君はヴァンガード   作:風寺ミドリ

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059 その名は“超越”

「私が!!仲間の前で!!負けられる訳無いじゃない!!!」

 

 

 

天乃原さんが力一杯に叫ぶ。

 

 

 

チームシックザールvsウルド…第2戦…カグヤさんの相手を名乗り出たのは天乃原さんだった。

 

 

「天の原で舞い踊る!!智勇と光をその身に宿せ!!立ち上がれ私の分身!!ライド!!」

 

 

ここまで天乃原さんはずっとライドを成功させている。

 

ちなみに先行はカグヤさん…相手のVは“英知の守り手 メーティス”……そして天乃原さんは、

 

 

 

「敢然の宝石騎士 ジュリア!!!」

 

 

 

 

蒼い髪…ツインテールの少女が、身の丈程の大剣を構える。

 

 

「続けて!!アシュレイЯを2体!!さばるみーをコール!!」

 

現在天乃原さんのダメージは5点……

 

対してカグヤさんは2点…

 

だがカグヤさんも青葉クンとのファイトと違い、それなりに展開している……

 

突破できない手札では無い……か。

 

 

「アシュレイЯでヴァンガードにアタック!」

 

黒輪を背負った女性騎士が、メーティスに向かって戦場を駆ける。

 

 

「猫の魔女 クミンでガード」

 

アシュレイЯの凶悪な剣をクミンが体で受け止める。

 

クミンは膝をつき消えていくが、メーティスにダメージは無い。

 

「アシュレイЯでヴァンガードにアタック!!」

 

再びアシュレイЯが動く。

後列にさばるみーがいるものの、天乃原さんはブーストをつけなかった。

 

 

 

 

「リーダー…ヴァンガードでの攻撃を最後に…?」

 

「これって……」

 

 

 

「お嬢はVにトリガーを全て降るつもりっすね……ファイト前にトリガーをクリティカル16にしてたっすから……」

 

 

 

「クリティカル…16……」

 

 

ヒールもドローも……スタンドも捨てて、クリティカルに特化したトリガー構築……

 

 

 

「前のファイトでクインテットウォールとシードルのコンボを使ってきたっすから……今回もその可能性は高い…」

 

「そうか…クインテットウォールはガード値が安定しない……トリガーでの突破もあり得るんだ…」

 

「そもそもノーガードかもしれないしな…」

 

 

 

カグヤさんはアシュレイЯの攻撃に対し、再び手札を切った。

 

「戦巫女 サホヒメでガード」

 

 

 

アシュレイЯがおかっぱ頭の女の子を、その周りの鈴ごと切り裂いた……だが攻撃はメーティスに通らない。

 

 

「行くわよ……ヘロイーズのブースト!!お願い…ジュリア!!!」

 

 

ファイトの状況はスタジアム上方の大型モニターから把握することができた。

 

モニターに浮かぶ“<21000>”という表示はこの攻撃のパワーだろう。

 

 

「ノーガード」

 

 

カグヤさんは冷徹に宣言する。

 

 

ノーガード……今、天乃原さんがダブルクリティカルを引いてもダメージは5点止まり……だけど!!

 

 

メーティスを見据えたジュリアが大型の、美しい剣を構える……剣に少しずつ光が集まっていった。

 

 

 

「ツインドライブ…チェック!!……ゲット!クリティカルトリガー!!☆はジュリア、パワーはさばるみーに!!!」

 

天は天乃原さんに味方する…

 

 

「セカンド…ゲット!!クリティカルトリガー!!効果は同じくよ!!受けなさい…この剣を!!!」

 

 

 

 

眩い光がジュリアの剣に宿り、刃を形成していく…さらに巨大になった剣を彼女は思いきり降り下ろした。

 

メーティスは悲鳴をあげる。

 

 

 

 

「ダメージチェック……リモンチーノ…ゲット、クリティカル、フランボワーズ、フランボワーズ……」

 

 

 

一気に5点目まで追い詰める。

 

 

 

…だけど…フランボワーズって…

 

 

 

「苺の魔女 フランボワーズって…さ…」

 

「完全ガードじゃないっすか…全然クインテットウォールじゃないっすよ……」

 

「運がいいな……リーダー……」

 

 

天乃原さんは運がいい……この3点攻撃でダメージトリガーが1枚しか発生しなかったこともそうだ。

 

今、まさに天が味方している。

 

 

 

「行くわよ…ジュリアのリミットブレイク!!ブレイブイルミネーション!!クリティカルの数だけ山札から“宝石騎士”をスペリオルコール!!」

 

