君はヴァンガード   作:風寺ミドリ

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061 変革

それは至って普通の話…

 

 

ジュリアンはハルシウムを見て、純粋に気に入った。

 

 

 

だけど…今まで、ハルシウムを実際に使うことは無かった。

 

 

 

たったそれだけの話……

 

 

 

それだけの……

 

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

舞原クンは叫ぶ。

 

 

 

「真の先に真有り!!真なる狂気で世界を包め!舞い上がれ、僕の分身!!」

 

 

姿を見せるのは黒輪を背負いし白銀の剣士。

 

 

 

「勅令の星輝兵 ハルシウム!!!」

 

 

 

 

彼の全身に流れる赤いラインが発光する。

 

これが……ハルシウム……

 

 

これにはカグヤさんもどこか驚いているようだ。

 

 

「……なるほど」

 

「何を納得してるんすか?……本番はここからっす!!日食の星輝兵 チャコールをコール!」

 

ハルシウムの後ろに新たなユニットが現れる。

 

 

「チャコールのスキル発動!!リミットブレイク解除!!オーバーリミッツ!!!」

 

 

チャコールの手元にコントロールパネルのような物が浮かぶ。

 

チャコールがそれを操作した瞬間、ハルシウムの黒輪が大きく広がった。

 

 

 

「ハルシウムのオーバーリミッツ!!Яユニットに“ブースト”“インターセプト”“5000シールド”を与えるっすよ!!」

 

 

 

 

 

 

「ど、どういうことだ?」

 

青葉クンの頭にハテナマークが浮かんでいる。

 

「ハルシウムがヴァンガードである限りグレード3であるЯユニットは全てグレード2やグレード1のように扱うことができるのよ」

 

「す、凄いなそれ…」

 

「うん……ヴァンガードでも唯一無二のスキルだよね…」

 

逆を突けば、自身に特別な能力が無いこと…はっきり言ってしまえば殺意が足りないという点に問題があるのかな……

 

 

これまで舞原クンは使用することを渋っていた見たいだけど……あのユニットならこの状況に…カグヤさんの能力に完全に対抗できる……

 

 

「あれが……舞原クンの分身…ハルシウム」

 

 

 

 

舞原クンは新たにリアガードをコールしていく。

 

 

「学園の処罰者 レオパルド“Я”、銀の茨の竜女帝 ルキエ“Я”、哀哭の宝石騎士 アシュレイ“Я”をコール!!!」

 

 

“黒輪”という共通項をもったユニット達が舞原クンの呼び掛けに応じ、現れる。

 

「さて…チャコールのブーストしたハルシウムでアタックっす!!」

 

 

<18000>

 

 

ハルシウムの紅の剣がアンジェリカを襲う。

 

 

 

 

「…ノーガード」

 

 

 

ドライブチェックではクリティカルトリガーとハルシウムが登場する。

 

カグヤさんは2点のダメージを負うも、ヒールトリガーを1枚引くことでそのダメージを軽減した。

 

ダメージは舞原クンが2、カグヤさんが3となった。

 

 

「ルキエЯのブースト!!アシュレイЯでアタックっすよ!!」

 

<27000>

 

「ノーガード」

 

 

アシュレイЯの剣が、アンジェリカの体を貫く。

 

ダメージにノルンが落とされ、ダメージは4点だ。

 

 

 

「こいつで…レオパルドЯのブースト、パラダイスエルクでヴァンガードにアタック!!」

 

<20000>

 

 

「ロット・エンジェルでガード…スキルでソウルチャージ」

 

ソウルに黄昏の神器 ヘスペリスが入るのを確認し、舞原クンはターンエンドを宣言した。

 

 

ダメージは2vs4……舞原クンの優勢だ。

 

 

「私のターン……」

 

 

「カグヤさん…あなたがウルドだったんすね…」

 

 

「……だとしたら…何でしょうか」

 

 

「…倒させてもらうっすよ……僕のためにね!!」

 

 

「……スタンドし、ドロー…」

 

 

 

 

カグヤさんが手札からカードを取り出した……アンジェリカのブレイクライドが…来る!?

