君はヴァンガード   作:風寺ミドリ

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051 聖竜は青き絆の炎を紡ぐ

「ころながるのブーストしたヨセフスでアタック!(12000)」

 

「ノーガード!!」

 

ドライブチェックは誓いの解放者 アグロヴァル。

 

ダメージにはブラスター・ダーク・撃退者が落とされる。

 

私、深見ヒカリと神沢クンとのファイトが始まっていた。

 

舞台はVFGP……その決勝。

 

いつか約束した再戦が…こんな大舞台になるなんてあの時はあまり思っていなかった。

 

「……ブラスター・ダーク・撃退者“Abyss”(9000)にライド!!シャドウランサーでヴァンガードにアタック!(7000)」

 

「ノーガード…ダメージチェック…解放者 ラッキー・チャーミー…ドロートリガーだ」

 

「ヴァンガードでアタック…(14000)」

 

「そいつもノーガードだ」

 

「ドライブチェック…暗黒医術の撃退者…ヒールトリガーだよ」

 

「奇遇だな、俺もヒールトリガーだ」

 

私たちは互いにダメージを回復する。

 

「ターンエンド」「俺のターン……」

神沢クンがスタンド、ドローと処理を行っていく。

 

「解放者 ローフル・トランペッター(9000)にライド、誓いの解放者 アグロヴァル(9000)をコールしてCB1、解放者 ローフル・トランペッターをスペリオルコール」

 

あまりにもスムーズにこなしていくので分かりにくいが、アグロヴァルのスキルは山札の上の3枚から1枚選んでのスペリオルコールだ…もっとも彼にはスキルを使う前から誰が待っているのか知っていたのだろうが。

 

「ローフルでシャドウランサーにアタック(9000)」

 

「ノーガード…」

 

「アグロヴァルでヴァンガードに(9000)」

 

「…ノーガード…ダメージは氷結の撃退者、ドロートリガーだよ」

 

私はドローし、パワーをヴァンガードに与えた。

 

「ころながる、ローフルでヴァンガードにアタックだ(14000)」

 

「……暗黒医術の撃退者でガード、完全カードだよ」

 

「…ドライブチェックは、青き炎の解放者 プロミネンスコア……ターンエンドだ」

 

静かに、早く、ターンが進んでいく。

 

「私のターン…スタンドandドロー……」

 

私の胸の鼓動は高鳴る…カードショップアスタリアでの敗戦を私は忘れない。

 

私は昔使っていたファントム・ブラスター・ドラゴンのデッキを使い、彼はオラクルシンクタンクの“メイガス”のデッキを使っていた。

 

だけど!…あの時とは私も、デッキも違う!!

 

乗せる……思いでさえも!!!

 

「参る……世界の優しさと痛みを知る漆黒の騎士よ、我らを導く先導者となれ!!ライド・THE・ヴァンガード!!幽幻の撃退者 モルドレッド・ファントム!!」

 

幽幻の撃退者 モルドレッド・ファントム(11000)が私の前に降り立つ。

 

「超克の撃退者 ルケア(9000)をコール…ジャッジバウのブーストしたモルドレッドでアタック!(18000)」

 

モルドレッドの攻撃は真っ直ぐヴァンガードに飛んでいく。

 

「…………ノーガードだ」

 

「ドライブチェック……first、暗黒の撃退者 マクリール……second、雄弁の撃退者 グロン…トリガー無しだね」

 

「ダメージチェック…大願の解放者 エーサス、クリティカルトリガーだ…効果はヴァンガードに」

 

私はジャッジバウのスキルを発動させる…CB1と自身のソウルインによって山札からグロン(4000)と督戦の撃退者 ドリンがコールされた。

 

さらにグレード1以下がコールされる度にリアガードのルケアはパワーが3000ずつ上昇する。

 

「ドリンのブーストしたルケアでヴァンガードにアタック!!パワーは22000!!」

 

「ノーガード…ダメージは霊薬の解放者、ヒールトリガーだ…回復する」

 

「……ターンエンド」

 

6ターンが終わって私と神沢クンのダメージは1vs2…私はそれなりの回数、攻撃をぶつけたつもりだったが神沢クンはここまでで二度ヒールトリガーを発動させているため、ダメージは溜まっていない。

 

いや……ヒールトリガーだけじゃない、ここまでの神沢クンのダメージ全てがトリガーだった…現在の環境ならレギオンがあるため序盤にトリガーを引き過ぎたとしても、山札に戻すことができるためトリガーが不足することは無い。

 

おそらく、このダメージトリガーは意図的なものだ。

 

神沢クンの“力”……“神の羅針盤”だったかは山札の中身を見ることができるというもの。

 

以前神沢クンが言っていた話によるとデッキとの“つながり”が弱ければ場合によって相手のデッキも見ることができるとか。

 

前のファイトでもそれに翻弄された…でも分かる、もう私の山札は神沢クンには見えない…今、私とデッキは一心同体に近い……と思う。

 

だから…負けないよ!!

