吾輩は使徒である   作:-Msk-

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どうも、お久しぶりです。
約一ヶ月更新できず、申し訳ありません。

どうも筆が進まなくて……
ゼルエル様の一人称って、かなり表現が難しいんですよね。
あくまでも自分からしてみれば、ですが。

戦闘シーンもゼルエル様視点なので、どうもそっけない。
難しいです……


Ⅲ 停止教室のヴァンパイア

 私が生きていることが三大勢力のトップに知られたのだが、それから特に変わったことはない。天使、堕天使、悪魔――どの陣営からも使者が送られたり、監視されたりしていない。どうやらしっかりと私の出した条件を守っているようである。

 

 レイナーレから、アザゼルが赤龍帝――兵藤一誠と接触したとの報告があった。和平を提案するからとはいえ、少々自由過ぎる気もするが……まぁあのアザゼルだ。仕方がないだろう。

 

 白龍皇は禁手(バランス・ブレイカー)に至っているが、赤龍帝は至っていない。大方、《赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)》の状態でも確認したのだろう。それ以外は……単に会ってみたい、という理由かもしれないが、どちらにせよ私に不利益になることはないので気にはしない。

 

 レイナーレとアーシアの鍛錬の成果は徐々にだが出てきている。

 

 まずレイナーレだが、光槍の分裂・収束を五本まで可能とした。才能の無い身にしてはかなりの成長だと思う。このまま腐らなければ二桁、もしくは三桁の光槍を分裂・収束を可能とするだろう。

 

 次にアーシアだが……こちらは少々予想を超えた。過剰回復による対象へのダメージを可能とした。《聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)》本来の使用方法とは異なるが、有効な手には違いない。手数が増えるのは素晴らしいことだ。

 

 面白い。実に面白い。レイナーレとアーシアは次々に新しいことを私に教えてくれる。このまま私を楽しませ続けてくれればいいが……

 

 そういえば明日、アーシアの授業参観とやらがあったな……レイナーレを連れて見に行こうか? レイナーレに断られたら一人で行くのもいいだろう。授業参観とは生徒の保護者が行くのだろう? なら公的にはアーシアの保護者になっている私も行くべきである。

 

 

「レイナーレ、明日の授業参観に私と共に行くか?」

「よ、よろしいのですか?」

「無論だ」

「勿論行かせてもらいます!!」

「そうか」

 

 

 レイナーレの同行も決定した。残るは……ビデオカメラか? 授業参観の授業を撮る、というのは授業参観の醍醐味なのだろう? 

 

 

「レイナーレ、ビデオカメラを用意しろ」

「かしこまりました。グレードはどの程度のものを?」

「テレビクルーが使うようなものではなく、一般家庭向けの最高級のものを用意しろ」

「かしこまりました」

 

 

 金は悪魔陣営から賄賂としてたんまり貰っている。こういう事に使わなければ、使い切ることはないだろう。――あぁ、バイクの改造をするのもいいかもしれない。親方の改造はぼったくり、というやつだからな。

 

 

 

† † † 

 

 

 

 授業参観日当日である。普段はカソックを着ているのだが、流石に悪魔の根城である駒王学園にカソックで行くわけにはいかない。故に適当なものを見繕おうと考えていたのだが、レイナーレが既にスーツを購入していたので手間が省けた。レイナーレはフォーマルドレスを着ていくようだ。

 

 公開される授業は英語。人間界で最も多様な地域で使用が可能な言語だ。ただ、日本ではあまり出番がないようだ。空港など、日本人ではない人間が集まる場所では使えると便利なようだが。

 

 言語を態々授業で学ぶというのも少々疑問に思う。

 

 前提として、私が現在暮らしている日本で使われる言語は日本語である。日本人は全員日本語を使うのだ。それなのに他国の言語が必要だとでも? 外交? それなら外交官が他国の言語を覚えれば良い話だ。全員が全員必要なわけではない。適材適所というやつだ。まぁ気にしても仕方がないことか。

 

 そして現在、公開されている英語の授業を観覧しているのだが……何だこれは。言語の学習に紙粘土だと? ……新しいではないか。私の想像を超えた授業である。

 

 兵藤一誠はグレモリーの娘の人形――フィギュアをつくっていた。余程可愛がられているようだ。でなければ、あれ程まで精巧に自らの主である女の裸体を作り上げることはできないだろう。転生悪魔なのだから尚更だ。

 

 対してアーシアは十字架――それも駒王教会に飾られているものだ。細部の装飾まできっちりと再現しているのには少々驚いた。……そのせいなのか、兵藤一誠とゼノヴィアが顔をしかめていた。二人は悪魔なのだから仕方がない。

 

 ゼノヴィアは悪魔に転生した。この事実を知ったのはつい先程だが、特に思うことはない。ただ一つ気になるのが、悪魔に転生してもデュランダルに拒絶されていないことだ。

 

 聖と対の存在である悪の魔に転生したのに、聖の塊とも言える聖剣デュランダルに拒絶されていない。これも神の死の影響なのだろうか? やはりミカエルでは神の代わりには成れないということだろうか? どちらにせよ、世界のバランスが崩れているのには違いがないか。

 

 授業が終わると、アーシアが十字架を私にくれた。プレゼントだそうだ。……完成度が高い。表面は滑らかになっており、指を滑らせても一切引っかからない。そして僅かながらも聖を宿すか……アーシアには聖具を作る才能もあるのだろうか?

