君はヴァンガード   作:風寺ミドリ

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068 ミッドガルドの閃光

突如開催されることになったビフレストCS…私、深見ヒカリはこの大会で美空カグヤさんと会うために参加していた。

 

カグヤさんと会うためにはトーナメントを突破し、決勝ブロックへ進出するしかない。

 

1戦目…エンジェルフェザー…輝ける未来 エリアを使う女性ファイターとの戦いに無事勝利した私は2回戦へと進むのだった。

 

 

 

「……次の相手は…あ」

 

「よろしくお願いしますね……えっと…深見先輩」

 

 

私の前に現れたのは冥加さんだった。

 

 

「ううん…こちらこそよろしく」

 

「……はい」

 

 

私たちはギアースシステムの指示に従いながら、ファイトの準備を始める。

 

 

「そのデッキ…」

 

「何なんでしょうね……全く…」

 

 

冥加さんのデッキはここに来てから渡された物だ…まだ本人も慣れていないだろう。

 

……冥加さんの口振りからすると以前はやってたんだろうけど…何かあったんだろうか。

 

 

ギアースシステムによって先攻後攻が決められる。

 

私は……後攻か。

 

「ルールは…大丈夫?」

 

「……問題無いです」

 

ギアースシステムの光の中……戦いが始まる。

 

 

「スタンドアップ・THE・ヴァンガード!」

 

「スタンドアップ、ヴァンガード」

 

 

 

私のFVはジャッジバウ・撃退者…冥加さんは……

 

 

 

「……タイムピース・ドラコキッド?……ギア…クロニクル…………」

 

「……って言うらしいですね」

 

 

 

可愛らしい…青い竜は新しいクランのユニットだった。

 

能力は……普通に山札の上5枚からグレード3を探す互換か……

 

 

 

 

「では……ボクの先攻…ドロー、スチームファイター メスヘデにライド」

 

 

 

「メスヘ………って……え?」

 

 

 

光と共に現れた金髪の青年はこっちを見て手を振る。

 

それは私が以前出会った青年と瓜二つで……

 

 

 

ーーよっ…ヒカリちゃん!ーー

 

 

……そう聞こえたのは幻聴だろう…いや、そう思いたい。

 

 

「……さっきとモーションが違うんですが…」

「たぶん……私のイメージが影響したんだと思う」

 

「……ターンエンド」

 

 

冥加さんはタイムピース・ドラコキッドをVの後ろに置いてターンエンドを宣言した…次は私のターンか……

 

 

……しかしメスヘデさんはギアクロニクルだったんだ…ということはあの時、天乃原さん達と一緒に居たって言うウルルさんやエルルさんも……?

 

 

これは後で…ギアクロニクルの設定を調べる必要があるかな……

 

私はもやもやと考えながらカードをドローする。

 

 

 

「ライド…撃退者 ダークボンド・トランペッター!ジャッジバウはその後ろに置いてブースト!そしてアタック!!」

<11000>

 

「スチームメイデン ウルルでガード」

 

「おお…」

 

「……?」

 

 

確かに私も少しだけ会ったことのある、あのウルルさんだ。

 

だったんをサポートするようにメスヘデさんに飛びかかるジャッジバウをウルルさんが軽くいなす。

 

ドライブチェックで出てきたのはファントム・ブラスター“Abyss”…アタックはヒットしない、いや…トリガーが出ていてもヒットはしていなかった。

 

「えっと…ターンエンド」

 

「凄いんですね…この…ギアースって」

 

「本当にね…」

 

私と冥加さんは周りを見回す。

 

ユニットだけでなく、フィールド等の背景もきちんと表示されているのがこの機械の凄いところだ。

 

 

「……ボクのターン…ドロー……えっと……レリックマスター・ドラゴンにライド、ブーストしてアタック」

 

<13000>

 

「ノーガード…だよ」

 

「……ドライブチェック…レリックマスター・ドラゴン、トリガー無し」

 

「ダメージチェック…うん、氷結の撃退者…ドロートリガーだから1枚ドロー…あ」

 

