ファイター達は戦う、例えその勝利に意味が無くなっていても……
「リアガードの死海の呪術使 ネグロボルトでヴァンガードにアタック!!(11000)」
「
「キング・シーホースのブースト!死海の呪術使 ネグロボルト!不死竜 グールドラゴンでアタック!!レギオンスキル発動!!」
チームシックザール対チーム隣の健ちゃん、中堅戦。
既に先鋒、大将戦でシックザールが勝利、2回戦へ進出できるチームは決定されていた。
それでも彼ら彼女らは最後まで全力で戦い続けるのだった。
「リアガードのネグロボルトを退却!ドロップゾーンからデスシーカー タナトス(10000)をスペリオルコール!」
グランブルー…ドロップゾーンからのスペリオルコールを特色とするクランだ。
このデスシーカー タナトスもアタックヒット時ではあるが、ドロップゾーンからユニットをスペリオルコールすることができる。
最も……“ダメージが5点の時”には役に立たない。
「パワー29000!ヴァンガードにアタック!」
「もうダメージに余裕ないのよね、完全ガード!」
天乃原チアキは完全ガードの“閃光の宝石騎士 イゾルデ”をガーディアンサークルにコールし、ドロップゾーンにコストとして“導きの宝石騎士 サロメ”を置く。
「…ツインドライブ…暗礁のバンシー!トリガー無し!…荒波のバンシー!ゲット!クリティカルトリガー!!効果は全てリアガードのデスシーカー タナトスに!!……サムライスピリットのブースト!クリティカルをのせたデスシーカー タナトスでアタック!!(22000)」
「
ヒール、ドローの2枚のトリガーでガードする。
「……ならサムライスピリットのブースト!腐食竜 コラプトドラゴンでアタック!!(16000)」
「ポリーでガード」
「…ターンエンドだ」
チアキにターンが回る。
(ジュリアンもヒカリさんももう終わってるみたいね…私も…そろそろ決めないと)
「私のターン……スタンド…ドロー」
(互いにダメージは5…クリティカルの乗った攻撃より、連続攻撃の方が……いけるわね)
「……行くわよ、立ち上がれ!私の分身!!
メインフェイズを飛ばし、そのままバトルフェイズに入る。
「さばるみーのブースト…トレーシーでネグロボルトにアタック!(19000)」「荒波のバンシーでガード!」
「なら…もう一枚のトレーシーでネグロボルトにアタック!(12000)」「腐食竜 コラプトドラゴンでインターセプト!!」
今、攻撃したトレーシーの後ろにはスタンド状態のシェリーが控えている。
「へロイーズのブースト!ジュリアでヴァンガードにアタック!!」「……」
ジュリアの元々のパワーは10000…アタック時のスキルのパワー+3000、さらにFVでパワー5000のへロイーズも自身のスキルによってパワー+3000を得ている。
合計パワーは21000…15000シールドでトリガー1枚貫通といった所だろうか。
「…暗礁のバンシー……クインテットウォールだ!」
CB1というコストによって、クインテットウォールが発動、山札の上から5枚のカードがシールドとして呼び出される。
「……来い!」
ドクター・ルージュ…10000(シールド値…以下略)
デスシーカー タナトス…0
ドクター・ルージュ…10000
荒波のバンシー…10000
腐食竜 コラプトドラゴン…5000
シールド値の合計は35000……
「……これで完全ガードだ」
クインテットウォールで登場したドクター・ルージュは“ヒールトリガー”…彼のヒールトリガーは既にダメージゾーン、ドロップゾーンに1枚ずつ置かれていたため、これで山札のヒールトリガーを使いきったことになる。
「……ツインドライブ……宝石騎士 ノーブル・スティンガー……クリティカルね」