 

 

 

 

 

「解き放たれしは叡智が紡ぐ勇気の閃光…クロスブレイクライド」

 

 

輝きの中姿を見せたのは…魔力迸る槍を構えた、桃色の髪の女性。

 

 

 

壮麗な白馬に乗って……戦場に舞い降りる。

 

 

 

 

「智勇の神器 ブリュンヒルデ」

 

 

 

美しき女神…戦神ブリュンヒルデ……

 

 

 

 

「ブリュン…ヒルデっすか…」

 

 

 

 

うーんこの会場の何とも言えない空気……

 

 

 

 

私も、以前舞原クン達とジェネシスの話題になった後、自分なり軽く調べて見た時にその存在を知った。

 

決して弱い能力では無い……けど。

 

 

 

 

双闘環境に突然のアルティメットブレイク。

 

遅いだけでなく、重めのコスト。

 

…に関わらずフィニッシャーになり得ないスキル。

そして消しきれていない謎のレギオンマーク。

 

 

 

 

…様々な要因が重なり、低い評価がついてしまったユニットである。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ブレイクライドスキル…ソウルブラスト3…パワー+10000、2枚ドロー……排出されたノルン、ヘスペリスのスキルで更にパワー+5000、アタックヒット時にリアガード2体退却させる…を得る」

 

 

ブリュンヒルデの背後に大きな魔方陣が顕れ、回転する。

 

「ヘメラをコール、スキルでノルンとアクリス2体をソウルへ」

 

「ブリュンヒルデ、オーダイン・オウルをコール、オーダインのスキルでドロップゾーンのアンジェリカをデッキボトムへ……ヴァンガードにパワー+5000」

 

カグヤさんの陣が整った。

 

 

 

「ヘメラでパラダイスエルクにアタック」

 

「ノーガードっす」

 

 

真昼の神器 ヘメラの振るった杖がパラダイスエルクを退ける。

 

「アメホノアカリのブースト、ソウルチャージ…そしてブリュンヒルデでヴァンガードにアタック」

 

<33000>

 

アメホノアカリがブリュンヒルデにエールを送る……それに微笑みで返したブリュンヒルデが舞原クンの陣に向かって白馬を駆り、走り出した。

 

 

「プロメチウム……完全ガードっす!!」

 

 

「……ドライブチェック…アンジェリカ……エイル、ゲット、ヒールトリガー…ダメージを回復してパワーはリアガードのブリュンヒルデへ」

 

ブリュンヒルデの振るった槍はプロメチウムによって受け止められる。

 

「オーダインのブースト、ブリュンヒルデでヴァンガードにアタック」

 

<22000>

 

 

「ノーガード!ダメージチェック…ハルシウムっす」

 

 

「ターンエンド…」

 

7ターンが終わり、ダメージは3vs3だった。

 

(流れはまだ僕にある…このままじっくりと倒させて貰うっす!!)

 

 

「僕のターン…スタンド、ドロー!!…空いたリアガードサークルに…ドラゴニック・オーバーロード“The Яe-birth”をコールするっす!!」

 

 

リアガードサークルに偉大なる大君主、オーバーロードが現れる。

 

舞原クンのリアガードにはЯユニットが4体、地味だがどれもグレード3としての大きなパワーを兼ね備えている。

 

このまま持久戦に持ち込んで、じわじわと相手の手札を削っていくつもりだろう。

 

 

「ヴァンガードを切り裂け!!ハルシウム!!」

 

 

「ノーガード」

 

 

「ドライブチェック……メビウスブレス・ドラゴン…セカンドチェック……ゲット!!クリティカルトリガー!!……効果は…」

 

 

舞原クンが考え始めていた。

 

(ここでクリティカルをハルシウムに乗せたら……カグヤさんのダメージは5……アルティメットブレイクの発動圏内なんすよね……)

 

 

「効果は全てオバロに!!」

 

 

オバロが叫び、ハルシウムの剣がブリュンヒルデの鎧に傷をつける。

 