 

私がドローしたのは…ずっとピン差ししていたもののここ最近出番が無かったカードだ。

 

 

「…ターンエンドです」

 

「なら私のターンだね」

 

 

ここで私はずっと聞いて見たかったことを聞いてみる。

 

「ヴァンガード…昔やってたの?」

 

「ええ…まぁ……半年くらい」

 

 

半年……か。

 

「でも、こうやってもう一度やってみると…結構面白かったんですね」

 

「……そうかな」

 

私は少し躊躇いがちに答える。

 

楽しさ…というのはやはり具体的に言葉にしにくいものがある。

 

人というのはどこか卑屈で、楽しさや幸せといったものを口に出すと……本当にそうなのかと疑問を感じてしまうんだ。

 

……私だけ…かな。

 

 

 

「スタンドandドロー……ブラスター・ダーク・撃退者“Abyss”にライド…」

 

「ボク、2年くらい前に北宮って町に引っ越してきたんです」

 

……北宮。

 

 

「…そこの小学校は地元の中学生がよくバイクで突っ込んでくるような場所で…ずっと荒れていた」

 

「………」

 

「その頃、北宮で最初に出来た友達がヴァンガードを教えてくれたんです…」

 

冥加さんは懐かしそうに語る。

 

「……詭計の撃退者 マナをコール……スキルで山札から鋭峰の撃退者 シャドウランサーをスペリオルコール……スキルで手札のファントム“Abyss”をドロップし、山札からモルドレッドをドロー…………その頃は楽しく…なかった?」

 

今の話を聞くだけなら…とても楽しかったと思えるけど……

 

「……その頃から中学生は大人しくなったけど、まだ小学校の中は荒れていて…ちょっと楽しむ余裕が無かったんです」

 

 

「楽しむ…余裕……」

 

 

「今、ボクがこの場所にいる理由はあの社長さんに問い詰めたいですが……こうしてヴァンガードに触れることが出来たのは……良かったのかもしれないです」

 

 

冥加さんのその姿、その言葉はどこか…半年前の自分に重なった。

 

 

ヴァンガードを楽しむ余裕……

 

それはきっと…心の余裕ということだ。

 

 

私は痛々しい発言を繰り返していた当時の自分の姿に悶絶し、追い詰められた。

 

……今ではある程度受け入れて…若干ぶり返しつつあるけど…いや、それもどうかとは思ってるけど……とにかく立ち直ることができた。

 

……もしかしたらカグヤさんにも、自身の能力以外に心を追い詰めている要因があるのかもしれない。

 

 

例えば……あの社長……

 

 

 

「……」

 

「ごめんなさい…うるさかったですよね」

 

「ううん…いい話が聞けたよ……ありがとう」

 

 

さて…やっぱりこの勝負…負ける訳にはいかないね……いい話を聞かせてもらったんだ…いいファイトで返さないと。

 

 

「行くよ…ジャッジバウのブースト、ブラスター・ダーク・撃退者“Abyss”…アタック!」

 

<14000>

 

「ノーガード……です!」

 

 

私の手は山札へと伸びる。

 

「ドライブチェック…詭計の撃退者 マナ!トリガー無しだよ」

 

一閃。

 

ブラスター・ダークはレリックマスター・ドラゴンを切り伏せる。

 

 

「ダメージチェック……スチールメイデン ウルル…ヒールトリガー…回復はしませんが、パワーはヴァンガードに与えます」

 

「だったら……シャドウランサーのブーストしたマナでアタック!!」

 

<15000>

 

「……ラッキーポット・ドラコキッドでガード!」

 

マナが繰り出した強烈な蹴りを、ラッキーポット・ドラコキッドが体で受け止める。

 

これでこのターンは終わりだ……マナのスキルで呼び出されたシャドウランサーはデッキの中へと帰っていく。

 

 

「ターンエンド…」

 

 

ダメージは1vs1…試合運びは上々…いや、もう少しダメージは与えておきたかったか……

 

 

「ボクのターン…スタンド、ドロー……ニキシーナンバー・ドラゴンにライド!!」

 

