12月…それは一年の終わり。
ヴァンガードではエクストラブースター“宇宙の咆哮”も発売された。
私としては次に迫る“シャドウバラディンのレジェンドデッキ”の発売に期待を膨らませている…公開された商品情報の中に、ネヴァンやマーハの姿を確認した時には思わず涙を流した程に楽しみだ。
さて……“あの後”の話をしよう。
美空…元社長は前社長である三日月氏に社長の座を譲り渡した。
急な話であったとは言え、社内での混乱は少なかったそうだ。
そして“カードファイト‼ヴァンガード”に関する諸々の権利は元々の会社に返された……と、いっても相変わらずカード開発や“ギアース”の普及は三日月社を中心に行われるらしい。
まあ……つまりは何も騒ぎは起きなかったのだ。
美空元社長…いや、ツキノさんの馬鹿みたいな計画は一応、何のトラブルも起こさなかった。
……ただ諸々に多大なる迷惑を掛けただけだ。
「……それでも十分トラブルだよね…」
「……すいません」
今日は土曜日……時刻は午後の4時12分…
今、私がいるのは“喫茶ふろんてぃあ”のテーブル席…
そして目の前には美空カグヤさんが座っている。
ここでこうして会えたのは“偶然”…本当にただの偶然だった。
今日から“喫茶ふろんてぃあ”のメニューに追加される“マーブルグレアシュタインズツイスト”に惹かれた二人の女の子による……ただの偶然なのだ……
「でも……また会えて嬉しいです」
「……ヒカリさん…」
「カグヤさん…私とヴァンガード…しませんか…?」
私はそう言いながら、鞄からデッキケース…いや、デッキの入った黒い宝石箱を取り出す。
それは……普段私が使っている“撃退者”のデッキでは無かった。
カグヤさんはそれを見て複雑そうな顔をした。
「私は……ファイトは……」
「大丈夫……きっと後悔させません…私はあなたを倒します」
「…………」
カグヤさんのヴァンガードに対する…いや、自身の力に対する嫌悪感の根本には“ファイトで負けたことが無いから”がある。
なら、その前提を覆してあげればいいだけだ。
「そんな……簡単に私に勝てると?」
「やって見なくちゃ分からない……ですよ、私がカグヤさんに“答”を見せてあげます」
私のその言葉を聞いたカグヤさんはゆっくりとデッキケースを取り出した。
やはり彼女もヴァンガードファイター…ちゃんとデッキは持ち歩いていた。
「分かりました…“マーブルグレアシュタインズツイスト”が来るまで……お相手します」
「…うん……ここであなたの本気の表情…見せてもらうよ」
* * * * *
「スタンドアップ!THE!ヴァンガード!!」
「スタンドアップ…ヴァンガード」
私たちはファーストヴァンガードを表にする。
喫茶ふろんてぃあにはギアースが置かれていないため、アナログな環境でのファイトだ。
カグヤさんのファーストヴァンガードは祈りの神器 プレイ・エンジェル……安定の“ジェネシス”だ。
そのスキルはざっと“ヴァンガードが双闘しているのなら、ソウルに入れてよい、入れたのならソウルチャージ3、ヴァンガード1体にパワー+5000”といった所。
つまりこのデッキは双闘主体…ガード制限とクリティカル増加スキルを持った“宇宙の神器 CEO ユグドラシル”のデッキである可能性が高いという訳だ。
そして……私のファーストヴァンガードは……
「……フルバウ…ですか」
「……はい」
カグヤさんがそう呟いた……そのとおり…私のファーストヴァンガードはフルバウ……そしてデッキは…
「これは……私の“もうひとつの主力”です…」
フルバウから始まる“連携ライド”ならカグヤさんの力に対する相性も良い。
これが私の“ファントム・ブラスター”のデッキ。
「この奈落竜こそ…あなたの最後の希望です…」
「ですが…私の力が働いているのなら、ヒカリさんはグレード1にライドすることは出来ない筈……」