ダメージにはアンジェリカ……4点目だ。

 

 

 

「レオパルドЯのブーストしたオバロЯでヴァンガードにアタック!!」

 

<27000☆2>

 

「エイル、クリア・エンジェルでガード」

 

「だったら……ルキエЯのブースト!アシュレイЯで…リアガードのブリュンヒルデに!!」

 

「…ノーガード」

 

 

舞原クンがターンエンドを宣言する。

 

 

ダメージを与え、手札を削り、リアガードを削った。

 

戦いは膠着しているように見える。

 

そして…カグヤさんのターンが始まった。

 

 

 

「ヘスペリスをコール、上書きでパイナップル・ローをコール…スキルで山札から1枚、ダメージゾーンへ」

 

「っ…!?自爆互換……入ってたんすか…」

 

 

 

カグヤさんのダメージはこれで5点……

 

前のターン…舞原クンがダメージを4点で止めたことは全くの無駄となる。

 

アルティメットブレイクが発動可能になったのだ。

 

 

「シャイニー・エンジェルをコール…ヘスペリス2体とノルンをソウルへ…」

 

 

パイナップル・ローの上からシャイニー・エンジェルがコールされる。

 

これでソウルの質も高まった…そろそろ来るのだろう…ブリュンヒルデのスキルが。

 

 

 

「……っ」

 

 

 

 

「ブリュンヒルデ…アルティメットブレイク」

 

 

 

 

ブリュンヒルデは槍を構え、ハルシウム達の方へと白馬と共に突撃していく。

 

 

 

「CB4…ソウルブラスト6……オーバーロードを」

 

 

 

ブリュンヒルデの槍がオーバーロードを撃ち抜き、排除する。

 

 

 

 

「……チャコールを」

 

 

 

 

そのまま舞原クンの前を駆けるブリュンヒルデはハルシウムの後ろにいたチャコールを薙ぎ払った。

 

 

 

「そしてアシュレイЯを」

 

 

ブリュンヒルデの輝く槍はアシュレイЯの胸を貫く…涙を流しながら消えていくアシュレイЯ。

 

 

 

「3体のユニットを退却…3枚ドロー、そして排出されたノルン、アクリス、ヘスペリスのスキル発動…ブリュンヒルデにパワー+20000…アタックヒット時にリアガードを2体退却させる…を得る」

 

 

 

戦場を駆ける戦乙女はその力を更に上昇させていった。

 

 

 

「アンジェリカ、そして上からヘメラをコール」

 

 

更にソウルチャージを行うカグヤさん…ドロップゾーンからのチャージであるため山札は削れない。

 

 

「オーダインのスキルでドロップゾーンのアンジェリカを山札へ、ブリュンヒルデにパワー+5000」

 

 

 

山札にカードを戻すことで、デッキの減りを抑える…これで多少の持久戦が出来るのだろう。

 

 

 

 

……ブリュンヒルデのアルティメットブレイクによって形成は逆転しようとしていた。

 

 

 

 

「オーダインのブースト…ヘメラでヴァンガードにアタック」

 

「くっ……メビウスブレスでガード!!」

 

 

グレード3にインターセプトのスキルを与えたが、ブリュンヒルデに退却され既に存在しない……

 

 

「アメホノアカリのブースト…ブリュンヒルデでヴァンガードにアタック」

 

 

舞原クンはそのパワーを確認する。

 

<38000>

 

 

「…ノーガードっ!!!」

 

こちらから見える舞原クンの手札…シールド値は充実しているが、肝心の完全ガードが無く、無理にこの攻撃を止めると自身の破滅に繋がり兼ねない。

 

 

「ドライブチェック…」

 

ただ…守らなかった選択が正しい物かは……

 

 

「ゲット…クリティカル……☆はブリュンヒルデ、パワーはヘメラへ………セカンドチェック、ゲット…ヒールトリガー…ダメージを回復し、パワーはヘメラへ」

 

 

 

……分からない。

 

 

「くっ……っ!!」

 

 

ブリュンヒルデの振るう槍をハルシウムが剣で受け止める。

 

