VFGP…決勝戦。
「ターンエンドだ」
神沢クンが言う。
ターンは再び私の元に来た。
ダメージは私が4…神沢クンが3……
互いに突破口を見つけようと、探り合っていた。
「スタンドandドロー…」
ここまで神沢クンは私のヴァンガードによる攻撃を“ノーガード”か“完全ガード”で受けている。
これは恐らく私の“力”への対策ということだろう。
……ドライブチェックでは使わせてもらえないか。
「絶望のイメージにその身を焼かれ尚、世界を愛する奈落の竜!!…今ここに!!ライド・THE・ヴァンガード!!撃退者 ファントム・ブラスター“Abyss”!」
チャンスを探さなければならない。
たった一回の能力の……使いどころを。
「常闇の深淵で見た光…来たれ!!シークメイトand双闘!!ブラスター・ダーク・撃退者“Abyss”!!」」
ここからが…真の奈落の始まりだ!!!
「詭計の撃退者 マナ(8000)をコールし、スキルで無常の撃退者 マスカレード(7000)をスペリオルコール」
そして私はアタックフェイズに入る。
「マスカレードでブーストしたマナでローフル・トランペッターにアタック!」
パワーは15000だ…レギオンする度にスペリオルコールなど……放ってはおけない。
「エポナでガード」
ローフル・トランペッターは守られた。
「だったら…グロンのスキル、そしてブースト…Abyssでヴァンガードにアタック!!(32000)」
「エルドルで完全ガードだ」
神沢クンはコストにドロートリガーをドロップした。
やっぱり……完全ガードで来るか…
「ドライブチェック…first…厳格なる撃退者!クリティカルトリガー!!効果は全てAbyssに!…second…ブラスター・ダーク・撃退者、トリガー無し…………レギオンスキル発動!グロンとマナ、マスカレードを退却しCB2!」
これが私の…今のシャドウパラディンだ。
「Abyssは再び立ち上がり!!青き炎を消し去ってくれよう!!アタック!!(27000☆2)」
「完全ガードだ!!」
再び私の前に光陣の解放者 エルドルが現れ、アタックの邪魔をする。
「ドライブチェック…」
二度目のドライブチェックでは詭計の撃退者 マナとヒールトリガーを捲ることができた。
ダメージは回復し、パワーはダークに……
「ドリンのブーストした、ブラスター・ダーク・撃退者でヴァンガードにアタック!!(21000)」
「…………ノーガード」
神沢クンのダメージにプロミネンスグレアが落ちる。
例え手札に欲しいカードであっても、守るべき攻撃とそうでない攻撃は見分けなければならない。
そう言った意味では、神沢クンの能力は難しいのかもしれなかった。
ダメージは逆転して私が3、神沢クンが4…
鍔迫り合いは続く。
「俺のターン…スタンドとドロー……」
神沢クンはカウンターブラストに手を伸ばす。
「プロミネンスコアのスキル発動、CB1、リアガードのプロミネンスコアを退却して、コアの後ろに五月雨の解放者 ブルーノをコール、そして手札から定めの解放者 アグロヴァルをコールする…」
神沢クンはそのままアタックに入ることを宣言した。
使えるはずのアグロヴァルのスキルを使わなかったのは…やはりデッキトップにトリガーが……?
「27000…ブルーノとプロミネンスコアでヴァンガードにレギオンアタックだ」
「…………ノーガード」
この攻撃はまだノーガードと言える攻撃だ。
彼の使うユニットが皆、クリティカルの増加スキルを持っているのだ…これからノーガードと言える機会は殆ど無いであろう。
手札は大事にしたい。
「ドライブチェック…ヒールトリガー、青き炎の解放者 パーシヴァルだ」
神沢クンが狙っていたのはこのヒールトリガーだったんだ……有効ヒールは確かに逃したくない。
これでダメージは再び逆転する。
私のダメージには督戦の撃退者 ドリンが落ちた。
「ブルーノのブーストしたローフルでリアガードのダークにアタックする(19000)」
「ノーガード…ダークは退却」
「ヨセフスと定めのアグロヴァルでヴァンガードにアタック…パワーは23000だ」
「暗黒医術と氷結の撃退者で…ガード!!」
「ターンエンドだ…」
私にターンが回る…前のターンでの神沢クンの動きはこの次のターンへの布石だった。
恐らく次のターン…神沢クンは強烈な攻撃を仕掛けてくる筈だ。
なら私がここで…攻撃の手を緩める訳にはいかない。
「スタンドand……行くよ」
「……!!」
私の瞳が緋色に染まる。
私の胸の奥が熱く…高鳴っている。
「ドロー!!」
私の手にはファントム・ブラスター“Abyss”が握られていた。
「そして……ライド!!絶望のイメージにその身を焼かれ尚、いつまでも世界を愛する奈落の竜!…今ここに!!撃退者 ファントム・ブラスター“Abyss”!」
私はそのままレギオンを行った。
「なるほど…あんた、自分の“力”を物にしたんだな」
「……まあね」
黄金の瞳と、緋色の瞳がぶつかり合う。
「ブラスター・ダーク・撃退者をドリンの前にコール…カウンターブラストを1枚表にする…そしてマナをコール!!スキルでダークボンド・トランペッターを…更にスキルでCB1!レスト状態で氷結の撃退者をスペリオルコール!!」
盤面は揃った…後は攻撃だ!!
