君はヴァンガード   作:風寺ミドリ

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042 心の奥の違和感

「……何なんや……あんた…」

 

ウェーブのかかった茶髪の少女が、少しずれた眼鏡の位置を修正しながら呟いた。

 

VFGP予選…この大阪から来た神奈川生まれの少女も一人のファイターとして大会に参加していた。

「…まるでデッキの中が見えてるみたいに……」

 

「……」

 

対戦相手は金髪のロリータファッションの少女…

 

「定めの解放者……アグロヴァルでアタック…」

 

「……ノーガードや」

 

蒼翔竜 トランスコア・ドラゴンが6点目のダメージとして置かれる。

 

「うちの……負けや」

 

試合の結果を互いに記録し、金髪の少女は立ち上がり、去ろうとする。

 

「待ち!!」

 

「…………」

 

「うちの名前は天海レイナ……あんたは?」

 

「……」

 

少しの沈黙は、金髪の少女が何かを躊躇っているように感じられた。

 

「“俺は”……“スクルド”だ…」

 

そう告げると、去っていってしまった。

 

「あいつ……」

 

レイナの周りにファイトを終えた仲間達が集まる。

 

 

「男やったんか……」

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

VFGPの予選は驚くような速さで終わった。

 

私たちチームシックザールの持ち点は21点、つまりチーム合計で9戦7勝…天乃原さんはこれだけあれば本線にはいけると言っていたけれど……どうなんだろう?

 

そして私は…どこか違和感を感じながらファイトをしていた。

 

「…ヒカリさん?」

 

「……あ…天乃原さん」

 

「どうかしたかしら?」

 

「うーん……私にもわからないんだよね…気分が乗らないというか……」

 

正確に言うならば、デッキを動かしていて楽しく無いのだ。

 

それに伴い、ファイトへの集中力も芳しくない。

 

「大丈夫?前日眠れなかったとか……」

 

「それはお嬢の方じゃないっすか」

 

舞原クンが呆れたように言う。

 

「……そうなの?」

 

「ち、ちょっとファイトの練習をし過ぎちゃっただけよ?……確かに2時間くらいしか寝てないけど」

 

「……無理して熱とか出さないでくださいよ、これからが本番なんすから」

 

 

舞原クンの言うとおり、本番はこれからだ。

 

今は午前11時55分、私たちは予選の結果が発表されるのを待っている。

 

 

『ではでは…お待ちかねのコーナーです!!』

 

ステージではゲストの葉月ユカリのトークイベントが終了し、ファイトイベントが始まろうとしていた。

 

『私と……ファイトしたい人ーー!!』

 

ウォォォォォォォォォォォ!!!

 

マイクを使った彼女の声よりも大きな歓声が上がる。

 

「あれがスーパーアイドル“葉月ユカリ”っすか」

 

「生で見るの初めてだわ」

 

 

葉月ユカリ……人懐っこい性格と、圧倒的な歌唱力、ダンスパフォーマンス、そして恐ろしいほどの行動力でデビュー直後から爆発的な人気のあるスーパーアイドルだ。

 

ファーストシングル“愛は隣に”は700万枚という驚異的な売上を見せ、音楽配信チャートでも6週連続1位という結果を残した。

 

何でも楽しめば、何でもできる…という彼女の代名詞通り、彼女は音楽番組、バラエティー、ドラマ、アニメと各方面で活躍中である。

 

そんなスーパーアイドル葉月ユカリはヴァンガードの腕も一流であった。

 

 

「煉獄竜 メナスレーザー・ドラゴンにライド!」

 

「ここで葉月さんはグレード2のメナスレーザーにライド!!既に会場の皆さんは気づいているかも知れませんが!ダメージゾーンに“煉獄竜 ドラゴニック・ネオフレイム”がいます!!」

 

ステージの上では既に挑戦者と葉月ユカリのファイトが始まっていた。

 

「……かげろう使いなのね、貸しデッキかしら」

 

「いや……シャッフルの時の手つきは完全に“その道”の人の物だったっすよ…」

 

天乃原さん達が興味深そうにファイトを見る。

 

「では、レッドパルス・ドラコキッドのスキルを使いますね」

 

「あ!このレッドパルス君、PRバージョンですね!触るとヤケドするぜってテキストにありますが後に再録されたカードだと、もふもふするなよーってセリフに変更されたんですよー!!」

 