「そう……かな?」
先攻である私は山札に手を伸ばす。
確かに“手札にグレード1のカードは無い”…だけど私は信じている。
このデッキなら……きっと……私に味方してくれるって。
そして私は…“力”を使わないまま…カードをドローした。
「…………」
「……ヒカリさん…?」
私は……ドローしたカードを…ヴァンガードサークルに置く。
「ライド・THE・ヴァンガード!!ブラスター・ジャベリン(8000)!!」
「!!」
成功した…私はグレード1のカードを引き当てることに成功した。
…一応駄目だったらGゾーンに追加した“ヒートエレメント マグム”も使って“Gアシスト”しようとは思っていたけど……良かった。
そして私はブラスター・ジャベリンの状態を確認する…ソウルに“フルバウ”が存在するため、ジャベリンのパワーは元々の6000から8000に上昇する、そして。
「連携ライドスキル発動…ソウルのフルバウが主を呼ぶ…来い!ブラスター・ダーク!」
そして私はスキルを使い、次にライドするためのカードを山札から手札に加えターンエンドを宣言した。
「……私のターン…ドロー……いくらライドに成功していても……あなたの手札は…無に等しい筈です」
「……そうかな?」
「……オレンジの魔女 バレンシア(7000)にライド…プレイ・エンジェルをV裏に配置し、バトルに入ります」
カグヤさんがプレイ・エンジェルとバレンシアをレストする。
パワーは12000…パワー8000のブラスター・ジャベリンなら5000ガードで1枚貫通と言ったところか…なら…
「グリム・リーパーで完全にガード!!」
「!?」
10000ガードで確実に守る!
カグヤさんは私のカードを見て驚いていた。
「このタイミングで……グレード0のユニット…!?ヒカリさん……まさか……」
やはり気づかれてしまうか。
「貴女のデッキ……グレード3が……4枚以下…ということですか……」
「……うん」
カグヤさんの能力に対抗する方法としては最も分かりやすい方法だった。
手札にグレード3が溢れてしまうのなら、減らせばよい…最悪1枚でもカグヤさんの“力”の影響下なら確実に手札に加えることができる。
とは言え……私もカグヤさんの“力”の全てを知っている訳ではない。
どうやら彼女の“力”は相手の初期手札にグレード3を片寄らせるというものでは無く、とにかく初期手札にグレード1を含ませない……というものだったと確証を得ることができたのはこのファイトの準備をしている時、手札交換まで終えて手札を見たときだった。
私の初期手札は
ファントム・ブラスター・オーバーロード(G3)
ファントム・ブラスター・オーバーロード(G3)
ファントム・ブラスター・ドラゴン(G3)
グリム・リーパー(☆)
アビス・ヒーラー(治)
だった。
「そんな片寄ったデッキで……私を倒せると?」
「ええ……そうです」
私はカグヤさんがドライブチェックでクインテットウォールである“凍気の神器 スヴェル”を捲ったのを見届けると、自分のターンを宣言した。
「ドロー…そしてライド・THE・ヴァンガード!!ブラスター・ダーク(10000)!!」
私は続けてドローしたばかりのカードをコールする。
「コール・THE・リアガード!!黒の賢者 カロン(8000)!!」
そして、V裏に置かれたカロンでダークをブーストし、アタックを仕掛ける。
パワーは18000だ。
「……ノーガード」「ドライブチェック…秘薬の魔女 アリアンロッド……トリガー無し」
カグヤさんのダメージゾーンに“豊穣の神器 フレイヤ”が落とされ、このターンは終了する。
ダメージは私が0…カグヤさんが1だ。
「私のターン…スタンド、ドロー……ライド、運命の神器 ノルン(9000)」
「………」
運命の神器 ノルン……間違いなくこのデッキのエンジンとなっているユニットだ。