ダメージは日蝕の星輝兵 チャコール…そして…

 

 

「……ジェイラーテイル!ドロートリガーっす!」

 

 

 

ハルシウムはブリュンヒルデに押し負け、吹き飛ばされるものの、ドロートリガーのパワーが宿る。

 

しかし、ブリュンヒルデの槍は既に異なる敵へと向けられていた。

 

 

 

「ヒット時スキル……レオパルドЯを退却」

 

 

 

ブリュンヒルデの放り投げた槍がレオパルドЯを串刺しにする……

 

リアガードの消滅を確認したブリュンヒルデは槍を回収し、最後のリアガードにその槍を向けた。

 

「ルキエЯを…退却です」

 

 

ブリュンヒルデの槍は輝きを増し、ルキエЯを貫く……ルキエЯは悲鳴をあげることも出来ず、静かに消えていった。

 

 

 

 

これで舞原クンのダメージは5点、そしてこのターンだけで全てのリアガードを失ってしまっていた。

 

 

そのリアガードを消し去ったのは全てブリュンヒルデ…戦神と呼ばれるユニット。

 

 

 

 

「シャイニー・エンジェルのブースト…ヘメラでヴァンガードにアタック」

 

 

<26000>

 

 

「ヴァイス・ゾルダート2枚でガードっす!!」

 

「ターンエンド」

 

 

パイナップル・ローによって増加していたカグヤさんのダメージが1枚、山札へと帰っていく。

 

これでダメージは舞原クンの5点に対してカグヤさんの3点……完全に逆転していた。

 

このターンは終わったものの……舞原クンは大きくダメージを受けてしまった。

 

 

 

 

「……僕のターン…スタンド、ドロー!!」

 

(まだだ…まだ終わってなるものか!!!)

 

 

「コール…星輝兵“Я”クレイドル!!…そして星輝兵 ルイン・マジシャンをコール!!スキル発動!」

 

舞原クンはドロップゾーンから1枚のカードを選ぶ。

 

「Яは何度でも甦る!!アシュレイЯを手札に!そしてコール!!」

 

ハルシウムの後ろにクレイドルが…その隣にはルインとアシュレイЯが戦いの準備をしていた。

 

 

「虚無を纏いて、世界を切り裂け!!クレイドルのブーストしたハルシウムでヴァンガードにアタック!!」

 

 

クレイドルとハルシウムのコンビネーション攻撃…クレイドルが振るう巨大な槍の中をハルシウムがすり抜け、ブリュンヒルデへと迫る。

 

「…ノーガード」

 

 

「ドライブチェック…ゲット!ドロートリガー!パワーはアシュレイЯに!……………そしてゲット!クリティカルトリガー!クリティカルはハルシウム、パワーはアシュレイЯに与えるっす!!!」

 

クレイドルの攻撃で落馬したブリュンヒルデをハルシウムが襲う。

 

 

 

ダメージは…2点……ヘメラとフランボワーズだ。

 

 

 

ブリュンヒルデは体勢を整え、ハルシウムを振り払うが攻撃は終わっていない。

 

 

「ルイン・マジシャンのブーストしたアシュレイЯ…その剣で立ちはだかる敵を薙ぎ払えっ!!!」

 

<28000>

 

 

 

真っ直ぐ……戦場を駆けるアシュレイЯ。

 

 

 

白馬から降りているブリュンヒルデと真っ向からぶつかる。

 

何度も鍔迫り合いを繰り返し、遂にブリュンヒルデの隙をアシュレイЯが捉えた。

 

無慈悲なる剣が彼女に向かう…その時。

 

 

 

「エイル、クリア・エンジェルでガード」

 

 

その攻撃を身を呈して庇ったのは二人の女神だった。

 

倒れた仲間の思いを背負ったブリュンヒルデはアシュレイЯを退ける。

 

 

「……ターンエンド」

 

 

 

舞原クンのターンが終わる……10ターンが終わりダメージは互いに5点……手札の枚数は舞原クンが5枚、カグヤさんが3枚だ……

 

