君はヴァンガード   作:風寺ミドリ

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俺は人生に絶望していた…とたまに考えていた。

39歳で金も無い、職も無い、得意だったカードゲームも売り払った。

そんな人生の敗者街道爆走中だった俺は、道で転んだ弾みに気を失ってしまった。

そして目が覚めると……?

「おい!いつまでトイレに入ってんだ!?3回戦始まるぞ!?」

俺は高校生くらいの青年の姿をしていた。

そう、俗に言う“転生”ってやつだ。

俺はカバンにはいったヴァンガードのデッキを手に取る。

なるほど、ここはヴァンガードの世界か…

きっとここから俺の第2の人生が始まるぞ…どっかの小説投稿サイトの転生オリ主のようにキャッキャウフフのハーレムを作るんだ…

俺は仲間らしき奴等(残念ながら男)と共にファイトテーブルへ向かう。

俺の対戦相手はロリータファッションが可愛いロリ少女…このロリ少女、おそらく最初にハーレムに加わる流れだ。

行くぜ俺のデッキ!!むらくも!!

前世とは違う薔薇色の人生をここに!!



044 龍の咆哮は勝利の道を切り開く

「リーブスミラージュ!!完全ガー…」

「無駄だ…グレード1以上のカードでのガードは受け付けない」

 

「くっ…パワーは……」

 

「36000…クリティカル4でヴァンガードの陰陽の忍鬼 セイメイにアタック……だ」

 

「くそっ!変幻の忍鬼 クズノハ!忍獣 キャットローグ!忍獣 キャットデビル!忍妖 ユキヒメたん!忍獣 ホワイトメインのイン……」

 

「グレード1以上ガード不可……だ」

 

男が完全ガードの代わりに出そうとしたカードにはグレード2のクズノハが混ざっていた。

 

残りの手札のほとんどを使って2枚貫通のガードをしようとしていた男はしぶしぶクズノハを手札に戻す。

 

「1枚貫通だ…頼む…トリガー出るな!!」

「残念ダブクリだ、ダメージ6点」

 

「くっそぉぉぉぉぉぉ!!この女装野郎がぁぁ!!」

 

 

泣き叫びながら、その男とその仲間は去っていった。

 

 

(…これで次は4回戦か……)

 

 

 

ふと近くのファイトテーブルを見ると、深見ヒカリらチームシックザールがいた。

 

(あいつらも順調に勝ち上がってきたか…俺たちも負けてられんな…)

 

 

 

そんな金髪の女装少年の前に、次の対戦相手が現れる。

 

「はっはっはっはっはぁぁぁぁっ!!」

 

「……」

 

「俺のジャスティスっに惚れるなよぉぉ“小娘”!!」

 

「…………はぁ……」

 

 

その男の雰囲気、そしてその言葉に思わず溜め息をついてしまう。

 

 

(これはまた…面倒な雰囲気の奴が来たな……)

 

そう思いつつ少年はデッキをシャッフルし始めるのであった。

 

 

 

 

 

そして、VFGP4回戦が始まる。

 

 

 

 

「あなたの本気の表情…私に見せてよ?」

 

「……望むところだ!!」

 

 

「スタンドアップ!ヴァンガード!!先陣の探索者 ファイル!!」

 

「スタンドアップ・THE・ヴァンガード!!ジャッジバウ・撃退者!!」

 

「スタンドアップ!ヴァンガード!!青雲の宝石騎士 ヘロイーズ!!」

 

「メイクアップ!ヴァンガード!!マシニング・リトルビー!!」

 

「スタンドアップ!ヴァンガード!!煉獄竜 ペタルフレア・ドラコキッド!!」

 

「スタンドアップ!ヴァンガード!!古代竜 ベビーザウルス!!」

 

 

その瞬間、参加する全てのヴァンガードファイターが、そのFVを露にする。

 

 

 

* * * * *

 

 

 

(古代竜……たちかぜってクランか…)

 

ユウトは対戦相手であるナツミのFVを見つめ、考える。

 

(……確か自身のリアガードを退却させてくるんだよな……ってことはかげろうは不利なのか?)