「だったんでブーストしたマナでアグロヴァルにアタック!!」
「……アグロヴァルは退却する」
「氷結の撃退者でブースト…Abyssのレギオンアタックだよ!!(27000)」
「…ノーガードだ」
「……」
恐らくこのノーガードは前のターンの私と同じ、この後の展開を考えてのことだろう。
一瞬、ここで私の“力”を使うべきかと思ったが、私の力は1回限りである上に、先程“力”を使っていなければAbyssのスキルは使えていなかった可能性が高い。
この“力”の使いどころはまだ私には分からない。
「ドライブチェック…first…ブラスター・ダーク・撃退者“Abyss”……second…撃退者 エアレイド・ドラゴン…クリティカルトリガー!!効果はAbyssに」
神沢クンのダメージにローフルとパーシヴァルが落ちる…ダブクリの可能性も無くは無かったけど…
私は若干疑わしげに神沢クンを見つめる。
「ふっ…もう俺にはあんたのデッキは見れないよ」
「……そうなんだ」
ならばこのノーガードは神沢クンの賭けだったということか。
「そうでなければ…面白くない」
「……うん…そうだね!!」
私はトリガーを載せたAbyssをスタンドさせる。
「CB2とマナ、だったん、氷結の退却でAbyssは立ち上がる……エターナル・アビス!!プロミネンスコアを打ち砕け!!パワー27000クリティカル2!!」
「光陣の解放者 エルドルで完全ガードだ!!」
私はドライブチェックで超克の撃退者 ルケアと無常の撃退者 マスカレードを手札に加えた。
トリガーは出なかったが…私はダークでプロミネンスコアに追撃を与える。
まずありえないと思うが、この攻撃が通れば私の勝ちだ。
「ドリンのブーストしたブラスター・ダーク・撃退者でヴァンガードにアタック!!(16000)」
神沢クンは黄金の瞳を輝かせながら言い放つ。
「ノーガード、そしてヒールトリガー」
あまりにも滑らかな動きで神沢クンは5点のダメージを維持する。
「……ターンエンド」
私と神沢クンのダメージは4vs5……残念ながら私はカウンターブラストを使いきってしまった。
5点目のダメージを受けてやっと1枚…ブラスター・ダーク・撃退者と督戦の撃退者 ドリンのコンボなら更に1枚用意できるが、そう上手くいくかどうか……
「俺のターン……スタンドとドロー…そして」
神沢クンの瞳はさらに輝きを強くする。
分かる……何か特別なことをしているから輝いているのでは無い…彼も、デッキも喜んでいるのだ…このファイトを。
私の胸も高鳴っている。
「蒼く、青く、ひたすら輝け!!その火は決して消えず、その炎は竜に宿りて我らを照らし、その焔は全てを焼き付くす!!!ライド・my・ヴァンガード!!」
「青き炎の解放者 プロミネンスグレア!!!」
青き炎は消えず…奈落を照らそうとする。
* * * * *
「ヰゴールをコール…ソウルに入れカウンターブラストを表に、1枚ドロー……さて、ガノヱクでブーストしたゼヰールでアタック…パワー27000だ」
「……プロメチウムで完全ガードっす」
VFGP先鋒戦……舞原ジュリアンvs神沢コハク。
ダメージは3vs4……
「ゲット……ヒールトリガーだ」
いや3vs3だった。
舞原ジュリアン、神沢コハク共にリンクジョーカーを使うファイト…今のところ優勢なのは神沢コハクだろうか。
「ターンエンドだよ」
「僕は…この程度じゃびくともしないっすよ?」
僕はここまでのターンで2度、神沢コハクのデリートを受けてしまった……が、それでへこたれる僕じゃないっすよ。
「なかなか強がりだね…君」
「君も相当っすよ…たぶん」
僕は自分のターンを宣言し、スタンド、ドローと処理を進めていく。
前の僕のターンで呪縛した神沢コハクのリアガード達は既に解呪されていた。
が、今の僕にとっては問題じゃないっす!!