 

「ふっ……」

 

「……何?」

 

「いや…ここからファイトが面白くなるんだなと思ってな」

 

「……そうだね」

 

神沢クンのターンから“双闘”が使えるようになる。

 

戦いもまた、激しいものになるだろう。

 

「俺のターン…スタンドとドロー……」

 

神沢クンはにやりと笑う。

 

「俺の分身…行くぞ!」

 

神沢クンが1枚のカードを前に出す。

 

「蒼く、青く、輝け!!その火は決して消えず、その炎は竜に宿りて我が道を照らす!!ライド・my・ヴァンガード!!青き炎の解放者 プロミネンスグレア!!」

 

青く…聖なる炎を纏ったコスモドラゴン…青き炎の解放者 プロミネンスグレア(11000)。

 

「…グレア…か」

「五月雨の解放者 ブルーノをコールし、グレアのスキル発動!!CB1、誓いの解放者 アグロヴァルを退却!定めの解放者 アグロヴァル(9000)をコール!!スキルでSB1!青き炎の解放者 プロミネンスコアを手札に!」

 

 

定めの解放者 アグロヴァルのスキルは山札の上の5枚を見て“青き炎”のカードを1枚手札に加えるという不確定な能力…だけど…

 

私は少し溜め息をつく。

 

神沢クンを相手にする以上…この手のスキルが不発することは無い……か。

 

「煌めく極光の中で輝き続ける青き炎よ!!シークメイト!…我らに祝福を与えよ!!双闘!!」

 

プロミネンスグレアの隣にレギオンメイト……定めの解放者 アグロヴァルが並び立つ。

 

「レギオン時、ローフルのスキル発動!疾駆の解放者 ヨセフスをスペリオルコール!ブルーノ、ころながるがそれぞれのスキルでパワー+3000」

 

神沢クンは山札からの不確定なスペリオルコールを軽やかに使う。

 

決して他のファイターには出来ないだろう。

 

神沢クンはさらにヨセフスのスキルでドローを行った。

 

「プロミネンスグレアのレギオンスキルをここに発動する!!CB1とプロミネンスコアのドロップでクリティカル+1!グレード1以上でのガードを制限する!!」

 

 

ヴァンガードにはそれだけでクランの優劣を決めてしまう能力が2つある。

 

1つはVスタンド…私の“Abyss”が持っている。

 

そしてもう1つが“ガード制限”だ。

 

どちらも、有効なタイミングはファイトの終盤だが基本的にどのタイミングで出されても“うっ”と言ってしまうだろう。

 

「これは…」

 

「これはエクスプロージョンブルー…まぁ…今回はほんのジャブみたいなものだがな」

 

確かに…ガード制限とクリティカルは得ているが、パワーは上昇していない…だがそれは今回だけだろう…プロミネンスグレアの後ろにはスペリオルコールの度にパワーが上がるころながるがいる…グレアのスキルとうまく組み合わせれば一撃で相手を倒すことも可能になるだろう。

 

「これが青き炎…」

 

「ああ…青き炎の解放者 プロミネンスグレア」

 

 

ある程度自由の利くスペリオルコール、そしてトリガー……

 

その上でガード制限にクリティカル増加、リアガードのパワーパンプ……

 

「神沢クン……これが…あなたの……」

 

「これが俺の本気だ…」

 

成る程…これだけの攻撃力に展開力、スペリオルコールを使ったトリガー操作をこれだけ美少女(男)が操るなんて最強すぎる。

 

でも最強だからといって、完璧な訳じゃない。

 

「ころながる、プロミネンスグレアでアタック…パワー28000、クリティカル2、G1以上でのガード不可!」

 

「ノーガード!!」

 

つけ込む隙は……ある!

 

「ドライブチェック…ドロートリガー、そして定めのアグロヴァル……」

 

トリガーのパワーはローフルに与えられた。

 

私のダメージにはマクリールとモルドレッドが落とされる。

 

「ヨセフスのブーストした定めの解放者 アグロヴァルでリアガードのルケアにアタックだ(18000)」

「ノーガード…ルケアを退却」

アタック時にVが“青き炎”がいる場合にパワー+2000するスキルを持っているのが“定めの解放者”アグロヴァルだ。

 

ルケアへのアタックには関係ないが、ヴァンガードへのアタックが単体で行えることを考えるとなかなか強い能力だ。

 

「ブルーノのブースト、ローフル・トランペッターでヴァンガードにアタック…パワーは27000だ」

 

