鵺兄妹魔法学園奇譚   作:あるかなふぉーす

3 / 14
書き溜めてたのを出したいと思います。

あと今後、投稿遅くなります。

すみません。

それでは(やっと)第一話、ゆっくりしていってね!



第壱章 新学期編
第壱話 入学式 -friendlyship-


1

 

魔法学園――

 

早速、『魔法学園とは』と入りたいところだが、このプロローグを分かりやすく読んでいただくために

 

一つ時代背景を説明しておこうと思う。

 

時は、2045年。

 

現来、魔法と言われるものはおとぎ話やアニメ、漫画の世界で知られるよう、

 

人々の希望や想像から大成した大仰なフィクションであり、

 

実在は絶対的に科学的に有り得ないとされ、

 

それは多くの人間たちの周知の事実であった。

 

たまに近所で「魔法少女!」とかはしゃいでる女の子を見ると微笑ましくなったり、

 

逆に大人がやっていると「痛…」とか引いてしまう感じだった。

 

魔法は存在しない。

 

それが社会の一般常識であり、一般通念でもあった。

 

ところがどっこい、あにはからんや、時は西暦2032年。

 

なんと、魔法の存在が認められてしまった。

 

国連公認で。

 

もちろん、この情報は大いに世間を騒がせた。

 

感動に耽るものもいれば、嘘っぱちだと疑心暗鬼になるものもいた。

 

特にネットは大荒れ、それはたくさんの、様々な議論や情報(ほとんどがデマだったようだが)が飛び交った。

 

しかし、後日に国連軍による公式魔法実験デモが行われ、魔法が衆目に晒されると、人々は信じざるを得なくなった。

 

この瞬間、世界に魔法の存在が認知されたのだ。

 

まあ、多少の蟠りを残す結果となったが。

 

それから数年の時を経て、魔法専門の研究期間も設立され、研究開発の新分野にも組み込まれた。

 

科学的に否定されていた魔法が、今や科学的な研究がなされているのはいささか皮肉である。

 

そんな魔法研究。

 

中でも力が入れられたのは、

 

魔法を行使する人間――即ち、『魔法使い』の育成である。

 

いくら魔法が実現しても、それを使う人間がいなければ、いくら夢のような技術でも宙吊りになってしまう。

 

そこで発足された『魔法使い』育成機関の第一号であり、草分けであり、先駆けである、

 

『魔法学園』だ。

 

創立2033年。開校12年目と、まだ完成して日の浅い学校だ。

 

幻想と理想と希望と願望と想像と創造、あとはリノリウムで出来ているような学校。

 

さあ、時代背景の説明も終わったところで『魔法学園』の説明と行こう。

 

前述の通り、魔法開発を施された、魔法を行使する人間のことを『魔法使い(ウィザード)』と呼ぶ。

 

特に男性の場合はウィザード、女性の場合はウィッチと呼称される。

 

それも今じゃ俗語だ。

 

ウェイターとウェイトレスみたいなもので、男女差別的な意味合いがあるので公にはあまり使われない。

 

今は統一で読みは『ウィザード』だ。

 

そんな『魔法使い(ウィザード)』を育成するための国家機関。

 

一学年定員二百四十名で全学年で七百二十名が在籍している。

 

入学するには当たり前だが入学試験に合格する必要がある。

 

ただ、その試験内容が特殊だ。

 

魔法座学、魔法実戦、魔法技術、特殊機器による魔力保有量の観測

 

の四項目である。

 

これらの総合で好成績を出したものだけが『魔法学園』の狭き門を潜れるのだ。

 

ちなみに倍率は8倍。

 

おっそろしいね。

 

そして見事入学できた栄えある新入生たちには、これも当たり前ながら各々にクラスが割り振られる。

 

クラスは各学年にA~Fまでの六クラスあり、各クラス四十名編成である。

 

また成績の良い順にAクラスから割り振られるため、クラスごとで魔法使いのレベルに

 

