君はヴァンガード   作:風寺ミドリ

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第1章 少女にとっての奈落
001 再会の日


少女は居間に飾られた両親の写真に一礼して、玄関を出ていく。

 

空は灰色の雲に覆われ、今にも雨が降りだしそうだった。

 

傘も持たずに家を飛び出した少女は、天台坂高校へと向かって走っていった。

 

 

 

その少女の名前は深見ヒカリ。

 

 

 

“ごく普通の高校一年”である。

 

 

 

………“今は”………。

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

 

(……まさか学校に傘を置いてっちゃうなんて…ね)

 

深見ヒカリは学校の傘立てに置かれた自分の傘を見つめていた。

 

 

 

ヒカリの通う“天台坂高校”はヒカリの住む家から歩いて行ける距離にある公立高校だ。

 

5月ももう終わりということもあり、生徒達には中間テストが迫っていた…そのため学校内や通学中に様々な人を見かけることになる。

 

すでにテストの予定を立てている者。

 

今はまだ何も考えず友達と語らう者。

 

とりあえず友達からノートを借りる者。

 

特にヒカリ達高校一年生にとっては初めての定期考査だ。

 

ヒカリのクラス…1年B組でもそういった人間を沢山見ることができた。

 

春に初めて出会った者が多数とはいえ、だいたいの人間はすでにある程度の“グループ”を作り、それに馴染み始めている。

 

(ま……私は………ね…)

 

そう言えば…昨日、言葉発しなかったな…等と考えつつ、ヒカリは学校の玄関で靴を履き替える。

 

 

時刻は7時42分。

 

 

ヒカリの教室にはまだ誰も来ていない。

 

 

ヒカリは窓の側にある自分の席についた。

 

 

ヒカリは窓に反射して映るショートカットの自分の姿を見つめながら考え事をする、一日はそうして過ぎて行くのだ。

 

少しずつ生徒達が登校してくる。

 

単語帳を熱心に見つめる女子や、ノートの貸し借りをする男子…教室はいつのまにか賑やかになっていた。

 

(…………)

 

ヒカリは窓の外を眺めながら今日の夕飯を何にするか考える。

 

(……ハンバーグ……食べたいなぁ…)

 

そんな事を考えている内に先生がやって来て、生徒達は自分の席につく。

 

朝の挨拶の後に、先生の話が始まり、ヒカリは自然と前の席に座る少年を見つめた。

 

 

青葉ユウト……天然パーマが印象的な同じ1年B組の生徒だ。

 

中学校は違うとはいえ、小学校の間はずっと同じクラスだった。

 

 

ヒカリはユウトのことを典型的な主人公タイプだと思っている。性格は真っ直ぐで、すぐおせっかいを焼きたがる所がある。

 

誰にでも好かれやすい人間だろう。

 

入学した高校で同じクラスに彼がいた時は驚いたものだ。

 

 

(…まぁ…話しかけてないけど)

 

 

だが、

 

その日のユウトが学校で見せた“それ”はヒカリにとって新鮮なものだった。

 

休み時間の間…いや昼食の時間の間もずっとノートに向き合っているのだ。

 

(……勉強が……壊滅的なのかな…)

 

決して秀才ではないが、特に苦手教科があるようには見えなかったが、一体どうしたというのだろう。

 

そんな失礼なことを考えつつ、ヒカリは彼のノートを覗き見る。

 

(…“先攻はアタックできない…”……?)

 

青葉ユウトは時折悩みながらノートに、何かを書き続けている。

 

(……“デッキの中のトリガーは16枚…”“パワーは同じ数値でもアタックはヒットする…”……)

ノートの中の単語がヒカリの古い記憶を刺激する。

 

(これって……)

「…“カードファイト!!ヴァンガード”…?」

ユウトはゆっくりとこちらに顔を向ける。

 

「…ヒカリ………」

 

「え……あ……青葉クン……」

 

「ヴァンガード…知ってるのか!?」

 

 

ヒカリの頭の中で“忌まわしい記憶”が再生される。

 

頭を垂れる大勢の人間……緋色の瞳の竜…。

 

 

「………ううん」

 

「…そっか」

 

(………話しかけなければ…良かったかな)