ソウルからドロップゾーンに置かれた際にヴァンガードのパワーを上げることができる……ガード制限やVスタンドを持つ“神器”のデッキでは一番注意しなくてはならないカードだろう……
「……アタック」(14000)
「アビス・ヒーラーで完全にガード」
プレイ・エンジェルとノルンによるV一列のみのアタック……私はそれを再びしっかりとガードした。
後々のためにも今、ダメージを受けすぎるのは良くない。
……そのための“連携ライド”…そのための高パワーでもあるのだから。
「……ドライブチェック…
このターンもダメージは変わらず0vs1だ。
私は慎重に次の展開を考える。
「私のターン…スタンドandドロー……」
第5ターン目……私はグレード3へとライドする…ここでライドすることによって次のターン、カグヤさんの超越や双闘を許してしまうが構わない…私はツインドライブの恩恵を優先した。
私の頭の中にカグヤさんとの会話が蘇る。
ーーー『…好きなユニットが時代遅れになったらどうしますか』
ーーー『…どうにかして使います』
その答え……ここで見せようじゃないか……
「呪われし竜よ、出でて我が未知なる道を切り開け!!ライド・THE・ヴァンガード!!」
それは勿論……私の大好きなRRR版のカードだ。
「ファントム・ブラスター・ドラゴン(11000)!!」
元々のパワーは10000であるが、連携ライドによって他のグレード3と比べても遜色の無い11000まで上昇する。
「続けてアリアンロッド(7000)をコール…レストして“ファントム・ブラスター・オーバーロード”をドロップ…山札からドロー…」
私はアリアンロッドのスキルで手札交換を行う。
その際にドロップしたのはこのデッキの少ないG3の中の1枚……ファントム・ブラスター・オーバーロード。
このカードをドロップしてしまったことで、私はファントム・ブラスター・オーバーロードにライドしたときにそのスキル…“ペルソナブラスト”を撃つことが出来なくなってしまった。
だが、私は今回このスキルを使う予定は元々無かったのだ。
このスキルに必要なコスト“ペルソナブラスト+カウンターブラスト3”はこのデッキには重すぎる…役立てたいのは寧ろもうひとつのスキル…“クロスライド”の方だった。
「アリアンロッドの前に虚空の騎士 マスカレードをコール(9000)!!カロンのブーストした奈落竜でヴァンガードにアタック!!(19000)」
「スヴェルでクインテットウォール…CB1…」
カグヤさんはクインテットウォールを使用する。
山札からガーディアンサークルに次々とカードが置かれていった。
戦巫女 ククリヒメ(☆) …10000
運命の神器 ノルン(G2) …5000
真昼の神器 ヘメラ(G2) …5000
鏡の神器 アクリス(醒) …10000
全知の神器 ミネルヴァ(G3) …0
+V 運命の神器ノルン (9000)
合計ガード値 39000…完全ガード。
「ドライブチェック…first、
この攻撃は防がれたが、まだマスカレードが残っている……Vが“ブラスター”であるならアタック時にパワー+3000されるスキルを持っているマスカレードを私はレストした。
「虚空の騎士 マスカレードでヴァンガードにアタック…!(17000)」
「ノーガード」
カグヤさんのダメージゾーンに叡智の神器 アンジェリカが落とされ、ダメージは2点となった。
「…ターンエンドだよ」
ここまでの流れは上々……問題はここからか。
「……私のターン、スタンド、ドロー……」
第6ターン…ここからカグヤさんの本当の攻撃が始まっていく。
「解き放たれしは全てを滅する無慈悲なる力……ライド、宇宙の神器 CEO ユグドラシル(11000)」
更にカグヤさんはリアガードに豊穣の神器 フレイヤ(9000)をコールすると……
「シークメイト、花は咲き、海は割れ、星が産まれる……ユグドラシル、ノルン、双闘…」