格差が生まれてしまう。

 

魔法使いのレベル、力量、才能。

 

ここで魔法使いのレベルを表す『ランク』について解説しよう。

 

魔法使いには階級があり、魔法戦闘における汎用性や魔法研究への貢献性により

 

魔法学園では次の五段階に割り振られているる。

 

まずは、『最上級魔法使い(ウィザード)』だ。

 

単体で小、中規模の国家一つを壊滅できるという化け物軍団だ。全世界に116人存在しているらしい。

 

これに属するのは『S級魔法使い(ウィザード)』だ。

 

次に『上級魔法使い(ウィザード)』。

 

単体で『下級魔法使い(ウィザード)』の50~100人分の戦力を持っているとされる。

 

これに属するのは『A級魔法使い(ウィザード)』と『B級魔法使い(ウィザード)』だ。

 

そして『下級魔法使い(ウィザード)』。

 

最も多くの魔法使いがこれに分類される。

 

一般的にこれ以上が『魔法使い(ウィザード)』と呼ばれる。

 

『C級魔法使い(ウィザード)』、『D級魔法使(ウィザード)』。

 

何故か妹の寵が『C級魔法使い(ウィザード)』となってしまった。

 

最後に『最下級魔法使い(ウィザード)』。

 

初期魔法と呼ばれる初心者用の魔法しか扱えないものたちだ。

 

基本的に魔法使い(ウィザード)としての扱いを受けず、『魔法使い堕ち(ワースト)』と蔑称される。

 

『E級魔法使い(ウィザード)』がこれに属する。

 

残念なことに俺と巫仙がこれである。

 

また例外として、魔法界における最強戦力をもつと位置づけされた『SS級魔法使い(ウィザード)』が存在す

 

る。

 

世界中に僅か7人。そのほとんどが国家のお抱え魔法使いである。

 

現在確認できうるもので、日本はそのうちの一人、米国は二人を保有している。

 

これこそ化け物軍団で、大国の一師団ぐらいは余裕のよっちゃん、赤子の腕を捻るように潰すことができるのだ。

 

くわばらくわばら。

 

――まあ、こういった感じだ。

 

さて、ある程度の注釈をしたところで早速、場面を入学式会場、第一体育館に戻したいと思う。

 

 

2

 

入学式会場、第一体育館には、

 

人、人、人、人、人、人、人、人、人、人、人、人、人、人、人、人、人、人、人、人、人、人。

 

それはたくさんの人がいた。

 

新入生総勢二百四十名に加え、最上級生である三年生もこの場にいる。

 

つまり、二学年あわせてざっと四百八十人だ。

 

まだ到着が遅れている人もいるみたいだからこの数値よりは少し少ないだろう。

 

 

「凄いね~、人がいっぱいだ~!マッチピーポーだ~!」

 

 

間延びした口調で妹が感想を漏らす。

 

そういや昔、俺"people"っていう単語の意味を『パトカー』って勘違いしてたことがあったな。

 

ピーポーだけに。

 

皆も一度はこういう間違いあるんじゃないかな?

 

ないね、すまない…

 

 

「そして我が妹よ。一つ突っ込ませろ。 

 

 "much"は普通不可算名詞に使う形容詞であって、可算名詞"people"にかかる場合は"many"か、どちらにでも

 

 使える"a lot of"を使う方が正しい」

 

 

「へえ、さすがおにーちゃん。詳しいね」

 

 

「そのお褒めの言葉は有り難く与りたいところだが、妹よ。今のは中学英語だぞ」

 

 

ああ、妹の行く末が心配で心配でたまらん。

 

これも兄の運命(さだめ)なのか…

 

 

「まあそれは置いといて」

 

 

「確実に後回しにしていい問題ではなかったぞ」

 

 

妹は、俺のツッコミなど無視して話を進めた。

 

 

「確かに、こんな大人数が固まって団体生活を送る中におにーちゃんを放り込むのは酷だったね」

 

 

