君はヴァンガード   作:風寺ミドリ

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035 Believe in my existence

私、深見ヒカリはひたすら手と脳を動かしていた。

 

目の前には青葉クンに借りたかげろうのデッキ…ボーテックスver…そして私のシャドウパラディンレギオンデッキ……。

 

家には私しかいない……午前中ということもあって、まだそこまで暑くは無いが、私の額にはじんわりと汗が浮かんでいた。

 

私は回す……デッキをひたすら腕に、脳に、慣れさせる。

 

少しの違和感を感じながら……

 

 

(……ライド…邪悪を引き裂く闘気の騎士…覇気の撃退者…コーマック!!)

 

 

* * * * *

 

 

 

 

デッキの動きを確認した私は、昼御飯として作った冷やし中華を食べながら、夜御飯のことを考えていた。

 

あえて……おでん………………無いね、それは。

 

外ではセミが鳴き、子供たちのはしゃぐ声がする。

 

正に夏真っ盛りである。

 

「……暑い」

 

 

私は組み直したデッキを見つめた。

 

グレード3はレギオンユニットで統一されており、FVは今まで通りに“クリーピングダーク・ゴート”のままである。

 

捻ることの無い…単純なレギオンデッキ……

 

だが…どことなく使いにくい。

 

 

…青葉クンのデッキとの違い…何だろう……

 

 

そうして私が思考の渦に浸ろうとした時。

 

トゥルルルル……トゥルルルル……

 

 

私の携帯が鳴り始めた。

 

……掛けてきたのは…舞原クン?…何で…?

 

「もし…もし?」

 

『ヒカリさん!今から天台坂駅に集合っす!チーム全員で“カードマニアックス”の大会に出るっすよ!!』

 

「…え?大会…?…………」

 

プツン……

 

 

電話はすぐに切れてしまった。

 

大会…か、確かにVFGPの前に出ておくのはいい肩慣らしになるかもしれない。

 

……とは言えショップの大会とVFGPではたぶん“空気”が違う様な気はするけどね……

 

 

私はデッキをケースにしまい、残っていた冷やし中華を食べ、麦茶をイッキ飲みする。

 

「……ふぅ」

 

 

行ってみようじゃないか……大会に。

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

 

お盆ということもあって、逆に人が少ない天台坂のホーム……ここも後数日で帰省ラッシュの荒波に飲まれるのだろう……

 

 

「舞原クン……」

 

「何すか……」

 

 

今、天台坂駅に私と舞原クンはいた。

 

 

「青葉クンは…?」

 

「お祖母ちゃんの家に家族で行っちゃったそうっす」

 

それは……仕方ない。

 

「……天乃原さんは?」

 

「…………夏期講習っす」

 

それも……仕方ないか。

 

 

天台坂駅には私と舞原クンしか集まっていなかったのだ。

 

 

 

 

「……行くっすか」

 

「あ、行くんだ」

 

「もちのろんっすよ」

 

 

言うまでもなく普段テンションの低めな私と、想像以上にテンションの低い舞原クンとの二人旅が始まろうとしていた。

 

 

「……旅って距離じゃ無いっすけどね」

「あ…………ごめん」

 

 

 

そして私達は改札へと歩いていくのだった。

 

今回、私達が目指す“カードマニアックス”は以前チーム全員で行ったことのあるお店だ。

 

店の印象よりも、地を這って進む人の上に乗って移動するタンクトップの正義オタクサバトレ変態男と出会ったことの方が衝撃的だった。

 

場所は天台坂駅から8分……百花公園前駅から徒歩でさらに8分の所にある。

 

おそらく今の私の家から、カードショップ“大樹”の次に近いお店だろう。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 

……会話が無い……空気が重い……

 

 

「…………」

 

「…………」

 

思えば……舞原クンと二人きりになるのは学校で初めて会った時以来かもしれない。

 

 

「あー……煉獄焔舞…発売になったっすね」

 

「うん……買ってないけど……」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…アルフレッド・エクシヴが公開になったっすね」

 

「うん……使わないけど」

 

「…………」

 

「…………」

 

 

たぶん……悪いのは私だ…………えっと……

 

 

「…舞原クンってカードの話しかできないの?」

 

「…………」

 

「…………あ、ごめん…」

 