この攻撃を受ければ4点……一瞬考えてしまったが、相手のヴァンガードがクリティカル増加スキルを持っている以上3点でも4点でも“プレッシャー”は変わらない。

 

「……ノーガード」

 

ダメージにはクリティカルトリガーの厳格なる撃退者が落とされる。

 

「ターンエンドだ」

 

ダメージは4vs2……私の方が劣勢ではあるけれど、まだまだ巻き返すことはできる。

 

手札も気合いも十分だ。

 

((……わくわくする…))

 

その時、私と神沢クンは同じことを考えていた。

 

(このファイト…は俺の最強への1歩である上に…今の俺の強さを計ることもできる……こんな大きな舞台で俺は…輝けるんだ)

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

2年前、コハク兄さんの元に差出人不明の招待状が届いた。

 

その頃は俺と兄さんはヴァンガードをしていたが、マリはまだ手をつけていなかった。

 

ちなみに身長も昔はマリの方が小さかった。

 

今ではとっくに……な。

 

とにかく俺と兄さん、そしてマリの3人は両親から隠れて、その招待状を開けたんだ。

 

「ヴァンガードの……大会?」

 

「ああ…ラグナレクCSっていうらしい」

 

「しーえす?」

 

「チャンピョンシップの略だよ」

 

その時の俺は兄さん宛に大会の招待状が届いたことを自分のことの様に喜んだ。

 

兄さんの強さは俺が一番知っていたから。

 

招待状には同伴者が認められていたため、俺たち3人は一緒に…もちろん親には内緒で“ラグナレクCS”の送迎バスへと乗り込んだ。

 

兄さんはいつも女物の服ばかり着せられていたため、抜け出すときも怪しまれないようにその格好であった。

 

今思うと、まずその服は止めろよと言っておくべきだったか…いや、その場合は俺が着せられていたか。

 

完全に外の風景が遮断されたバスを当時の…小学生の頃の俺はつまらないなとしか思っていなかった。

 

最終的に目隠しをされた俺たちがたどり着いたのは、想像以上に大きなホールだった。

 

「あの機械は……」

 

「あー…MFSってヤツかな」

 

「えむえふえす?」

 

ラグナレクCSはMFSの試験運転だと説明された。

 

その理由に参加した大部分のファイターが半分納得、半分疑問を抱きつつも大会は始まった。

 

大会の参加者は俺の目から見ても強者揃いだった。

 

ただ…兄さんがその誰よりも強かっただけで。

 

「……アタックです」

 

その時兄さんは相手が皆、自分のことを幼女だと思っていることに気がついており、わざと高い声を出して面白がっていた。

 

確実に原因は着ていた服だった。

 

だがその後、様々なことがあって結局兄さんはヴァンガードを辞めてしまった。

 

 

“ノルン”というのを知ったのはその後のことだ。

 

 

兄さんと同等のファイターなんているわけがない。

 

そんなヤツ俺が倒す…それで兄さんは名実共に最強のヴァンガードファイターになるんだ。

 

 

 

その思いに駆られた俺は…昔から俺が持っていた自分の目標を見失ってしまった。

 

ヴァンガードを始めた頃からずっと…俺は兄さんのような……いや、兄さんよりも強いファイターになりたいと願い、ファイトを積み重ねてきたんだ。

 

 

俺は強くなって、もっとヴァンガードが楽しみたかった。

 

 

 

 

今では心から、そう思う。

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

(今、俺の前にはノルンと呼ばれ、兄さんと同列に語られたファイターが立っている)

 

神沢クンの手に力が入ったのがわかった。

 

(本気の彼女を倒し、俺はもっと強くなる…そしてもっとこのゲームを楽しむんだ)

 

神沢クンの瞳が強く、黄金に輝く…それは彼のヴァンガード…プロミネンスグレアと同じ色だ。

 

「私のターン……スタンドandドロー…」

 

彼の気持ちが分かる気がする。

 

心と心でぶつかり合う…やりがいのある楽しいファイトを求めている。

 

人はライバルがいるから強くなるという。

 

私にとってそれは神沢クン……君なんだね。

 

 

 

ヴァンガードに限った話じゃない…人はいつでも誰かの先導者になり得るんだ。

 

 

私は手札を見つめる…ここからのファイト…長期戦になるかもしれない。

 

今、この瞬間に全てのスキルを使うのは危険すぎると考えた。

 

大丈夫…この後の流れはもう……決まっている。

 

「真なる奈落で影と影…深淵で見た魂の光が彼らを繋ぎ、強くする!!ブレイクライドレギオン!!」

 