「へぇーそうなんですね!!もふもふ…可愛いですね!……では、“煉獄皇竜 ドラゴニック・オーバーロード・ザ・グレート”を手札に加えて……カラミティタワー・ワイバーンをコール!!スキルを使います!」

 

 

彼女のファイトに会場全体が盛り上がる。

 

……“いつも”あの人は私にとって太陽のような存在になってくれる…すごい人だよ。

 

「ね、青葉クン」

 

「ん?」

 

 

「…………あ」

その時、私の視界に知り合いの姿が入った。

 

「……ユズキだ」

 

私たちの座っているところから、少し離れたところにユズキとその仲間が立っていた……のだが、様子がおかしい。

 

 

「くっ、離しなさい!ユズキ!!今すぐあのステージに立って、皆の注目を浴びるのよ!!」

 

「馬鹿!その後警備員に追い出されるだろ!!」

 

「そうだぞ!!最悪私たちも大会出場停止に…」

 

「止まって、イヨちゃん!!」

 

……何か、掴み合いをしている。

 

 

「はっ、ユズキあれね!こうして私を止めるふりをして私の魅力的な体をまさぐろうと!!」

 

「するか、馬鹿!!(余計なことを言うな!!)」

 

……何だろう。

 

 

 

「……あの」

 

「誰だ!!…ってヒカリか」

 

「…………荒れてるね」

 

そこにいたのはユズキとその友達のナツミさん、ミカンさん……そして…?

 

見慣れない綺麗な女性だった。

 

でも…その衣服は特徴的で、例えるなら胸元が透けていない“PR♥ISM-S スコーティア”のような……

 

茶髪で頭にはピンク色の大きなリボン。

 

私が言うのもアレだけど…よくその格好で会場まで来れたなぁ……

 

「この人は……」

 

「ああ…こいつは」

「最高に可愛い私の名前は!!」

 

ユズキの言葉に女性が割り込む。

 

「ワールドワイドに活躍する(予定の)世界的美少女!!誰もが恋する究極無敵のアイドル(候補生になる予定)!!城戸イヨ(芸名検討中)ちゃんよ!!」

 

 

「……(中身が残念な人だ……)」

 

せっかく……綺麗な人なのになぁ。

 

 

「今なら!!握手してあげる!!!」

 

「……どうも」

 

この感じ……いつだったかの変態男に通じる所が…いや、それはこの人に失礼か。

 

「…………」

 

「と、言う訳でこいつがうちの4人目なんだ…」

 

「えっと……チーム名“誘惑の果実(ラヴァーズ・メモリー)”を考えたって言う……あの?」

 

「“あの”…だ」

 

ということはこの人もヴァンガードファイターなのか…

 

私は少し離れた場所からステージに向かおうとする城戸さんを見つめる。

 

「ナツミカン!!私の邪魔しないで!!」

 

「「誰が夏ミカンだ!!」」

 

 

……賑やかだなぁ。

 

「えっと…じゃあ本戦で」

 

「あ、ああ……」

 

私はすみやかにその場を離れる。

 

まぁ…例え彼女がステージに乱入しても、“葉月ユカリ”なら問題なくイベントを進行できるだろうけど……ね。

 

「ヒカリー」「ヒカリさんー」

 

遠くで皆が呼んでいる……本戦出場者と、トーナメント表がもうすぐ発表されるみたいだね。

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

「082…082……あ、あったわ!!」

特設ステージの巨大モニターに公開されたトーナメント表の中にNo.082,チーム“シックザール”の名前はちゃんと刻まれていた。

 

本当にぴったり64チームなのか、疑問に思い数えてみると、実際にトーナメント表に名前が書かれていたチーム数は70を越えていた。

 

「同率得点で、64のチームから外れたチームはトーナメントに出場できる代わりに、より多く勝ち抜かなければならないようになってるっすよ」

「へぇ……」

 

どうやら私たちはそっちじゃないようだ。

 

「とにかくこれで……本戦出場だな」

 

「ええ、これからが本番よ」

私はトーナメント表に“誘惑の果実(ラヴァーズ・メモリー)”の文字を見つけた。

 

……もし戦えるとしたら、4戦目か……

 

「そういえば……神沢クンのチーム名…知らない」

 

「……そうっすね」

「そうだな」

 

「そうね」

 

でも……勝ち抜いていけば、どこかで会えるだろう。

 

私たちも、彼らも、優勝を目指しているのだから。

 

「いよいよ本戦よ……まさしくここからが本番っていうことね」

 