 

グレード3……ニキシーナンバー・ドラゴン……どうやらシークメイト能力を持っているらしいけど、まだ私がグレード2であるため、それは使えない。

 

 

「スチームナイト ザングをコール!」

 

 

冥加さんはリアガードを展開してくる。

 

ギアドラゴンにギアロイド…その種族名の通り、体の各所に歯車のような意匠が見てとれる。

 

なかなか格好いいじゃないか。

 

 

「タイムピースのブースト…ニキシーナンバーでヴァンガードにアタック!」

 

<18000>

 

ニキシーのパワー11000…タイムピースのパワー4000…そしてニキシーのスキルでVアタック時、中央列に他のユニットがいることでパワー+3000……

 

「ノーガード…だよ!」

 

「ドライブ…チェック!!」

 

その結果はクリティカルトリガーとグレード3のルインディスポーザル・ドラゴン……

 

ダメージ2点を受けた私はダメージトリガーを発動することも叶わず3点まで喰らってしまった。

 

「トリガーを乗せたザングで…ヴァンガードに!」

 

<14000>

 

「暗黒医術の撃退者でガード…!!」

 

「……ターンエンド、です」

ダメージは3vs1……私は5枚の手札を見つめる。

 

相手のダメージは1点、彼女の手札も大体は把握できてる…これはファイナルターンまでの道が見えたかもしれない。

 

…まだ、その時では無い……けどね。

 

 

「私のターン…スタンドandドロー…世界の優しさと痛みを知る漆黒の騎士よ!我らを導く先導者となれ!!ライド・THE・ヴァンガード!!モルドレッド・ファントム!!」

 

 

舞原クンよりも暗い銀の髪を棚引かせ……幽幻の騎士が戦場に立つ。

 

「そして……ファントム・ブラスター“Abyss”をドロップ…ジェネレーションゾーン開放!!」

 

 

このユニットの力にもそろそろ慣れてきた。

 

 

「救世の光は調和と再生をもたらす!!ストライド・THE・ヴァンガード…ハーモニクス・メサイア!!」

 

 

私は続けてグレード1のマスカレードをコールする…今は余り手札を使いたくない。

 

 

「ジャッジバウでブースト…ハーモニクス・メサイアの…グロリアス・シンフォニー!!」

 

<32000>

 

「……っ完全ガード!!」

 

 

ハーモニクス・メサイアの放つ光の奔流を、機械仕掛けの鳥のようなユニットが受け止める。

 

トリプルドライブは順番に、督戦の撃退者 ドリン、無常の撃退者 マスカレード、氷結の撃退者…ドロートリガーだ。

 

「トリガーのパワーを乗せたマスカレードで…ヴァンガードにアタック!!」

 

<15000>

「ノーガード…ダメージは引っ込み思案のギアレイブン……」

 

 

これでダメージは3vs2…

 

 

「ターンエンドだよ…」

 

「…ボクのターン…スタンド、ドロー…そして…双闘起動!!スチームナイト ザング!!」

 

私の前に並び立ったのはニキシーナンバー・ドラゴンとスチームナイト ザングのレギオンだった。

 

 

「レリックマスター・ドラゴンをコール…CB2でジャッジバウ・撃退者を山札の下に!!」

 

「……!」

 

 

空に出現した魔方陣の中へとジャッジバウが吸い込まれていく。

 

これがギアクロニクルの特性……デッキバウンス…そして…

 

 

「ニキシーナンバー・ドラゴンのスキル!!このターン中、このユニットのヴァンガードへの攻撃であなたはグレード1以上のカードをガードに使えない!」

 

 

…そして、ガード制限。

 

 

冥加さんはレリックマスターの後ろにメスヘデさんをコールすると、アタックに入った。

 

 

 

「タイムピースのブースト…ニキシーナンバー、ザングでヴァンガードにアタック!!」

 

<27000 G1以上を手札からガードに使えない>

 

 

ニキシーナンバー・ドラゴンがその巨大な爪を構え、モルドレッドに突撃する。

 