ブレイクライドによりブラスター・ダーク・撃退者(9000)がパワー+5000の状態でスペリオルコールされ、ドリンのスキルはブレイクライドのコストを帳消しにした。

 

「撃退者 ファントム・ブラスター“Abyss”!!ブラスター・ダーク・撃退者“Abyss”!!(11000)」

「Abyss……か」

 

 

「さらにダーク“Abyss”をコール……CB1でころながる・解放者を退却させる…」

 

厄介に感じていたころながるが盤面から消える。

 

「…………」

 

「行くよ…ドリンのブーストしたダーク・撃退者がアグロヴァルにアタック!!(21000)」

 

「…ノーガードだ」

 

このままヴァンガードにアタックしてもノーガードでいなされるだけ…なら今のうちにリアガードを潰し、レギオンで山札に戻すのが追い付かなくする…なんてね。

 

「グロンのスキル、そしてブースト……Abyssのレギオンアタック!!パワー42000!!」

「ノーガード……だ」

 

この後のドライブチェックでクリティカルが出ればスタンドさせる、だけど出なければ…コストの無駄になりそうだ。

 

「ドライブチェック…first…氷結の撃退者、ドロートリガー…パワーはリアガードのダーク“Abyss”……second……暗黒医術の撃退者、ヒールトリガー…パワーはダーク“Abyss”に与え、ダメージは回復します」

 

ダメージには五月雨の解放者 ブルーノが落ちる。

 

本物の神じゃない…全てダメージトリガーにはならないか。

 

「ブラスター・ダーク・撃退者“Abyss”でローフル・トランペッターにアタックするよ…(19000)」

 

「ノーガード…」

 

「ターンエンドだよ」

 

 

 

これでダメージは同点、相手のリアガードは三体潰した。

 

次は……どう来る?

 

 

 

「Abyss…か」

 

神沢クンが不意に呟いた。

 

「?」

 

「それがあんたの…エースか」

 

「……うん」

 

神沢クンの黄金の瞳が私を見据える。

 

「だが俺のエースは2体いる…スタンドとドロー!!」

 

 

……それって…

 

 

「揺らめく炎にその身を委ね、青き極光、闇退ける!!ライド・my・ヴァンガード!!青き炎の解放者 プロミネンスコア(11000)!!!」

 

「……」

 

神沢クンは解放者 ローフル・トランペッターをコールするとさらに叫んだ。

 

 

「青き炎は消えることなく、闇に覆われた世界を包み込む!!シークメイト!!双闘!!」

 

 

青き炎の解放者 プロミネンスコアの隣に並び立つのは誓いの解放者 アグロヴァル。

 

ブレイクライドを絡めた私のデッキと違い、神沢クンのデッキは双闘を繰り返す最新型のデッキだった。

 

「ローフル・トランペッターのスキルでプロミネンスコアをスペリオルコール!!コアとブルーノはパワー+3000!!コアは更にクリティカル+1!!」

 

昼食をファストフードで済ませよっかと言うくらい軽い勢いでクリティカルが増える。

 

「……そんな簡単にクリティカル増える能力じゃなさそうなのに……」

 

プロミネンスコアの能力はつまるところ、ペルソナスペリオルコールによる誘発だ。

 

デッキの中のたった6枚のカードをスペリオルコールしなければならないのだが。

 

 

「これが俺のペルソナフラムブルー・リンケージだ」

 

 

グレアより誘発条件が厳しく、ガード制限も無い代わりに、コストが無く、パワーも上昇するのが特徴だった。

「さて…プロミネンスコアのレギオンアタック!!パワー23000、クリティカル2だ!!」

 

「マクリールで完全ガード!!コストは氷結の撃退者!!」

 

そして神沢クンは楽しそうに笑い、言い放った。

 

 

「ドライブチェックはダブルクリティカルだ」

 

わざわざそう宣言してからドライブチェックを始める…

 

結果はどちらも希望の解放者 エポナ……クリティカルトリガーだった。

 

完全ガードで無ければ危なかった。

 

低めのパワーに油断してはいけない。

 

これが神沢クンの“力”の恐ろしい部分…2枚貫通のチャンスは決して逃さない。

 

神託…預言……彼の言葉を借りるなら……

 

 

“神の羅針盤”

 

 

「さぁ……行くぞ」

 

彼はパワー28000、クリティカル3という強大な威力の攻撃をぶつけてくる。

 

「いつでもどうぞ…返り討ちにするよ」

 

私はそれを暗黒医術の撃退者、雄弁の撃退者グロン、そしてダーク“Abyss”のインターセプトで止める。

 

「ヨセフスのブースト、プロミネンスコア!!」

 

「ノーガード!!ゲット!ドロートリガー!!」

 

 

ファイトはまだ…始まったばかりだ。

 

 

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