「ああ」

「狙うは優勝……そしてMFSの試遊権よ」

 

「もちろんっす」

 

「悔いの無いファイトを……しましょう」

 

「……うん」

 

悔い……か……

 

「チームシックザール……ファイトっ!!」

 

「「「おうっ!!!」」」

 

 

* * * * *

 

 

「では、午後のスタンドアップをお願いします!!」

 

「はい!じゃあ…今回はTHE無しのを……皆さん行きましょう!!せーの」

 

 

『『スタンドアップ!!ヴァンガード!!!』』

 

 

 

「……スタンドアップ・ザ・ヴァンガード」

 

「………スタンドアップ」

 

 

午後の部…本戦、第一試合の相手はチーム“隣の健ちゃん”……って誰?

 

私のFVはずっと変わらず“クリーピングダーク・ゴート(4000)”

 

私の対戦相手…細身の男性のFVは“進化転生 ミライオー(4000)”…この人、ノヴァグラップラー使いか。

 

ミライオーのスキルは私のゴートと同じ…CB1とソウル・インで山札の上5枚からグレード3のユニットを探して手札に加えるというものだ。

 

先行はノヴァグラップラーの人から……

 

「ドロー、カービングライザー(6000)にライド、ターンエンド」

 

FVのミライオーがVの後ろに置かれる。

 

“ライザー”……となると気を付けるべきは“アルティメットライザー”と“ネコ執事”……

 

「私のターン…ドロー…無常の撃退者 マスカレード(7000)にライド、先駆でゴートを後ろにコール、そして同じくマスカレードをVの隣に…コール」

 

攻めて……行くよ。

 

「リアガードのマスカレードでアタック(10000)」

 

相手は手でノーガードを表現する。

 

相手のダメージゾーンにフェニックスライザー・DWが置かれる。

 

「…ゴートのブースト、ヴァンガードのマスカレードでアタック……(11000)」

 

相手のリアクションは先程と変わらず…ノーガードのようだ。

 

 

「ドライブチェック……闘気の撃退者 マックアート……トリガー無しでダメージは1点です…」

 

 

相手の二点目のダメージはメテオライザー…クリティカルトリガーであった。

 

「……ターンエンド」「……スタンド、ドロー…」

 

これで…ダメージは0対2……か。

 

「アルティメットライザー・DF(デュアルフレア)(9000)にライド、フェニックスライザー・FW(フレイムウイング)(9000)をコール……」

 

男はミライオー、アルティメットライザー・DFをレストすると順番に指を差していく。

 

「…13、V」

 

パワー13000でVのマスカレードに…ということだ。

 

「……撃退者 エアレイド・ドラゴンでガード…トリガー1枚貫通です」

 

ドライブチェックが行われる…出てきたのは“ネコ執事”…双闘軸のライザーにおける凶悪なカードだ。

 

が、トリガーでは無いため、余計なダメージを防ぐことが出来……いや

 

…………間違えた、何で私、今1枚貫通で守った…?

 

「…Vにライザーがいるので3000パンプで12、Vに」

 

「………ノーガード」

 

私のダメージに、新しく入れてみた“怨獄の撃退者 クエーサル”…クインテットウォールのカードが置かれてしまった。

 

これでダメージは1対2…

 

 

「エンド…」「私のターン…スタンドandドロー」

 

もう少し攻めて……見るか。

 

「虚空の撃退者 マスカレードにライド(9000)…そして詭計の撃退者 マナ(8000)をコール、マナのスキルで…………無常の撃退者 マスカレード(7000)をスペリオルコールするよ…」

 

マナでスペリオルコールしたユニットはターン終了時にデッキの下へと戻ってしまう……けど、コストがかからない点で使いやすい…うん。

 

「G1のマスカレードでリアガートにアタック…5000要求です」

 

5000要求…つまりシールド値5000のユニットならば守れますよ…ということだ。

 

「ノーガード」

 

男はライザーを退却させる。

 

「ゴートのブースト…虚空の撃退者 マスカレードでヴァンガードにアタック…パワー13000…」

 

「……ライザークルーでガード(1枚貫通)」

 

…向こうも1枚貫通か……

 

「…ドライブチェック……闘気の撃退者 マックアート……トリガー無し、マスカレードのブーストしたマナでアタック……パワー15000」

 

「…………ノーガード」

 

彼のダメージゾーンにもう1枚のネコ執事が姿を見せた。

 

