君はヴァンガード   作:風寺ミドリ

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053 輝きの果て

少しずつ空が紅く染まりつつある…そんな時間。

 

VFGP決勝戦が続いていた。

 

「ヒカリさん…」

 

天乃原チアキは倒れそうなふらつく体を無理矢理起こし、その様子を見守っていた。

 

周りにはカードショップアスタリアの春風ユウキや、同級生の黒川ユズキの姿もある。

 

そんな中チアキはおどおどした女の子を見つけた。

 

「……ラシン君…」

 

「あなた…神沢ラシンのお知り合い?」

 

「ひゃあっ!?」

 

栗色の髪の女の子は驚き、チアキの方を見る。

 

「え……あ、あのああ…あなたは?」

「いきなりごめんなさいね、ほら…あそこで神沢ラシン達と戦ってるチームのリーダーが私なの」

 

「あ、そ、そうなんですか…私も…一応ラシン君のチームのチームメイトです……」

 

(あのチームに金髪以外の子がいたのね…)

 

「そうなんだ、私は天乃原チアキ…よろしく」

 

「あ……佐伯カミナです」

 

チアキとカミナはステージの方を見る。

 

どの試合も既に山場に入ったという印象だった。

 

 

「しかし……神沢ラシンは女装似合ってるわよね…怖いわ…あのひらひらした服も…そもそも持ってるのが変よ」

 

「………実はあの服…私のです///」

 

「……え?……えええええ!?…あの野郎、人様の服ひんむいて着てるの!?」

 

「ち、違いますー!か、か、貸しただけで」

 

「いやー…それもどうかと思うわ……」

 

チームシックザールとチームゴルディオンの戦いも終盤に入っていくのだった。

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

 

 

「シークメイト…双闘!!煉獄竜 ブレイクダウン・ドラゴン!!煉獄竜騎士 タラーエフ!!」

 

VFGP決勝……青葉ユウトと神沢マリの戦いも続いていた。

 

「ペタルフレアのスキル発動!ソウルにいれて、ヴァンガードにスキルを与える!!」

 

そのスキルとはアタックがヒットした時に相手のリアガードを1枚退却させるというもの。

 

1ターンの間続く効果であるため、基本的には煉獄皇竜 ドラゴニック・オーバーロード・ザ・グレートのようなVスタンドユニットで使われることが多い。

 

「煉獄闘士 マレイコウ(7000)をコール!!」

 

そしてマレイコウ…彼は自分と同じ列の相手のユニットが退却された時にソウルブラストでカウンターブラストを回復するという効果を持っていた。

 

ちなみにペタルフレアは“双闘時”、マレイコウは“Vが煉獄”であることがスキルの発動に必要だ。

 

ここまでおさらいして、俺は一息ついた。

俺だって勝つさ…リーダーやヒカリ、ジュリアン達みたいに!!

 

拳に力を入れ、俺は宣言する。

 

「ブレイクダウンのレギオンスキル発動!!CB3でサウルとスザンナを退却!!」

 

そして俺はブレイクダウンの追加効果とマレイコウのスキルでカウンターブラストを表にしていく。

 

これで俺は実質CB1、SB1で2体のユニットを凪ぎ払ったことになる。

 

現在、俺と神沢マリのダメージは3vs2…負けてはいるが、まだまだこれからだ!!

 

「ブレイクダウンでヴァンガードにアタック!!パワー23000!!」

 

「ノーガードかな!」

 

俺はドライブチェックを行う…捲れたのはドロートリガーとドラゴニック・ガイアースだった。

 

「ダメージチェック…ハイビスカスの銃士 ハンナ…ヒールトリガーだけど回復は無し、パワーはヴァンガードに!」

 

「ブレイクダウンに付加したスキルを発動!!牡丹の銃士 トゥーレを退却!!」

 

どんどん焼いていく。

 

「ガイアースのブーストした、マレイコウでヴァンガードにアタック!!(18000)」

 

「レベッカでガード!!」

 

「ターンエンドだ」

 

大分焼き払えたか……?