 

 

ユウトは手に持った“それ”を見せて言う。

 

 

“それ”は一枚のヴァンガードカード。

 

 

「えっと…いい材質のカードだよな」

 

 

だからどうした、ヒカリはそう言いたい気持ちを全力で抑える。

 

 

彼の見せた1枚のカード。

 

そこには雷を纏った紅の竜が描かれていた。

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

ユウトの話によると、最近“カードファイト!!ヴァンガード”というカードゲームを始めたらしい。

 

今日はノートの上でルールを整理していたそうだ。

 

「俺の兄貴がカードショップを開いたって言ってきてさ、何か俺にもできるカードゲームはあるのか~って聞いたら薦められたんだ」

 

ヒカリはユウトが飽きやすい性格だったことを思い出す。

 

「…飽きずに………楽しめそう?…」

 

「ああ!今までカードゲームってちゃんとやったことなかったからな~ 兄貴にデッキもいくつか貰ってさ!色々試しているんだ」

 

「………そうなんだ」

 

 

ヒカリは窓の方へ顔を向ける。外には家へと帰っていく大勢の生徒がいた。

 

(…ヴァンガード…か)

 

 

「ヒカリ」

 

その言葉にヒカリは再びユウトの方を見る。

その目がきらめくのを感じた。

 

 

(…嫌な予感がする………)

 

「ヒカリ、良かったら」

 

「…私、この後喫茶店行くんだ……」

 

 

 

ユウトが話しかけるが、ヒカリは話題をそらす

 

 

 

「あ!もしかして“ふろんてぃあ”!?」

 

「…うん」

 

喫茶ふろんてぃあ、ヒカリがよく行くお店である。

“ふろんてぃあ”の店長が用意するケーキやパフェは絶品であり、ヒカリも大好きなのだが…

 

 

「あの店、いつまで残っていられるかな…」

 

 

“ふろんてぃあ”では閑古鳥が全力で鳴いている。

 

丸一日お客さんが来ないこともあるとか。

 

店長によると隠れ家的喫茶店を目指したからだそうだが。

 

「いや、あの店全く隠れてないけどな」

 

「青葉クン………あの店知ってるんだ…」

 

「だって、小学校の頃ヒカリにあの店教えたのは俺だし」

 

(…………忘れてた)

だんだんと日が暮れてきている。

 

 

 

「そうだ!その店で」

 

 

 

「………いや、私は」

「ヒカリも一緒にヴァンガードを!」

 

「…遠慮します………」

 

「ルール教えるから」

 

「嫌です…」

 

「一回くらいさ」

 

「しつこい男は嫌われるよ…?」

 

「…………………」

 

 

しばらくの間沈黙が続く。

 

ヒカリは心の中で自分の勝利を確信した。

 

 

 

 

「ストロベリー・スペシャル…」

 

ユウトが口を開く。

 

「“ふろんてぃあ”のストロベリー・スペシャルを食べたくはないか?」

 

「…!」

 

「どうかな?」

 

「………………………くっ」

 

ストロベリー・スペシャルとは“ふろんてぃあ”で最近登場した新しいパフェの一つである。

 

このメニューは友達と二人で来店したときでないと注文できないというルールになっている。

 

現在、友達のいないヒカリはまだ食べたことはなかった。

 

(……ストロベリー・スペシャル……うっ……私は)

 

「さあ、ヴァンガードを一緒にやろう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………いいよ」

 

 

 

 

(…………甘味に負けた?……違うよ…このまま青葉クンを放っておくのも可哀想かなって思っただけだよ…)

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

夕方、二人は喫茶店“ふろんてぃあ”に来ていた。

 

 

「店長~静かにするから許してよ」

 

 

ユウトは店の奥にいる男性に呼び掛けた。

 

 

「全く…本当に静かにしろよ?他の客だって」

 

「いないじゃん」

 

「………」

 

見るからに落ち込む店長。

 

 

 

「…あの…ここのパフェ………私、大好きですよ」

 

 

「そう言ってくれてありがとうヒカリちゃん!君は正に天使だよ!」

 

 

「さすが店長!俺もそう思う!」

 

 

「…………大袈裟…」

 

 

 

 

 