 

ジュリアは眩い光を放つ剣を高く掲げた。

 

光は剣から離れ、3人の騎士を導く。

 

「トレーシー!!トレーシー!!シェリー!!」

 

 

 

リアガードにスタンド状態のユニットが登場する。

 

これで、攻撃を続けることができる。

 

 

 

「シェリーのブーストした、友愛の宝石騎士 トレーシーでヴァンガードにアタック!!」

 

 

パワー19000の攻撃が放たれる…

 

 

「吉凶の神器 ロットエンジェルでガード…ロットのスキルでソウルチャージ」

 

 

 

「さばるみーのブースト!!もう1枚のトレーシーでヴァンガードに!!」

 

 

 

「戦巫女 ククリヒメ、蛙の魔女 メリッサでガード」

 

 

パワー29000の攻撃も防がれてしまった。

 

「……ターンエンド」

 

 

 

相手に大ダメージを与えたと言えば響きは良い……だが状況はまだ細い綱の上のようなものだ。

 

互いに手札は少ないとはいえ、基本的には天乃原さんの方が終始押されている。

 

 

「私のターン……スタンドし、ドロー…」

 

カグヤさんの瞳が蒼く輝く……それは最早実質のファイナルターンだ。

 

 

「解き放たれしは太陽がもたらす神霊(ミサキ)の力……ブレイクライド…陽光の女神 ヤタガラス」

 

明らかに…青葉クンとのファイトとデッキが違う。

 

 

「デッキ毎に戦法が大きく変わるのがジェネシスっす……まぁ今の主流の神器も魔女もとにかく殴れって感じのユニットっすけど、登場した頃は独自のクラン性を掴もうと試行錯誤してたっす」

 

 

「例えばどんなユニットがあるんだ?」

 

 

「ユニットを退却させるイワナガヒメ…トリガーが出るまでドライブチェックを行うフォルトナ…ソウルの質を要求するマイスガード………割りと最近のユニットっすけどデッキトップの確認ができるペルセフォネ……本当に多種多様っす」

 

「ヤタガラスは……?」

 

「……見てれば分かると思うっす」

 

 

 

私はギアースに表示されるヤタガラスを見つめる。

 

カードイラストでは黒い翼だが、今、その翼は透き通るような青色に変色していた。

 

 

「ブレイクライドスキル……CB1…ヤタガラスにパワー+10000、ソウルチャージ3」

 

 

更にカグヤさんはサホヒメ、クミンをコール…クミンのスキルでソウルチャージを行った。

 

これで…リアガードが全て埋まる。

 

 

「……サホヒメでリアガードのトレーシーにアタック」

 

「ノーガードよ」

 

「エンジェリック・ワイズマンでヴァンガードにアタック…スキルでソウルブラスト…パワー上昇…更に排出された烏の魔女 カモミールをCB1でスペリオルコール」

 

「……トレーシーでインターセプト」

 

 

「クミンのブーストしたカモミールでヴァンガードにアタック」

 

「…宝石騎士 ノーブル・スティンガーでガード」

 

 

 

怒濤の連続攻撃が天乃原さんを、ジュリアを襲っていた。

 

「これが…ヤタガラスの特性…?」

「……ここからっすよ」

 

 

カグヤさんは遂にヤタガラスへと手を伸ばす。

 

「アメホノアカリのブースト…ヤタガラスでヴァンガードにアタック…アメホノアカリのスキルでソウルチャージ…」

 

ヤタガラスの後ろでアメホノアカリが祈りのポーズをとっていた。

 

「そしてヤタガラスのスキル……ソウルブラスト…9…エンジェリック・ワイズマンとカモミールをスタンド…さらに蛙の魔女 メリッサもスペリオルコール」

 

 

再びユニットが立ち上がる様はノヴァグラップラーやアクアフォースを、ソウルからスペリオルコールする様はペイルムーンを思い起こさせる。

 

 

これがジェネシス(起源)……ということか。

 

 

ヤタガラスがジュリアに向かって羽ばたく。

 

パワーは26000……

 

 

「イゾルデで完全ガード!!」

 

「ツインドライブ…ヤタガラス……そして……クリティカルトリガー…効果は全てカモミールへ」

 

 

ヤタガラスの体当たりはイゾルデのシールドによって防がれる……だが、次の攻撃が迫っていた。

 

「カモミールでアタック」

 

「っ……!!ノーブル・スティンガーでガード!」

 