 

たちかぜ…ユウトにはこのクランと戦った経験が不足していた……が、

 

 

(ま…今はそれどころじゃあ無いか……)

 

先攻はユウト…彼はドローしたカードと、自身の手札を見比べた。

 

そこに、グレード1のカードは無かった。

 

要するにライド事故である。

 

「……ターンエンド」

 

為すすべもなくユウトはターンエンドを宣言した。

 

「ライド事故…か?」

 

「……」

 

「悪いけど、それでもアタシは手加減なんてしないよ!!」

 

「ああ…上等だ!」

 

幸い、ユウトは先攻ターン…まだ慌てる段階じゃあないと、自身に言い聞かせていた。

 

 

「アタシのターン!!引くよ!そして古代竜 トライプラズマ(7000)にライド!!」

 

FVの古代竜 ベビーザウルスをV裏にコールすると、彼女はさらに手札からカードを出す。

 

「輸送竜 ブラキオポーター(5000)!古代竜 ティラノブレイズ(7000)をコール!!」

 

登場した3体のユニットはどれもユウトのFVにダメージを与えられるだけのパワーを持っていた。

 

「ティラノブレイズでアタック!(7000)」

 

「…煉獄竜 グラットン・ドラコキッドでガード」

 

ユウトは1回目の攻撃をドロートリガーでガードする。

 

「ベビーのブースト!ヴァンガードのトライプラズマでアタック!(12000)」

「…ノーガード!」

 

ナツミのドライブチェックが行われる。

 

「ブラックキャノン・タイガー…クリティカルだ!」

 

クリティカルがトライプラズマに、パワーがブラキオポーターに乗せられる。

 

一方、ユウトのダメージにはドロートリガーのグラットン・ドラコキッド、グレード2のワールウインド・ドラゴンが落とされる。

(グレード1じゃなくて良かった…か?)

 

「ブラキオポーターでアタック!(10000)」

 

「……ノーガード」

 

守れない訳では無かったが、今後のことを考えユウトは手札を温存することに決めた。

 

「ダメージチェック…!!」

 

ユウトのダメージに煉獄の踊り子 アガフィアが落ちる。

 

「ゲット…ヒールトリガー!!えっと…煉獄竜 グラットン・ドラコキッドをドロップに!!」

 

 

ここでナツミのターンが終わる。

 

ユウトは自身のターンを宣言し、山札からカードをドローする。

 

(……来た!!)

 

 

「待たせたな!ドラゴンモンク ゴジョー(7000)にライドだ!!」

1ターン遅れたものの、無事にライドを決めた。

 

「ペタルフレアをヴァンガードの後ろにコールして、そしてブースト!ゴジョーでアタック!(12000)」

 

「ノーガードだな」

 

「ドライブチェック…タラーエフ…トリガー無しだ」

 

 

ナツミのダメージに完全ガードの古代竜 パラスウォールが落ち、ユウトのターンは呆気なく終わった。

 

 

「アタシのターンだな…スタンドしてドロー!…行くよ!!砲撃竜 キャノンギア(11000)にライド!!」

 

「なっ……グレード2でパワー11000!?」

 

ユウトが驚愕したのはそのパワー。

 

通常、グレード2が持てるパワーは10000までだが、極少数…それを越えるユニット達がいた。

 

もちろん強大な力には代償がある。

 

「キャノンギアは登場時に1体リアガードを退却させなければならない」

 

(リアガードが減るデメリットが……?)

 

「そこで私はこの“輸送竜 ブラキオポーター”を退却させる……スキル発動」

 

「何?」

 

「CB1…山札からグレード2のユニット“空母竜 ブラキオキャリアー”をスペリオルコールする」

 

ナツミは山札から空母竜 ブラキオキャリアー(7000)をブラキオポーターのいたリアガードサークルに置く。

 

「リアガードが…グレードアップした…」

 

「呆けてる暇は与えない!ティラノブレイズでアタック!!(7000)」

 

ユウトは手札から前のターンに温存しておいたカードを取り出す。

 

「煉獄の踊り子 アガフィアでガード!!」

 

これで、もうこのターンはガードできない。

 

今のユウトの手札はグレード2とグレード3のカードがほとんどを占めており、唯一のグレード1…完全ガードもここでは使いたくない。

 

 

「ベビーのブーストしたキャノンギア!!キャノンギアはスキルでさらにパワー+2000!!合計18000でアタック!」

 

「ノーガード!」

 

「ドライブチェック…マグマアーマー、トリガー無し!!」

 

ユウトのダメージに完全ガードの煉獄竜 ランパート・ドラゴンが落ちる。

 

「ブラキオキャリアーでアタック!(7000)」

 

「ノーガードだっ!」

 

これでユウトのダメージは4点…煉獄闘士 マレイセイが虚しく落ちる。

 

「ターンエンドだよ」

 

「…俺のターン……」

 

ユウトは自身のユニット達をスタンドさせる。

 

 

(ダメージは4vs1…ここは少しでも点を入れて…)

 

 

「ドロー…煉獄竜騎士 タラーエフ(9000)にライド!」

 

 

(そして、これ以上点を貰わないためにもリアガードを潰しておきたい!!)