「…………」

 

 

……私が言うセリフでは無かった……

 

 

「あ、そうだ…舞原クンってカード以外に趣味ある?…私はぬいぐるみ作ったりとかするんだけど…」

 

 

今でも私の部屋の“私物(ブラックボックス)”の中に手作りのファントム・ブラスターやマーハのぬいぐるみが埋もれている。

 

 

「………特に無いっすねぇ……」

 

「…………」

 

「…………」

 

「あ!…料理作ったりは?」

 

「……趣味ってほどじゃ無いっすねぇ……自分で作らないとお嬢が勝手に弁当作っちゃうっすから……」

 

 

お嬢……天乃原さんは料理オンチ…というより食べ物に関する知識が奇妙な人だから……苦労してるのかな。

 

 

「……料理…教えてあげればいいのに」

 

「僕もそんなに上手じゃ無いっす……この間ゼラには僕の料理を酷評されてるっすよ……“愛が足りない”って……」

 

 

ゼラ……ゼラフィーネさん?

 

自然とあだ名で呼ぶ関係なんだね。

 

「そう言えばゼラフィーネさんはどこに?」

 

「一昨日くらいにフランスに帰っていったっすよ」

 

「そっか……」

 

 

……せめてもう一度話したかったな……

 

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

ーー次は百花公園前~百花公園前~…ーー

 

「降りよっか…」

 

「そうっすね…」

 

再び会話が途切れた所で、私達は百花公園前駅に到着した。

 

「今日は……本当にいい天気だね……」

 

「憎たらしいほどに…っすね」

 

晴れやかな空に眩しい太陽……百花公園の花壇の花達も何となく嬉しそうだ。

舞原クンは自然な動きで鞄から日傘を取りだし、展開する。

 

「…………あれ…もしかして、ゼラフィーネさんとお揃い?」

「……バレちゃったっすか」

 

 

舞原クン少し照れ臭そうに言う、間違いなくその日傘は以前ゼラフィーネさんが持っていたものと同じ柄であった。

 

「……舞原クンって…肌が弱いの?」

 

 

天乃原さんが舞原クンの日焼け止めを買っている場面に出くわしたことがあった。

 

 

「んーまぁ…そんな所っすね」

 

「そっか……」

 

 

 

私達は百花公園を抜け、ショップへと歩きだす。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

ショップ大会……か……

 

 

「舞原クンは……大会……どのくらい出てるの?」

 

「基本毎週行ってるっすよ…僕は最強のヴァンガードファイターになる男っす」

 

 

それは舞原クンと初めて会った時にも言っていた言葉だった。

 

“最強のヴァンガードファイター”

 

それは一体…どのようなファイターなのだろうか。

 

「そして……いつか“ノルン”の三人を探して…倒すっすよ」

 

“ノルン”……か。

 

「“ノルン”を探す……そのための情報を集めるために色んな大会に行ってるんだ…」

 

「それだけじゃあ無いっすよ………経験は力になるっす……色んなクランの特色やフルスペックを身に刻むことで強さの高みを目指すっす」

 

それは…確かに“強く”なるためにとても大事なことかもしれない。

 

「そっか…だから舞原クンは“色んなデッキ”を持っているんだね……“自分が”強くなるため」

 

 

舞原クンが日傘をくるくると回す。

 

彼は満足そうに頷いて言った。

 

 

「そう…“色んなデッキ”を使って強くなる……色んなデッキ…………色んな戦法……あれ?“自分が”…強く?」

 

舞原クンが固まってしまった。

 

 

「……舞原クン?」

 

 

「…………」

 

 

「…………あの」

 

「そうっすよ……ね」

 

舞原クンが突然…真剣な顔になる。

ずっと忘れていた何かを思い出すように。

 

 

「……デッキの強さとか……関係無い…じゃないっすか」

 

 

「?」

 

 

「強くなりたいのは……僕だ…………」

 

 

「??」

 

 

……舞原クンが何かをぶつぶつ言っている内に私達はカードマニアックスまでやって来た。

 

 

「舞原クン……着いたよ?」

 

 

私の一言に舞原クンはハッとした表情になる。

 

 

「………あっ……よし………さぁ!行くっすか!!」

 

「……うん」

 

 

いざ、大会出場……!!…………だね。

 

 

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

「……えーでは、残念ながら抽選落ちということで」

 

 

「「…………!!」」

 

 

店員の非常なる一言が私達を貫く。

 

何のために……私たちはここに……?