双闘スキルを発動させるのだった……私は山札の中にトリガーや、クインテットウォール等が戻っていくのを確認した。
そして、Vが双闘したことによって複数のスキルが発動可能になる。
「フレイヤのスキル…CB1…フレイヤにパワー+5000、ソウルチャージ3…」
ソウルに送られたユニットは
オーダイン・オウル(G1)
鏡の神器 アクリス(醒)
叡智の神器 アンジェリカ(G3)
「プレイ・エンジェルをソウルへ…ユグドラシルにパワー+5000、ソウルチャージ3…」
ソウルへ送られたのは
苺の魔女 フランボワーズ(守)
慈悲の神器 エイル(治)
豊穣の神器 フレイヤ(G2)
…であった。
カグヤさんがユグドラシルとノルンをレストする。
「ユグドラシル、ノルンでアタック…レギオンスキル発動…SB6…」
ソウルからドロップへ吐かれたユニット達の能力がここで誘発していく。
運命の神器 ノルン …Vにパワー+5000
鏡の神器 アクリス …Vにパワー+5000
オレンジの魔女 バレンシア …SC2(宇宙の神器 CEO ユグドラシル、運命の神器 ノルン)
慈悲の神器 エイル …特に無し
豊穣の神器 フレイヤ …特に無し
祈りの神器 プレイ・エンジェル …特に無し
「ユグドラシルはアタック時にパワー+3000……合計パワー…38000☆2…そしてヒカリさんはこのアタックを防ぐ時に、手札からグレード1以上のカードをガードに使うことが出来ません」
「…ノーガード」
……この時のために序盤をガードしてきたんだ…今はその攻撃…受け止める…!!
「ドライブチェック…
私のダメージゾーンに、3点のダメージが叩き込まれる。
最初は完全ガードである暗黒の盾 マクリール。
次にG1…黒の賢者 カロン。
そして……
「third…
これでダメージは2vs2だ。
「……豊穣の神器 フレイヤでヴァンガードにアタック(19000)」
「アビス・フリーザーでガード…!!」
3点目は……まだ貰うわけには行かないんだよね…
「ターンエンドにしましょう…」
「私のターン…スタンドandドロー!!」
ここまで、毎ターン何かしらの攻撃をガードしてきたため、手札はカグヤさんの方が若干多い…6枚くらいかな?
だけど、カグヤさんはまだあまりリアガードを展開していない……そこに付け入る隙がある。
「コール・THE・リアガード!!罪を背負う覚悟は彼女の胸に…漆黒の乙女 マーハ(8000)!!」
CB2というコストを払い、私は彼女のスキルによってその後列に黒の賢者 カロンをコールした。
これで、私のリアガードサークルは全て埋まったことになる。
「カロンのブーストした、ファントム・ブラスター・ドラゴンでヴァンガードにアタック!!(19000)」
「……ノーガード」
ドライブチェックで引いたのは、ブラスター・ジャベリンと虚空の騎士 マスカレード……残念ながらトリガーが登場することは無かったものの、一応ダメージは与えたので、良しとしよう。
カグヤさんのダメージに落ちたのは、全知の神器
ミネルヴァ……こちらもトリガーでは無かった。
「カロンのブーストしたマーハでヴァンガードにアタック!!(16000)」
「
「アリアンロッドのブーストしたマスカレードでヴァンガードにアタック!!(19000)」
「もう一度…クリア・エンジェルでガード」
なかなか固い守りのカグヤさん…こちらの攻撃は余り通して貰えず…このままターンエンドだ。
ダメージは私が2点…カグヤさんが3点…
次は8ターン目……カグヤさんのターンだ。
「私のターン…スタンド、ドロー……真昼の神器 ヘメラをコール…スキルでドロップゾーンから運命の神器 ノルン、鏡の神器 アクリス、鏡の神器 アクリスをソウルへ送ります」
……ユグドラシルのスキル発動の準備は万端という訳か……
カグヤさんのアタックが始まる。