ネコ執事は現在、他の制限カードと合わせてデッキに2枚までしか投入できないとルールに定められている。

 

まぁ…ノヴァグラップラーには他の制限カードは無いのだけれど……ね。

「ターンエンド…」

 

私はマナがスペリオルコールしたマスカレードをデッキの下へと置いて、ターンエンドを宣言した。

 

 

 

……私は、やっぱり楽しめてない…どこかに違和感があるんだ……でも…何だろう。

 

 

 

「……スタンド、ドロー、ライド」

 

相手は恐らくこのデッキの主戦力であろう“アルティメットライザー・MF(メガフレア)(11000)”にライドしてきた。

 

「…フェニックスライザー・FWをコール」

 

先程退却させたフェニックスライザーだったが、再びコールされた……まさしく不死鳥…なんてね。

 

「アルティメットライザーでアタック…」

ミライオーのブースト込みでパワー15000…か。

 

アルティメットライザー・MFは中央列に他のライザーが存在する場合、双闘していなくても発動するスキルを持っているんだけど…FVがライザーじゃない弊害がここで出ている……かな。

 

「……ノーガード」

 

「ドライブチェック…レッド・ライトニング……クリティカルトリガー」

 

男はそう言うと、“クリティカル”“パワー”と順番にガードを指差して言った。

 

どうやらクリティカルはVに、パワーはフェニックスライザーに与えるらしい。

 

「セカンドチェック………もう一度…レッド・ライトニングだ」

 

「……ダブルクリティカル…」

 

男はもう一度同じ動作をする……クリティカルはVに、パワーは~ということだろう。

 

「……ダメージ……」

 

いくら許容範囲とはいえ1度に3点はきつい。

 

firstが“覇気の撃退者 コーマック”

 

secondもコーマック……そして

 

「third…暗黒医術の撃退者……ヒールトリガー発動します、パワーをVに与え、ダメージゾーンのクエーサルをドロップゾーンに」

 

運良くヒールトリガーが発動した、ダメージ3点ならまだ……

 

「……パワー30000…ヴァンガード」

 

カービングライザーのスキルで同じ列の他のライザーにパワー+2000を“永続”で与えられたフェニックスライザー……トリガーも乗り、自身の+3000も合わさり強力なパワーとなっていた。

 

現在パワー14000のマスカレードに対して20000要求という訳だ。

 

「……ここは……怨獄の撃退者 クエーサルを使います」

 

今のライザー相手に4点目は…いやもう既にライザーの攻撃によって即死になる圏内に入っている。

 

次のダメージは…受けたくない。

 

 

「CB1……クインテットウォール!!」

 

山札の上から5枚のカードを“ガーディアン”として呼び出す。

 

厳格なる撃退者…10000(シールド値…以下略)

 

ブラスター・ダーク・撃退者“Abyss”…5000

闘気の撃退者 マックアート…5000

 

暗黒医術の撃退者…10000

 

詭計の撃退者 マナ…5000

 

 

…………合計シールド35000、ガード成功。

 

「……ターンエンド」

 

 

同時にドロップゾーンを増やせるクインテットウォールは確かに双闘と相性はいい。

 

いいんだけど……ね。

 

とにかくこれでダメージは3対3……かあんまり余裕は無い…かな。

 

 

「私のターン…スタンドandドロー…邪悪を引き裂く闘気の騎士…ライド!覇気の撃退者 コーマック(11000)!!」

 

…………違う、これじゃない…なぁ。

 

「G1のマスカレードを後列に下げて、その前に闘気の撃退者 マックアート(9000)をコール!そしてゴートのスキル!CB1とソウルに自身を入れて、グレード3をサーチ……成功!ファントムAbyssを手札に!!」

 

「………っ」

 

準備はできた……行こうかコーマックさん。

 

「悲しみばかりのどうしようもない世界で、巡りあった友と友……シークメイト!双闘!!」

 

私は山札に(クリティカル)トリガーのエアレイド・ドラゴンを2枚…(ヒール)トリガーの暗黒医術の撃退者、そしてクインテットウォールの怨獄の撃退者 クエーサルを戻した。

 

「リアガードのマックアートのスキル発動!!山札から撃退者のグレード1以下のカード……マスカレードをレスト状態でコーマックの後ろにスペリオルコール」

 

バトルフェイズ……行くよ。

 

「コーマック、マックアートのアタック…レギオンスキル発動……リアガードのマナを退却してクリティカル+1…さらにコーマックのスキルでパワー+3000……パワー23000、(クリティカル)2でヴァンガードにアタックします…」