 

ダメージも同点まで追い付いた。

 

見たところネオネクタールはスペリオルコールに特化しているのかもしれないが…全部焼いてしまえばいいのではないだろうか。

 

というか、今の俺に他のことはできない。

 

「いやー……焼かれちゃったねー…」

 

神沢マリのヴァンガードはリコリスの銃士 ヴェラ、今残っているリアガードは後列に鈴蘭の銃士 レベッカというのが1枚だけ。

 

ここから新たにリアガードを増やすには時間がかかるのではないか…いや、そうでなくては困る。

 

「私のターン…スタンド、ドロー……」

 

神沢マリは少し考えているようだ。

 

「うーん…コハク兄の言う通り入れておいて良かったよ……本当に出番があった…」

 

彼女はドロップゾーンの枚数を数えながら呟いた。

 

「…?」

 

「それは誰もが見とれる壮麗なる王の花!ライド!牡丹の銃士 マルティナ(11000)!!!」

 

新しいグレード3…何をする気だ?

 

「吹き荒れろ花の嵐!!大輪の花よ!!マルティナ…トゥーレ……双闘!!」

 

白と紅の可愛らしい女の子が剣を構え、並び立つ。

 

「レギオンスキル!!CB1!ドロップゾーンから銃士のノーマルユニットを5枚山札の下へ!!山札の上から4枚見て2枚……牡丹の銃士 トゥーレと蓮の銃士 リアナ(5000)をスペリオルコール!!」

 

一気に2枚……片方はドロートリガーとは言え、リアガードが復活する。

 

神沢マリはデッキをシャッフルしてから、更にスキルを発動させる。

 

「トゥーレのスキル…リアナを退却して…山札の上4枚から……パンジーの銃士 シルヴィアをスペリオルコール!!」

 

このファイトで既に目にしたパワー7000でグレード2のユニットが再びユウトの前に現れる。

 

「シルヴィアのスキル発動!!……デッキトップから…青薔薇の銃士 エルンストをスペリオルコール!!スキルで自身を山札の下に!CB1!!上から4枚見て…牡丹の銃士 トゥーレをスペリオルコール!!」

 

これでリアガードは前のターンから残っているものを合わせて4枚……しかもスキルの発動を繰り返すことでどんどん質のいいリアガードへと置き換わっていく。

 

「トゥーレのスキル…シルヴィアを退却して……睡蓮の銃士 ルースをスペリオルコール!!」

 

 

……長かった。

 

ずっと感じていたがあのデッキはメインフェイズが長すぎる。

 

その原因は、スペリオルコールした回数だけ、デッキをシャッフルしなくてはならないからだ。

 

あのたった数文字が無ければ、きっと、とても見ていて楽しそうなんだがな……

 

「牡丹の銃士でアタック!!パワー23000!!」

こちらのダメージは3点……なら。

 

「ノーガードだ!」

 

ここで負けるなら、結局勝てないだろ!

 

「ドライブチェック…クリティカル!☆はVに、パワーはトゥーレに…そしてルース!トリガー無し!」

 

俺のダメージゾーンにボーテックス・ドラゴニュートが落ち、そして……

 

「……煉獄の踊り子 アガフィア、ヒールトリガーだ!!ダメージを回復して、パワーはヴァンガードに与える!!」

 

まだ俺の運も捨てたもんじゃないな!!

 

「なら…ルースとトゥーレ…パワー21000でヴァンガードにアタック!」

 

「バスターレイン・ドラゴンでガード!!」

 

「レベッカとトゥーレでヴァンガードに!(16000)」

 

「ガイアースでガード!!」

 

「……ターンエンドだよ」

 

俺にターンが回る。

 

俺も…やられっぱなしじゃあいられない。

 

「俺のターン……スタンド、ドロー…そして」

 

俺はそのカードを手札から抜く。

 

「目覚めろ!穢れを滅する蒼き煉獄竜よ!!ライド!ボーテックス・ドラゴニュート!!」

 

俺がライドしたのは煉獄竜 ボーテックス・ドラゴニュート(11000)…このデッキの主力のグレード3だ。

 

「マレイコウの上から煉獄竜騎士 タラーエフをコール!!そして、シークメイト!双闘!!」

 

煉獄竜 ボーテックス・ドラゴニュートに並び立つのは煉獄竜 ワールウインド・ドラゴン……そしてこれでおわりじゃない。

 

「レギオンスキル!!CB2、ペルソナブラスト!」

 

俺は手札からワールウインドをドロップする。

 

 

「タラーエフの前にいるトゥーレとルースを退却!そしてヴァンガードにトリガー無効の一撃を与えるぞ!」

 

 

「む…ダメージチェック…牡丹の銃士 マルティナだよ…」

 

 

これでダメージは4vs4……

 

 

「今の退却によってボーテックスにパワー+6000、タラーエフにパワー+10000!!」

 

さぁ……行くぞ!

