫っているので、このまま戦闘に入るのは避けたいところです。

 そういえば、ボルキュス将軍とやらのゴーレム戦の実力は如何なものなんでしょうか? 指揮官としては有能だという話は聞いているんですが、その辺りは特に情報が手に入らなかったんですよね。……でもあの雰囲気から見れば強そうとしか言いようがない。いつか戦うとしても油断ならぬ相手ですね。

 

 しばしの間、お互いに視線を交わしていた私達とボルキュス将軍のゴーレム。

 その後戦況が変化した為か荒野の敵ゴーレム部隊が撤退を開始し、それと同時にボルキュス将軍のゴーレムも姿を消しました。

 

「く、くそッ! みすみす逃げしてたま……ッ! くっ……」

 

 ライガットさんは慌てて彼らを追いかけようとしましたが、デルフィングの活動時間が残り少ないのを気にしてか追撃は取りやめたご様子。シギュン様からも口酸っぱくして追撃戦は避けろっていわれてますしね。

 

「……何少しホッとしてるんだ、俺……」

 

 苛立たしげに操縦桿を小突きながらそんな独り言を言うライガットさんですが、私としては飛び出して行かなかったことを大いに安堵していますよ? 動けなくなった後で返り討ちに合うのは御免ですからね。それにあのゴーレムとも出来れば戦いたくないとか考えちゃってますし。

 

 

 こうして、なんとか味方の危機を救うことが出来た私達ですが……はてさて、これからどうなることやら……

 

 

 




▼今回のまとめ・追記事項

1.主人公は相変わらず考える事多過ぎている
2.デル武装損失:外部多重装甲・ネイルダーツホルダー(左)


次回、宜しくお願いします。
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