 

 

店長との会話の後、私達は席についた。

 

「…パフェ」

 

「後でな」

 

「……………そう」

 

ユウトはいくつかデッキを取り出す。

 

「兄貴の作ったデッキでさ、わざと改良の余地を残してあるらしいんだ」

 

そう言いながらデッキを並べていく。

 

 

 

「それじゃあ今からルールを説明する」

 

「…いらないよ………ルール知ってるから」

 

「………え?つまり…それは」

 

「…………だから……早くパフェ食べよ……でも」

 

「?」

 

ヒカリはユウトの取り出したデッキを眺めながら聞く。

 

「…別に私じゃなくても良かったんじゃないかな……私は……ほら……寂しい奴だよ…」

 

 

 

「ヒカリ………そんなこと」

 

すると、突然店長がやってきて喋り出した。

 

「そりゃあヒカリちゃん、自分と同じものに興味をもってほしいだろ? 好きなkghぅえええ!?」

 

結果、ユウトの右ストレートが飛んだ。

 

「店長……何言ってんだ?」

 

「ハハハ…オメェ……」

 

ヒカリはユウトの持ってきたデッキの中にとても懐かしい“クラン”のものを見つけた。

 

「……これ」

 

「ヒカリはそのデッキか?」

 

「………うん」

 

デッキの中身を一通り眺めて答える。

ヒカリにとっては見慣れないカードも多かったが、不思議と不安にはならなかった。

 

 

 

「えっと………ルールの説明がいらないなら…始めるか!」

 

ヒカリとユウトは互いにFV…グレード0のカードを一枚裏向きにして置いた。

 

二人はデッキのシャッフルを始める。

 

その間、ヒカリはあることを考えていた。

 

先ほどデッキの中身を確認したとき見つけたカード。

 

 

その名を、“幽幻の撃退者 モルドレッド・ファントム”

 

 

ヒカリはその緋色の瞳に見覚えがあった。

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

先行と後行を決めるジャンケンの結果、青葉ユウトが先行に決まった。

 

(これは俺にとって兄貴以外との初めての対人戦…どきどきだ)

 

「そのどきどきは本当にファイトの緊張だけかい?」

 

ユウトは再び喋り出した店長を遠慮なく“眠らせる”と自分の手札を確認するのだった。

 

* * * * *

 

 

「じゃあ………始めるぞ」

 

「………うん」

 

 

 

「「スタンドアップ!!ヴァンガード!」」

 

二人は互いにFV…グレード0のユニットを表にする。

 

 

 

「俺は“霊珠の抹消者 ナタ”に“ライド”だ!」

 

「……“クリーピングダーク・ゴート”」

 

 

二人が出したカードはそれぞれ“なるかみ”、“シャドウパラディン”というグループ…通称“クラン”に属しており、デッキの残りのカードもそれぞれのクランで統一されている。

 

 

(…なるかみ…名前は知ってるけど…実際に戦うのは初めて………)

 

 

 

「よしっ!俺からだ、ドロー!そして…えーっと、今のヴァンガードのグレードより上のグレードを持つカードに“ライド”できるんだよな…」

 

 

「………同じグレードでも大丈夫…」

 

「そうだった、じゃあ…グレード1の“抹消者ワイバーンガード ガルド”にライド!」

 

ユウトは“ナタ”の上に今宣言したカードを重ねることで“ライド”した。

 

これによって“ヴァンガード”の役割は“霊珠の抹消者 ナタ”から“抹消者ワイバーンガード ガルド”に任される。

 

(………守護者だ)

 

抹消者ワイバーンガード ガルドは“守護者”と呼ばれるカード…相手のアタックを防ぐのに便利なカードだがライドしてはあまり意味がない。

 

「“ ナタ”のスキル“先駆”発動だ!“抹消者ワイバーンガード ガルド”の後ろに“コール”!」

 

ユウトは“ナタ”をヴァンガードユニットの下、ソウルと呼ばれる場所から移動させた。

 

「えっと、このターンはもうできることが無い…からターンエンドだ!」

 

ヒカリにターンが回ってくる。

 

「私のターン………ドロー…」

 

(…守護者にライドした………ということは他にG1のユニットを持っていないか………他の守護者も手札にあるかも)