会場の人間……そしてインターネットを通して数多くの人間がこのファイトを見守っていた。

 

 

このファイト…ギアースの宣伝には打ってつけ過ぎる…全てあの社長の計算通りなのか……

 

 

「ジュリアン……」

 

「舞原クン…」

 

「…………頑張りなさいよ…」

 

 

カグヤさんのターンが始まる…スタンド、ドロー…想像通りの流れだ…………

 

 

……ここまでは。

 

 

 

「……!?」

 

 

 

カグヤさんが1枚のカードを掲げる……まさかここから新たなユニットにライドするというのか……

 

 

「……冗談っすか…?」

 

「冗談は好きですが、冗談ではありませんよ」

 

 

 

この終盤になって姿を見せる…新たなユニット。

 

……それは。

 

 

 

「解き放たれしは勝利をもたらす信念の閃光…」

 

 

 

蒼いオーラがブリュンヒルデを包み、溶かす。

 

 

形を変え…現れたのは女神の名は……

 

 

 

 

「ライド……掟の女神 ユースティティア」

 

 

 

天秤と剣を構える女神 ユースティティア…あれは…

 

 

「…僕がリンクジョーカーを好んでるって情報でもあったんすか?」

 

「ええ、ですがここまで出番はありませんでした」

 

 

 

ユースティティアの最大の特徴は“解呪”を使えることだ。

 

ジェネシスで唯一、真っ向からリンクジョーカーと対峙できるユニットである。

 

 

「ヘメラの上から智勇の神器 ブリュンヒルデをコール……そしてユースティティアのリミットブレイク」

 

 

ユースティティアがその剣を高く掲げる…剣から溢れた光は空へと昇っていった。

 

 

 

 

「ソウルブラスト6……ヘメラとブリュンヒルデ……そしてアメホノアカリにパワー+5000」

 

 

 

天へと昇った光はより強大な力となってリアガード達に降り注ぐ。

 

 

 

「まるで……ソウルセイバーっすね……」

 

 

「…さぁ……お仕舞いにしましょう」

 

 

 

カグヤさんの攻撃が始まる。

 

 

「シャイニー・エンジェルのブースト…ヘメラでヴァンガードにアタック」

 

<21000>

 

「ヴァイス・ゾルダート、ジェイラーテイルでガードっす!」

 

 

攻撃は通らない……ヘメラはハルシウムに近づくことさえ出来なかった。

 

 

「アメホノアカリのソウルチャージ…ブースト、ユースティティアでヴァンガードにアタック」

 

<21000>

 

 

「ヴァイス・ゾルダート、回想の星輝兵 テルルでガード!!2枚貫通っす!!」

 

 

「ドライブチェック……パイナップル・ロー……鏡の神器 アクリス…ゲット、スタンドトリガー…ヘメラをスタンド、ブリュンヒルデにパワー+5000」

 

 

ユースティティアとアメホノアカリは2体のユニットを薙ぎ払うものの、ハルシウムは無傷だった。

 

 

だが、もう…舞原クンには……

 

「ヘメラでアタック」

「ジェイラーテイルでガードっ!!!」

 

「……オーダインのブーストしたブリュンヒルデでヴァンガードにアタック」

 

「…………」

 

 

 

ブリュンヒルデが迫る。

 

 

 

舞原クンも、ハルシウムも動かない。

 

 

「アシュレイЯで…インターセプト」

 

 

 

ブリュンヒルデは白馬から降り、アシュレイЯと切り結ぶ。

 

 

決着に時間は掛からなかった。

 

ブリュンヒルデの槍…神器・戦神の腕槍はアシュレイЯの胸を正確に貫いた。

 

 

 

そしてゆっくりと、ハルシウムに迫る。

 

 

 

「……ノーガード」

 

 

 

舞原クンのダメージゾーンに刻印の星輝兵 プラセオジムが落とされる。

 

 

ハルシウムはブリュンヒルデの攻撃によって、その全機能を停止した。

 

 

「……負け……っすね…っ…」

 

