君はヴァンガード   作:風寺ミドリ

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015 穢れなき神竜への願い

カードショップ“カードマニアックス”で舞原ジュリアンはデッキを二つ使って二人のファイターと同時に戦っていた。

 

 

 

「蒼嵐業竜 メイルストローム“Я”でヴァンガードにアタックっす!!4回目の攻撃っすよ!リミットブレイク発動!CB1!そしてリアガードのデックスイーパーを呪縛!パワー+5000、クリティカル+1…そして“ダーククラウド・サクリファイス”…この攻撃がヒットしなかったら……」

 

「…ノーガード」

 

 

ジュリアンが不機嫌な顔をする。

 

 

「むぅ…そういうのはマナー違反っすよ?」

 

 

「くっ…すまん」

 

 

「ドライブチェック…完ガと……あ、クリティカルっす」

 

 

 

「…ダメージチェック……俺の負けだ、久しぶりに楽しかったよ……でもすまんな…特に“ノルン”の情報は…」

 

 

 

ジュリアンはもう一人のファイターと戦いながら受け答えをする。

 

 

 

「僕も楽しかったからいいっすよ、あ、ドーントレスドミネイトドラゴン“Я”にクロスブレイクライド……からの“デススパイラルダークネス”で……」

 

 

ジュリアンと相手のファイターとの間で実に淡々とした作業が進む。

 

 

「……………6点目のダメージは…睡蓮の銃士 ルースだ…ありがとう、最後はあっさり負けちまったが楽しかったよ」

 

 

「こちらこそ、どうもっす…それで“ノルン”の情報は…」

 

「…悪い」

 

 

 

「気にしないで欲しいっす…僕は…」

 

 

 

 

「ジャアァスティッス!ジャアァスティィッス!ジャアァスティィィッス!」

 

 

 

突然ファイトスペースに謎の叫びがこだまする。

 

「な、何なんすか……あれ!」

 

「何に見える?」

 

 

「へ、変態っすかね」

 

 

ジュリアンと戦っていた二人のファイターがため息をつく。

 

「そうさ、最近この店に来るようになった迷惑な変態さ……話によると釣りが趣味らしい…」

 

「釣りっすか?」

 

 

ジュリアンは想像する。

 

 

確かにあのタンクトップ姿ならカードゲームより釣りをしていた方が似合っているだろう。

 

 

 

「あいつがやっているのはレートを無視したカード交換の方……さ」

 

 

 

「なっ!……悪質っすね……何もかも…」

 

ジュリアンが深いため息をつく。

 

 

こういった行為が世間のカードゲームの印象を最悪のものにしているのだと考えると怒りが込み上げてきた。

 

 

「見ろ!あいつファイトする気だ!?」

 

「まじかよ!初めてじゃないか!?あいつがこの店でファイトするの!」

 

 

ジュリアンはその言葉を聞くと“あいつ”のいる方を見てみる。

 

「…!!お嬢に青葉さん!?どうして…」

 

「あんたの連れか!行った方がいいんじゃないか!」

「そうするっす!!」

 

ジュリアンはそのテーブルの近くにいたヒカリの元へ向かう。

 

「あ……舞原クン……」

 

「ヒカリさん!何があったんすか!」

 

ジュリアンはヒカリの後ろにいる、心配そうにこちらを見る女の子の存在に気づく。

 

そしてヒカリの手にははじめようセット限定のカードが握られていた。

 

「……えっと…」

 

「要するにあの女の子が変態にカード交換を強要されていたのを助けている所なんすね」

 

「…舞原クン…すごい洞察力…」

 

ジュリアンは4人が座ったファイトテーブルを見る。

 

「しかし何であの二人が…タッグマッチじゃ無いっすよね?」

「えっと…違うよ…」

 

「なら心配いらないっすよ、きっと」

 

ジュリアンは安心したように呟く。

 

「今の二人は…闘志十分っす」

 

 

ユウトとカイト…チアキとミチヤ……四人のファイトが始まろうとしていた。

 

「この店で俺のジャスティスを見せる時ぃぃ!!」

 

「普通の音量で話すのかと思ったら…やっぱうるさいな…あんた」

 

 

「………………」

 