「ヘメラでリアガードのマスカレードにアタック…(9000)」
「マーハでインターセプト…!」
続けてカグヤさんはユグドラシルによるアタックを仕掛けてきた。
スキルの発動によってガード制限、クリティカル…ソウルから吐かれたユニットによってパワーが与えられていく。
「ユグドラシルとノルンでアタック…パワーは43000…クリティカルは2…グレード1以上は手札からガードすることが出来ません…」
これを止めるとなると、私のデッキでは最低でもトリガーユニットが4枚も必要になってくる。
そんな攻撃を毎ターン放たれては、溜まったもんじゃない。
「…ノーガード」
だからギリギリまでノーガードで凌ぐつもりだ。
「…ドライブチェック…叡智の神器 アンジェリカ……セカンドチェック…オーダイン・オウル……共にトリガー無しです」
「ダメージチェック……first、ブラスター・ダーク……second、秘薬の魔女 アリアンロッド…共にトリガー無しだよ」
出来ればダメージトリガーが欲しかったが、それを言っても始まらない。
「フレイヤでリアガードのマスカレードに…アタックです(9000)」
「………ノーガード」
私はマスカレードを退却させた。
「ターンエンド」
このターンで私のダメージは4…カグヤさんは3……とダメージ差が逆転してしまった。
手札の損失は少なく済んだが…気は抜けなくなった。
「私のターン…スタンドandドロー!!そしてコール・THE・リアガード!!敵陣を切り開く呪われし槍!カースド・ランサー!!」
私はカースド・ランサーを元々マーハがいた場所にコールする……このユニットのアタックをヒットさせることが出来たなら、カウンターチャージを行うことができる…カウンターブラストを多く使うシャドウパラディンには重要なコスト回復ユニットだ。
続けて私はアリアンロッドをレストし、スキルを発動…手札のブラスター・ジャベリンを捨て、ドローを行った。
「…カロンのブーストしたファントム・ブラスター・ドラゴンでヴァンガードにアタック!!(19000)」
「…ノーガード」
……これは綱渡りだ。
私は頭の中でそう思った。
自分へのダメージを押さえつつ、相手にダメージを与えていく……いつ、どこでクリティカルトリガーが登場するかも分からない中、私たちは一歩一歩距離を詰めていく。
一つのミスが…命取りになる……
「ドライブチェック…first、
ダメージが4点から2点に大きく回復する…嬉しい誤算だ。
一方でカグヤさんのダメージゾーンには
「カロンのブースト……カースド・ランサーでヴァンガードにアタック…!!パワーは27000!!」
「……オーダイン・オウル2枚と
私はソウルに真昼の神器 ヘメラが吸い込まれるのを確認し、ターンエンドを宣言した。
ダメージは私が2点…カグヤさんが3点。
「私のターン…スタンド、ドロー……オーダイン・オウル(6000)をユグドラシルの後ろにコール…スキル発動、ドロップゾーンのユグドラシルをデッキボトムへ…ユグドラシルにパワー+5000」
オーダイン・オウル…ジェネシスの“神器”デッキをサポートするユニットだ。
ターン制限の無い起動能力であるため、コストであるドロップゾーンのグレード3が存在する限り、神器のヴァンガードにパワーを与え続けることができる。
またデッキの減りが早く、デッキアウトの危険と常に隣り合わせであるジェネシスにとっては、山札を補充できるこのユニットはとても優れものだと言えるだろう。
……って何で私はWikiみたいなことを言っているんだろう……
「オーダイン・オウルのブースト…ユグドラシル、ノルンでヴァンガードにアタック(34000)」
レギオンスキルを使ってこなかった……ソウルの供給が一時的とはいえ、追い付かなかったのだ。
今なら、ガード制限も無い……完全ガードを使うなら今…か…?