「ここは……ノーガード」

 

「……ドライブチェック」

 

 

ツインドライブによってクリティカルトリガーとスチームナイト プズル・イリが手札へ加えられる。

 

ダメージは2点……ニキシーナンバーの攻撃も二度、モルドレッドに叩き込まれる。

 

 

「ダメージチェック…ブラスター・ダーク・撃退者“Abyss”……そして、暗黒の撃退者 マクリール…トリガー無し…だね」

 

 

これで私のダメージは5点だ。

 

 

「メスヘデのブーストしたレリックマスターで…」

「厳格なる撃退者、氷結の撃退者でガード…」

流石に次の点は……あげられない。

 

 

「ターンエンド……です」

 

「うん……なら……」

 

 

ダメージは5vs2……冥加さんのダメージに余裕はある…でも、それもここまでだよ……!!

 

 

「魅せるよ…ファイナルターン!!」

 

「!!」

 

 

私はユニットをスタンドさせ、ドローする。

 

そして……

 

 

「誰よりも世界を愛し者よ!!」

 

 

このユニットは使う度に…自分でもワクワクする。

 

 

 

「奈落の闇さえ光と変えて…今再び、共に戦おう!!!クロスブレイクライド・THE・ヴァンガード!!!」

 

 

 

思えば…ギアースシステムが普及してからこのユニットをギアースで使うのは初めてだった。

 

 

 

 

「撃退者 ドラグルーラー・ファントム!!!」

 

 

 

緋色のマント…漆黒の体……そして蒼く、美しく輝く鎧の宝石。

 

言葉で言い表せない…この感動。

 

 

 

共に戦える喜び……さぁ……行こう。

 

 

 

「ブレイクライドスキル…CB1、パワー+10000…そして山札から撃退者 ダークボンド・トランペッターをスペリオルコール!!」

 

このだったんはパワー+5000されているのだが、今は省略する。

 

 

「だったんのスキル……CB1で山札から魁の撃退者 クローダスをスペリオルコール!!」

 

 

このクローダスはレスト状態でコールされる……が、それも問題ない。

 

「手札から督戦の撃退者 ドリンをコール…クローダスのスキル、CB1と自身のソウルインで山札からブラスター・ダーク・撃退者をスペリオルコール!!……ドリンの前にダークが登場したためCC1!!」

そしてここからが本番だ。

 

「ドラグルーラーのスキル…CB1!だったん、マスカレード……力を貸して!!」

 

 

二人のユニットは光になって私の右手に宿る……まぁドロップゾーンに置くということなんだけどね。

 

 

「ダメージ…受けてもらう!!」

 

「……!!」

 

 

ドラグルーラーがニキシーナンバーに向かって鎖分銅を投げつけた。

 

その鎖はニキシーナンバーの体を貫き、絡めとる。

冥加さんのダメージゾーンにはヒールトリガーであるウルルさんが落ちる……パワーが乗るものの、ヒールはしない。

 

これでダメージは5vs3……

 

 

「直接ダメージ……」

 

「そう、そしてドラグルーラーはパワー+10000…これがドラグルーラーのミラージュストライク……だけどこのスキルはまだ終わらない!!」

 

「!!」

 

私は更に空いたリアガードサークルにマナとマスカレードをコールした。

 

更にマナはスキルで山札からシャドウランサーをコールしてくる。

 

 

 

「マナ、シャドウランサー、CB1でもう一度ミラージュストライク…!!」

 

 

冥加さんの4点目は引っ込み思案のギアレイブン…

 

 

「マスカレード、ダーク、CB1!!更にミラージュストライク!!」

 

 

冥加さんの5点目は…再び引っ込み思案のギアレイブンであった。

 

 

「…ドリンの前にブラスター・ダーク・撃退者をコール……CC1…氷結の撃退者もコール……ダークと氷結、CB1でミラージュストライク…」

 

 

「まさか……6点目……!?」

 

「ううん、ドラグルーラーのスキルではここから追加のダメージは与えられない…パワーがたった10000上昇するだけだよ」

 