「無言でファイトするつもりかしら?天地ミチヤさん?遠慮なく倒させてもらうわよ」

 

 

四人がFVに手を置く。

 

 

「「スタンドアップ!ヴァンガード!」」

 

「スタート!マイ!ジャスティスッ!!」

 

「………………」

 

 

四人一斉に始めたが、ここからはそれぞれのペースでファイトが行われるだろう。

 

「レッドパルスドラコキッド(4000)!!」

 

「立ち上がれ!次元ロボ ダイマグナム(5000)!」

 

 

 

「青雲の宝石騎士 ヘロイーズ(5000)!!」

 

「…………幼生獣 ズィール(4000)」

 

 

ヒカリはユウトのFVを見てあることに気がつく。

 

「青葉クン……デッキを変えたんだ…!」

 

自然とユウトのファイトに目がいく。

 

 

どうやら先行はユウトらしい。

 

 

「俺からだ…ドロー!そして“ドラゴンモンク ゴジョー(7000)”にライド!スキルでレッドパルスドラコキッドをVの後ろにコール!」

 

 

そのままユウトはゴジョーに手を伸ばす。

 

 

「ゴジョーのスキル!“レストして”から手札のゴジョーをドロップ!1枚ドロー!そしてターンエンドだ」

 

 

 

「いいタイミングでゴジョーを使うことができたっすね」

 

ファイトを見ていたジュリアンが呟いた。

 

「うん…でも青葉クンいつのまに…新しいデッキを作ったんだろう…」

 

ヒカリの疑問にジュリアンが答える。

 

「僕がカード提供したんすよ」

「舞原クン……そうなんだ…」

 

 

ヒカリがジュリアンの財力に感心する中、ファイトが続く。

 

 

 

「ドォロォーー!!今こそ俺のジャスティスッ!燃え上がれっ!次元ロボ ダイブレイブぅ(7000)!!」

 

 

カイトは次元ロボ ダイブレイブにライドするとソウルの次元ロボ ダイマグナムをVの後ろにコールした。

 

 

 

「ダイブレイブねぇ…」

 

「………どうしたの?」

 

ヒカリがジュリアンに話しかける。

「ダイブレイブのスキルってソウルにいるとき限定の能力なんすよ」

 

「……みたいだね」

 

ヒカリはカイトのヴァンガードとして立つダイブレイブを見て答える。

 

「…FVをダイマグナムじゃなくてゴーユーシャにしているんなら採用も分かるんすけどね」

 

「ゴーユーシャ?」

 

「ゴーユーシャってカードならスキルの“グレード3の次元ロボへのスペリオルライド”のコストでリアガードからユニットをソウルに送れるんすけど…」

 

「…そうでないのなら、他にダイブレイブを確実にソウルに入れる方法は無い?」

 

「無いことないっす、グレード3の次元ロボ ダイヤードとか…でもダイブレイブはヒット時のスキルを与えるユニットっすから早めに使いたいんすよね」

 

「…そうなんだ」

 

 

ヒカリは目の前のファイトに集中する。

 

 

 

「さぁ!受けるんだなぁ!マグナムのブースト!ダイブレイブぅでヴァンガードにアタック!!(12000)」

 

 

「パワー12000か…ノーガードだ!」

 

 

「魂のドライブチェックッ!次元ロボ ダイクレーン(5000)!ゲッツ!ドロートリガー!!ドローするぜぇ」

 

 

ユウトがダメージチェックを行う。

 

 

「…ベリコウスティドラゴンだ…」

 

 

「ターンッ!エンドォォ!!」

 

 

ユウトはカイトの大きな声をうっとおしく感じながら、自分のターンに入っていく。

 

 

「…俺のターン…スタンドアンドドロー……“バーサーク・ドラゴン(9000)”にライド!!ベリコウスティドラゴン(9000)を隣にコール!!ベリコウスティでヴァンガードにアタックする!パワーは9000!」

 

 

「ノーガードッ!ダメーージチェーック!シャドウカイザー!!」

 

それを見たジュリアンがカイトのデッキの正体に気づく。

 

 

 

 

「…シャドウカイザーが入っているってことは…究極次元ロボ…グレートダイカイザーっすか…」

 