 

「ボーテックスのレギオンアタック!!パワー26000だ!!」

 

「……キルスティでクインテットウォールを起動します!!……ダニエル、エルンスト、サウル、サウル、ハンナ!!!ガード値40000!!完全ガード!」

 

「……ドライブチェック!!ランパート・ドラゴン、ワールウインド……トリガー無しだ…が、ガイアースのスキルでタラーエフにクリティカルを与えアタックする!!パワー19000クリティカル2!!」

 

「クリティカルトリガー…月下美人の銃士 ダニエルでガードだよ!!」

「ターンエンドだ…」

 

 

出来ればもう少し責めて行きたかったが、どうにもこうにも手札が足りない……

 

出来る限りの攻撃はしたつもりだったが……

 

 

「なかなかしぶといねー」

 

「ははっ……当たり前だ、勝ちたいからな」

 

「私もだよ!」

 

「そうか!」

 

 

今までカードゲーマーという人種をバカにするどころか、存在すら知らなかった俺が…カードゲームの大会の決勝戦で戦っている。

 

本当に…不思議なもんだ。

 

こんな不思議な出来事に巡り合わせてくれたリーダーや皆のために、俺も勝ちたいんだ。

 

 

「私のターン……スタンド、ドロー!!」

 

まずは目の前のターンを…乗り越えて行く!!

 

「それは咲き乱れる情熱の花!ライド!リコリスの銃士 ヴェラ!!そして吹き荒れろ花の嵐!!…ヴェラ…サウル…双闘!!」

 

神沢マリは更にリアガードに睡蓮の銃士 ルースをコールしてくる。

 

「花は咲き、嵐は終らない…ヴェラのレギオンスキルで全ての銃士にパワー+3000!!」

 

彼女の手札は殆ど無い…が、俺もこのターンの後に残っているか微妙なってきている。

 

「ヴェラとサウルでレギオンアタック!!(26000)」

 

 

トリガー1枚が勝敗を分ける状況だ。

 

 

「煉獄竜 ランパート・ドラゴンで完全ガード!!」

 

 

コストとしてドロップしたのはドロートリガー。

 

 

「……むぅ!ドライブチェック…蓮の銃士 リアナ!ドロートリガー!!1枚引いて、パワーはルース!!…もう1枚は…アネモネの銃士 スザンナ!!トリガー無しだよ!」

 

俺は冷や汗を流す……この状況でドロートリガーを引かれると…勝てそうにないって感じてしまう。

 

「ルースでヴァンガードにアタック!!(18000)」

 

「タラーエフでインターセプト!ワールウインドでガード!!」

 

これで俺の手札が底をつく。

 

「レベッカのブーストした牡丹の銃士 トゥーレでヴァンガードにアタック!!」

 

「ノーガード!ダメージチェック…煉獄竜 ランパート・ドラゴン……」

 

「ターンエンド!!」

 

俺にターンが回ってくる……だけど今の俺に何ができると言うのか。

 

ダメージは俺と彼女で5vs4。

 

手札が無い、リアガードもガイアースしかいない今の俺に……

 

 

「俺のターン……スタンド…ドロー……っ!!」

 

 

俺は掴んだのかもしれない…勝利の栄光を掴むための最後の挑戦権を。

 

そう手札に来た1枚のカードを見て思った。

 

神沢マリの手札は4枚…インターセプトも残っている…ここから勝てるかは分からない……だけど、諦める理由にはならない!!