「ブラスター・ジャベリンをコストに暗黒の盾 マクリールで完全ガード…!!」
「ドライブチェック…真昼の神器 ヘメラ、林檎の魔女 シードル……共にトリガー無し…」
カグヤさんは残りのリアガードをレストする。
「豊穣の神器 フレイヤで…リアガードのカースド・ランサーにアタック(9000)」
「ノーガード…カースド・ランサーは退却…」
「ターンエンドです」
ダメージは引き続き2vs3で私の優勢……手札は私が6枚であるのに対し、カグヤさんが8枚……
今回のカグヤさんのデッキにはリアガード向きのユニットが少ないのか…リアガードを大きく展開する素振りが無い。
ここまでに登場したカードを考えても……
G2 運命の神器 ノルン…ソウルから吐かれた時に“神器”のVのパワーを上昇。
G2 真昼の神器 ヘメラ…Rにコール時、ドロップゾーンから“神器”のカードを3枚までソウルに送る。
G2 豊穣の神器 フレイヤ…双闘時にコストを払うことでソウルチャージ3と自身のパワー上昇。
G1 苺の魔女 フランボワーズ…完全ガード。
G1 凍気の神器 スヴェル…クインテットウォール。
G1 林檎の魔女 シードル…“神器”のガーディアンとして使用することで、自身を含むガードに使用したカードをソウルに送る。
G1 オレンジの魔女 バレンシア…ソウルから吐かれた時にソウルチャージ2。
G1 オーダイン・オウル…ドロップゾーンのG3をデッキボトムに置き、“神器”のVのパワー上昇。
……と、リアガードの攻撃性能は高くない。
反面、ユグドラシルのスキルを継続的に使用することと、ユグドラシルのスキルを強化することに重点が置かれているように思える。
……V特化なら早めにリアガードを削るのも有りか。
「私のターン…スタンドandドロー……」
まあ、早めにと言っても、もう11ターン目…だけどね。
そんなことを考えていると、カグヤさんが私に質問をしてきた。
「ヒカリさんは…本気で私に勝てるとおもっているんですか……?」
その口調からは、私を挑発しているような雰囲気は無かった。
それは…カグヤさんの純粋な疑問だった。
……確かに…簡単では無いかも知れない。
カグヤさんの能力による、私のデッキの制約もあるが……それ以前にカグヤさんの“神器”デッキに対し、私の“ブラスター”デッキはパワー不足だ。
それもその筈……このブラスターに使われているカードはどれも今から2年以上前に発売されたカードなのだから。
半年前に強化された“神器”とは悪い意味で年期が違う。
そもそも、このシャドパラの“ブラスター”は決して強力なデッキではない。
今の“撃退者”とは違い、強力な“V”がいないのだ。
私の大好きな奈落竜デッキも、結局当時トップクラスの性能を誇ったデッキ…ジエンドやマジェスティ、ツクヨミデッキと比べると見劣りする。
だけど私には…今も、昔も…変わらない思いがある。
私は空いているリアガードサークルに秘薬の魔女 アリアンロッドとカースド・ランサーをコールしながらカグヤさんに言った。
「……このデッキを信じてますから」
「………」
「だから…今の私達に不可能なんて無いんです」
「…!」
カグヤさんの力も、ジェネシスのデッキも強力だ…今、私の前に立ちはだかる“ユグドラシル”も私が油断した一瞬に勝負を決めることができる性能を秘めている。
だけど…必ず勝機はある……このゲームには始める前から確定された勝利や敗北なんて存在しないのだから。
それが…カードファイト‼ヴァンガードという…決して完全では無い…ゲームなんだ。
私は2体並んだアリアンロッドの内1枚をレストし、虚空の騎士 マスカレードをドロップすることで、手札交換を行う。
「私が証明します…カグヤさん……あなたと本気で戦うことができ、あなたを倒すことが出来るファイターがここにいると!!」
「ヒカリさん…」
そして私は、ダメージゾーンのカードを2枚裏向きにして、リアガードのアリアンロッドを2枚、ヴァンガードの後ろに控えていた黒の賢者 カロンを退却させる。
私の中のイメージではこれは“命を捧げる”のでは無い……“命を懸けている”んだ……。
「私たちの思い…届けるよ……ダムド・チャージング・ランス!!!」
私はカグヤさんの心の扉を叩き続ける…カグヤさん……ヴァンガードはあなたを独りにするゲームじゃないと……そう、訴えるために……