 

 

最も、今日抽選落ちしたのは私達だけではなかったけれど。

「……8月になって大会の景品がレギオンパックになったことが原因っすね………」

 

 

定員24人の大会に43人もの人間が集まっていたのだ。

 

私の周りにも抽選落ちでがっくりとうなだれた人が何人もいる。

 

もちろん事前に払った参加費は返して貰えたが、参加賞も貰えない。

 

 

「まぁ私達はファイトしに来たんだけど……ね」

 

「とはいえ…ファイトスペースも埋まってるっすね」

 

 

店のファイトスペースの内、大会で使われないテーブルも既にファイター達で埋め尽くされていた。

 

 

うーん、さすが夏休み。

 

 

「……テーブルが空いたら……ファイトでもする?」

 

 

「…それもいいっすけど…」

 

 

舞原クンは大会の様子を見つめる。

 

 

「…今はファイト観戦っす…僕は“シングアビス”を見たくて来たんすから」

 

「…………“シングアビス”?」

 

 

舞原クンが人混みの中に消えていく。

 

……まぁ……銀髪だから見失いそうにも無いけど。

 

 

「観戦……か…………」

 

私も何気なく……テーブルをちら見してみる。

 

 

「行くぜ……超越!世界の理さえ竜の前では枷にもならん!!古代竜 ナイトアーマー…双闘!!」

 

 

「すごいの行くよ~…エメラルド・ブレイズに…ブレイクライド!!」

 

 

 

どこかで見た人たちが並んでファイトをしていた。

 

 

………そうだ、黒川さんの…ユズキのチームメイトの人たちだ……

 

……ってことは、ユズキも……ここに?

 

私は辺りを見回すが、それらしき人物は見当たらなかった。

 

 

それにしても…………

 

 

「バッドエンド・ドラッガーのブレイクライドスキルで~…リアガードがアタックした時、その子に“パワー+10000して、アタック終了時に山札の下に置く”を与えることになりました~…そしてエメラルドが双闘!!」

 

 

何だ……まだブレイクライドは使えるのかな……?

 

…………モルドレッド……入れようかな…どうしよ。

 

 

 

 

「こっちっす!ヒカリさん!」

 

「……舞原クン?」

 

突然舞原クンが私を呼ぶ……どうやらファイトスペースが空いたようだ。

 

私は舞原クンの向かいに座る。

 

 

「……収穫は……あった?」

 

「上々っす……シングの相方にスタンドするユニットを入れると強いっすね……」

 

 

シングアビス……あまり好きじゃない響きだ……舞原クンの話からして明らかにAbyssがシングの引き立て役にしかなっていない気がする。

 

 

「ま…肝心なのは、ファイター自身の力量っすよね」

 

「……?…………まぁ…そうだろうけど」

 

 

「それをずっと……忘れていた……っすよ……自分自身の在り方を…………」

 

「?」

 

 

 

 

「一体…何のために“ノルン”を倒すとか言ってたんだか……っす」

 

 

(そうっす……日本に来てから、スクルドや櫂トシキに会って、負けて、僕は負けた理由をデッキに押し付けていた……)

 

 

ーー自分のデッキとその程度の“つながり”しか持てない奴に俺は負けることはない!ーー

 

ーー共に最強になる分身(ヴァンガード)がいるから道を踏み外さずに高みを…最強を目指すことができる…ーー

 

 

 

(…好き勝手なことを……言ってたっすねぇ……)

 

 

 

ーーお前の言う最強とは何だーー

 

 

 

(…櫂トシキ……見つけたっすよ…“僕にとっての”最強を……)

 

 

舞原クンはどこか遠くを見つめていた…がすぐに私を見つめ直す。

 

「ヒカリさんのおかげで思い出せたっす……どんなデッキでも、その最大限の力を引き出せるのが本当の意味で最強のファイター……“デッキとのつながり”を最近の僕は気にしすぎていたっす……僕には、僕のスタイルがある」

 

 

「……よくわからないけど…役に立てて良かった…」

 

 

本当によくわからないけれど……ね。

 

 