 

「行くぞ……レギオンスキル発動!!」

俺はコストを…CB2と、たった今ドローした煉獄竜 ボーテックス・ドラゴニュートをドロップする。

 

「リアガードのトゥーレとルースを焼き払う!!」

 

「……ああっ!」

 

前列にいた2体のユニットが退却される。

 

「そしてトリガー無効の1ダメージ……これが…トリニティクリムゾンフレイム!!!」

 

「ダメージチェック…ハイビスカスの銃士 ハンナ…ヒールトリガーだけど…」

 

俺の方がダメージを受けていたため、そもそも回復はしない上にトリガー無効の影響でヴァンガードにパワーを与えることも許さない。

 

これで互いにダメージは5点!!

 

俺は残されたリアガード…ドラゴニック・ガイアースを前列へと出す。

 

「さぁ……ボーテックスのレギオンアタック…パワーは26000!!ヴァンガードにアタックだ!!」

 

「まだだよ!!胡蝶蘭の銃士 キルスティでクインテットウォール!!」

クインテットウォールが起動し、5枚のカードがガーディアンサークルに置かれる。

 

牡丹の銃士 マルティナ…ガード値0

 

牡丹の銃士 マルティナ…0

 

月下美人の銃士 ダニエル…10000

 

リコリスの銃士 ヴェラ…0

 

月下美人の銃士 ダニエル…10000

 

合計ガード値…20000

 

 

「……追加でスザンナをコール!!これで2枚貫通だよ!!」

「ドライブチェック…っ!!煉獄竜騎士 トゥーヴァー!!クリティカルトリガーだ!!」

 

俺は考える…神沢マリの手札は残り2枚…確実に1枚は先程引いていたドロートリガーの筈だ。

 

俺がこのトリガーをガイアースに乗せたところで、もう1枚トリガーが出なければアタックが通る見込みさえない、いや、それでも防がれるかもしれない。

 

なら…今!、2枚貫通を狙う!!

 

「効果は全てヴァンガードに!!!」

 

「……っ!!」

 

「セカンドチェック…………っ!!」

 

俺は引いたカードを高く掲げる。

 

「煉獄竜 バスターレイン・ドラゴン!!!ゲット!クリティカルトリガー!!!効果は全てヴァンガードのボーテックスだ!!!」

 

 

神沢マリのダメージゾーンにかすみ草の銃士 ライサが落ちる。

 

 

「負けちゃったか……」

 

 

「…………」

 

 

俺はしばらくそのダメージゾーンを見つめた。

 

「……勝った…………のか」

 

「おめでとうだね」

 

「……………………勝ったんだ!!!」

 

 

 

俺は叫びだしそうになるのをこらえ、神沢マリと握手を交わす。

 

 

 

「一番大事な所で冷静になれる…いいファイターになれると思うよ!…惚れちゃうかも」

 

「ははっ……俺なんてまだまだ……」

 

 

 

そこで俺は気づいた…ヒカリと……ジュリアンはどうなった!?

 

 

俺が隣を見ると舞原ジュリアンはガックリとうなだれていた。

 

こちらからでは…その表情は窺えない。

 

 

「どうやら、チームの勝敗はラシン兄に預けられたみたいだね」

 

「神沢ラシン…ヒカリ……」

 

俺が振り返った先で……

 

ヒカリとラシンは一進一退の攻防を繰り広げていた。

 

 

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

「プロミネンスグレア……か」

 

「ああ」

 

 

私と神沢クンのダメージは4vs5…13ターン目。

 

神沢クンはドロップゾーンからカードを選ぶ。

 

「煌めく極光の中で輝き続ける青き炎よ!我らに祝福を与えよ!!!双闘!!!」

 

再び、青き炎のコスモドラゴンが姿を変えて私の前に立ちはだかる。

 

「凄まじい…何かを感じる……」

 

「……そうだ、本領はここからだ」

 

神沢クンがローフル・トランペッターのスキルを発動させる。

「疾駆の解放者 ヨセフスをスペリオルコール…スキルでSB1…1枚ドローだ」

 

勿論……それだけでは終わらなかった。

 

「グレアのレギオンスキル…CB1、パーシヴァルをドロップしてクリティカルとガード制限を得る…リアガードのブルーノ2体もパワー+3000だ」

 