「…?」

 

ヒカリが何となく覚えていないといったリアクションをとったため、ジュリアンが解説する。

 

「“究極次元ロボ グレートダイカイザー”…今、ヒカリさんの持っているブレイクライドスキルを持ったユニット…“超次元ロボ ダイカイザー”のクロスライドユニットっす、コストを支払うことでドライブチェックの回数を増やすっていう特殊なスキルを持ってるんすよ」

 

 

ヒカリがまじまじと超次元ロボ ダイカイザーのカードを見つめる。

 

 

「…じゃあこのダイカイザーが与える“ドライブチェックでグレード3のディメンジョンポリスのユニットが出たら相手のガーディアンを1枚退却させ『ヒットされない』効果を無効にする”っていうスキルもより成功する確率が上がるんだ……」

 

 

「そうっすね…トリプルドライブチェックだけでも十分なのに、完全ガードも破壊できるかも…ってのは怖いっすよね」

 

 

「…ゴーユーシャといい…このシャドウカイザーといい…グレード3のユニットに力を集めるのがディメンジョンポリス……か」

 

「今のところは…っすけどね」

 

 

そんな風にヒカリとジュリアンが話している間もファイトは続いていた。

 

 

 

 

ユウトがアタックを宣言する。

 

「バーサーク・ドラゴンでヴァンガードにアタック!パワーは9000!」

 

 

「ノーガードだぁぁ!」

 

 

「ドライブチェック…バーサーク・ドラゴン…トリガー無しだ…」

「俺のダメーージチェーーック!次元ロボ ダイバトルスぅ、クリティカルトリガー!!効果はダイブレイブにぃ!」

 

「…ターンエンド」

 

 

 

ユウトのターンが終わり、カイトが笑いだす。

 

 

 

「はっはっはっはっはぁぁ!!俺の時間だぁぁ!立てっ!!ドロー!そして行くぜぇぇ!次元ロボ カイザーーーーードっ!!」

 

 

カイトがライドしたユニットは“次元ロボ カイザード(9000)”……だがそれはすぐに別のユニットに変化する。

 

 

「トランスディメンション!次元ロボ カイザーグレーダー(7000)!」

 

 

 

カイトが次元ロボ カイザーグレーダーをコールする。

 

 

 

「お前の正義、受け取ったぁ!CB1!シャドウカイザーをドロップしてカイザーグレーダーとカイザードは今1つになる!!」

 

 

カイトはカイザーグレーダーをソウルに入れると山札の中を見る。

 

 

 

「超!次!元!合体っ!!ダイ!カイ!ザーーーーーぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

「…うるさい」

 

 

ヒカリ達がため息をつく。

 

 

カイトのVにはグレード2のカイザードに変わりグレード3の超次元ロボ ダイカイザー(11000)が立っていた。

 

 

 

「俺のスキル発動!!超次元ロボ ダイカイザーにパワー+5000!」

 

 

 

勢いで何を言っているのか分からなくなるカイト。

 

 

 

「いや、あんたのスキルじゃ無いっすから、カイザードのものっすから」

 

 

「更にソウルのダイブレイブが俺に勇気を与えるぅぅぅ!」

 

カイトはソウルからダイブレイブをドロップする。

 

「ダイカイザーのアタックがヒットした時、CB1で1枚ドロー!」

 

 

「…っ!」

 

 

ユウトはこの攻撃をガードして“ヒットすることは当たり前”と思っているようなカイトの考えを壊したいと思ったが我慢する。

 

 

「マグナムのブースト!ダイカイザーぁぁ!!カイザーぁぁぁぁぁぁぁ!!!ブレーぇぇぇドぉぉ(24000)」

 

 

「…ノーガード」

 

 

「ドライブっ!チェックぅぅ!来い、俺のジャスティスに答えて………ジャスティス・コバルトぉぉ!ゲッツぅ!クリティカルトリガー!全てはダイカイザーに!そして2枚目は……シャドウカイザーーー!!」

 

 

ユウトはその声量にため息をつきながらダメージチェックを行う。

 

 

「1枚目は…ドラゴニック・ガイアース…二枚目は…!ガトリングクロー・ドラゴン!ゲット、ドロートリガーでパワーはヴァンガード、1枚ドロー!」

 