「……ヒカリさん…僕とファイトしましょうっす」

 

 

それはカードショップの中とはいえ、私にとって少し意外な提案だった…まさか舞原クンから誘ってくるなんて……だって今まで……

 

 

「…………いいの?…今まで舞原クンは…私を……」

 

ずっと…確実に舞原クンは私とファイトするのを避けていた気がする。

 

 

それが何故かは…………いや……もしかして。

 

 

「舞原クンは…私が…“ベルダンディ”って……気づいていたの?」

 

 

「何だ……知っていたんすか?」

 

……やっぱり。

 

「知ったのは……ついこの間だよ……」

 

 

“ベルダンディ”……ラグナレクCSに出場していた謎の力を持った三人のファイター…………

 

スクルド(女装幼女)

 

ベルダンディ(ゴスロリ)

ウルド(謎)

というよくわからない三人の一人が私だったという話だ。

 

 

「なら…真っ向から挑ませて貰うっす……前回は途中でうやむやになっちゃったっすからね…」

 

「…………あの時から…知ってて私を誘ったんだ…」

 

「でも肝心のヒカリさんは自分のことを知らないようだった…それに特殊能力を持っているようにも見えなかった……だから様子を見ることにしたっす」

 

「……様子を…………」

 

「そして!!君の前に神沢ラシンが現れ、君は彼の能力を打ち破った……僕は確信したっす……君がベルダンディだって……」

 

「じゃあ…何で……黙って……」

 

「ベルダンディだと気づいているかはどうでも良かった……君が強くなり…その力を目覚めさせるのを期待していたっす」

 

 

早い……展開が早い……

 

 

「でも…もう気づいたんすね……なら」

 

 

さっきまでとは少し空気が変わる……舞原クンの表情は真剣だった。

 

 

 

「ノルンの…ベルダンディ…倒させてもらう!!」

 

 

 

舞原クンがデッキのシャッフルを始める。

 

 

……何故かフリーファイトというより真剣勝負になっている気がする。

 

私としては真剣勝負でも問題は無いけど……いや、まだデッキは調整中だ……うーん…やるしか……ないか。

 

 

舞原クンに続いて私もファイトの準備を進める。

 

 

「自分の在り方を見つけた僕は……強いっすよ……僕の力……見せてあげるっす」

 

「そういう時は…“僕とユニットの力”じゃないのかな…?」

 

「くっ……意識の差があると言いたいんすか?」

 

「いや…うーん……」

 

「とにかく!!ファイトっす!!」

 

「う……うん……」

 

 

「「スタンドアップ!ヴァンガード!!」」

 

 

……何で、こんな流れに。

 

 

 

「……クリーピングダーク・ゴート(4000)……」

 

「星輝兵 ロビンナイト(5000)!!」

 

 

二人のFVが登場する。

 

 

この試合…先行は舞原クンだ。

 

 

「ランタン(7000)にライド!!……僕の在り方、僕の強さ……僕の目標……ヒカリさん!ベルダンディとしての力……早く見せるっす!!ロビンを後ろに移動してターンエンド!」

 

 

「そんなこと言われても…!ライド!マスカレード(7000)…ゴートを移動して…アタック!(11000)」

 

 

「ノーガード!!……さぁ!トリガーを引いて見せるっす!!」

 

 

「無理だって……!!ドライブチェック…詭計の撃退者 マナ……」

 

 

「トリガー無しっすか……ドロー!……アストロリーパーにライド!アタック!!(14000)」

 

「ノーガード!!……力なんて知らない!」

 

「ゲットクリティカル!……昔は使ってたんじゃないっすか!」

 

「覚えてないよ!!……ダメージは…無常マスカレード、コーマック……スタンドandドロー…マックアートにライド!…ブラスター・ダーク・撃退者“Abyss”をコール!CB1!ロビンナイト……退却!!」

 

「覚えてないなら、思い出してもらうっす!!」

 

「無理!……ゴートのスキルでCB1!コーマックを手札に!!……マックアートでアタック!!(9000)」

 

「ノーガード…思い出してもらわないと…僕の目標…夢が……叶わないっす!!」

 

「どうして私に…私たちに拘るの!?……ドライブチェック……!!…厳格なる撃退者!ゲットクリティカル!!☆はマックアート…パワーはダークに!」

 