ここでヴァンガードにトリガーを乗せても…アタックが通ることは無い……が。
「パワーはリアガードのシェリーに……クリティカルは“ジュリア”に与えるわ……セカンドチェック…宝石騎士 ノーブル・スティンガー……これも同じく…ね」
「そして!ジュリアの……リミットブレイク!!」
チアキはコストとしてCB2を支払う。
「ジュリアのクリティカルの数だけ宝石騎士を…スペリオルコール!!!」
運任せだが確実に1枚はスペリオルコールできるこのスキルをチアキは好んでいた。
「
チアキの盤面にはスタンド状態のユニットが4体。
「これが…ブレイブ・イルミネーションよ」
「ブレイブ……イルミネーション……」
チアキはトリガーのパワーを乗せていない…コールしたばかりのシェリーに手を伸ばす。
その前にはティルダが置かれていた。
「シェリーのブースト!ティルダでアタック!!(16000)」
「ストームライド・ゴーストシップ!不死竜 グールドラゴンでガード!」
「トリガーを乗せたシェリーのブースト…サロメでアタック!!(28000)」
「…………」
彼のダメージゾーンに暗礁のバンシーが置かれる。
それは…6点目のダメージであった。
「…ありがとうございました」「ありがとうございました」
チームシックザール……初戦、全勝。
* * * * *
「いやぁ…快調っすね」
「…そうでもないよ」「そうでもないわね」
ファイトを終えた私たちは次のファイトまで待機することになる。
この間に補欠のメンバーと入れ換わることもできるのだ。
「そろそろヒカリさん、休憩したら?4戦連続でファイトしてるでしょ?」
「………うん、そうするよ」
私は自分のデッキを見つめる。
デッキを改良するなら、このタイミングしかない。
でも……今のデッキでも動いてはくれるんだよね。
むしろ弄ったら…悪くなるってことも……
私が悩んでいる時、天乃原さんはデッキからある5枚のカードを抜いていた。
「な、何してるんすかお嬢!?」
抜かれていたのは、“探索者 シングセイバー・ドラゴン”と“ブラスター・ブレード・探索者”…現ヴァンガードにおけるトップクラスの性能をもったカード達であった。
「何も蟹も無いのよ……どうしようもないんだから」
「……一体何があったんすか…?」
「……誰だって嫌になるわよ…この白ドラゴンが3枚並んでダメージに落ちるのよ!しかも3戦連続で!!」
「……御愁傷様っす…だから毎試合1枚しか入れてないジュリアにライドしてたんすね」
…探索者 シングセイバー・ドラゴンは山札から自身を呼び出し、ライド、そしてレギオンするユニット。
少し工夫してやるだけでVによる3連続攻撃も可能になる、今のロイヤルパラディンのエースカードだ。
そんなエースカードもスペリオルライドの対象が山札に居なければその力を引き出すことは出来ない。
「……けど、ちょっと早計じゃ」
「いいのよ、私は元々こっちの方が使いやすいし」
天乃原さんがシングセイバー、ブラスター・ブレードの代わりに数枚の宝石騎士が投入されたデッキを手に取る。
「ヒカリさんも、デッキの構築を変更するなら今のうちよ?」
「う……うん」
私は天乃原さんの言葉を背に、近くのパイプ椅子で待機していた青葉クンを呼びにいった。
「お、ヒカリ…交代か?」
「うん」
「大将の代理か…緊張するな……行ってくる!」
走り去る青葉クンを見送ると、私はパイプ椅子に座り、持ってきていた他のシャドウパラディンのカードを広げた。
…幽幻の撃退者 モルドレッド・ファントム。
私にとって思い入れの深いカードに……なった。
だからこそ、適当に使って負けてしまうのは嫌だ。
私の中で、ある言葉が甦る。
ーー……好きなユニットが時代遅れになったらどうしますか?