 

「ダイブレイブが与えたスキルでCB1!1枚ドロー!そしてターーーンエンド!」

 

 

4ターンが経過し、ユウトのダメージが3点、カイトのダメージが2点だった。

 

 

ユウトは手札のカード達に心の中で話しかけた。

 

(頼む…俺の助けになってくれ…)

 

 

 

「俺の…ターン!スタンドアンドドロー!そしてライド!“チェーンブラスト・ドラゴン(11000)”!!そして、ベリコウスティドラゴンの後ろに“ドラゴニック・ガイアース(6000)”をコール!!」

ユウトのVに立ったユニットは巨大な鎖槌を構えた竜だった。

 

「レッドパルスドラコキッドのブースト!チェーンブラスト・ドラゴンがパワー15000でヴァンガードにアタック!」

 

 

「ノーガードだぁぁ!」

 

 

「ドライブチェック…1枚目、チェーンブラスト・ドラゴン…二枚目…“ブルーレイ・ドラコキッド”!ゲット…クリティカルトリガー!クリティカルはチェーンブラスト、ベリコウスティにパワー+5000だ!」

 

 

「ダメーーージチェーーーーック!!…カイザーーード!…そしてぇ……ダイシールドぅぅ!」

 

 

カイトのダメージゾーンに次元ロボ カイザードと次元ロボ ダイシールドの2枚が置かれ、ダメージが4点になる。

 

「アタックがヒットした時、チェーンブラストのスキルが発動する!………レッドパルスドラコキッドを退却!山札の上から5枚見て、グレード3のユニットを探す!」

 

ユウトは山札の上から5枚を見るとその中の1枚のカードをカイトに見せる。

 

「チェーンブラストドラゴンを手札に加え、残りのカードを山札に戻しシャッフルする!」

 

 

 

 

 

ユウトが山札を混ぜている間、ヒカリはチアキのファイトを全然見ていなかったことに気がつく。

 

 

「……あ…」

 

 

そのファイトはもう終盤とも言えた。

チアキの対戦相手であるミチヤのダメージはすでに5点まで入っている。

 

Vの銀河超獣 ズィールの周りには合成怪獣 バグリードや星を喰う者 ズィール、怪軍提督 ゴゴート等が並んでおり、リアガードサークルは埋まっていた。

 

 

 

「行くわよ!スタンドアンドドロー!届いて…勇気と言う名の閃光!ブレイクライド!!敢然の宝石騎士 ジュリア!!」

 

 

 

「……フィアレス…ジュエルナイト…」

 

 

 

「ブレイクライドスキル!ジュリアにパワーとクリティカルを…」

 

チアキのファイトを見ていたジュリアンが声を掛けてくる。

 

「お嬢なら大丈夫っすよ…きっとこのターンには決めてくれるっす」

 

「……そうなの?」

 

「トリガー次第っすけど」

 

ジュリアンはジュリアの隣りにいるアシュレイ…その後ろのアルウィーンを見る。

 

「高いパワーが出せる列がいること、何よりジュリアのスキルで連続攻撃ができること、それに相手さんの手札は3枚っすからね」

 

「……天乃原さん…お願い…」

 

 

ヒカリの注意は再びユウトのファイトの方へ向けられる。

 

 

 

 

「次元ロボ ダイクレーンでガーーーード!!」

 

 

ユウトがチェーンブラストの攻撃の後に出したベルコウスティによるアタックをカイトがガードし、ユウトがターンエンドを告げる。

 

 

 

 

「今のはガイアースのスキルを使わない方が良かったかもっすね」

 

「…ガイアース…ユニットのクリティカルを増加できるんだよね…」

 

「そうっすね、青葉さんには…コストが必用なんで連続使用には限度があることに気をつけて欲しいっすね」

 

ジュリアンが呟く、カードを提供した人間として色々思うことがあるのだろう。

 

 

 

 

「俺のぉぉターーーン!スタンドアンドドロー!カイザーードとダイブレイブぅをコール!マグナムのブーストでダイカイザーがアターーックっ(18000)!!」

 

 

「ここは…ノーガード」

 

 