「……単純な話っす…あなた達は!……僕の持ってない物を持ってるんすから!!……ダメージチェック……ネビュラキャプター……ドロートリガー!効果はVに!…もう一枚もネビュラキャプター!!同じくっす!!」

 

「……っ…ダークじゃアタックできない…」

 

 

 

4ターンを終え、ダメージは2対2……だが、押されているのはヒカリの方だった。

 

「……運命に抗う力…それさえあれば…僕は……」

 

「舞原クン…何を言って……?」

 

「スタンド&ドロー!!……破壊の先に破滅有り!この世に終焉をもたらせ…ライド!…落日の星輝兵 ダームスタチウム(11000)!!」

 

「……また……ブレイクライドユニット……」

 

ダームスタチウム…確かリンクジョーカーでは“星輝兵 インフィニットゼロ・ドラゴン”に続く二種目のブレイクライドユニットだ。

 

「ニオブ(9000)、ランタンをコール!ダームスタチウムでアタック!!(13000)」

 

「……厳格なる撃退者、でガード!(2枚貫通)」

 

「ツインドライブ……ヒールトリガー!回復して効果はニオブ!セカンドチェック…ランタン……トリガー無し………ランタンのブーストしたニオブでアタックっす!!(21000)」

 

「…マナ、氷結の撃退者でガード!ダークでインターセプト!!」

 

「……ターンエンドっす」

 

「運命とか力とか……一旦頭を冷そうよ!……スタンドandドロー!…ライド!邪悪を引き裂く闘気の騎士…覇気の撃退者 コーマック(11000)!!」

 

私はドロップゾーンを確認する……1、2…3……4、うん…チャージ完了!!

 

「悲しみばかりのどうしようもない世界で、巡り会った友と友…シークメイト!!」

 

私は山札へとカードを戻し……メイトを探す。

 

 

「闇を纏いて闇を打つ……洗練されし覇気!!闘気の撃退者 マックアート……双闘!!」

 

 

人前で見せる最初のレギオン……か……

 

 

「ドリン(7000)をコールしてその前にブラスター・ダーク・撃退者(9000)をコール!!CBを一枚表に!!コーマックの右に無常マスカレードをコール!!」

 

無常の撃退者 マスカレードはリアガードとしてアタックする時に自身のパワーを7000から10000まで上昇させることができる……これで!!

 

「マスカレードで…リアガードのニオブにアタックするよ!!(10000)」

 

「ランタンでガードっす!」

 

「そしてレギオン……コーマックとマックアートのアタック……レギオンスキル発動!!マスカレードを退却してクリティカル+1!!」

 

さらにレギオンによって自身の持つ“中央列に他のあなたのユニットがいるときパワー+3000”が誘発する。

 

「パワー…23000、クリティカル2!!ヴァンガードにアタック!!」

 

「ノーガードっす!!」

 

「ドライブチェック…first…エアレイド・ドラゴン!クリティカル!!……効果はリアガードのダークに!second……厳格なる撃退者!!クリティカル!こちらもダークに!!」

 

「……ダメージチェック…ダームスタチウム………コールドデス・ドラゴン」

 

「……!」

 

 

星輝兵…コールドデス・ドラゴン…忘れてた…リアガードが存在しなくても、呪縛カードを増やすユニット…せっかく“3体分”リアガードサークルを空けたのに…もし使われたら……Abyssは…

 

 

「……くっ……ドリンのブーストしたダーク・撃退者でヴァンガードにアタック!!パワーは26000、クリティカルは3!!」

 

クリティカル3……ダメージが3点の舞原クンはガードするしかないだろう。

 

「……キャプター、コールドデス、テルルでガード」

 

「……ターンエンドだよ」

 

舞原クンのダメージが3…私が2…か。

 

 

「さすがに…簡単にブレイクライドをさせてはもらえないっすね……」

 

「…………」

 

 

ダームスタチウムのブレイクライドは相手リアガード3体の呪縛……もし発動されてもこちらのリアガードは2体しかいないため、その真価は発揮できなかったであろう。

 

「まぁ…いいっすよ……手段なら…沢山あるっすから…運命さえも跪かせて見せるっす」

 