ーー…どうにかして使います。
それは以前、美空カグヤさんとしたやり取りだ。
「どうしたものかなー……」
「悩みごとか?ヒカリ」
突然、私に話しかけてくる人がいた。
「その声…やっぱりユズキ…」
「どうやら青葉君と交代したんだな…うちも4人目が大将の座を譲れ譲れとうるさくてね、交代してきた」
「4人目……ああ」
城戸イヨさん…だっけ、個性的な人だった。
「ところで…デッキ構築で悩んでいるのか?」
「まぁ……ね」
「そうか…3回戦以降はデッキの構築を弄るのは禁止だったな」
そう…なぜそのタイミングなんだろう……
「確かデッキレシピの提出があるんだよ」
「……へぇ」
……初耳…だ。
「……で、そのモルドレッド・ファントムを入れるか迷っていると」
「うん…私としても思い入れのあるカードだから、ちゃんと使いたいんだけど…構築を急に変えるのは…」
「ふむ……まぁモルドレッドの性能なら大丈夫じゃないか…?…………それよりも“思い入れのある”って言うのは良いな、私はあまりそういうカードは無いから」
「そうなんだ」
前戦った時もショップで会った時もロイヤルパラディンを使っていたり、ロイヤルパラディンの話をしていたから、てっきりロイヤルパラディンが好きなのかと思っていた。
「ロイヤルパラディンは強いからよく使っているだけだしな、私が好きなのはユニットとかじゃなくてこのカードゲームだから」
「え……このカードゲームに惚れる要素が…?」
「ヒカリ……それはちょっと酷い言葉だぞ」
「あ…ごめん」
ユズキはファイトテーブルの方を見つめる。
そこではユズキの仲間達がファイトの真っ最中であった。
「ま、比較的ルールが簡単だったおかげで私の友達も皆覚えて始めてくれたからな…私、昔から皆と趣味が合わなくてな」
初めて皆で楽しめたゲームだから気に入っているのかもな……と、ユズキは続けて言った。
カードゲームとの向き合い方は人それぞれ…か。
「私も……」
「ん?」
「私もこのカードゲームを全力で楽しまないと…もったいないよね…」
「ははっ……そうだな」
楽しむことは力に変わる…きっと楽しみ、ユニットを近くに感じることで新たな道が開く。
そして、勝ちたいという気持ちは強くなる。
「モチベーション…上げていくよ」
私はデッキから数枚のカードを抜く。
そしてモルドレッド・ファントムを手に取る。
「……モルドレッド・ファントム」
「あれ…そいつ、どういう立場のユニットだったっけか」
「……影の内乱でマジェスティ・ロード・ブラスターに倒されたファントム・ブラスター・ドラゴンの体は朽ち果てたけれどもその魂までは消えることは無かった、元々守護竜であった彼はその聖なる魂を闇に犯されていた間も内に秘めて……」
「ああ、うんヒカリ、もういい」
「…………」
私は気合いを入れるために、ゴスロリまで着て来てしまったというのに、デッキの方に思いが籠って無かった。
このままじゃ昔の自分にも、モルドレッドやダークにも合わせる顔が無い。
「…………よし」
「……いい顔になったじゃないか」
ユズキが私を見つめてそう言う。
「…うん、ここからは…心身デッキ共に全力だよ」
「じゃあ…4回戦で会えることを祈っているよ」
「…負けないで」「そっちこそ」
こうして私たちは別れた、今日、ファイトテーブルの前で会うことを誓って。
* * * * *
2回戦は無事に通過できたようだ。
「…シングは抜くべきじゃ無かったかしら」
中堅戦は落としてしまったが、舞原クン、青葉クンの2人が無事に勝利。
私たちチームシックザールは3回戦へと進出になった。
デッキレシピの提出を終え、ファイトテーブルに戻る。
「じゃあ次は私と交代ね」「ああ」
3回戦のメンバーは大将…私、中堅…青葉クン、先鋒…舞原クンとなった。
「さーて…次はどんな相手なんすかね」
「…チーム名は……夜天の剣…」
しばらくして、対戦相手らしき人たちがやって来た。
「…ゴフゥゥッ…………」
……そして吐血した。
「おいしっかりしろよミツル」
「か……」
「ミツルどうした」
「可愛い……」
「……?」
吐血した人と目が合う…何だこの人。
吐血した人のチームメイトが吐血した人を引っ張る。
「お前どうしたんだよ!」
吐血した人は胸の辺りを押さえていた。
「あ、あまりに可愛い人で…じ、持病が」
「「お前持病ねーだろ!!」」
……どうしてこう変な人が集まるのか。
「夜天の剣の人たちっすよね?」
「あ、ああ…すいませんうちのリーダーが」
「えっと……あの……大丈夫ですか」
吐血した人が周りの仲間の人を振り払い、こちらに近づく、近……近づきすぎ……近いっ!!