「至極失礼だが、指摘は的確だ!?しかし気づくのが遅かった!」

 

 

だから言ったであろうに。

 

確実に五月病を発病するから登校は控えた方がいいと。

 

 

「まあショック療法でなんとかなるかな」

 

 

「人間関係のショック療法なんて聞いたことないぞ!?」

 

 

しかもこういうのは結構深刻で根が深かったりするんだ。

 

「なんとかなる」程度の意気込みで済まさないでくれ。

 

 

「はあ…これからの未来にもはや『絶望』の二文字以外浮かばない…」

 

 

と、俺が肩を落とすと、

 

 

「まだおありじゃなくって?」

 

 

と、巫仙が綻ぶような笑顔で語りかけてきた。

 

 

「万死」

 

 

「いつまで引きずってんだお前は!」

 

 

俺もう三万回ぐらい殺されてるんじゃない?

 

理不尽に。

 

 

「億死」

 

 

「増えた!?」

 

 

しかも千倍!?

 

駄目だ!コウラで連続1upしてもカヴァーできる量じゃない!

 

というか、一億回死んだら死亡残機数が余裕でカンストしてしまう!

 

俺の人生はいつから横スクロールアクションゲームになったんだ!

 

などと、お互いに茶番をかましあってると、新入生の待機するパイプ椅子が並べられてあるゾーンに辿り着いた。

 

 

「じゃあ、おにーちゃん。寵はこっちだから」

 

 

といって、寵は自分のクラス――即ちBクラスの待機場所を指で示し、俺らに一言告げると、

 

そちらの方へ行ってしまった。

 

妹がいなくなって、いささか、どころかものすごぉく寂しいんだが仕方あるまい。

 

これも妹のため。

 

FクラスよりはまだBクラスの方がいいだろう。

 

待遇的に。

 

そっちの方が優遇されやすいだろう。

 

なにせ学園内では入学時点で既に力のヒエラルキーが完成してんだからな。

 

あれ?これって結構、学園の闇じゃね?

 

まあいい、愛し妹の不在は結構響くが、こっちには二番目ぐらいには愛している

 

彼女の夜鳥巫仙さんがいるからな。

 

 

「巫仙、行こうぜ」

 

 

そう言って、巫仙に行動を促し、俺らも自分のクラス――即ちFクラスの待機場所に向かう。

 

パイプ椅子は縦横5×8で並べてあった。

 

既に大半の椅子が生徒たちで埋まっていた。

 

空き椅子はほんの少し程度だ。

 

 

「席順は決まってんのか?自由か?」

 

 

俺が何気なく巫仙に訊くと、

 

 

「ベタに出席番号順ですわ」

 

 

そう答えた。

 

 

「じゃあ、俺は――」

 

 

俺の出席番号は27番だ。

 

ニーナ(誰だよ)の27番だ。

 

つまり俺の掛ける位置は四列目左から三番目のパイプ椅子となる。

 

ちなみに巫仙は39番(語呂的にはサンキューを検討中)で一番最後から二番目なので、

 

最後列右から二番目のパイプ椅子である。

 

巫仙もそこに掛けた。

 

同じクラスにも関わらず、二人引き離されてしまったのは悲しいが、

 

巫仙の場合は僅か数十センチだ。

 

振り向けば逢える。

 

ほら振り向けば、そこにはセカンドラヴァー(この単語非常に失礼)巫仙さんの御姿が――

 

 

「なあ、あんちゃん」

 

 

誰だよ。

 

何ということか。俺の、巫仙を見ようとした、その視線上にズンッ、と大きな躯体が割り込んできたのだ。

 

ああ、折角、巫仙を嘗め回すように凝視して『巫仙成分』を充電しようと思ってたのに…

 

最近足りてないんだよね、巫仙成分。

 

なんだよそれ。

 

そして俺は、その巫仙成分充電を阻害してきた野郎を睨みつけた。

 

 

「――コロス。いや、失礼。何の用だ?」

 

 

「ちょい待て!自分、地味に『殺す』言うたやろ!?」

 

 

そんな似非関西弁で似非ツッコミをしてくる男。

 

見れば頭髪をムースで固めたのか逆立たせており、武骨で強面だが整った顔立ちで

 

()()()女子には受けそうだった。

 

あくまで一部だからな。

 

わざわざ傍点振ってるし。

 

俺みたいに大衆受け、一般受けする顔にはまだまだ二百海里以上遠い!