「クミンのブーストしたエンジェリック・ワイズマン…スキルでパンプ、カモミールをスペリオルコールしアタック」

 

「……イゾルデで完全ガード!!」

 

 

エンジェリック・ワイズマンの放った銃弾もイゾルデは退ける……しかし次なる脅威は背後から迫っていた。

 

「メリッサのブーストしたカモミールでヴァンガードに……アタック」

 

「っぅぅぅ……!!ノーガードよ!!」

 

カモミールの操る、烏の姿をした精霊が、背後から、ジュリアの胸を貫いた。

 

ジュリアの口から…血が流れる。

 

天乃原さんはヒールトリガーを抜いている…だから…これでもう……

 

ダメージにはサロメが落ちる……

 

 

「私の負け……ね…」

 

 

 

消えていくグラフィックの中、天乃原さんが帰って来た……

 

「ごめんなさい……私……」

 

「いや、リーダーは凄かったよ」

 

「そうっすよ!!」

 

「うん……」

 

 

それでも、やはり悔しいのだ……天乃原さんは静かに天井を見上げている。

 

 

『さて…次の方……来てくださいね…負・け・に』

 

相変わらず社長さんの煽りが激しい。

 

 

「……次は僕が」「ううん、私が行くよ」

 

私はステージの方を見つめる。

 

あの社長は確実に、私のことを見ていた。

 

「ご指名……かな…行ってくる」

 

 

「頑張れよ…」

 

「頼んだわ…」

 

 

天乃原さんと青葉クンの声援を受け、私は前に進む。

 

舞原クンはデッキの調整を始めていた……そう、それでいいんだ。

 

私は係りの人からインカムを受けとると、ギアーステーブルにデッキを置いた。

 

 

「カグヤさん……」

 

「…………」

 

 

インカムはオンになっている筈だ。

 

 

「どうして…さっき泣いて……?」

 

「…………」

 

 

デッキが定位置に置かれ、私はそれをシャッフルする。

 

 

「ファイトで…教えてもらうよ……」

 

「…………」

 

 

『先行はシックザール……いえ、ベルダンディさんからどうぞ』

「……あの社長」

 

 

やっぱり、私のことを調べてあったんだ……

 

私は手札交換を行いながら考える。

 

ここまで流れがあの社長の思惑通りなのか…ううん、そんなこと今はどうでもいい…ファイトに集中するだけだよ…私。

 

 

『スタンドアップ……』

 

 

「THE・ヴァンガード!!」

 

「ヴァンガード。」

 

 

 

ジャッジバウ・撃退者と二十日鼠の魔女 コロハが相対する。

 

うーんこのジャッジバウ…実にもふもふ……いや、今はファイトに集中集中。

 

私は自分の手札を見つめる。

 

幽幻の撃退者 モルドレッド・ファントム(G3)

 

幽幻の撃退者 モルドレッド・ファントム(G3)

 

撃退者 ファントム・ブラスター“Abyss”(G3)

 

撃退者 ファントム・ブラスター“Abyss”(G3)

 

撃退者 ファントム・ブラスター“Abyss”(G3)

 

見事に全て奈落竜である、ちょっと壮観だ。

 

だが、辛い状況には間違いが無い。

 

 

私は思いを込めて……“ドロー”する。

 

胸の高鳴りを感じる。

 

「ドロー……!?」

 

 

私は自分の瞳が緋色に染まるのを感じると共に、自身の立つパネルの色もまた、緋色に発光していることに気がついた……

 

……やっぱり、このパネル…“力”に連動できるんだ……

 

感心しつつ私は今、引いたカードにライドする。

 

 

「無常の撃退者 マスカレードにライド!!」

 

 

グレード1の、素顔のマスカレードが場に現れる。

 

もちろんジャッジバウはリアにコールだ。

 

これで私のターンは終了となる。

 

 

「私のターン…ドロー…林檎の魔女 シードルにライド、コロハをリアにコールしてアタック……」

 

「ノーガードだよ」

 

 

ドライブチェックでG3のアンジェリカが登場し、ダメージチェックでは完全ガードのマクリールさんが落とされた。

 

 

 

「ターンエンド」

 

「私のターン…カグヤさん……楽しい?」

 

「…………」

 

 

うーん…泣いていた人に楽しい?等と聞くのは流石に空気が読めていないか……

 

気を取り直して……いや、集中して私はドローする。

 

再び、足元のパネルが緋色に輝く。

 

 

「ドローっ…………」

 

 