 

 

ダメージゾーンの6枚のカードが舞原クンの敗北を表していた。

 

 

 

 

『エキシビジョンマッチはお楽しみいただけたでしょうか?』

 

 

美空社長のアナウンスがかかる。

 

 

『我がウルドのような強大なファイター…そして我が社のギアースシステムによってヴァンガードは更なる次元に到達するのです!!』

 

 

その放送を見ている人は全国、全世界にいた。

 

 

 

『他社のカードゲームでは到達できない……魅せるカードゲームとして変革を遂げるのです!!!』

 

 

……魅せるカードゲーム……

 

 

 

『今、ここに…来年夏のヴァンガード世界大会の開催を…宣言します!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

 

アメリカ…某カードショップ。

 

 

今、二人のトップファイターが国境の壁を越えてファイトをしていた。

 

 

一人は北アメリカ大会前年度チャンピョンにして北アメリカのヴァンガードの伝導者…かげろう使い、Mr.ACE

 

もう一人はアジア大会前年度チャンピョン…ハンドルネーム“アスラン”…ゴールドパラディンのエイゼルを愛用している。

 

 

[そう言えばACE、日本のTVに出たんだって?]

 

[ははは…日本のアイドルはアグレッシブだったよ]

 

[僕も1度日本に行って見ようかな…グランドエイゼル・シザーズにライド!!]

 

 

そこに一人の少年が駆け込む。

 

 

[大変だよエース!!]

 

[何だよジョージ…俺は今アスランさんと]

 

[これ!!見て!]

 

 

ジョージと呼ばれた少年が見せるパソコンにはヴァンガード世界大会の情報が載っていた。

 

「おいおいマジかよ!!」

 

 

日本語が堪能なエースは思わず日本語で叫ぶ。

 

 

[今…日本でジュリアンがエキシビションマッチで…負けて…]

 

[ジュリアン…?ジュリアン・マイハラか!?]

 

[ジュリアン・マイハラが負けた…?確かにあいつはよく馬鹿みたいなぽかをするが…あいつがか!?]

 

 

二人は気まぐれで出場したヨーロッパ大会でのことを思い出していた。

 

ジュリアン・マイハラといえば、VCGPヨーロッパ、アジア、極東での優勝経験があり、白銀の魔女と並ぶトップファイターだ。

 

同じテーマのデッキを使い続けることが苦手な様で実力にムラがあるが、優秀なファイターの一人だと二人は考えている。

 

今年、日本で開かれたVCGPでも優勝を納めていた筈だが……

 

[相手は……“ウルド”って名乗ってる!!]

 

[ウルド……][ウルドか……]

 

 

[他にもベルダンディって人がファイトしてた!!]

 

 

 

二人は理解した、ジュリアンが何に挑み、負けたか。

 

 

[きっと次に会う時、あいつはすごく強くなってるだろうよ]

 

[全くだ……しかし世界大会ね……]

 

二人の成人男性の目は子どもの様に輝く。

 

 

[[やるっきゃねえな!!!]]

 

 

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

 

アルゼンチン 某所

 

 

一人のヴァンガードファイターがヴァンガード大戦略発表会を眺めていた。

 

その男の名は二岡・カルロス・正広……VCGP南米大会の今年度チャンピョンだった。

 

愛用のカードはサンクチュアリガード…自身のパワーしかあげられない不器用な白龍を気に入っていた。

 

 

[ジュリアン・マイハラ…あの流浪のファイターが負けたか…]

 

 

カルロスは以前ジュリアンと戦った時のことを思い出す……あの時カルロスはゴルパラのペリノアを、ジュリアンはなるかみのヴァーミリオンを使っていた。

 

 

[長い間、いいファイト相手がいなくて退屈していたんだ…エース、アスラン、それに白銀の魔女にジュリアン…そんな奴等と戦えるなら]

 

カルロスはふっと微笑む。

 

 

[…世界大会…面白いじゃないか]

 

 

そう呟くとカルロスは愛する妻の作った料理の匂いにお腹を鳴らすのであった。

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

フランス とある喫茶店

 

 

銀髪の女性が携帯を眺めている。

 

 

世界大会の情報が大きく、いまいち伝わっていないがギアースシステムの魅力もまた、様々な場所に伝わっていた。

 

 

[すごい!すごい!!こんなシステムでダーリンとファイトしたいな……]

 

 

その女性の名はゼラフィーネ・ヴェンデル…一部では白銀の魔女として有名なヴァンガードファイターだ。

 

 

[世界大会…ヒカリちゃんも出るのかな?]