「ドライブぅチェック!…次元ロボ ダイクレーン!ドロートリガー!ドローしてパワーはカイザードぅ!…次は……カイザーーーグレーダーーー!!(トリガー無し)」

 

 

このアタックによってユウトのダメージゾーンに落ちたのは再びガトリングクロー・ドラゴン…ドロートリガーであり、ユウトは1枚ドローする。

 

 

「ダイブレイブのブーストぉぉ!!カイザーーードがアタック!!(21000)」

 

「ブルーレイ・ドラコキッドでガード!」

 

 

ユウトが10000シールドを使って攻撃を防ぐ。

 

 

 

「ターーーンエンドぉぉぉ!」

 

 

ユウトとカイトのダメージが共に4点と並んだ。

 

 

 

 

ユウトは以前ジュリアンに言われたとおり、相手の手札について考えていた。

 

(…あいつの手札も今8枚…その中の4枚は10000シールドのジャスティス・コバルト、5000シールドのダイクレーン、グレード3のシャドウカイザーにグレード1で5000シールドのカイザーグレーダー…か)

 

(…焦るなよ…俺)

 

 

 

「スタンドとドロー!そして目覚めろ…穢れを知らぬ水竜よ!ライド!!ドラゴニック・ウォーターフォウル(10000)!!」

これでもかと言うほど蒼い…かげろうのグレード3のユニットがヴァンガードサークルに立つ。

 

 

 

 

「あれが青葉君の切り札?」

 

突然の声の主はファイトを終えたチアキだった。

 

「……天乃原さん!!」

 

チアキがヒカリに対してVサインを送る。

 

「後は青葉君が勝ってくれれば、私たちの勝ちね」

 

「青葉さん…頑張るっす」

 

 

 

 

仲間のエールを受けてかげろうの竜がコールされる。

 

「ウォーターフォウルの後ろにドラゴニック・ガイアースをコール!そしてウォーターフォウルの隣りにバーサーク・ドラゴンをコール!!CB2で次元ロボ ダイマグナムを退却!」

 

 

「…む」

 

 

「ドラゴニック・ウォーターフォウルでヴァンガードにアタックする!スキル発動!チェーンブラストをドロップすることでウォーターフォウルにパワー+10000、そして自動能力で更にパワー+3000、そして後列のドラゴニック・ガイアースをレスト!SB(ソウルブラスト)1をすることでウォーターフォウルにクリティカルを追加する!!」

 

 

その動きを見てジュリアンは満足そうに頷く。

 

おそらくジュリアンはこの動きをデッキの軸と考えていたのだろう。

 

 

 

「…むぅぅ」

 

 

「パワー23000!クリティカル2でヴァンガードにアタック!!」

 

間髪入れずにカイトがガーディアンを出してきた。

 

「次元ロボ ダイシールドで完全ガーーーードっ!!」

 

 

カイトが完全ガードのコストとしてシャドウカイザーをドロップする。

 

 

「…ドライブチェック、1枚目は…ブルーレイ・ドラコキッド!ゲット!クリティカルトリガー!効果は全てベリコウスティドラゴン!そして2枚目!……ドラゴンダンサー テレーズ!ゲット!ヒールトリガー!ダメージを1点回復してベリコウスティにパワー+5000!」

 

 

「……ダブル…トリガー…!!」

 

 

ユウトのダメージゾーンから裏向きになっていたベリコウスティドラゴンがドロップゾーンに置かれる。

 

 

「バーサーク・ドラゴンでリアガードのカイザードにアタック!」

 

ユウトがインターセプトの出来るリアガードにアタックする。

 

「ノーガードぉ!」

 

 

カイザードはドロップゾーンへと送られた。

 

 

「…ガイアースのブースト!ベリコウスティがヴァンガードにアタック!パワー25000!クリティカル2!」

 

 

「再び完全ガーーーーーード!!」

 

カイトは次元ロボ ダイシールドを使い防御する。ドロップされたのはドロートリガーのダイクレーンだった。

 

 

「これでターンエンドだ」

 

 

そしてカイトのターンが始まる。

 

 

「はっはっはっはっはぁっ!!俺のターーーンだ!立て!!そしてドロー!今、俺の全てが具現化する………究極!!次元!!合体!!」

 