無事私の手元にグレード2のユニットがやって来た。

しかし一瞬目眩がした…2度の連続使用はまだ体に負担が掛かっているということだろうか。

 

 

「ライド…ブラスター・ダーク・撃退者“Abyss”だよ!!……アタック!!」

 

 

カグヤさんはノーガードを宣言し、私はドライブチェックを行う。

 

「ゲット!!クリティカルトリガー!!」

 

 

 

ブラスター・ダークはシードルを2度、切りつける。

 

 

カグヤさんのダメージにはアンジェリカとノルンが落ちていった。

 

 

 

その後もファイトは淡々と続いていく。

 

 

 

私はカグヤさんが辛そうにファイトしている気がしてならなかった。

 

でも、その感情を抑えて……だからあんな…機械見たいに……

 

ヴァンガードが嫌いという可能性もある。

 

だけど、ヴァンガードが嫌いな人に“力”が…“つながり”が生まれるのだろうか?

 

私はまだ…彼女のことを何も知らないのだ。

 

「ノルン……アタック」

 

「ノーガード!!」

 

 

ダメージにブラスター・ダーク・撃退者が落ち、ダメージは2対2……問題はここからだ。

 

 

「……私のターン…スタンドandドロー…」

 

 

さぁ……行こう!!

 

 

「世界の優しさと痛みを知る漆黒の騎士よ、我らを導く先導者となれ!!ライド・THE・ヴァンガード!!幽幻の撃退者 モルドレッド・ファントム!!」

私の前にモルドレッド・ファントムが立っている。

 

その姿は以前実際に見たものと酷似していて……もしかしたら私のイメージがインカムを通してギアースに伝わったのかもしれない。

 

 

私は更にファントム“Abyss”をコールし、態勢を整える。

 

二人の奈落竜が今……並び立つ!!

 

「ファントム“Abyss”でヴァンガードにアタック!」

 

「ロット・エンジェルでガード…スキルでソウルチャージ」

 

……なら私は!!

 

ジャッジバウとモルドレッドをレストし、宣言する。

 

 

「ジャッジバウのブーストしたモルドレッドでヴァンガードにアタック!!」

 

「……ノーガード」

 

 

一瞬の間にモルドレッドがノルンの前に立ち、剣を構える。

 

「ドライブチェック…詭計の撃退者 マナ…second…無常の撃退者 マスカレード……共にトリガー無し!」

 

 

一閃、モルドレッドの剣がノルンを切り裂いた。

 

ダメージにドロートリガーが落ちる……そしてカグヤさんは1枚ドロー…だけどこちらだって…!!

 

 

「ジャッジバウのスキル発動!!ソウルに入れ、CB1!!山札から雄弁の撃退者 グロン!!督戦の撃退者ドリンをスペリオルコール!!」

 

 

新たに二人の青年が戦場に立つ……

 

 

「ターンエンド!!」

 

 

次のターンの布石は打った……後はカグヤさんがどう動くか……

 

 

「私のターン……スタンドし、ドロー…………解き放たれしは我が手に輝く叡智…ライド、叡智の神器 アンジェリカ」

 

 

カグヤさんがライドした所で不思議な表示が出現した。

 

カグヤさんの周りを英語の文字列らしきものがくるくると回っている。

 

 

『ではそろそろ新たな情報を解禁しましょうか』

 

 

社長が突然話始めた…一体何を……?

 

 

『ヴァンガードGから新たに導入される新システムをご覧ください……』

 

 

 

「ジェネレーションゾーン……解放」

 

 

 

カグヤさんが手札からアンジェリカをドロップゾーンに置いた……?

 

 

そしていつの間にか置かれていた銀色のカードをヴァンガードの上から……

 

 

 

 

「解き放て……未来を呼び起こす力…天空より舞い降りし女神……ストライドジェネレーション」

 

 

 

見たことの無い形状のヴァンガードサークルが出現し、アンジェリカを飲み込んでいく。

 

そして……赤い髪の神々しいユニットが姿を顕した。

 

 

 

「その名は天空の女神…ディオネ」

私は…いや、会場の人間全員がそのユニットを凝視していた。

 

そしてそのパワー表示に目を疑った。

 

<26000>

 

ヴァンガードの元々のパワーとしては高すぎる……これは一体……

 

 

 

思えば以前にも似たようなことがあった。

 

夏休み初日…謎の物体とのファイトになった際、あれが使用し、私がジャッジキルした現象によく似ている。

 

 

 

 

「これは……」

 

 

 

『これこそ、新システム“超越(ストライド)”』

 

 

 

「……ストライド」

 