「行くっす……狂気の中に輝く閃光!!勇気と言う名の切り札!!ライド…ブラスター・ジョーカー!!」
僕の手から星輝兵 ブラスター・ジョーカー(11000)が降り立つ。
「ジョーカー……なるほど切り札ね…」
「まだまだ…これからっすよ!!力と力は惹かれ合い、新たな力を生み出す!シークメイト、双闘!!」
ブラスター・ジョーカーの隣には伴星の星輝兵 フォトンが並び立つ。
「マヨロンをレスト…ジョーカーにパワー+10000…そしてマヨロンを呪縛!!レギオンスキル!!」
僕は更にCBを2枚、SBを2枚というコストを払う。
「アブソリュートロック……君のリアガードは全て呪縛されるっす……さらに!!」
僕はヴァンガードを…いやレギオンメイトを指差す。
「アブソリュートブレイク…メイトはもうメイトでいられない……」
レギオンを、リアガードを破壊し、ヴァンガードを孤独にするのがブラスター・ジョーカーの力。
友に別れを……告げてもらう。
「へぇ……」
「ディラトンの上からアストロリーパーを、空いたリアガードサークルにマヨロンを、コールっす」
神沢コハクはリアガードを失い、僕は攻撃の布陣を整えた……正に形勢逆転っすね。
「ブレイブファングでブーストしたブラスター・ジョーカーでアタックっすよ!!パワー35000!!」
「ゴヲトとゴヲト、ヲルグ、プロヰーグでガードだよ(完全ガード)」
「……っ!?ドライブチェック…アポロネイル・ドラゴン…クリティカルっす…効果は全て右列のアストロリーパーに!!二枚目は…伴星の星輝兵 フォトン…トリガー無しっす……けど!アストロリー…」
「ジュヱルでガード」
「ならマヨロンでブーストした…」
「ノーガード、ダメージは嘲笑する根絶者 グヱム」
「……ターンエンド」
これでダメージは3vs4で僕の有利……
だけど、今のターンの攻撃を軽々といなされたことは若干ショックではあったには……あった。
「負けない……」
「怖い怖い…ヱガヲが足りないよ?舞原ジュリアン君」
「……っ」
神沢コハクのターンだ……リンクジョーカーはあまり手札の補充が得意では無い…新たなグレード3には乗らない……と思いたい。
だけど僕は思い出す、あのヰゴールとかいうFVでこまめにドローをしていた神沢コハクのことを。
「僕のターン…スタンド、ドロー…」
彼は不敵に笑うと手札からカードを見せる。
「虚空へ消えた魂を喰らう魔獣…並列する根絶者 ゼヰールに……ライドだ」
「…………」
「シークメイト…レギオン……更にスキル発動……」
神沢コハクはCB2を払い、手札からガタリヲをドロップし言った。
「“デリート”…」
三回目だ……僕のヴァンガード…ブラスター・ジョーカーはその力を失う。
神沢コハクは再びヰゴールをコールし、コスト回復とドローを行うとアタックを仕掛けてきた。
「……ノーガード」
「ドライブチェック……ヒールトリガー…クリティカルトリガー……」
ダメージはこれで5vs3……追い詰められているのは…僕の方だった。
「呪縛されたカードを解呪してターンエンドだ」
アタックしてもアタックしても……宙を掴むような虚無感が僕を襲う。
元スクルドの神沢コハクと、新たなる脅威…根絶者。
それが僕の敵、越えなければならない壁。
「僕のターン…スタンド、ドロー…」
「そろそろ負けを認めるかい?」
「ま・さ・か……僕は諦めが悪いんすよ……ブラスター・ジョーカーにライドっす」
そうだ…僕は諦めなんて言葉は使わない。
「シークメイト……双闘っす」
「…………」
「僕は……最強になるためにヴァンガードを始めた…僕がヴァンガードを諦める時は僕が最強になった時か、僕が死ぬ時だけっすよ…」
「一体……何が君を動かす……」
神沢コハクが鋭い目でこちらを睨む。