 

 

 

その台詞にジュリアンが反応する。

 

 

「ついに来るっすか…」

 

 

 

 

「デデデデーデーデーデーン♪クロスブレイクライドぉぉぉぉぉぉ!!デンデンデンデーデー♪」

 

 

 

 

口で合体用のBGMを歌うカイト。

 

 

 

「……長いわよ」

 

 

 

「究極次元ロボっ!!グレート…ダイ!!カイ!!ザーぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

“クロスライド”によって究極次元ロボ グレートダイカイザーは常にパワーが13000になる。

 

 

「愛と正義のブレイクライドスキルっ!パワー+10000に加え、クリティカル+1、そしてっ!」

 

 

カイトがにやりと笑う。

 

 

「このユニットのドライブチェックでグレード3が出たとき、お前のガーディアンを…完全ガードでさえもその効果ごと破壊するぅぅぅ!!」

 

「…っ!」

 

 

ヒカリ達が心配そうに見つめる中、カイトがリアガードをコールしていく。

 

 

「ダイブレイブの前にカイザーグレーダーを、そしてグレートダイカイザーの隣に次元ロボ ダイドラゴン(9000)とコマンダーローレル(4000)をコール!」

 

 

 

ヒカリとジュリアンはコマンダーローレルの存在に危機感を抱く。

 

「もしこのグレートダイカイザーのアタックがヒットしたら…」

 

「……ローレルのスキルでヴァンガードはもう一度立ち上がる…」

 

そんな二人にチアキが話しかける。

 

 

「信じましょ?青葉君の力…そして手札を」

 

 

 

 

「行くぜぇぇぇ!究極次元ロボ グレートダイカイザーのリミットブレイクっ!CB(次元ロボ)2!俺たちは今!トリプルドライブの力を手に入れたっ!」

 

(…来る!)

 

「グレートぉぉぉぉぉぉ!エナジーぃぃぃぃ!!」

 

 

「ブラスターぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!(パワー23000、クリティカル2)」

 

 

 

ユウトは手札から2枚のカードをガーディアンとして出した。

 

 

「ドラゴンダンサー マリアと…ドラゴンダンサー マリア!!…完全ガード2枚だ!!」

 

ユウトはコストとしてチェーンブラスト・ドラゴンとブルーレイ・ドラコキッドをドロップする。

 

 

 

「そんなものぉぉ!!全てぶっ飛ばしてくれるぅ!トリプルドライブチェック!」

 

 

 

その場にいた全員が息を呑む。

 

 

 

「…次元ロボ ダイバトルス!クリティカル!!効果は全てダイドラゴンに!!」

 

「…次元ロボ ダイクレーン!ドロー!1枚ドローしてパワーはグレーダーにぃ!!」

 

「…ジャスティス・コバルト!クリティカル!!効果は全てグレーダーにぃぃ!!」

 

 

 

 

(守れたけどっ!)

 

 

 

「…全部……トリガー…」

 

 

ヒカリの口から自然に言葉が漏れた。

 

「ダイブレイブのブーストぉ!走れ!カイザーーーグレーダーーー!!(パワー24000、クリティカル2)」

 

「…ノーガード、ダメージは…ワイバーンストライク ジャラン……そして、ドラゴンダンサー マリアだ…」

 

 

ユウトのダメージに5枚のカードが並ぶ。

 

 

これでもう1点もダメージを受けられない。

 

 

「とどめだぁぁぁぁぁ!ローレルのブースト!アタックだ!次元ロボ ダイドラゴぉぉぉぉぉぉン(パワー21000、クリティカル2)」

 

 

 

 

自身のスキルとトリガーでパワーの上昇したダイドラゴンがドラゴニック・ウォーターフォウルにとどめを刺しにくる。

 

 

 

 

「させるかよ!ドラゴンダンサー テレーズでガード!バーサーク・ドラゴンでインターセプト!」

 

「……ターンエンドだぁ」

 

 

 

ユウトのダメージが5点、カイトが4点……

 

ユウトを追い詰めたものの倒しきれなかったため、カイトのテンションがここにきてようやく下がる。

 

「青葉クン……守りきった……けど手札…2枚しか残ってない……!」

 