片方のブルーノはヴァンガードの後ろにいる。

 

恐ろしいことが始まる。

 

「プロミネンスグレアのスキル…CB1でヨセフスを退却……理力の解放者 ゾロンをスペリオルコール……グレアのレギオンスキル発動、CB1、プロミネンスコアをドロップし、クリティカル+1…ブルーノ達に更にパワー+3000」

 

クリティカルとパワーはどんどん上がっていく。

 

「ゾロンのスキル…自身をソウルに入れて…定めの解放者 アグロヴァルをスペリオルコール……グレアのレギオンスキル発動だ、CB1…プロミネンスグレアをドロップし、更にクリティカル増加…ブルーノ達も+3000する」

 

これが神沢クンのデッキの力の……一端。

 

「定めの解放者 アグロヴァルのスキル……SB1で…プロミネンスコアを手札に加える」

 

 

神沢クンが黄金の瞳でこちらを見つめ、私は緋色の瞳で答える。

 

 

「ブルーノのブースト…プロミネンスグレアのアタック!!青き炎は騎士に宿りて奇跡を起こす…これが魂の一撃だ!!パワー36000、クリティカル4!!グレード1以上のカードでガードすることは出来ない!!」

 

 

「36000とか……クリティカル4とか…」

 

 

身の毛もよだつ攻撃だよ……本当に。

 

 

「厳格なる撃退者、撃退者 エアレイド・ドラゴン、撃退者 エアレイド・ドラゴンでガード!ブラスター・ダーク・撃退者でインターセプト!!(2枚貫通)」

 

 

「……ドライブチェック…ころながる・解放者、そしてドロートリガー…パワーはローフルに与える」

 

 

攻撃は終わらない。

 

「ヨセフスのブーストした定めの解放者 アグロヴァルでヴァンガードにアタック!!(18000)」

 

「ブラスター・ダーク・撃退者“Abyss”と無常の撃退者 マスカレードでガード!!」

 

「五月雨の解放者 ブルーノのブースト、ローフルでヴァンガードにアタックだ!!(30000)」

 

「…ノーガード!ダメージチェック…氷結の撃退者…ドロートリガー!!1枚引くよ…」

 

「ターンエンドだ」

 

私と神沢クン……二人の髪がどこからか吹いた風で揺れる。

 

互いにカウンターブラストは殆ど使いきっている。

 

私も今のままでは、ファントム“Abyss”を使うこともできない。

 

私たちは互いに相手を追い詰めていた。

 

「私のターン……スタンドandドロー…」

 

身を削り、勝負に出る!!

 

「超克の撃退者 ルケアをコール!!そしてエアレイド・ドラゴンとシャドウランサーをコール!ルケアに力を与えよ!」

 

ルケアはスキル…グレード1以下のユニットがコールされる度にパワー+3000……によって自身のパワーを15000まで引き上げていた。

 

そして私はこの時点で、次のターンへの準備を始めていた。

 

それがうまくいくかは分からない、タイミングを間違えたのかもしれない…今できるのは自分とデッキを信じることだけだ。

 

「エアレイド・ドラゴンでブーストしたAbyssでヴァンガードにアタック!!パワー27000!!」

 

「……希望の解放者 エポナ、霊薬の解放者、定めの解放者 アグロヴァルでガードし、定めの解放者アグロヴァルでインターセプトだ…完全ガード…」

 

「ドライブチェック……first…撃退者 エアレイド・ドラゴン、クリティカルトリガー!!効果は全てルケア……second…氷結の撃退者、ドロートリガー!!1枚引いて、パワーをルケアに!!」

 

私は全力をルケアに注いだ。

 

「……これは…」

 

「パワー32000、クリティカル2…ドリンがブーストしたルケアでヴァンガードにアタック!!」

 

「……大願の解放者 エーサス、ころながる・解放者でガード、ローフル・トランペッターでインターセプトだ……」

 

「ターンエンドだよ……」

 

ダメージは変わらず5vs5…だけど、このターンは神沢クンの手札に大きな損害を与えられたと思う。

 

これで次のターン…神沢クンがどうくるか……

 

そう考える一方で、私は今のターンであるカード引けなかったことを悔しく思っていた。

 

