君はヴァンガード   作:風寺ミドリ

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056 過去への招待状

時刻は午前7時12分……そろそろ時間だ。

 

九月も末…私は学校へ向かうため家を出る。

 

「あれ……これ何だろう…」

 

ポストの中に何かが入っているのに私は気がついた…これは……

 

「……招待状?」

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

 

その日の放課後、私たち1-Bの生徒は教室に集っていた。

 

「……という訳で、これから学祭の出し物を決めて行きたいと思います!!」

 

学級委員長の広瀬アイさんが宣言する……そう、もうすぐこの高校の学校祭が行われるのだ。

 

クラスで行われるのはステージ発表と教室展示の二つ…それを来週までに決めなければならない。

 

「はい、はい……、満場一致ですね…ではヒカリ様!!」「「ヒカリ様!!」」

 

「!?」

 

……何?…恐いよ…そもそも何故“様”…これじゃまるで親衛隊みたい…いや、まさか……

 

私が少し現実から逃げようとした時、さらに信じられないような言葉が聞こえてきた。

 

「全てお任せします!!必要な物があれば、私たちになんなりとお申し付けください!!」「待って」

 

…新手のいじめ?…なんてこったい…一体どういうこと…何だろう。

 

「えっと……あの……」

 

「あ!ご報告が遅れました!!我々1-B一同、ヒカリ様の親衛隊に無事入隊いたしました!!」

 

「ちょっ……待っ……」

 

「「「では!!」」」

 

「待って!!??」

 

放課後の校舎に私の叫びがこだまする。

 

そして彼ら彼女らは私に全てを押し付けて…帰ってしまった。

 

茫然と立ち尽くす私に青葉クンが声をかける。

 

「この際はっきり言ったらいいんじゃないか?…ウザイって」

 

「……青葉クン」

 

教室に残されたのは私と青葉クンの二人。

 

「ウザイというより……何か恐いよね」

 

「……大問題じゃないか」

 

「……うん」

 

この後三年間ここで過ごすことを考えると…そろそろ改善に向けて自分で動かないとダメかな…

 

「まぁ……今はそれよりも学校祭のことの方が問題だよ……みんな帰っちゃったし…」

 

「……そうだな(教室の外に全員いて、俺に殺気を送ってきてるけどな)」

 

こうして私の…“学校祭”の探索の旅が始まるのであった。

 

 

「……さっき広瀬さんが1-B一同って言ってたけど、まさか青葉クンも親衛隊に……」

 

「入るように見えるか?」

 

「……そだね」

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

時間が経った。

 

はっきり言おう……考えが纏まらないと。

 

 

「何を……すればいいんだろう……」

 

「本当にな…」

 

「困ったもんっすね」

 

「全くだ」

 

私達四人はため息をつく。

 

……四人?

 

私は新たに増えていた二人の存在に気がついた。

 

 

「舞原クンに…ユズキ……どうして…」

 

「ヒカリさんがシークメイトしたんじゃないっすか」

 

「違うぞ舞原君…ソウルメイトレギオンだ」

 

「いや…覚えないし…そもそも二人とも別のクラスだよね…」

 

「「ま、暇だから」」

「そ、そう……」

 

……とはいえ別のクラスの話が聞けるいい機会だ。

 

私は二人にそれぞれのクラスの出し物について尋ねる。

 

「知らないっす」「決まってないな」

 

……どうにもならないよ…

 

 

青葉クンが呟く。

 

「せめて…先輩達が何やってたか聞ければいいんだがな」

 

「……それだ」

 

私は青葉クンのその言葉で気がついた、私たちには天乃原チアキさんという頼れる先輩がいるということを。

 

しかも天乃原さんは生徒会長……確か来週には次の生徒会に引き継ぎだから…そうだ、天乃原さんなら去年の学校祭を取り仕切っていた筈だ!!