「しかし、あいつ結構シールド持ってるわね」

 

「そうっすね…ざっと40000シールドくらいはありそうっすね……でも、青葉さんのデッキにはそれをぶっ壊す“一手”が入ってるっすよ」

 

「…………“一手”…?」

 

ジュリアンがユウトを見る。

 

ユウトの目は希望に満ち溢れていた。

 

(あいつの手札は5枚…その中で分かっている4枚は全てトリガー……次元ロボ ダイバトルス、次元ロボ ダイクレーンそしてジャスティス・コバルトが2枚……残りの1枚が分からないが…今、俺にできることはこいつに賭けることだ!)

 

 

ユウトはそのカードに願いを込める。

 

 

 

「俺のターン!スタンドアンドドロー!……頼んだぜ………今ここに目覚める、あらゆる穢れを無に返す超越生命体!!ライド!!“超越竜 ドラゴニック・ヌーベルバーグ(13000)”!!」

 

 

 

 

「…ヌーベルバーグ…グレード4のユニット…」

 

 

そのユニットはヴァンガードでも稀有なグレード4のノーマルユニットであった。

 

 

 

「バーサーク・ドラゴンをコール!CB2でお前のダイドラゴンを退却!」

 

 

これでカイトにはインターセプトを行うことができるユニットがいなくなってしまった。

 

 

「本当のとどめだ!ガイアースをレスト、SB1!ヴァンガードにクリティカル+1!ドラゴニック・ヌーベルバーグで究極次元ロボ グレートダイカイザーにアタックだ…パワー13000!クリティカル2!」

 

 

 

「そんなものぉぉ!ジャスティス・コバルトで…」

 

 

 

「無駄だ!ヌーベルバーグのアタックに手札からのグレード0のガーディアンは使うことができない!」

 

 

その言葉を聞いて困惑するカイト。

 

 

「なぁっ!…ノ…ノーガード…」

 

 

「ドライブ…チェック…1枚目…ワイバーンストライク テージャス……2枚目……ドラゴンダンサー マリア」

 

 

トリガーは出なかったもののクリティカル2という事実は変わらない。

 

ヌーベルバーグの一撃がグレートダイカイザーを撃ち抜いた。

 

 

「ダメージチェック…次元ロボ ダイシールド…」

 

 

そして遂に6点目のダメージがめくられる。

 

 

「…ダメージは…!次元ロボ ゴーレスキュー!ヒールトリ…」

 

その希望を打ち砕くようにユウトが言う。

 

「無効だ…そのトリガーはヌーベルバーグのスキルでヒールトリガーとしての力を失った」

 

 

 

 

「なら……この勝負は…まさかぁぁぁ」

 

 

カイトの手からカードがこぼれ落ちる。

 

ユウト達には分からなかった手札の最後の1枚は究極次元ロボ グレートダイカイザーだった。

 

 

 

カイトのダメージゾーンには6枚のカードが置かれていた。

 

 

 

「ああ、俺の勝ちだ」

 

 

 

 

 

 

 

ユウトが立ち上がる。

 

「ヒカリ、ジュリアン、リーダー…おまたせ、勝ったよ…」

 

身内以外との初めてのファイトにふらふらになったユウトをヒカリ達が支える。

 

 

「……格好良かったよ…青葉クン」

 

「これからの仲間として心強く思えたっす♪」

 

「…成し遂げたわね」

 

「…ああ」

 

 

 

 

一方でカイト達はがっくりとうなだれていた。

 

 

「本当に出入り禁止にするつもりかぁ!?お前達にそんなことが…」

 

 

 

 

「できますよ」

 

その言葉を言った人は胸に店長と書かれたプレートをつけていた。

 

「天地カイト、天地ミチヤ…あなた達はこれから半年間、この店へ来ること、この店での…商品の購入、売却、大会の参加を禁じます」

そう言って店長は二人の写真を撮った。

 

「こんなことをして…問題にしてやるぅぅ!この店の本店に抗議の電話をかけてやるぅぅ!」

 

「ここ個人営業ですし、あなた方がいる方が問題になるんで」

 

 

「くっ…良い釣り堀だったのだが…行くぞぉぉ!弟よぉぉ!!」

 