 

 

「“冒涜の撃退者 ベリト”にライド…!」

 

ヒカリの手札にはG1の“カロン”、G2の“ルゴス”、さらにトリガーユニットと呼ばれる“厳格なる撃退者”、“暗黒医術の撃退者”、そしてG3の…

 

(モルドレッド………“ファントム”か………懐かしい響き…できれば)

 

 

「…思い出したくなかった…かも」

 

「え?」

 

 

「何でもない…先駆のスキルで“ゴート”はヴァンガードの左下にコール、そしてその前に“黒の賢者 カロン”をコール…!」

 

ヒカリは手札から宣言したカードを“リアガード”としてフィールドに並べた。

 

 

ヒカリがアタックフェイズに入る。

 

 

「よし、来い!!」

 

「私のヴァンガード“ベリト”であなたのヴァンガード…“ガルド”にアタック…!パワー7000!!」

 

 

 

ヒカリは自身のユニットを横向き…レスト状態にすることで、ユウトのユニットに攻撃をする。

 

このアタックのパワーが相手のユニットのパワー以上ならば、この攻撃は成功する。

 

 

 

「ノーガード!!」

 

 

 

本来ならばここで手札から自分のヴァンガードのグレード以下のカードを“ガーディアン”として場に出すことで、攻撃されたユニットのパワーを底上げすることができるのだ。

 

つまり相手の攻撃を防ぐことができる。だがファイトは始まったばかりであり、無理にガードする必要も無い。

 

 

「…ドライブチェック………」

 

ヴァンガードにのみ許された特権…このドライブチェックで山札の上から一枚を公開し、手札に加える。

 

このときに“トリガーユニット”が登場すると、そのターン中の自分のユニットのパワーを増やすなど、さまざまな効果が与えられるのだが………

 

 

「“幽幻の撃退者 モルドレッド・ファントム”…トリガー無し………」

 

ユウトの手が山札に伸びる。

 

「んーと、ダメージが1点…だよな」

 

「…そう“ヴァンガードにアタックがヒットしたとき”相手のユニットの“クリティカル”の数だけダメージを受ける………」

 

 

ユウトはドライブチェックと同じ要領で“ダメージチェック”を行う。

 

 

「ダメージチェック………よし!ゲット!ドロートリガー(抹消者 ブルージェム・カーバンクル)!!効果でヴァンガードの“ガルド”にパワー+5000!そして一枚ドローだ! 」

 

 

ユウトは効果を実行すると、右上に“引”と書かれたカード…“抹消者 ブルージェム・カーバンクル”をダメージゾーンへと置いた。

 

このダメージが6枚になったとき、ファイターは敗北とされている。

 

 

 

ヒカリの攻撃は続く。

 

 

 

「“ゴート”のブースト…“カロン”でヴァンガードにアタック、パワー12000…!」

 

 

 

カードファイト!!ヴァンガードでは、ヴァンガードを含めて前列に3体、そしてその後列に3体の合わせて6体までユニットを配置することができる。

 

相手に攻撃することができるのは基本的に前列にいるユニットのみ。

 

だがユニットがアタックするときに、そのすぐ後ろにいるユニットを同じように“レスト”することで、そのアタックの間“ブースト”として自身の持つパワーを仲間に上乗せすることができるのだ。

 

 

「そのアタックもノーガード!!………ダメージは…トリガー無し…さよなら……ガントレッドバスター……」

 

ユウトのダメージゾーンにグレード3のユニット“抹消者 ガントレッドバスター・ドラゴン”が置かれた。

 

 

 

 

「これで…私はターンエンド………」

 

 

 

 

「じゃあ俺のターンだ!行くよ、ドロー!!…そしてグレード2の“追撃の抹消者 ロチシン”にライド!」

 

 

 

(………早く…パフェ食べたいな…)

 

 

 

「“ナタ”のブースト、“ロチシン”でヴァンガードにアタックだ!」

 

「ノーガード…だよ」

 

 

「ドライブチェック!!…ゲット!クリティカルトリガー(抹消者 イエロージェム・カーバンクル)!!効果は全てヴァンガードに!」

 