 

「天乃原さんと話…舞原クン、天乃原さんどこにいるか分かる?」

 

「あー…お嬢なら今頃塾っすね」

 

「……そっか、受験生だもんね…」

 

……振り出しに戻ってしまったか。

 

他の上級生に話を聞くほど度胸は無いしなぁ……

 

……私の場合、たぶん…喧嘩腰になりかねない…

 

「ほら……青葉君もヒカリと同じクラスなら考えろよ?」

 

「考えてるっての」

 

うーん…どうにもありきたりな物しか浮かばない…というか、お化け屋敷か喫茶店しか浮かばない。

 

それも具体的な形が見えない……ステージ発表なんて尚更だ。

 

「せめて…去年見に来れば良かったんだよね…皆は見に来た?…ここの学校祭」

 

「いや…」

 

「見てないっす」

 

「私も見てないな」

 

期待を裏切らない返事だ…見に行っていたのなら、誰か何か言ってくれそうだもんね……

 

「どこか別の学校の学校祭が見れれば良いんすけどね」

 

別の学校…やっぱり直に見たいよね…直に…「あ」

 

「「「???」」」

 

私は今朝のことを思いだし、鞄に手を伸ばす。

 

今朝、家に届いた招待状…あれは確か……

皆が不思議そうに見つめる中、私は一枚のハガキを取り出した。

 

「……それ、何すか?」

 

「学校祭の招待状……私の通っていた中学校から届いたんだ……」

 

ハガキには私のよく知る校長の名前が書かれていた。

「…そんなの届くのか」

 

「あー…まぁ……ね」

 

青葉クンの疑問に私はお茶を濁す…色々あったんだよ…色々……ね。

 

「しかし…中学校の学校祭なんてあてになるのか?」

 

ユズキの疑問はもっともだろう。

 

「……でも、何かヒントくらいは掴めるんじゃないかな……」

 

やはりネット等で調べるより…実際の空気を肌で体感したかった。

 

……そもそも私が中学に通っていた頃は結局一回も学校祭を開くことが出来なかったのだ。

 

「取りあえず明日…行ってみるよ」

 

「明日……?」

 

青葉クンが首を捻る。

 

「明日って…平日じゃなかったか?」

 

「何を言っているんだ青葉君、明日は開校記念日だろう?」

 

「ああ…なるほどな」

 

 

そう……私もそれを知って驚いた。

 

……ちょうど休みの日と重なるなんて…そもそもそうでもなければ行くことなんて出来なかった訳だけど、これは正に天が私に行けといっているのだろう……なんてね。

 

「じゃあ、明日は天台坂駅に集合だな」

 

「え……来るの?」

 

「「「もちろん!」」」

 

……確かに私一人では心細かったから嬉しいんだけど…

 

「同じクラスだしな」

 

「ヒカリの中学に興味わいたしな」

 

「面白そうっすから」

 

その言葉に私はほっと息をつく。

 

「……ありがとう…これで天乃原さんも来れたらいいんだけど…」

 

「あー…お嬢は明日、センター試験の願書の払い込みに行くそうっすよ」

 

「じゃあ邪魔出来ないな……」

 

私は窓の外を見つめた…すっかり辺りは暗くなっている。

校内にも人の姿は少なく、そろそろ下校した方が良さそうだ。

 

結局今日は何の話も纏まらなかったけど、明日、北宮の中学校に行くことが決まった。

 

再び…私はあの校門をくぐるのだ…あの、以前は荒れ果てていた中学校へ…

 

母校へ……

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

 

翌日、休日

 

 

いや……休日なのは開校記念日で休みである私たちだけであり、一般の人にとっては平日だ。

 

私と青葉クン、舞原クンにユズキの四人は電車に乗って北宮まで向かっている。

 

「…しかし、ヒカリの話を聞くだけだと相当ヤバい学校なんだな」

 

「昔の話だよ、昔の……だから青葉クンが身構える必要は無い…当時だって私より強い人はいなかったし」

 