次の私のターン……“ファイナルターン”に必要なカードを……

 

「俺のターン…スタンドとドロー……ライドだ…揺らめく炎にその身を委ね、青き極光、闇退ける!!青き炎の解放者 プロミネンスコア!!……青き炎は決して消えることなく、闇に覆われた世界を包み込む!!シーク……my!!メイト!!!」

 

神沢クンの瞳は黄金に輝いている。

 

私はその瞳に“勝ちたい”という強い意思を感じた。

 

 

「プロミネンスコア!!アグロヴァル!!双闘!!」

 

 

神沢クンは後列にいた疾駆の解放者 ヨセフスを前列へと出した。

 

ファイトも終盤…互いにあまり手札は残されていないのだ。

 

「プロミネンスコア…レギオンアタック!!(27000)」

 

「クリティカルトリガー2枚と…ドロートリガーで2枚貫通!!」

 

「ドライブチェック…霊薬の解放者、ヒールトリガーだ…パワーをエーサスに与え、ヒールする」

 

 

私は内心舌打ちをする。

 

この状況で相手のダメージに余裕ができてしまうのは嬉しくない。

 

手札の底が見える今だからこそ、相手にノーガードと軽く言わせてしまうのは辛かった。

 

「セカンドチェック、プロミネンスコアだ……ヨセフスでヴァンガードにアタック!(12000)」

 

「………ルケアでインターセプト」

 

「ターンエンドだ」

 

ダメージは私が5…神沢クンが4……

 

私に残された手札は少ない。

 

神沢クンの黄金の瞳がこちらを見つめている。

 

私は自分の瞳がもう輝いていないことに気がついていた。

 

私の“力”は1回限り……それでも願わざる終えない。

 

私に……もう一度力を貸して…皆……

 

あと少しなんだ…あと少しで……

 

 

「私の……ターン……」

 

私はユニット達をスタンドさせ、山札に手を伸ばす。

急に胸の鼓動が速くなる、熱く、熱く…体の温度が上昇するような感覚もある。

 

そしてそれらの感覚に相反するように、私を引きずり込むような睡魔が襲いかかってくる。

 

その感覚は以前、神沢クンとファイトし、彼の預言が外れた後に起きた物と似ていた。

思えば……あの時も“力”が発動していたってことなのかな……

 

 

ねえ……ドラグルーラー……

 

 

「……なるほど…あんたの最後の意地か?」

 

「最期になるのは君だよ……神沢クン」

 

 

私はドローしたカードを見せる。

 

 

「あなたは私と…このドラグルーラー・ファントムが倒す」

 

「面白い……来い!!」

 

「掴むよ……ファイナルターン!!!」

 

 

黄金の瞳と緋色の瞳は輝き、ぶつかり合う。

 

二つの光はこのファイトの中で、交差し、さらに輝きを強めた。

 

そしてその輝きの果て…私は無理矢理“力”を発動させることができた。

 

その奇跡……無駄にはしない!!

 

 

「誰よりも世界を愛し者よ!!奈落の闇さえ光と変えて…今再び、共に戦おう!!!クロスライド・THE・ヴァンガード!!!」

 

私の緋色の瞳は…恐らく奈落竜の瞳を意味している。

 

……今きっと、私たちは“つながっている”

 

 

「撃退者 ドラグルーラー・ファントム!!」

 

 

ソウルにモルドレッドがいるお蔭でドラグルーラーのパワーは常に13000になる。

 

 

そして私はCB1という残された最後のカウンターブラストを使い、撃退者 エアレイド・ドラゴンと鋭峰の撃退者 シャドウランサーを退却させる。

 

 

「この一撃は全てを撃ち抜く……ドラグルーラーのリミットブレイク!!…ミラージュストライク!!」

 

 

青き炎の解放者 プロミネンスコアをドラグルーラーの強制ダメージが襲う。

 

ダメージに落ちたのは、グレード2の解放者 ローフル・トランペッター……

 

これで神沢クンのダメージは5点。

 

 

 

「…さぁ……終焉だ…」

 

 

 

 

ドラグルーラー・ファントムが、深見ヒカリが…緋色に瞳を輝かせながらそう言った。

 


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