「……舞原クンはどうして……運命とか…力とか言っているの……?」

「………僕は手に入れたいんすよ…全てを!!………混沌こそがこの世の全て!!……ライド!星輝兵……ダークゾディアック!!…これが終わりの始まり……」

 

「……ダーク……ゾディアック……」

 

 

「シークメイトっす!…宙は冷たく、遠い……星輝兵 アストロリーパーで双闘っす!レギオンスキル発動!、CB1……絶望の種は蒔かれたっす……今から僕が使う呪縛は……全てΩ呪縛(オメガロック)になる!!」

 

「Ω…呪縛……グレンディオスの……」

 

 

Ω呪縛(オメガロック)されたユニットはおよそ4ターンの間呪縛され続けることになる。

 

私の使うシャドウパラディンは自身のリアガードを退却させ、コストにする……つまり相手のターンにユニットを残さないという点でリンクジョーカー……呪縛に強いと言われている……が裏を返せば、多くのユニットが呪縛されてしまうと何も出来なくなってしまう。

 

 

「ゾディアックの後ろにランタンをコール…ゾディアックのスキル“ペルソナブラスト”…ブラスター・ダーク・撃退者“Abyss”、督戦の撃退者 ドリンをΩ呪縛(オメガロック)……」

 

舞原クンはダークゾディアックをドロップゾーンに置いた…

 

「……」

 

「ニオブ、ランタンにパワー+4000して…アタックに入るっす」

 

 

コールドデスが使われなかった………持ってなかった?

 

 

「ランタンのブースト……ゾディアック、アストロリーパーでアタックっす!!パワーは31000!!」

 

ダメージはまだ2点……なら。

 

「……ノーガード」

 

「ツインドライブ…星輝兵 アポロネイル・ドラゴン……クリティカルトリガーっす!☆はVにパワーはニオブに……セカンドチェック……残念…プロメチウムっす……トリガー無し」

 

 

「…ダメージチェック……ダーク・撃退者“Abyss”…もう1点は……暗黒医術の撃退者!!……ダメージを回復するよ……!!」

 

私はダメージゾーンで裏向きに置かれていた無常の撃退者 マスカレードをドロップゾーンへ置く。

 

そしてトリガーの効果でヴァンガードにパワーを与える。

 

「ならっ!ランタンのブーストしたニオブっす!パワー29000!!」

 

「エアレイド、厳格なる撃退者でガード!!」

 

「ターンエンドっす」

 

 

私はドロップゾーンを見る…無常の撃退者 マスカレードが2枚……クリティカルトリガーが……2枚。

 

後は……マナ……詭計の撃退者…マナが……あれば…

 

私は手札に残された撃退者 ファントム・ブラスター“Abyss”を見つめる。

 

 

「……お願い…スタンドandドロー……」

 

瞬間、私の心が“何かに触れる”……そんな感覚があった。

 

「……!!」

 

私は知るよしも無かったが……この時、舞原クンからは私の瞳が輝いて見えていた。

 

 

「…………」

 

 

私の手に舞い降りたのは……詭計の撃退者 マナ。

 

私には表のダメージが3枚……そして“手札が2枚”。

 

舞原クンはダメージが3枚…そして手札が5枚…ある。

 

しかも1枚は完全ガード……1枚はトリガー……。

 

舞原クンの残りの手札は…?……舞原クンはここまであまりリアガードを展開していない…つまり。

 

私は舞原クンの手札を見つめる。

 

考えられるのは……トリガー…グレード3、そして完全ガード……前の私のターン…舞原クンは確かガードにコールドデス・ドラゴンを使っている………あの時は、コールドデスを切るしかなかった……?

 

ということはトリガーは入っていても1枚…もし手札にトリガーが有ったのなら…そこで使っている…はず。

 

あの時の攻撃は“シールド値20000”を要求するものだった……うーん…完全ガードを使うかと言えば…微妙かな……ただ…どうしてもコールドデスをガードに使ったことが気になる。

 

あの場面……コールドデス以外にガードに使えるユニットがいなかった…?