クリティカルトリガーによってヴァンガードのロチシンにパワー+5000が与えられ、クリティカルも一つ追加される。

 

つまりヴァンガードへのダメージも増えるのだ。

 

 

 

 

「…ダメージは…1枚目は“厳格なる撃退者”Get、クリティカルトリガー………効果は全てヴァンガードに」

 

 

 

ヒカリへのダメージはまだ終わらない。

 

 

 

「2枚目………“幽幻の撃退者 モルドレッド・ファントム”………トリガー無し」

 

 

「ターンエンド!!」

 

 

(…グレード2の段階で展開してこないのは…アタッカーを温存しているから?…G0やG3、守護者のカードしか持ってないってこともあるかな………………パフェ食べたい…)

 

 

ヒカリは“こうしてカードを持ちながら様々なことを素早く考える”という行為に懐かしさを覚えていた。

 

 

「私のターン…スタンドandドロー………“暗闇の撃退者 ルゴス”にライド」

 

ここまでのターンでは省略されていたが、本来はターンの始めに“レスト”状態のユニットを元の状態…“スタンド”状態にするフェイズが存在する。

 

 

(………うーん、ちょっと不安かな…)

 

 

ヒカリの手札には“モルドレッド”が2枚、ヒールトリガーである“暗黒医術の撃退者”が1枚にクリティカルトリガーの“厳格なる撃退者”が2枚あった。

 

G0…グレード0のトリガーユニットは“防御”する時に役立つのだが、アタッカーとしてコールするには非常に非力である。

 

(まずは自分の手札を何とかしないと……できればドライブチェックでG2が欲しい………)

 

「…………“ゴート”のスキル発動、CB1のコストに加えて自身をソウルに入れるよ」

 

 

CB…カウンターブラスト、これはダメージゾーンのカードを裏にする行為を示す。CB1の場合は裏返すカードが1枚ということだ。

 

「山札の上から5枚見て…グレード3を………1枚選んで相手に見せてから手札に加える………はずだったんだけどね」

 

このスキルは失敗することが多い。とはいえヒカリとしては成功させたかったのだが、ヒカリの願いも虚しくスキルは失敗し、“コスト”の無駄遣いとなってしまった。

 

 

気がつくとユウトが笑っていた。

 

 

「………………バカにしてる?」

 

 

「違う違う!たださ、ヒカリが楽しそうで良かったってな」

 

 

ユウトが笑いながら答える。

 

 

「!?…嫌味?楽しくないよ?スキル失敗だよ!?」

 

(でも………確かに私…少し楽しんでいた?)

 

 

 

「ああっそうだな、今の言葉は気にしないでくれ」

 

 

「…もうっ、“ルゴス”でヴァンガードにアタックするよ、パワーは10000!」

 

 

「ノーガードだー」

 

 

「……にやにやしないっ…ドライブは………“ベリト”!トリガー無し!!」

 

 

 

「ダメージ1点だな…ダメージは…“双銃の抹消者 ハクショウ”、こちらもトリガー無しだ」

 

 

 

「…“カロン”でアタック!!パワーは8000!」

 

「そこは“抹消者 ブルージェム・カーバンクル”でガード!!」

 

ユウトが“ガーディアンサークル”にカードを置き宣言する。

 

アタックがヒットしなかったことを確認すると、そのカードは“ドロップゾーン”へと送られた。

 

 

「………ターンエンド」

 

(…楽しい…とは少し違うかも……ただひたすらに…懐かしいんだ)

 

(………カードファイトをすることが)

 

 

 

ヒカリのダメージは2点、一方でユウトは3点。いよいよここからファイトの顔ともいえるグレード3のユニットが登場する。

 

 

「さぁ!俺のターンだ!!スタンド&ドロー、そして行くよ!!ライド!“抹消者 エレクトリックシェイパー・ドラゴン”!!!」

 

 

このときヒカリはあることに気がついた。

 

 

自分の手札にある“モルドレッド”、そして今ユウトがライドしたユニット………

 

 

そのスキルの中に、自分には読めないマークがあることに………

 

 

 

【LB:4】

 

 

 

(………見たことはある………………何て読むんだっけ)

 

 

 

 

 

 

 

 


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