「問題ありません」
「あ……はい」
吐血した人の仲間の人たちはこれを見て、ほっと胸を撫で下ろす。
「「よかった、普通だ」」
……これでか。
「よろしくお願いします、僕は霧谷」
「ヒカリさん、やっぱり交代しよっか」
「え…じゃあ」
「大将…青葉、中堅…私、先鋒…ジュリアンね」
「僕の名前は霧…」
私は待機用のパイプ椅子へと歩き出す。
「俺の名前は青葉ユウト……よろしくな」
「僕は霧谷ミツルだから!!」
……だからって……何?
私はパイプ椅子に腰を下ろす。
霧谷ミツルクン……か、覚えちゃったよ…全く……
悪い人じゃなさそう……だけど……
私は昔、春風さんに言われた“人は見かけによらない”という言葉を思い出すのであった。
「学校のアレはアレでヒカリを守れていたのか?」
「アレって…ああアレね……アレも結構危険よ」
「……そうだな」
VFGP……3回戦が始まる。
* * * * *
「あの人が見ていると思うと……集中力が…」
「なら俺が勝たせてもらう!!煉獄竜 ペタルフレア・ドラコキッドのブースト!煉獄竜騎士 タラーエフで夜空の舞姫にアタック!!(14000)」
「生憎、僕はそれほど弱くない!ノーガード!」
青葉ユウトは山札に手を伸ばす。
「ドライブチェック!……煉獄竜 バスターレイン・ドラゴン!!クリティカルトリガーだ!」
クリティカルがタラーエフに、パワーがリアガードのワールウインド・ドラゴンへと与えられる。
「ダメージは2点かな」
ミツルのダメージゾーンにイリナ、リディアと続けて落ちていくがトリガーは無い。
「まだだ!ワールウインド・ドラゴンでアタック!(17000)」
「ノーガード…だ」
ダメージゾーンにドロートリガーが落ち、ミツルは1枚山札からカードを引く。
「これで4点……か」
「前のターンの借りはこれで返したぞ」
この前のターン…ユウトはミツルに今と同じようにクリティカルを絡めた2発の攻撃…3点のダメージを受けていた。
「さて…どうだろうな、僕のターン…スタンドandドロー!!」
ミツルが1枚のカードを手に取る。
「ここからが…明けない夜の始まりだ!クロスライド!!
「クロスライド……だと?」
確かにソウルにはクロス元である“ルキエ”が存在している。
「ペイルムーンにとって…ソウルの操作はお手のもの……と、言いたいがこれは運が良かっただけだ」
前のターン…
現在、ソウルの中には
夜空の舞姫、
そして
「銀の茨 アップライト・ライオン(9000)、
2体のユニットはそれぞれルキエЯのいない列へとコールされる。
「ゼルマのスキル発動!リアガードのゼルマをソウルに入れ、
ゼルマの前にいたもう1枚のゼルマがソウルへと消え、アップライト・ライオンの後ろにソウルからアナが呼び出される。
ユニットが目まぐるしくソウルを出入りする様はまさにサーカス……ペイルムーンはソウルからのスペリオルコールを得意とするクランであった。
「な、何だ…?」
「そしてアップライト・ライオンはソウルからユニットがスペリオルコールされる度にパワー+3000される」
ミツルはつい先程までゼルマがいたリアガードサークルに
「ルキエЯのスキル……ゼルマを呪縛!!」
ミツルの盤面に呪縛されたカードが置かれる。
「CB1!ソウルからパワー+5000したアナをスペリオルコール!!」
さらにアップライト・ライオンにパワーが加算されていく。
「さぁ…バトルフェイズだ!」
ユウトは自身のダメージゾーンを見つめる。
ダメージは3点…手札もある。
「マリチカでタラーエフにアタック!(9000)」
「ワールウインド・ドラゴンでインターセプトだ!」
「アナのブーストしたルキエЯのアタック!パワー25000!!」
「……ノーガード」
守護者を持っていなかったユウトはここで手札を守ることにした。
素人目に見ても次のアップライト・ライオンのアタックも高パワー…だからこそ、トリガーによりガードに失敗する可能性のあるこの攻撃は通しておきたい。
ダメージトリガーに期待しながら、ミツルのドライブチェックを待つ。
「ツインドライブ……first…
「トリガーじゃない…が、完全ガードか…」
「second……
ユウトはダメージトリガーを願って、ダメージチェックを行う。
ダメージは煉獄竜 メナスレーザー・ドラゴンだった。
「次を耐えれば…」「アナのスキル発動」「何…?」
ミツルがソウルに手を伸ばす。
「CB1…ソウルから
「…っ!?」
アナがゼルマに上書きされる。
「ゼルマのスキル……マリチカをソウルに入れ、ソウルからマリチカをスペリオルコール」
何事も無かったかのようにスタンド状態で現れるマリチカ……
さらに恐ろしいのは、今の動きで再びアップライト・ライオンのパワーが上昇してしまったことだ。
「マリチカでアタック」
(今気づいたが…このマリチカ、アナってユニットと似たスキルを持っているのか…アタックを通したら不味いか……)
「……ドラゴニック・ガイアースでガード!」
「アナのブースト…アップライト・ライオンでアタック!!パワーは…33000だ!!」
(……こっちもアナにブーストされて!)