 

と、言うことは次のターン…ドローしたのは、あのターンでコールした“魔爪の星輝兵 ランタン”……

 

私がコールドデス・ドラゴンを過大評価しすぎなのかもしれない……けど。

 

舞原クンも気づいていたはずだ、私がAbyssを使うことと…コールドデス・ドラゴンならAbyssの能力を防ぐことが出来ると。

 

 

 

 

「…勝負に……行かせて貰うよ!!」

「……さぁ…その力……見せるっす!!」

 

 

 

 

 

「絶望のイメージにその身を焼かれ、尚、世界を愛する奈落の竜……今ここに!!ライド・the・ヴァンガード!!」

 

 

 

 

思えば私は…ずっと奈落竜と一緒だった。

 

 

 

 

「撃退者…ファントム・ブラスター“Abyss”!!」

 

 

 

思えば……ドラグルーラーを最初に使ったファイト…あの時も対戦相手は舞原クンだった。

 

 

「常闇の深淵で見た光は!!もう二度と消えない!!シークメイト!!!」

 

 

 

私の下にやって来るのは…覚悟の剣の所有者……なら私は…勇気を持って…あなた達と共に戦うよ。

 

 

「漆黒の騎士よ…覚悟の剣で我らの道を切り開け!!ブラスター・ダーク・撃退者“Abyss”……双闘!!」

 

 

負けない…負けたくない……だから!

 

 

 

 

「詭計の撃退者 マナをコール!…スキル発動!撃退者 ダークボンド・トランペッターをスペリオルコール!!さらにスキル!CB1でグレード0!クローダスをレスト状態でスペリオルコール!!」

 

 

VにはAbyss……左列は全てΩ呪縛されてしまったが、まだ右列のマナ、だったん…V裏のクローダスがいる。

 

CBもまだ残っている。

 

これなら…Abyssのスキルが使える……

 

 

 

 

「ダークボンドのブースト……マナでヴァンガードにアタック(14000)」

 

「ニオブでインターセプトっす」

 

 

……最初のドライブチェックによって相手に与える圧力は大きく変化する……か。

 

 

……行くよ。

 

 

「Abyss……アタック!!(22000)」

 

 

「…………完全ガード」

 

 

舞原クンが手札からプロメチウムをコールし、ゾディアックをコストに使う……

 

 

「ツインドライブ……first………暗黒の撃退者 マクリール……トリガー無し……」

 

 

ここで……来い!!

 

 

「second…………撃退者……エアレイド・ドラゴン!クリティカルトリガー!!効果は全てをヴァンガードに!!」

 

 

そして……!!

 

 

「レギオンスキル発動!!……マナ、ダークボンド、クローダスを退却……CB2!!………どんなに傷ついても……私たちは戦うことを止めない…あきらめない!Abyssは再びスタンドする!!」

 

 

一人じゃない……メイトと共に……竜は再び立ち上がる。

 

 

「撃ち抜くよ……この一撃で……パワー27000、クリティカル2でアタック!!」

 

少し……パワー不足かな……お願い…届いて。

 

 

「そこは……」

 

 

舞原クンが自分の手札を確認する。

 

その表情はいたって冷静であった。

 

 

 

 

「ノ……」「危ないっ!!」

 

 

フォカヌポウ……

 

 

 

 

 

 

 

「何…すか……」

 

 

 

 

私達の目の前に茶色で、甘い匂いの液体がぶちまけられた。

 

「オウフww…ご…ごめんですぞ……拙者…その……ww」

 

「黙りなさい……」

 

「う…うう…wwwwwwww」

 

コーラのボトルを持った肥満体の男が私達の隣で謝っている……だが謝るたびに男はコーラをこぼしている。

 

 

「何が……起きたんすか…?」

 

突然…テーブルの側に現れた男が、反対側のテーブルの人の椅子に躓いたのだ。

 

今回の場合……ショップ内で…それもファイトスペースでこの男がボトルのキャップを開けたまま歩き回っていたことが最大の原因だろう。

 

 

「デュフフwwwよく見るとww可愛いお嬢さんですなwwwフォカヌポウwww」

 

「黙りなさい……と言ったのが…聞こえませんか?」

 

肥満体の男が黙ってテーブルを首に巻いていたタオルで拭き取る。

 

彼はそのまま逃げるようにショップを立ち去った。

 

 

「……人が増えると困った人が多くて…困るよね」

 

「…ヒカリさん…怒ると怖いっすね……」

 

 

舞原クンが失礼なことを言う……丁寧に対処しただけだから……

 