 

「……レッド・ライトニング2枚で…2枚貫通」

 

「なら…ツインドライブ……first……厳格なる撃退者、(クリティカル)トリガー…効果は全てマックアートに…second……暗黒医術の撃退者……ダメージを回復してパワーは同じくマックアートに!……マスカレードのブースト、マックアートでアタック!パワー26000、クリティカル2!」

 

当たれば…致命的な一撃だ。

 

「………クインテットウォール」

 

男はシールドライザーを使う。

 

シールドライザー…0

 

シールドライザー…0

 

アルティメットライザー・MF…0

 

ライザーガール ケイト…10000

 

ライザークルー……5000

合計シールド…15000…私の攻撃を防ぐには…後5000必要だ。

 

「……インターセプト」

 

「ターンエンドです…」

リアガードのフェニックスライザーが退却される。

相手の手札も残り少ない……が、油断は全くできない…少なくともあの“ネコ執事”が手札にあることがわかっている以上……ね。

 

「……スタンド、ドロー……ミライオーのスキル発動」

 

ミライオーのスキルは…グレード3の不確定なサーチだけど……

 

「……フェニックスライザー・DW(ドリルウイング)(11000)を手札に加え、コール」

 

カービングライザーのいない側へコールされるドリルウイング。

 

「…(クリティカル)トリガーを2枚、ヒールとドローを1枚ずつ戻し、双闘」

アルティメットライザー…MF(メガフレア)DF(デュアルフレア)が今、並び立つ。

 

「カービングライザーの前にアルティメットライザー・DF(9000)をコール、ヴァンガードの後ろにネコ執事(5000)をコール」

 

相手の手札は尽きたが、厄介な陣形が出来上がってしまった。

 

ヴァンガードの“アルティメットライザー”はアタック時にユニットが4体レストしていればクリティカルが増え、ヒット時にはリアガードを1枚スタンドさせることができる……その上ヒットしなかった…ガードした場合はネコ執事を退却させるだけで“スタンド”することができる。

 

リアガードのDFもヴァンガードが双闘したターン中はヴァンガードのアタック時に一度だけスタンドすることができる…パワー+5000のオマケ付きで……だ。

 

……頑張って耐えるしか…無いよね。

 

「DWでマックアートにアタック(11000)」

「……ノーガード」

 

「DFでヴァンガードにアタック(11000)」

 

「……マックアートでガード」

 

正直、アルティメットライザーの2回目の攻撃は守れない……訳では…無いけど、今、アルティメットライザーをスタンドさせてしまうのは得策ではない。

 

「…ネコ執事のブーストしたアルティメットライザーでアタックする、レギオンスキル発動、レストしたユニットは5体…よってクリティカル+1……リアガードのDFのスキル……パワー+5000してスタンド」

そもそもリアガードのアルティメットライザー・DFはカービングライザーのスキルでパワー+2000を得ている……今のスキル発動でDFは単体16000……か。

 

「パワー25000(クリティカル)2でアタック」

 

……今の私の手札は完全ガード1枚、トリガー2枚、ファントムAbyss1枚……いやぁ…守る、守らない、完全ガード、トリガー……どの選択肢をとってもどこかで“賭け”に出なければならない…か。

 

……だったら、やっぱり。

 

「……ノーガードで」

 

私は…こうするよ……まだダメージは2点だからね。

 

……そう決めたはものの、心に不安は残る。

 

相手は双闘でクリティカルトリガーを戻しているからね……

 

隣の二人が勝ってくれることに期待し……ちゃ駄目かな。

 

信頼していないとかじゃない……ただ、勝利って自分の力で手にしないと…意味、無いもんね。

 

 

ああ……モルドレッドのカードが…見たい。

 

モルドレッドは私がヴァンガードを再開しようとした切っ掛けの1つ…今の私のヴァンガードの象徴だった。

今の私のデッキにはモルドレッドもドラグルーラーも入っていない。

 

……私は。

 

「ツインドライブ…」

 

このファイトの勝敗を決めるドライブチェックが始まった。

 

「……アルティメットライザー・MF」

 

……大丈夫。

 

男の手がデッキトップへと伸ばされる。

 

これなら……

 

「…………キャノンライザー」

 

キャノンライザーは……グレード1の……無常の撃退者 マスカレードの互換……つまり……

 

「トリガー無し……」

 

…行けるよ。

 

「ダメージチェック……覇気の撃退者 コーマック」

 

ダメージゾーンに3枚目のコーマックが置かれる……あなたはそんなにそこが好きですか?