 

「…10000」

 

 

ドラグルーラーの放った鎖によってニキシーナンバーは既に身動きが取れなくなっている。

 

準備は整った。

 

 

私は冥加さんのドロップゾーンとダメージゾーンの完全ガード…引っ込み思案のギアレイブンを見つめた。

 

偶然とはいえドラグルーラーのスキルのお陰で冥加さんの手札に完全ガードが無いことを知ることができた。

だから後はパワーを上げるだけだった。

 

 

「ドリンの前に……ブラスター・ダーク・撃退者をコール……CC1」

 

久しぶりに使ったけれど、やはりドラグルーラーは格好いい上に面白く、そして強い。

 

 

「行くよ……ドラグルーラー・ファントムでニキシーナンバー・ドラゴンにアタック!!」

<63000>

 

 

ドラグルーラーがニキシーナンバーに向かって羽ばたく。

 

 

「パワー……63000……」

 

 

それでも今の私……カグヤさんと神沢クンのファイトでカグヤさんが見せた“パワー11万”の存在を知ってしまった私では63000でも少し物足りない気分だ。

 

 

「……ノーガード」

 

「ドライブチェック……first、ファントム・ブラスター“Abyss”…そしてsecond、厳格なる撃退者……クリティカルトリガーだよ」

 

「!!」

 

 

 

ドラグルーラーの剣がニキシーナンバーを刺し貫く。

 

 

冥加さんのダメージにはヒールトリガーのウルルさん……だけどこのダメージは2点。

 

もう1点……ダメージゾーンにニキシーナンバーが落ちることでこのファイトは終焉を迎えたのだった。

 

 

 

「負けた……でも久しぶりに楽しかったかも」

 

「そう言って貰えると……私も嬉しい…かな」

 

 

デッキを片付けた冥加さんと握手する……柔らかい。

 

負けたファイター達が何人か帰っていく中、冥加さんはここに残ると言った。

 

 

「せめてあの社長から一言でも説明して貰わないと…ボクのことをどこで知ったのか……とかね」

 

「はは……全くだよね」

 

 

後ろを向き、会場の隅へと歩いていく冥加さんに私はもう1つ……気になっていたことを問いかけた。

 

 

 

「冥加さんって……歌うの好き…?」

 

 

私が彼女のことを知ったのは…北宮中の学祭…そのカラオケ大会に彼女が出ていたからだ。

 

北宮中の学祭で見せたあの歌声…相等なものだった。

 

 

 

「……葉月ユカリさんのようなアイドルには…憧れてます」

 

 

 

そう言って彼女は歩いていってしまった。

 

…もしかしたら…未来のトップアイドルになるのかもしれない…今度、エンちゃんを紹介したいな…

 

エンちゃんなら……きっと冥加さんのいい模範になるだろう。

不意にギアースシステムが再起動する。

そんなことを考えていた私の前に、次の対戦相手が現れたのだ。

 

休んでいる暇は無いみたい…だね。

 

 

「次は……ミツルクンだね」

 

「よろしく…ヒカリちゃん」

 

 

私の前にいたのは霧谷ミツルクン……VFGPで出会ったペイルムーンを使う青年だ。

 

 

このファイトを勝てば……決勝ブロック…

 

 

「負けないよ……」

 

「こちらこそ…今度こそ君に僕の力を見せるから」

 

 

デッキシャッフル、先攻後攻の決定を終え、私は息を整える。

 

 

「さぁ…」「始めようか」

 

 

 

「スタンドアップ・THE・ヴァンガード!!」

 

「スタンドアップ!ヴァンガード!!」

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

 

 

「リアガードのテトラバースト・ドラゴンでエーデル・ローゼにアタック!!」

「ノーガード…ああ…うちの負けやね……」

 

 

Cブロック…こちらもちょうど2回戦が終わった所であった。

 

 

 

「レイナちゃん本当に強いんやねぇ」

 

「カレンこそ…相変わらず強運……」

 

 