「バスターレイン・ドラゴン!トゥーヴァー!マレイセイでガード!!」
クリティカルトリガー2枚とグレード1のユニットで守りきるユウト。
その手札はこのターンの間に半分以上削られていた。
「ターンエンド…僕達の戦いはこれから…だろう?」
「ああ!その通りだ!!俺のターン!!」
ーー竜と竜使いは戦う…そして。
「なるほど…シャドウパラディンっすか」
撃退者 ファントム・ブラスター“Abyss”…そして複数枚のリアガード。
相手の盤面に並んだカードを見て、ジュリアンは呟いた。
「ああ…退却をコストにできればあんたに呪縛されることは無い」
「……でも、もう遅いっすよ」
ジュリアンは手札からカードを抜く。
「悪夢の先に狂気あり…叫べ呪縛龍!星輝兵 ガーネットスター・ドラゴンにライド!(11000)そして双闘っす!!」
山札からレギオンメイトを探し、ガーネットスターの隣に置かれる。
「伴星の星輝兵 フォトン……レギオンスキル発動っす……あんたのリアガードから…タルトゥ、ラキアを呪縛」
相手のリアガードが2体呪縛される。
「だが、これでもう他にリアガードはいない…これで次のターンAbyssの退却コストは!!」
「そんなの…許さないっすよ?」
微笑みながらジュリアンが取り出したのは“星輝兵 コールドデス・ドラゴン”……リアガードのいないサークルを呪縛カードで埋める凶悪なカード…
「さぁ……楽しい楽しいファイトの幕開けっすね」
ーー2人の仲間がそれぞれの敵と火花を散らす。
「レギオンスキル発動!!CB3!手札から3枚ドロップ!コンサートは終わらない!!俺の歌を聞けぇ!!」
たった今、攻撃を終えた
「……Vスタンドとは…厄介ね」
「はっ、それだけじゃあない……リアガードの扇の舞姫 ミナトはグレード3がヴァンガードサークルに現れた時にパワー+10000される」
「ええ、このターンあなたは
「違うな!!このターン俺は“双闘”している!そしてレギオンメイトはトップアイドル リヴィエール!!こいつもグレード3だ!!」
「……なるほどミナトは単体30000パワーってことね」
チアキは手札を構える。
「望むところよ…来なさい!!」
ーー勝利を掴むため、戦いは続く。
* * * * *
「皆……」
3回戦が終わった……私は皆の元へと駆け寄る。
「…………ファイトは…」
「……負けた」「え」
「勝ったわよ」「勝ったっす」
つまり……
「2勝…1敗……」
「4回戦に進むのは私たち、チームシックザールよ」
天乃原さんと舞原クンがピースサインを送る。
そうか…勝ったんだ……
「良かった……」
私は安堵する。
「あ、あのえっと…」
するとさっきの吐血した…霧谷ミツルクンが何か話そうとしている事に気がついた。
「?」
「ひ、ヒカリち……」「さぁ、帰るぞミツル」「俺ら負けちまったしな」
私の名前を言いかけた所で仲間の人達にずるずると引きずられ、連れていかれてしまった。
「まぁ……もう会うことも無い…かな?」
「あら?ちょっとは気になったのかしら?」
「それは……どうだろ?」
とにかくこれで、私たちは前に進める。
「今のところ……」
舞原クンが話始める。
「僕とヒカリさん、青葉クンとお嬢の戦績が同じくらいっすかね」
「俺と…リーダーが同じ?」
「………まだまだこれからよ」
「うん、まだまだこれからだよ…本番はね」
私のデッキを持つ手に自然と力が入る。
もし、ユズキ達が勝ち進んでいれば……次の相手は…
* * * * *
「修羅忍竜 マントラコンゴウ…ダラニコンゴウのレギオンスキルはコストが続く限り何度でも発動できる…それ、もう一回!!」
「そ、そんな……」