 

「second……督戦の撃退者 ドリン…トリガー無し…」

 

「……アルティメットライザーのヒット時スキル…フェニックスライザー・DWをスタンド!…DWでヴァンガードにアタック!(11000)」

 

「厳格なる撃退者でガード」

 

「…っならカービングライザーのブーストで、アルティメットライザー・DF(デュアルフレア)のアタック!22000!!」

 

「ノーガード…ダメージは暗黒の撃退者 マクリール」

 

これで……このターンは……

 

「エンドだ……」

 

今、私の手札にはファントム・ブラスター“Abyss”に完全ガード、ヒールトリガーが1枚ずつ……

 

相手の手札は……カービングライザーとアルティメットライザー・MF……か。

 

ダメージは私が5点……相手は3点……

 

相手のシールドは…カービングライザーとインターセプトのアルティメットライザー・DFで合わせて10000…

「私のターン……ドロー………」

 

……これなら…行ける。

 

「(見えたよ……ファイナルターン)」

 

この2枚で…暗闇に覆われた道を切り開く!!

 

「絶望のイメージにその身を焼かれ尚、世界を愛する奈落の竜!!…今ここに!!ライド・THE・ヴァンガード!!」

 

これが……

 

「撃退者 ファントム・ブラスター“Abyss”!!!」

 

撃退者 ファントム・ブラスター“Abyss”(11000)がヴァンガードとして私の戦場に舞い降りる…いや、彼だけじゃない。

 

「常闇の深淵で見た光…来たれ、シークメイトand双闘!!ブラスター・ダーク・撃退者“Abyss”!!」

 

私はドロップから(クリティカル)トリガー2枚とダークAbyss、マクリールを山札に戻し、双闘した。

 

そしてもう一枚……

 

「ブラスター・ダーク・撃退者(9000)をコール、スキル発動!CB2!散れ!アルティメットライザー・DF!」

 

アルティメットライザー・DFを退却させる。

 

これで相手が出せるガード値は…5000!

 

「マスカレードのブースト、ブラスター・ダーク・撃退者でヴァンガードにアタック!(16000)」

 

「……ノーガード」

 

男のダメージにフェニックスライザー・DWが置かれる…これで、4点。

 

「マスカレードのブースト…Abyssでヴァンガードにアタック!パワー29000!」

 

「…ノーガード」

 

「ツインドライブ…first…督戦の撃退者 ドリン、second…………厳格なる撃退者!クリティカルトリガー!!効果は……全てヴァンガード!!」

 

クリティカルの乗った一撃が飛ぶ。

 

「……ダメージチェック…一枚目…メテオライザー、(クリティカル)だ…効果はヴァンガードに与える……そして二枚目は…」

 

5点目のダメージは入った……次…は……

 

「……ライザーガール ケイト……ヒールトリガー発動!!ダメージを回復し、パワーはヴァンガードに!」

 

ファントム・ブラスターの一撃をヒールで凌ぎ、パワーも21000まで上昇……した所でもうこの攻撃は止められない。

 

「ファントム・ブラスター“Abyss”のレギオンスキル発動!……CB2、ダークとマスカレード…合わせて3体のユニットを退却する」

これが……Abyssの力。

 

「Abyssは再び立ち上がる!!パワー27000(クリティカル)2……ヴァンガードにアタック!!」

 

「…ノーガード」

 

私のツインドライブはどちらもファントム・ブラスター“Abyss”……

 

相手は最初のダメージで再びヒールトリガーを引くも、三枚連続ヒールとなることは無く、止めのシールドライザーが叩きつけられた。

 

「ありがとうございました…」「…ありがとうございました」

勝利……だ。

 

隣を見ると舞原クンが勝利のピースをしていた。

 

天乃原さんのファイトはまだ続いている。

 

現時点で…2勝……つまりチームシックザールの勝利が確定した。

 

これで…2回戦に……進めるんだ……

 

私はほっと一息ついた。

 

 

ああ……。

 

私はファイト中に考えていたことを思い出す。

 

 

 

私、モルドレッド分が不足…というより…えっと。

 

 

難しい話じゃない……な。

 

単純に…モルドレッドを使いたい。

 

 

 

自分の中で一つの答えが出た。

 

 

 

 

 


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