 

排他的経済水域の外だ。

 

 

「気のせいだ」

 

 

「じゃあ自分、さっきなんて言うたん?」

 

 

「おろす」

 

 

「あんまり意味が変わってない!?」

 

 

ぎゃーぎゃーうるさい野郎だな。

 

俺ってうるさいやつ苦手なんだよ。

 

あっ、これを『棚に上げる』って言うんだな。

 

また自分で言って自分で理解した。

 

俺騒がしい奴大っ嫌い。

 

しかも俺とお前初対面だろ。

 

なんでこんなフレンドリーに話しかけてきてんだよ。

 

俺、コミュニケーションシップは苦手なんだよ。

 

 

「酷ないか」

 

 

「うっさいな。あんまごちゃごちゃ言うと『ソロす』ぞ」

 

 

「なんか普通の単語やのに『ころす』と『おろす』の後に聞いた所為で怖い言葉のように聞こえる!?

 

 ってか『ソロす』ってなんや!?」

 

 

「孤独にする」

 

 

「確かに意味は分かったが、何をどうして孤独にするのかが分からへん!」

 

 

「簡単だ。そいつの同性愛者説を流す」

 

 

「最低や!」

 

 

はあ、ツッコミもいちいちうるさい…

 

俺みたいにスマートにスタイリッシュにクールにツッコミできないのか。

 

 

「まあええわ。儂の名前は『不動車座(ふどうくるまざ)』言うんや。

 

 不動明王の『不動』に、『車』に『座』るや。簡単やろ?

 

 下の名前で構わんから、以後よろしゅう」

 

 

なんか最後京都弁混ぜてきた。

 

なんか方言ブレてないか?

 

キャラなのかマジモンなのかはともかく、そこは統一しとけよ。

 

こっちも対応にあまる。

 

 

「そうか、不動車座か。じゃあお前のあだ名は『クルペッコ』だ」

 

 

「『くるまざ』の『くる』から取ったんは分かるが、なんで儂が緑の吐瀉物を撒き散らす

 

 飛行生物みたいな名前で呼ばれなあかんのや」

 

 

「不名誉や!」と喚き散らす車座改めクルペッコ。

 

うるさい、あと声大きい。

 

生徒数名が気にしてこちら見てるぞ。

 

 

「じゃあ『くるりんぱ』で」

 

 

「儂ぁ、リアクション芸人ちゃうで」

 

 

「『くるくるぱ~』でどうだ」

 

 

「儂がアホの子みたいやんけ!」

 

 

「『ルン◯ッパ』?」

 

 

「もう原型があらへん!?」

 

 

「俺なんかな、『インビジ◯ル』で初めて『ルンパッ◯』って名前聞いたんだぜ。

 

 最初、『ル◯パッパ』?何それ?って思ったもん」

 

 

「自分、子供の頃やっとらんかったんかい」

 

 

やっとらんかったんかい、って。

 

複雑すぎやろ。

 

いけね、俺も混ざった。

 

 

「家が厳格だったもんで。そんなものには指一本触れたことはなかった」

 

 

「へえ、そりゃ難儀やのぉ」

 

 

「…………」

 

 

「…………」

 

 

「ちょい待ちや、何黙っとんの」

 

 

「あ?」

 

 

お前なに話継続させようとしてんだよ。

 

今、いい感じで終われそうな雰囲気だったのに。

 

 

「なんだよ」

 

 

「いやいや、儂、自分に自己紹介したけん、今度は自分が儂にする番やろ。

 