「僕は全てをこの手に掴む、掴んで叫ぶ、ここにいる、ここに生きているって……誰にも否定させない!!スキル発動!!アブソリュートロック!アブソリュートブレイク!!」
僕はマヨロンのスキルを発動させた後、マヨロンを呪縛し、神沢コハクのメイトとリアガードを再び封じた。
「ここに…生きている……否定させない?」
「ブレイブファングのブーストしたジョーカー…フォトンをソウルに入れクリティカルも増加…パワー35000クリティカル2でヴァンガードにアタックっす!!」
「……完全ガードだ」
神沢コハクは拒絶する根絶者 ヱビルをヒールトリガーをコストに発動した。
「まだまだ!!ドライブチェック…ヴァイス・ゾルダート…クリティカル!!効果はアストロリーパーに!二枚目は……っ、トリガー無しっすけど…アストロリーパー達で続けてヴァンガードにアタック!!パワー21000のクリティカル2っす!!」
「ノーガード……ダメージはクリティカルのメヰズ、そしてヲクシズ」
「アストロリーパーのスキル発動!!SB1!山札の上から5枚見て、ヴァンガードと同じユニットをサーチ…見つからない……ターンエンドっ!!」
これでダメージは5vs5…僕と神沢コハク…そろそろどちらが倒れる頃だった。
「君は……強いんだな」
「……最強のヴァンガードファイターになる男っす…覚えておいてほしいもんすね」
「やはり…君自身の望みが君を強くしているのかな」
「それだけじゃないっす……もし負けたら後でお嬢に怒られるっすからね」
「はははっ……そうか……」
神沢コハクが山札からカードを引く。
「だったら……怒られてもらおうかな」
「……何を」
神沢コハクはヴァンガードをスタンドさせる。
「これが答えさ…ライド、穢れし愚者の魂を乗せて、来い!!威圧する根絶者 ヲクシズ…!!」
それは初めに僕達をデリートしたユニットだった。
その恐ろしい所は、相手の再ライドに制限をかける点だ…デリートとデリート解除を妨害する完璧なユニットと言っていいのかもしれない。
「虚無に消え去れ……“デリート”」
「……っ!!」
4回目のデリートが僕達を襲う。
「何度立ち上がろうと……無駄だね」
「……」
「存分に絶望を喰らうといい!!ヲクシズでブラスター・ジョーカーの成れの果てにアタック!!(21000)」
その攻撃に対して僕は……手札を一気に広げた。
「テルル、ヴァイス、アストロリーパーでガード、更にリアガードのアストロリーパー2体でインターセプト!!これで…完全ガードっす!!」
僕の手札にはグレード1のカードが立った1枚残されるのみとなった。
「ドライブチェック……クリティカルトリガーとヲクシズだ……ターンエンド」
ダメージは変わらず5vs5…
だけど……
「僕のターン…スタンド…………」
僕はひたすら祈りながらカードを引く…ここでグレード3を引かなければ僕はヴァンガードのデリートを解除できず、パワーは0のままだ。
「ドロー…………」
「どうだったかな?」
僕の手札がグレード1の1枚しか残っていないことを神沢コハクは分かっていた。
そしてグレード3にライドするにはヲクシズのスキルによる妨害で、手札を捨てなければならない。
神沢コハクのガード値は…インターセプト込みで20000…彼もここまででかなりの手札を消費していた。
こちらは前列のリアガードもいない、ヴァンガードもデリートされている上に新たなリアガードの展開もほぼ不可能だ。
「…………このままメインフェイズっす」
僕は手札に入ったドロートリガーを見つめる。
デリートは……解除できなかった。
「残念だけど……これで……エンドだ」
「…………」
僕は何も言い返さず、顔を伏せる。
僕の長い銀髪は僕の表情を隠した。
「君の勝利への道は根絶された……」
神沢コハクがうなだれる僕に言い放つ。
根絶者……それは全てを無に帰す、虚無の使者。
その前に誰もが力を失い、倒れていく。
「デリート・エンド……」