幼なじみである二人はゆったりと会話する…二人とも今は関西で暮らしているが、生まれも育ちも東京であった。

 

 

「ほな、うちはこれで…」

 

「ああ…またね」

 

 

レイナは旧友の姿を見送る。

 

次は3回戦……デッキをカットしながら対戦相手を待ち始めると、すぐに対戦相手は現れた。

 

そこにいたのは少し過激な服を着た、とても綺麗な女性…

 

 

 

「次に私の虜になるのはあなたのようね」

 

 

(……変人か)

 

 

 

「最高に可愛い美少女の名前…城戸、イヨ……覚えてね♪レイナちゃん♪」

 

そう言ってイヨは手を差し出した。

 

握手だと考え、レイナはその手を握る。

 

 

「捕まえた♪」

 

「?……って…!?」

 

 

レイナはイヨに体を引っ張られる…二人の距離は息がかかる程に近づいていた。

 

イヨはレイナの頬を指先で撫でる……

 

 

 

「可愛い///」

 

「!?!?」

 

 

レイナの体に悪寒が走る。

 

すぐにイヨと距離を離すものの、恐ろしいことにレイナはこれからイヨと二人きりでファイトしなければならなかった。

 

 

 

「よろしくね♪」

 

「…………」

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

 

 

Bブロック……こちらでは既に3戦目のファイトが始まっていた。

 

「真なる正義に敵は無し、駆けろ…宇宙の戦士!!超宇宙勇機 エクスローグ!!」

 

 

紅のボディの機械でできた戦士。

 

その姿を神沢ラシンは冷静に見つめる。

 

 

(確か…今月のショップ大会の景品か……)

 

 

「これがディメンジョンポリスの新たな力だ!!」

 

「……あんた、そういう奴だったんだな」

 

 

神沢ラシンの前に立っているのは…天地ミチヤ。

 

サバトレや奇声を発する行為を生業とし、様々なショップから出禁をくらっている天地カイトの弟もといカイザーグレーダーである。

 

「ちゃんと話せる人だったんなら…あの男に一つ注意でもして欲しいんだがな……」

 

「兄には恩がある…頭もあがらないのだ」

 

ミチヤはリアガードの次元ロボ ダイバレットをソウルへ送る……CB1というコストも払うことで“超次元ロボ ダイカイザー”をハーツにしたエクスローグにパワー+4000、そしてヒット時に相手のリアガードを退却させるというスキルを与えるのだった。

 

また…エクスローグ自身もアタックヒット時に自身のパワーが37000を越えていれば1ドローと相手のリアガードの退却が行える。

 

 

「普段は私一人で行動するなど考えられないが、今日兄は社員旅行でいないのだ」

 

「……あの男が……会社で働いている…だと?」

 

(これが社会の闇……アレでも働ける場所があると捉えるべきか、アレに仕事を取られている人間がいると考えるべきか……)

 

 

ミチヤはカイザーグレーダーをレストし、エクスローグにパワーを集める。

 

 

「私は常日頃、自宅を警備しているから今日ここに来れた……偽りの正義より解き放たれた私を止めることなど……誰にもできない!!」

 

(自分の兄を偽りの正義呼ばわり…というか自宅警備員…だから頭があがらないのか……結局こいつも…)

 

 

「カイザーグレーダーのブーストしたエクスローグでアタック!!このアタックがヒットした時、君は2体のユニットを退却させなければならない!!バーストエクスソーーーードぉぉぉぉ!!!」

 

<37000>

 

 

膨大な量のエネルギーを放出しながら、エクスローグはその剣を天に掲げた。

 

 

神沢ラシンは自身の場を見つめる。

 

ダメージはまだ2点…Vにはプロミネンスグレア、リアガードには定めのアグロヴァルとグウィード、そしてVの後ろにブルーノ……

 

 

(ここでブルーノを失うのは辛いところか)

 

 

「エルドル……完全ガード」

 

 

エクスローグが降り下ろした剣を難なく青き炎が絡めとる。

 

 

 

「む…トリプルドライブ……」

 