 ちゃいまっか?」

 

 

いやいや、何で俺がこんな初対面で似非関西弁のムサくて怪しい男にいちいち名前教えてやらんと

 

いけないんだよ。

 

俺はその旨を、少しぼかして車座に言った。

 

 

「何をおっしゃいますの、あんちゃん。儂らこれから三年間、同じ学校での付き合いや。

 

 仲良くしとった方がええやろ?自分が国立魔法大学に進学するんやったら、尚更や。

 

 まずはそのための自己紹介や」

 

 

…まあいい。

 

こいつと仲良くする気はあまりなかったが、その点を鑑みると確かにそちらの方がいいな。

 

 

「――『白鵺陵』だ。

 

 『白』に『鵺』――夜と鳥で『鵺』だ。それと陵辱の『陵』で『みささぎ』って読む。

 

 俺も陵で構わないさ」

 

 

紹介を終えて車座を見ると、車座は硬直していた。

 

聞いてたのか?コイツ。

 

 

「自分…名前、いつもそれで紹介しよるんか?」

 

 

「紹介したことがないがな…まあ、今後するとしたらこれでいくだろう」

 

 

「やめとけ。自分でその紹介して恥ずかしくあらへんか?」

 

 

どこが?今のどこに恥ずかしい要素があった?

 

俺の本気で分からないという表情を見てか、車座は大仰にため息をつき、

 

 

「分かった、もうええ。とにかく、今後はその自己紹介は控えとけ」

 

 

「…おう」

 

 

なんのことだったかさっぱりだが、第三者でこそ分かるというのもあるので、

 

それには従うことにしよう。

 

今度また新しくフレーズ考えるか。

 

 

「にしても、そうか陵ィ言うんか――」

 

 

そしてこのまま何事もなく、平和に安穏に会話を終えられそうだったものを…

 

この男は、『禁断の言葉』を言ってしまった。

 

 

「よろしくしてくれや、()()()()

 

 

それは、関西圏ではよくある二人称単数名詞なのだが、

 

しかし、俺はその言葉に反応せざるを得なかった。

 

馬鹿め、先ほどまで通り『あんちゃん』か、さっき教えたばかりの『陵』という名前で呼べばよかったものを…

 

俺は五本の指をぴんと伸ばし、それらを密着させ、鋭利な手刀を作った。

 

そしてその手刀の切っ先を車座の喉笛に突き付けた。

 

 

「オイ、車座ァ。テメェみてぇな奴が俺のことを『兄ちゃん』などと呼ぶな。

 

 いいか?兄も兄貴も兄さんも兄ちゃんもお兄ちゃんも全部駄目だ。

 

 俺を兄と呼べるのは妹だけだ」

 

 

その通り、俺のことを兄と呼んでいいのはこの世において、

 

妹ルートを開拓したいぐらいに好きで、小動物みたいに可愛くて、抱き付いてスカートめくって

 

下着のクロッチに顔を埋めたいぐらい愛くるしくて、毎日胸を揉みしだきたい、否吸い付きたいぐらいに愛しく

 

て、上目づかいで「おにーちゃん、だいすき」って言ってもいい、っていうか言ってくださいぐらいに

 

恋しい、我が超絶究極神威的愛し妹(マイエクストリームラヴリーシスター)ただ一人のみだあッ!

 

はぁっ、はぁっ。

 

…よく考えてみりゃ、俺って変態かな?