 

 

「煉獄竜 ワールウインド・ドラゴン(9000)を2体!!コールする!」

 

ナツミに対抗するかのように、3体のユニットがユウトの前列に並ぶ。

 

「ペタルフレアのブーストしたタラーエフでヴァンガードにアタック!!(14000)」

 

「どんとこい!ノーガード!!」

 

ユウトはドライブチェックでクリティカルを引き、ナツミのダメージゾーンに古代竜 ティラノブレイズ、古代竜 ジオコンダとユニットが並ぶ。

 

これでダメージは4vs3になった。

 

「ワールウインドでティラノブレイズに」

 

「退却」

 

「もう1体でブラキオキャリアーに」

 

「退却、スキル発動しないでおくよ」

 

「…ターンエンド」

 

2体のリアガードを失ってなお、焦りを見せないナツミの様子にユウトは不安を感じた。

 

(何か…間違えたか……)

 

「ではアタシのターン…スタンド、ドロー……行くぜ!!」

 

ナツミが手札からカードを抜く、おそらくそれが彼女のグレード3……

 

「烈火!!地獄の業火も生温い…目覚めろ!灼熱の炎よりいでし竜!!古代竜 マグマアーマー(11000)!!」

 

真っ赤なカードがユウトの前に置かれる。

 

「そしてコール!!ティラノブレイズ、ティラノバイト(9000)、ディノクラウド(9000)!!」

 

リアガードが再び配置される。

 

「ティラノバイトでヴァンガードにアタック!!(9000)」

 

「…ワールウインドでインターセプト!!」

 

ディノクラウド、ティラノブレイズが置かれている列のワールウインドが退却される。

 

「ベビーのブーストしたマグマアーマーでアタック!!(19000)」

 

「…完全ガードだ」

 

ユウトは手札から煉獄竜 ランパート・ドラゴンを使い、グレード3のブレイクダウン・ドラゴンをコストにした。

 

(ここで負ける…なんて仲間達に申し訳が立たないからな!!)

 

「ならドライブチェック…古代竜 ディノダイル……クリティカルだ、効果は全てディノクラウド…2枚目はナイトアーマー、トリガー無しだな」

 

出て欲しくないタイミングで、トリガーが出てきてしまった。

 

「ティラノブレイズのブースト…ディノクラウドのスキル発動、ティラノバイトを退却してパワー+5000、ティラノバイトのスキル発動、CB1で再びコール」

 

アタックを既に終えた筈のティラノバイトがスタンド状態で帰ってきてしまった。

 

「パワー26000、クリティカル2でアタック!」

 

「…煉獄竜 バスターレイン・ドラゴン2枚でガード」

 

「もう一度ティラノバイトでヴァンガードにアタック!!」

 

「……ここはノーガードだ」

 

 

ユウトのダメージにグラットン・ドラコキッドが落ちドロートリガーが発動するものの、これでダメージは5vs3になってしまった。

 

 

「ターンエンド……どうよ?たちかぜの攻撃は」

 

「……まだ余裕だな」「言うじゃない」

 

 

(こんな所で諦めていたら、リーダーに怒られるだろうが…)

 

ユウトはスタンド、ドローと処理を進める。

 

 

(だから俺は勝つことを諦めない、最後まで立ち続ける!!)

 

 

「ここからだ……ライド!煉獄竜 ブレイクダウン・ドラゴン(11000)!!そしてタラーエフをコール!!」

 

 

煉獄竜 ブレイクダウン・ドラゴン…ユウトが選んだ、新たなるヴァンガード。

 

 

「そしてシークメイト……双闘!!煉獄竜騎士 タラーエフ!!!」

 

ユウトは煉獄竜 ペタルフレア・ドラコキッドをソウルへ入れた後、レギオンスキルを発動させる。

 

「CB3!ディノクラウド、ティラノブレイズを退却!」

 

ナツミの右列のリアガードが全て焼き払われる。

 

さらにリアガードが減ったことでブレイクダウン・ドラゴンの効果が誘発…ダメージゾーンのカードが1枚表に戻った。

 

「今のスキルでタラーエフはパワー+10000を得た!」

「へぇ…」

 

「ブレイクダウンでマグマアーマーにアタック!!」

 

パワー20000の攻撃がマグマアーマーに飛ぶ。

 

「その攻撃…受けた!!」「ドライブチェック!」

 

ユウトの手が山札のカードを捲る。

 

「…ボーテックス・ドラゴニュート、煉獄竜 グラットン・ドラコキッド……ドロートリガー発動!パワーはタラーエフに!!そしてスキル発動!!」

 

レギオン直後、ソウルに入れたペタルフレアのスキルがここに発動する。

 

「インターセプトは使わせない…古代竜 ティラノバイトを退却!!、煉獄竜 ワールウインド・ドラゴンでアタック!!(12000)」

 

ナツミのダメージゾーンにマグマアーマーが落とされる。

 

「ブラックキャノン・タイガーでガード!!」

 

ナツミの手札は3枚…ダメージは4点。

 

(…ここで少しでも削れれば、次のターンを乗り越えることだってできる!!)