ミカンの手札から前のターン、ドライブチェックで手にいれたグレード2のシルバー・ブレイズとチアガール ティアラ……そしてリアガードのメディカル・マネージャーがバインドされる。
このターン、相手にバインドされた手札は5枚、ドロップされたのは1枚……この相手の手札を削り、敵に致命傷を与えるのがぬばたまの戦い方である。
ミカンに残された手札は2枚…チアガール マリリンとバロン・アマデウス。
リアガードはいない。
それぞれ完全ガードとクインテットウォールであり、その2枚が残されたことは運がいいように見える。
…が、決してそんなことは無かった。
前のターンに攻撃を仕掛けたミカンのCBはグレイトフル・カタパルトのブレイクライドスキル、エメラルド・ブレイズのレギオンスキルによって既に全て使用されており、CBが必要なクインテットウォールは何の役にも立たない状態であった。
つまり、1回限りの完全ガードという選択肢しか、ミカンの手には残されていない。
ミカンのダメージは4点、前のターンにヒールトリガーが発動したことで少し余裕が生まれたと、ミカン自身も思っていた。
前のターン終了時に相手の手札は2枚…しかもどちらもグレード3であることが判明していた。
だが、結論を言えば前のターンにその2枚……そして盤面に残っていた2枚のリアガードを除去できなかったことが相手に僅かながらの勝機を与えてしまった。
「忍竜 ドレッドマスターのブースト、忍竜 ボイドマスターでアタック!!こちらの方が手札が少ない…よってヒット時に貴女は手札を2枚捨てることになる!」
パワー16000のアタック…止めるためには完全ガードを使わなければならず、手札が無くなる。
しかし、この攻撃を通してしまえばそのスキルによってやはり手札を全て失ってしまう。
「っ!マリリンで完全ガード!!バロン・アマデウスをドロップ!!」
「ふっ……ならばマントラコンゴウのレギオンアタック!!パワー33000!!」
「うう~……ノーガード……」
最早、トリガーが出ないことを祈るしかない。
「ドライブチェック…忍竜 ボイドマスター……トリガー無し…………忍妖 マシロモメン…ゲット!スタンドトリガー!!」
「…スタンドトリガー…!?」
……だがスタンドトリガーならまだ勝機は残っているはずである。
ここでミカンがダメージトリガーを引けば、相手のスタンドしたボイドマスターではアタックは通らない。
ここでミカンがダメージトリガーを引けば…だ。
そう、ダメージトリガーを引けば…
トリガーを引けば……
引けば…
……
「ごめん…負けちゃった」
「……引けなかったか…」
チーム誘惑の果実は2勝1敗で4回戦への進出を決めた。
次は…ヒカリ達、チームシックザールとの戦うことになるのである。
「じゃあミカンは私とこ・う・た・い・ね」
「うん~…」
ユズキはメンバーを見回す。
「ということは、大将…私、中堅…イヨ、先鋒…ナツミといったところか」
「そうね」「そっか」
ユズキ達はヒカリ達のいるテーブルの方を見つめる。
「さて…勝負だ!!ヒカリ!!」
* * * * *
VFGPの4回戦が始まる。
対戦カードは
私vsユズキ…天乃原さんvs城戸イヨさん…
そして青葉クンvsナツミさん。
負けたくない、負けられない。
皆で勝ち上がってきたんだ、まだ優勝は遠いんだ…ここで負ける訳にはいかない。
デッキのシャッフルを終える。
「ヒカリ…全力で行かせてもらうぞ」
「ユズキ…」
昔の私ならここで“なら、あなたの絶望した表情…見せてよ?”って言ってたっけなぁ…
……うん、懐かしい…
だったら…今は……
「なら……」
「ヒカリ?」
「なら、あなたの本気の表情……私に見せてよ?」
ファイトが……始まる。