 

 

 

ゼラはジュリアンが負けたことを気にしていない、少なくとも彼がハルシウムを使ったことで一つ成長を遂げたことを知っているからだ…一皮向けたというべきか?

 

 

ずっと悶々として悩みが晴れたのだすぐに半年前のように“本調子”に戻るだろう。

 

 

むしろジュリアンの精神面に悪影響を与え兼ねないのは……

 

 

ーー力を手にしてしまった時……だと考えている。

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

 

 

美空ツキノ社長によるギアースシステムと世界大会の開催決定は大きな話題を、一瞬にして呼んだ。

 

 

ギアースシステムによって観覧料をとるファイト…特殊な力を持ったファイターの存在……美空社長は次々と自らの計画を発表していく。

 

 

 

……そんな中…

……私たちチームシックザールは……

 

 

 

 

「………カグヤさんに話…聞きに…行きたい…………けど……」

 

「……解体ショーで解体されるマグロの気分よ…」

 

「リーダー…それ…少し違うだろ…」

 

「少しっすか……?」

 

 

 

 

……完全に疲れていた。

 

負けた悔しさ、利用された悔しさもあるが、本当にくたくただった。

 

ギアースシステムは迫力がある分、見ていて疲れる…映画見たいな物なのだ。

 

「ファイトしている時は大丈夫なんだけど…」

 

「馴れは必要っすよね…」

 

 

少し前に流行っていた3D映画見たいに…いや実際に3Dのホラグラフ何だけど……

 

本当に……疲れている。

 

恐らくモニター越しに見ている人には分からないだろう、独特の緊張感と戦いの生々しさは。

 

特に光量がきつい。

 

 

 

「カグヤさんのことは…気になるけど……今は少し……動けない…」

 

「そうっすね……」

 

「ええ……」

 

「そうだな……」

 

 

 

だが、発表会は既に終わっており、カグヤさんもどこかへ消えてしまった……最後に今後の商品スケジュール、トライアル2種と新ブースターが今月発売するという爆弾情報を投げ込んできたが、それに構う余裕も無い……

 

周りの大人達は少しずつ帰っていった。

 

その内の何人かは私たちにエールを送ってくれたし、ヴァンガードの伝導師として有名なあの人も私たちとファイトの検証をしてくれたり、カードにサインをくれたりした…

 

 

会場に人がいなくなり、私たちもスタジアムを出る。

 

結局、あの後カグヤさんを見つけることは出来なかった……

 

 

 

「……あ」

 

 

私はハーモニクス・メサイアをパイプ椅子の上に置きっぱなしだったことに気がついた。

 

 

 

「……どうしたヒカリ?」

 

「ゴメン……忘れ物……」

 

「じゃあここで待ってるわね」

 

「うん……ありがと……」

 

私は急いでスタジアムに戻る。

 

早くしないと…

 

スタジアムはまだ開放されており、椅子もそのままだった……

 

そして、メサイアも…

 

 

「あ…あった……良かった……」

 

 

私はハーモニクス・メサイアを拾うと、優しく抱き止める。

 

 

「ふぅ……良かった、良かった…」

 

 

 

そして私は気づいた…カグヤさんがギアーステーブルの前に立っていることに。

 

 

……話しかけるチャンス…!!

 

 

私が1歩踏み出す……だがそれと同時に、ギアースシステムが動き出した。

 

 

 

 

「……え?」

 

 

 

 

 

人のほとんどいない会場で…今、5戦目のエキシビションマッチが始まろうとしているのだった。

 

 

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