 

これで、「この兄は後に犯罪級危険人物として後世(の妹属性)に語り継げられた』っていうオチなら

 

まだ笑えるんだけど、

 

 

「いいかァ?その蚊トンボみたいな脳味噌によく刻み込んどけ――今後、俺に対して『兄ちゃん』などという

 

 呼称を用いるな。分かったか?」

 

 

まあ、これも完全に八つ当たりだ。

 

妹と隔離されてしまった(単にクラスが違うだけだ)兄の悲しみは図りかねるものだ。

 

このまま巫仙成分だけでなく妹成分まで欠如していったら、俺そのうち栄養失調で死ぬかも。

 

俺の必要充電頻度はスマホ並。

 

 

「お、応…」

 

 

車座が戦々恐々といった感じで応じた。

 

仕方ない。奴も反省しているようだから今回ばかりは妹の身体に免じて赦してやろう。

 

それに帰ればいくらでも妹の身体に抱き付いたり揉んだりキスしたりできるから、これでチャラだ。

 

本人不在の状態で密かに身体の自由が侵されつつある妹だった。

 

 

「応?」

 

 

あれ?なんで俺聞き返してんの?

 

 

「…は?」

 

 

「『は?』じゃねえよなぁ…『はい』だろうがぁ」

 

 

あ、やべ。これ完全に精神が暴走してる。

 

どうしよう、精神が脳の命令を受け付けない。

 

脳では「もうその辺にしとけ」と言っているのに対し、俺の精神は「奴を確実に屈服させよう」と

 

している。

 

これもまさか精神統御サプリメント、名を改め『妹成分』が不足している故か…

 

しょうがない、これも神の課した所業と受け取り、心の赴くままに流されますか。

 

車座の安否なんて知らね。

 

まだ出会って数分だし。

 

 

「は、はい…」

 

 

何だろう?

 

どんどん車座が学園天下統一マンガの一話目でフルボッコにされる雑魚敵Aに見えてきた。

 

 

「よろしい。二度目はねぇからな?」

 

 

「はい」

 

 

ヤバくない?

 

開始早々ムサくて、ガタイのいい男子高校生を攻略しちゃったよ!?

 

このまま俺の天下布武へのストーリーが始まったりして。

 

 

「えー。全生徒揃ったようですね。では只今より第12回生、魔法学園入学式を始めます」

 

 

どうやら入学式が始まるようだ。

 

俺は車座の咽喉部に突き付けた手刀をそっと引くと、車座に「もう怒ってないよ」と微笑みかけた。

 

しかしどうだ。車座の顔はひくひくと引き攣るばかり内心の感情を外に出すまいと必死だ。

 

何故にこうなった。

 

 

「全生徒、起立」

 

 

その声とともに、俺を含めた第12回生全員が立ち上がった。

 

 

2

 

入学式中、さして大したことはなかった。

 

敢えて流れを説明しておくなら、まずは開会の辞から始まった。

 

本来この後、新入生入場が定番なのだが、状況を見て分かるよう俺らは既に会場内のため

 

入場はスキップだった。続いて皆様お馴染みのことと存ずる国歌『君が代』を斉唱した。

 

こういうので時代は進んでも日本人の心は変わらないんだな、としみじみ思える。

 

地味に感動した。

 

その後、この魔法学園の長たる学園長が登壇し、式辞やらなにやらを述べる予定だ。

 

どうせ長ったらしく「本校は歴史ある…」とか「優秀な人材を多く輩出し…」とか、

 

そんなどうでもいいことばっか言うんだろ。

 

ということで俺は絶賛居眠りを始めていた。

 

その時――!

 

予め訂正しておく、大したことはないといったな?

 

あれは嘘だ。

 

恐らくそれは俺史上においても最も衝撃的になるであろう事件が、発生したのだった。

 

 

「座ってよろしい。ゴホン…

 

 晴れて我が校『魔法学園』に入学した第12期新入生の諸君、おめでとう。

 

 君たちの入学、心よりお祝いする――」

 

 

その祝辞を述べた学園長の声に、こっくりこっくり舟を漕いでいた俺は神速のスピードで

 

下船を済ませ、夢の国から現実世界へ帰還を果たした。

 

俺を眠りへの誘いから解き放ったその声は…

 

アニメ声ッ!

 

起きたての俺は隣席の車座に目で合図を送ると、車座はそれに気づき、壇上に向かって首を振った。

 

「前を見ろ」ということだろうか?