しかし、すっかり興が冷めてしまった。

 

舞原クンは舞原クンで…先程までの“絶対倒す”ような雰囲気は消えていた。

 

 

「……というか…あの……僕たちのカードは…?」

 

 

舞原クンはそういってほんのりコーラの匂いが残るテーブルを凝視する。

 

そこにヴァンガードのカードは無かった。

 

 

「あ、ごめんね…」

 

 

私は指で隣のテーブルを指差す。

 

ちょうど座ってる人のいないテーブルに私たちのカードが散らばっていた。

 

 

「あ、あそこまで一瞬で飛ばしたんすか?」

 

「咄嗟だったから……何枚か…落としちゃったし、傷も付いちゃったかも……」

 

テーブルの足元でダームスタチウムが寂しそうに落ちている。

 

 

「いや…知らない男の飲みかけのコーラまみれになるより……かなりマシっすよ……ヒカリさんもそう思っての判断だったんすよね?」

 

「うん……」

 

 

私たちは散らばったカードを集めていく。

 

結局、今回の舞原クンとのファイトもお流れになってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

 

 

「結局……ヒカリさんの能力って何なんすか?」

 

 

それ……こっちが聞きたいセリフ何だけどな……

 

 

私達は帰りの電車の中で話をしていた。

 

 

「自分のドローを操作できる…かもしれない」

 

「不確定っすか……」

 

がっかりされるが…“それ”を一番知りたいのは私自身なんだけどなぁ……

 

「それよりも…舞原クンの“全てを手に入れたい”って何かな?……ハーレムみたいな…?」

 

「ぜんぜん違うっすよ!!」

 

 

その時の舞原クンは寂しそうな顔をしていた。

 

 

「富、名声、力……っすよ…」

 

 

「……海賊王にでもなるのかな…」

 

……かつてこの世の全てを手に入れた男…なんて。

 

 

「ぜんぜん違うっすよ!!ただ……」

 

「?」

 

 

「僕が本当になりたいのは…運すら支配する最強の人間……怖いものを無くしたいんすよ」

 

 

「怖いもの…」

 

 

 

「富が有れば物が手に入る、名声が有れば人が手に入る、運を支配する力があれば…何でもできる」

 

 

すっかり…ヴァンガードの話では無くなっている気がする……

 

 

「…舞原クンはどうしてヴァンガードを初めたの?」

 

すると、舞原クンはしばらく黙った後……こう答えるのだった。

 

 

「そうっすね…このカードゲームなら……一番」

 

 

もうすぐ天台坂駅に到着する。

 

 

「一番僕が欲しいものを…はっきりと示してくれる…そう思ったからっすよ」

 

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

「……よく分かんないよ」

 

「そうっすか」

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

天台坂の駅前で私は舞原クンにさよならを告げる。

 

 

「決着は…ヒカリさんが自分の力を使いこなせるようになってから……お願いするっすよ」

 

「うん……じゃあ…またね」

 

 

私たちは駅前で別れた。

 

舞原ジュリアン…彼の中で私はどういう存在何だろうか……

 

ベルダンディという名前は……割と趣味に合う。

 

でも……ベルダンディの話をされても…実感が無い、まさしく名前の一人歩きだ。

 

 

(……結局…ユズキのチームメイトの人にも挨拶できなかったし………舞原クンは痛い言動するし…)

 

 

きっと誰もが私には言われたく無いだろうけど。

 

 

 

 

 

「待って欲しいっす!ヒカリさん!!」

 

「…舞原クン」

 

 

気がつくと目の前に舞原クンがいた。

 

 

「……どうしたの?」

 

「お…お嬢から電話があって………伝言を…」

 

「……何で伝言…何だろ……ケータイがあるのに」

 

「ヒカリさん…携帯……見て……」

 

「あ…………電池切れてる」

 

 

……天乃原さんに余計な心配をさせてしまったかも。

 

 

「……伝言…伝えるっす『来週、百花公園の夏祭りに行くわよ!!』」

 

 

 

夏祭り……魅惑の響きだ……が、それにしても。

 

 

 

「……舞原クン…天乃原さんの真似…上手だね」

 

「そりゃあ…僕は最強のヴァンガードファイターになる男っすから」

 

 

 

……いや、全く関係ないよね。

 

 

 

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