 

 

「タラーエフでアタック!!パワー24000!!」

 

「ノーガード!!」

 

5点目のダメージとしてパラスウォールを叩き込むが、ゲームエンドまでは届かなかった。

「…ターンエンド」

 

ダメージは5vs5…

 

互いに手札は厳しい状況だ。

 

(だが、こちらにはインターセプトがある…手札もこっちの方が多い!)

 

「ぬるいね……」「え…?」

 

「あんたの攻撃は温すぎんだよ…アタシの攻撃はもっともっと熱いよ!アタシのターン…シークメイト!!」

 

ユウトが退却させたユニット達が山札に戻っていく。

 

「砕氷!!夜の氷河も遥かに越える…並び立て!絶対零度の冷気よりいでし竜!!古代竜 ナイトアーマー!!」

 

「これが…たちかぜのレギオン……」

 

「今は驚く場面じゃない!!ナイトアーマー(9000)をコール!!ディノダイル(4000)をコール!!」

 

ナツミがコールしたのはもう1体のナイトアーマーと…2枚のクリティカルトリガーだった。

 

「…トリガーをコール…しただと」

 

「2体のディノダイルをソウルへ…CBを2枚表に!」

 

ナツミのCBはこれで全てが表の状態となる。

 

「ヴァンガードにナイトアーマーがアタック…スキル発動!古代竜 ベビーザウルスを退却させ、自身にパワー+5000とヒット時にCBを表にする効果を与える!」

 

たちかぜはスキルをコンボさせるクランだ…発動は終わらない。

 

「ベビーザウルスのスキル発動!CB1でナイトアーマーをスペリオルコール!!ナイトアーマー…アタック!!(14000)」

 

退却でリアガードが減るのではなく、アタッカーを呼び出したナツミはユウトにアタックを仕掛けていく。

 

(ここで負けるかよ!!)

 

「ワールウインドでインターセプト!!」

 

「ならもう一度ナイトアーマー!!スキル発動!ナイトアーマーを退却…スキル付加、パワー+5000…続けて“マグマアーマーのレギオンスキル”発動!!」

 

ナツミはドロップゾーンに置いたナイトアーマーを手に取る。

「CB1…SB1……ナイトアーマーをスペリオルコール」

「……っ!?」

 

これがマグマアーマーの力…絶えず、相手を苦しめる煉獄の猛火。

 

自身の体を酷使して放つ必殺の連続攻撃。

 

「ナイトアーマー、アタック!!(14000)」「タラーエフでインターセプト!!」

 

 

「…ナイトアーマーでアタック!!」「マレイコウでガード!」

 

 

「…ナイトアーマーでアタック!!」「…ワールウインド・ドラゴンでガード!」

 

「…ナイトアーマーでアタック!!」「ガイアースでガードっ!!」

 

 

「マグマアーマー、ナイトアーマー…レギオンアタック!!」

 

「……くっ…グラットン・ドラコキッド、アガフィアでガードだっ!!(1枚貫通)」

 

ユウトの手札が底をつく。

 

もう守ることはできない。

 

「ドライブチェック…ティラノレジェンド、トライプラズマ……トリガーは無いけど…終わりだ」

 

「くそ……」

 

最後のナイトアーマーがユウトに止めをさす。

 

このデッキの主力…煉獄竜 ボーテックス・ドラゴニュートがダメージゾーンに舞う。

 

 

 

 

VFGP4回戦、先鋒戦。

 

勝者、チーム誘惑の果実…土田ナツミ。

 

 

* * * * *

 

 

 

 

「どうやら私の仲間が一勝を決めたようだな」

 

「まだ勝負は決まっていない…先に倒れた者の思いは私達が受け継いでいる……だから、私は絶望しない」

 

 

 

 

「このラブリーな私に倒され、あなたも私の虜になるのよ……ふふっ」

 

「そんなの御免よ…勝って次に進む…私はそう決めているんだから!!」

 

 

ヒカリとチアキは勝利を目指す…ユウトの敗北を無駄にしないために……

 

 

戦いは続く。

 

 


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