 

ならば百聞は一見に如かずだ、と俺が壇上を見上げた先には――

 

――ロリがいた。

 

ロリ美少女がいた。

 

俺は叫びたくなってしまう衝動を抑え込み、その様相をじっと見つめた。

 

そのロリ美少女は、色素薄めのピンクブロンドの髪をツインテールに結わえており、

 

その緑玉の如き双眸は吊り上がって勝ち気な印象を与えなくはないが、それはお人形のようにパッチリしてて

 

クリクリしてて俺的には逆に良かった。

 

胸は言うまでもなくぺったんこだが微妙にふくらみがあり、将来性を感じさせてよし。

 

身長が足りないため台の上に乗り、身長を底上げして、うんしょうんしょとそれでも遥か高みのマイク目指して

 

背伸びを続ける姿は儚げでよし。

 

俺のロリ選考基準と照らしてもオール及第点。総評Sロリ。俺のど真ん中。

 

ちなみにSはSMのSだ。決してSNのSではない。コンパスおじさんになっちまう。

 

こんな異能者の魔窟にこんな秘宝が眠っていたとは…

 

人生一期一会。何が起きるか分かんねえもんだな。

 

ロリ最高。

 

さて、スパコン並みの速度で1フレームも経過しないうちに脳内情報処理もつつがなく完了し、

 

忘れることなくロリ学園長の姿も高画質で脳内保存して、ふと辺りを見回すと、

 

やはり生徒たちにも動揺が広がっているように見えた。

 

それもそうだろう。なにせ我らが学園の長がロリ金髪ツインテールなのだから。

 

この学校にもロリコンいるかな?

 

お友達になれそう。性癖マイノリティ同士。

 

よく考えてみろ。ロリが学園長の学校だぜ?

 

教師の中にもあと数人ほどロリがいてもおかしくない。

 

もしかして齢16にしてまさかのロリルート突入?!

 

何ここ天国なの?エデンなの?エルドラドなの?

 

幻想郷は実在したんだ!

 

 

「諸君、はじめまして。私はこの魔法学園の学園長――『舞神千歳(まいがみちとせ)』だ、よろしく」

 

 

にしても、このボーイッシュな口調。

 

見た目とのギャップがあって逆に萌えるな。

 

 

「おい聞いとるか、陵」

 

 

俺がまだ見ぬ『ロリ学園長』というジャンルに興奮しているさなか、すぐ右隣にいる車座が小声とともに

 

右腕を小突いてきた。

 

 

「なあ、『舞神』って…あれが噂の『十神眷属(じゅっしんけんぞく)』の一人か?」

 

 

「ああ、そうだろ。少なくともプロフィールでそう紹介されていたな。

 

 しかし、()の『十神眷属』の一柱、『舞神』家の当主の一人娘が、

 

 あんなロリっ娘とは…何たるご褒美。ゾクッ」

 

 

いいね。いいね。ゾクッとするね。

 

 

「アホ抜かせ。あれでもかつて『十神眷属』ナンバー1やったとこの長女やで。

 

 『雷神(らいがみ)』家に一位の座を奪われた現在(いま)も、ナンバー2としてその権威を振るうとる。

 

 そんな名家のお嬢様なんかに手ェでも出したら、自分消されてまうで」

 

 

「分かってるさ」

 

 

十神眷属。

 

その昔、日本の八百万(やおよろず)の神の代行者として召喚されたという逸話がある。

 

十柱の眷属。神の使い魔。八百万の代行者。

 

それは古くから政府(当時は朝廷だ)と闇企業などとの斡旋を行うブローカーの役割をこなし、

 

それらが政治に与える影響力は絶大だった。21世紀の現在でもその政治中枢に介入していると言われている。

 

その他、警察機関、司法機関、魔法産業分野において顔が広いという。

 

『十神眷属』の意向は神の意向。『十神眷属』の決定は神の決定。

 

『十神眷属』の言葉は神の言葉。

 