確かに以前は“相当ヤバい”学校だったが今ではかなり落ち着いている筈だ。

 

ちょうど一年前くらいからだろう…あそこが普通の中学校に戻ることができたのは。

 

おかげで当時の一年生…今では二年生か…彼らには嫌な物を見せずに済んだ。

 

「とにかく今日は…自分達の学校祭のヒントを掴まないとね……」

 

「私関係ないからなぁ」

 

「僕も関係ないっすからね…別のクラスっすから」

 

「むしろお前ら何で来たんだ…」

 

「ははは……」

 

 

何はともあれ…もうすぐ北宮……か。

 

電車が駅に到着すると、私達は北宮の町を歩き出した。

 

春風さんがいるカードショップアスタリアとは駅を挟んでちょうど反対の方向だ。

 

 

「ここから……ちょっと歩くよ」

 

 

「……ならヴァンガードの話でもするっすか」

 

「「そういえば暫くしてないな」」

 

私は少し考える……

 

 

「話っていってもなぁ…まだ今後の展開も分からないし…」

 

 

「そうだな……青いドラゴンの話なんてどうだ」

 

「なるほど、アクアフォースっすね?」

 

 

「いや違」「最近のアクアフォースといえば、テトラバーストにがっかりしたって話ばっかりっすね」

 

「正に期待が破裂(バースト)だな」

 

 

明らかにウォーターフォウルやボーテックスの話がしたかった青葉クンが落ち込む。

 

 

「そんなアクアフォースといえば個人的にブライクライドユニット…蒼翔竜 トランスコア・ドラゴンが印象的っすね……僕はあれとメイルЯのコンボに苦しめられた物っす…勝ったっすけどね」

 

トランスコアのスキルはヴァンガードのアタック時に手札を一枚捨てることを要求し、捨てなければクリティカルを増やし、ガードを不可にするというものだ。

 

そしてメイルЯは……

 

「メイルЯは四回目のアタックがヒットしなかった時に一枚引いて、相手のユニットを一枚退却……これをこちらが四点や五点の時に使われるとなかなか辛いんすよ」

 

「だが、私にとってはトランスコアはテトラドライブと合わせて使うのが一番強い印象だな、やはりVスタンドは驚異だ」

 

「テトラドライブにトランスコアを使わせることで互いのポテンシャルを最大限に引き出すことが出来るって感じっすかね、そんなテトラドライブとテトラバーストは噛み合わせが悪いっす…バーストは素直にレギオンデッキにした方がいいっすね」

 

「同じテトラなんだがなぁ……」

 

「そうっすねぇ……」

 

 

 

「……何かしんみりしているんだが…」

 

「あはは………」

私たち四人は北宮の町をゆっくり進む。

たった半年前まで通っていた学校だ、そう簡単に場所を忘れたりしない。

 

「それにしても…静かで良いところじゃないか?」

 

ユズキが呟く。

 

「一昨年まではあちこちでバイク事故があったけどね……」

 

「……」

 

本当……駅のこちら側は昔比べて本当に落ち着いたと…心の底から思う。

 

昔はもっと殺気だった町だった。

 

「そろそろ見えてくるよ…」

 

「お、あの学校っすね」

 

白い校舎が見えてくる……校門で校長が待っているのが見えた。

 

私は大きく手を振る…すると向こうも気がついてくれたのか、手を振り返してくれた。

 

 

「これがヒカリの過ごした中学校か」

 

「そう…私はここで3年間を過ごしたんだ…」

 

 

私はその校舎を見上げる。

 

綺麗な…青過ぎる空が私を出迎えてくれていた。

 

 

「校長先生……」

 

「深見さん……」

 

 

私と校長は握手を交わす。

 

 

 

校長は泣きそうになった……思ったのだ。

 

 

 

“北宮中に伝説が舞い戻ったと”

 

 

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