トリプルドライブからはクリティカル2枚と完全ガードであるダイシールドが登場する。

 

 

「リアガードのダイバレットでヴァンガードにアタックだ!」

 

<19000☆2>

 

 

神沢ラシンは山札を見通し、考える。

 

「ここは……剛刃の解放者 アルウィラでガード」

ダイバレットの銃撃をアルウィラはその剣一つで弾き返した。

 

グレアに傷は無い。

 

そのまま神沢ラシンへとターンが移る。

 

「シークメイト…双闘!!プロミネンスグレア、アグロヴァル!!」

 

 

グレアのレギオンを発動させたラシンはグウィードをソウルへ入れ、ゾロンを山札からスペリオルコール…更にゾロンから五月雨の解放者 ブルーノを呼び出した。

 

そしてこれらのスキルで誘発されたグレアのレギオンスキルと元々V裏にいたブルーノのスキルを組み合わせることによって……

 

「ヴァンガードにアタック…ブルーノのブーストしたプロミネンスグレア…パワーは33000、クリティカルは3、グレード1以上のカードはガードに使えない!」

 

<33000☆3 G1以上を手札からガードに使えない>

 

 

「なら私はクリティカルトリガー3枚でそれを迎え撃とう!!」

 

<トリガー2枚貫通>

 

 

プロミネンスグレアの放つ青き炎が、次元ロボ達を打ち砕いていく。

 

問題はヴァンガードであるダイカイザーにこの攻撃が届くかどうか……

 

 

「ツインドライブ……青き炎の解放者 プロミネンスコア……そして…………青き炎の解放者 プロミネンスグレア…アタックはヒットしないが、まだ終わりじゃない!!ブルーノのブーストしたアグロヴァルでダイカイザーにアタック!!」

 

<18000>

「ノーガード!!」

 

 

ミチヤのダメージゾーンに次元ロボ ダイドラゴンが落とされる。

 

これでダメージは2vs5。

 

 

「ターンエンドだ」

(次のターンが……山場になりそうだな)

 

 

ミチヤのヴァンガードサークルにはブレイクライドを有するダイカイザー…もちろんミチヤのダメージはブレイクライドの発動圏内だ。

 

(問題は…何がやってくるか……だな)

 

 

ダイカイザーの与えるスキルはクリティカルとドライブチェックでグレード3を引いた時に相手のガーディアンを1枚破壊するというもの。

 

 

ダイカイザーと相性の良いグレード3はどれも頭のネジが飛んだスキルを持っている。

グレートダイカイザーはトリプルドライブ。

 

真カイザーにブレイクライドレギオンをしたなら☆3の上にドライブチェックでグレード3を引いた時、1枚で2体のガーディアンを破壊できる。

 

次元ロボ以外なら、シンバスターというカードがガード制限を持っている。

 

(一体…誰で……)

 

 

「私によるターン…立ち上がれ勇者達…そしてドロー行くぞ……ブレイクライド!!」

 

ダイカイザーが光に包まれる。

 

光は天に伸び、宇宙からの来訪者を迎え入れる。

 

 

 

「……そいつは…」

 

「その顔……どうやらこいつを知っているらしいな」

 

 

 

神聖な雰囲気を持った銀と青のボディ。

 

自らの体よりも巨大な剣。

 

その……勇者の名前は……

 

 

 

「ゴー……イーグル……か!」

 

 

ディメンジョンポリスのはじめようセットにしか付属していないため、ネット上はともかくカードショップでは見かけることの少ないカード……

 

 

 

「そうだ!彼こそが…大宇宙を駆ける銀翼の勇者……超次元ロボ ゴーイーグル…ここに推参!!!」

 

 

 

銀の勇者がその剣をプロミネンスグレアへと向ける。

 

 

そして、その輝くツインアイは真っ直ぐ神沢ラシンのことを見つめていた。

 

 

 

 

……ファイター達の思い、情熱、イメージは閃光となってギアースシステムへと吸い込まれていく。

 

それはギアースシステムに更なる進化を……もたらそうとしていた。

 

 

 


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