それはもう既に暗黙の了解であり、不文律的絶対条例なのだ――

 

などと一部メディアでまことしやかに囁かれてはいるが、その真相は不明だ。

 

また、『十神眷属』の共通項として姓に『神』が含まれている。

 

彼の有名な陰陽師・安倍晴明の言葉にこんなものがある。

 

 

『名前はこの世で一番短い(しゅ)なり』

 

 

と。

 

つまりは名前や肩書がその人間を縛る、ということである。

 

あまねく陰陽師にとって、『名づけ』の行為は『縛る』と同義なのだ。

 

そして名前に『神』を含めることで、眷属を羈縛し、神の使い――一種の式神たらしめているのだ。

 

愛神(あいがみ)』、『狩神(かりがみ)』、『幸神(さちがみ)』、『旅神(たびがみ)』、『亡神(なきがみ)』、『埴神(はにがみ)』、『舞神(まいがみ)』、『闇神(やみがみ)』、『雷神(らいがみ)』、『鷲神(わしがみ)

 

の十柱。

 

今、俺たちの前にいるロリ学園長こと舞神千歳はまさに、この『十神眷属』の一柱、『舞神』の一人だった。

 

まあ要するに、我らの学園長は凄いということだ。

 

それでも、その『舞神』家の人間がこんな大規模な養成所を造って一体全体何が目的なんだろうか。

 

全く偉大な人間の考えることはよくわからん。

 

『燕雀安くんぞ鴻鵠の志を知らんや』って奴だな。

 

それでもいいさ。

 

日本でもトップの権力を有するところのお嬢様でロリで幼女。

 

これはもう俺にとっての、否全世界にとっての新規ジャンルということでいいんじゃないか?

 

その後、俺が脳髄の髄より溢れ出てくる脳内妄想との葛藤に見事勝利を収めたころには、

 

既に学園長式辞は終了しており、ロリ学園長は降壇していた。

 

もうちょっと見てたかったぜ。

 

再び、起立と礼が行われ、着席。

 

続いて、在校生代表の挨拶といった体で現生徒会長である『愛神繚乱(あいがみりょうらん)』による

 

祝辞が為された。

 

もうお分かりだろうが、この生徒会長さんも『十神眷属』の一柱、『愛神』家のお嬢様だ。

 

…やはり人間とは馴れると、ちょっとやそっとじゃ驚かんな。

 

あと五人ぐらい来ても大丈夫そうだ。

 

 

「それにしてもすごいこった『舞神』に『愛神』。日本最高のVIPの嬢ちゃんがお二人とは。

 

 いやはや、やっぱ魔法学園は格が違うわ。格が」

 

 

「というか、創立12年程度の若輩の学校がここまで広く知れ渡ったのも、『魔法』という新概念の

 

 斬新奇抜さと『十神眷属』の名売りのおかげだからな。

 

 魔法学園の著名度が『十神眷属』を呼んだんじゃなくて、『十神眷属』が魔法学園の著名を呼んだ。

 

 と言った方が正しいだろ」

 

 

「『十神眷属』のネームヴァリューもすごいで。

 

 そのうち日本も『十神眷属』に依存した経済になるんやろか?」

 

 

「さあね。まあ彼らからすれば万々歳なんだろうけど」

 

 

そんな自堕落な社会にならないことを切に祈ろう。

 

VIPにはVIPの社会。俺ら一般庶民には一般庶民の社会がある。

 

それらは交わることのない水と油。

 

そんな心配は杞憂だろう。

 

 

「――以上を持ちまして、私からの歓迎の挨拶とさせて頂きます」

 

 

起立、礼、着席。

 

さてほとんどのイベントは終わった頃だ。

 

あとは新入生代表の答辞を残すのみだ。

 

俺は眠気を追い払うように大きく欠伸をした。

 




いかがでしたか。

新出単語が多くて、世界観の理解に難航しますかね。

すみません。そのうち設定資料を出します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。