 

 

カイトは自分のデッキを回収すると再びミチヤの背の上に乗る。

 

そしてヒカリ達の方を睨む。

 

「お前達の名は何と言うぅぅ!?」

 

 

「………深見…ヒカリ」

 

 

「青葉ユウトだ」

 

「天乃原チアキよ」

 

 

「え…?僕もっすかね…舞原ジュリアン…っす」

 

 

「その様子だとVFGPにでも出場する気なのだろう?ならばVFGPの大舞台でギッタギッタのメッキョメキョにしてくれるわぁぁぁぁ!!」

 

 

カイトの足元でミチヤが動き出す。

 

 

「俺の名前はぁぁ天地海人!!覚えておけぇぇ!」

 

そう言って彼らは店を出ていった。

 

「…何だったのかしら」

 

ヒカリ達の元に女の子がやってくる。

「おねーさんたちすごい!ほんとにあの怖い人おっぱらっちゃった!!」

 

「とはいえ、俺たちだけじゃ駄目だったかもな…な?店長さん」

 

 

 

ユウトはそう言って店長に話しかける。

 

 

 

「…いや、本当はただの店員なんだけどな」

 

 

 

「「ええっ!?」」

 

「じゃあ…今言ってたことも…デマカセ…?」

 

「追っ払えたことに変わらないだろ…?」

 

店員が自分のネームプレートをいじる。

 

プレートの店長という文字はシールだった。

 

「あのまま、あいつら放っておいても問題にはなったろうし…俺がちゃんとこの店の本物の店長には伝えておくからさ、これからもこの店をよろしくな?」

 

そう言うと「はぁ…俺クビかなぁ…」と呟きながら店の奥へと歩いていった。

 

 

 

 

「あ…そうだ…」

 

 

 

 

ヒカリが女の子にダイカイザーとダイユーシャを手渡す。

 

「これは……本当はあなたのものだから…」

 

「じゃあ…わたしもこれ…」

 

 

女の子がヒカリの渡した二枚の“撃退者 レイジングフォーム・ドラゴン”をヒカリに返す。

 

 

「ん………」

 

 

ヒカリは1枚を受けとると1枚を渡し返した。

 

 

 

 

「これは私とあなたが出会った記念に…ね」

 

「…………うん!!」

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

 

ヒカリ達はカードショップ“カードマニアックス”を後にする。

 

「……青葉クン……大丈夫……?」

 

「あ……ああ、ちょっと疲れた……」

 

「このくらいで疲れてちゃ大会ではやっていけないっすよ~?」

 

辺りはすっかり暗く、街灯に照らされた町を4人は進んで行く。

 

「ヌーベルバーグにライドした辺りから最初にファイトした時のヒカリの口調をイメージしてみた」

 

「……な…思い出さないでよ…!………それにまだまだレベルが低い………って何を言ってるの…私」

 

 

「しかし、お嬢…今後もこのカードショップ巡りは行うんすか?」

「当たり前よ!今回だってVFGPに参加するファイターの情報が手に入ったんだから!」

 

「出来ることならもう会いたくないがな……」

 

「……次は…私が倒す…」

 

4人は百花公園前の駅から電車に乗り、天台坂の駅で降りた。

 

「じゃあ、みんな…次の休日…12時にここで待ち合わせね」

 

「……休日なのか」

 

「ぶっちゃけ、今回は善は急げって勢いで来ちゃったから……今度はゆっくり……ね?」

 

「にしても…12時……ならお昼はみんなで食べに行くっすか?」

 

「ええ……私、ファストフード店って行って見たいんだけど…いいかしら?」

 

「……ファストフードっすかぁ…」

 

「…それはいいんだが…今度はどこのカードショップに行くんだ?」

 

ユウトが聞く。

 

きっと今回のように少し離れた地域のショップなのだろう。

 

 

「今度は北宮町のカードショップ“アスタリア”よ」

 

「………え……嘘…………」

 

 

ヒカリは思わず耳を疑った。

 

 

 

カードショップ“アスタリア”

 

 

 

 

 

 

 

その店はかつてヒカリが通っていたショップだった。

 

 

 

 

 

 


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