 

社長による説明が始まる……超越とはライドフェイズ内のライドステップ終了時に追加される“ストライドステップ”で手札から合計グレードが3になるように手札をドロップすることで発動する。

 

超越した時、超越ユニット…通称Gユニットは超越前にヴァンガードであったユニットをハーツとして飲み込み、その名前とパワーを受け継ぐ。

 

ディオネのパワーは元々15000…それにアンジェリカのパワー11000が加わって合計26000という訳だ。

 

そして超越状態は自ターンのエンドフェイズには溶け元のハーツユニットの姿に戻る……つまり1ターンだけの能力ということだ。

 

 

 

『これが時代を切り開く新たな力…もうすぐ皆様も手にすることができますわ』

 

 

 

エクストラデッキから1ターンだけ力を借りる…それがストライド……

 

 

 

「……黄昏の神器 ヘスぺリスをコール……」

 

 

何事も無かったようにファイトが再開される。

 

 

「コロハのブースト……ディオネでヴァンガードにアタック」

 

パワー30000……まだダメージは2点…ここはやっぱり……

 

「ノーガードで」

 

 

ディオネは手にしている杖を天空へと掲げる。

 

 

 

「…トリプルドライブチェック」

 

 

「なっ…!?」

 

 

その言葉に驚いた私はカグヤさんの盤面に置かれたディオネをよく見る……確かにツインドライブのアイコンじゃない……Gユニットはトリプルドライブを標準装備しているの!?

 

 

 

「…ドロートリガー…パワーはヘスベリスへ、シードル……ヘメラ……残りはトリガー無しです、行きなさいディオネ…」

 

私や会場の人間の動揺を飲み込むように、ディオネの杖から強大な一撃が落とされる。

 

モルドレッドは膝をつき、ダメージゾーンにはヒールトリガー……だけど回復は無し…パワーがモルドレッドに加算されるだけであった。

 

 

「ディオネのスキル……ソウルブラスト…3」

 

 

ヒット時スキルを持っていたディオネの効果によってカグヤさんは山札から3枚引いた。

 

 

「1枚をドロー……残りをソウルへ」

 

 

ソウルに置かれたのはオレンジの魔女 バレンシアと運命の神器 ノルン……どちらも青葉クンとのファイトで使用されたカードだ。

 

 

 

「ヘスベリスでリアガードにアタック」

 

 

「ノーガード……ファントム“Abyss”は退却」

 

 

「ターンエンド…」

 

 

 

 

 

Gユニットや超越の影響でとても精神的に苦しかったがファイトの状況には余り影響が無かった。

 

 

 

ダメージは共に3vs3…強いて言うなら、カグヤさんに次のターンの前準備をさせてしまったということだろう。

 

 

まだ私の手札には初期手札のグレード3を含め、内容がバレてしまっているであろう手札が多く存在していた。

 

 

 

 

ここで互角ならば間違いなく戦況はこちらの分が悪いということになる。

 

 

 

 

「……私のターン…スタンドandドロー…」

 

 

モルドレッドのブレイクライドはまだ使えない。

 

このターンをどうする…………

 

 

 

その時だった。

 

 

 

 

私の周りを“generation system”という文字列が回り始めたのだ。

 

 

 

これは……さっきカグヤさんに起きていた現象?

 

会場の人達…青葉クンや天乃原さん、舞原クン……それにカグヤさんと美空社長さんも驚いたようにこちらを見つめていた。

 

 

私は所持していたポーチから“光”を感じ、中を確認する………そして……

 

 

 

「そうか……これが………」

 

 

 

 

“generation system”とやらが起動した原因、そしてそれはこの状況を突破しうる切り札。

 

 

 

 

忘れていた…私にはまだ“仲間”がいたことを。

 

 

 

「ジェネレーションゾーン…解放!!!」

 

 

手札からモルドレッドの助けを借りる。

 

 

「「「!?!?」」」

 

 

 

 

私はそのカードを掲げる。

 

 

 

 

「世界を導く救世の光!!それは永久の調和と無限の再生!!ストライド・THE・ヴァンガード!!」

 

モルドレッドの体が光に包まれ、大いなる救世主が目を覚ます。

 

 

 

 

 

「ハーモニクス・メサイア!!!!」

 

 

 

 

 

偶然…本当に偶然手に入れたカードだった。

 

 

御守りの代わりにと持ち歩いていただけだった。

 

 

でも……今、その真の力が目覚めた。

 

 

 

 

 

美しき救世竜が今、戦場に降り立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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