 

 仮に、アーシアに聖具を作る才能があったとしよう。間違いなく教会――天界からの接触があるだろう。そして自陣営へ勧誘する。一度悪魔の傷を癒しただけで捨て、新たに大きな才能を見つけたら回収する。なんともまぁ、聖職者にあるまじき行為である。だがそれが教会だ。それが天界である。

 

 しかし何だ……無駄に騒がしいな。何かあったのだろうか?

 

 

「ゼルエルさん、どうやら魔女っ子が撮影会を開いてるようです」

 

 

 隣にいるレイナーレが耳元で(ささや)いた。

 

 

「魔女っ子……? それは魔女とは違うのか?」

「魔女のコスプレをした少女のことかと。詳しいことは私も」

 

 

 魔女のコスプレ。コスプレか……コスチューム・プレイだったか? 詳しくは知らないが、教育施設で行っても問題はないのだろうか? 

 

 

「どうなされますか?」

「どうもしない。帰るぞ」

「かしこまりました」

 

 

 授業参観は既に終了しているのだ。これ以上この学園にいる必要はない。それに、これ以上この学園に居れば、魔王に会う可能性が出てくる。何せ、魔王の身内がこの学園の三年生として通っているのだ。授業参観にくる可能性は大いにある。

 

 

 

† † †

 

 

 

 授業参観から数日が経った。例の和平会談の当日である。太陽が完全に沈み、夜になり、人間が完全に寝静まった頃が会談の開始時刻だ。――それが今現在なのだが。

 

 駒王学園新校舎の休憩室、中央に設置された円形のテーブルを囲むように、尚且(なおか)つ等間隔で並べられている椅子に各陣営の代表が座っている。

 

 天使の代表はミカエル。背後には紫藤の娘――イリナが控えている。

 

 堕天使の代表はアザゼル。背後には白龍皇が控えている。

 

 悪魔の代表はサーゼクスとセラフォルー。給仕係としてグレイフィア・ルキフグス。背後にはグレモリーとシトリーの娘、その眷属達が控えている。

 

 そして最後に私。背後にはレイナーレとアーシアが控えている。

 

 悪魔陣営からサーゼクスとセラフォルーが出席したのは、会談場所である駒王学園に二人の妹が通っているからだろう。そしてその妹達がコカビエルと相対したからだろう。

 

 しかしこれは平等と言えるのだろうか? 

 

 各陣営からトップが一人ずづ参加し、付き人は各一名。私はレイナーレとアーシアの二人を連れているが、それもアーシアが襲われないようにするためだ。堕天使には前例があるからな。

 

 悪魔陣営は魔王二人にその妹、挙句の果てには妹の眷属まで勢ぞろいしている。いくら会談場所を提供しているからとはいえ、これは少しどうなのだろうか。会談場所を提供している時点で少々胡散臭いというのに……

 

 会談場所を提供するということは、ある程度の罠を張れるということだ。

 

 例えば時間作動式の拘束術式。移動的に発動する故に、寸前のモーションを確認し対処をするしかない。まぁこれから和平会談をするのだから、そのようなことは起きないと信じたい。万が一起きたらこのような会談は二度と開くことが出来ないだろう。そして――一生後悔させてやろう。

 

 

「全員がそろったところで、会談の前提条件の一つ。ここにいる者達は最重要禁則事項である『神の不在』を認知している」

 

 

 口を開き、会談の開始の合図とも言える宣言をしたのはサーゼクス。周囲を一瞬見回し、続けた。

 

 

「――では、それを認知しているとして話を進める」

 

 

 会談が開始した。

 

 会談は順調に進んでいるように見える。あくまでも見えるだけである。発せられる言葉はどれも互いに当たり障りのないものばかり。ただ嫌味を言い合っているだけである。

 

 その牽制が終わりを迎えたと思えば、次はグレモリーの娘が先日の件――コカビエルによる襲撃の詳細を話し始めた。

 

 グレモリーの娘の報告を受けたアザゼルは不敵な笑みを浮かべて、コカビエルの処分について話した。……私が殺したという事実を肉付けして言っただけである。

 

 サーゼクスがアザゼルにここ数十年神器(セイクリッド・ギア)の所有者をかき集めている理由を問う。問いの答えは神器(セイクリッド・ギア)研究のため。とても信じることは出来ない返答だ。

 

 思い出してほしい。レイナーレと共に駒王にやってきた堕天使三人は、神器(セイクリッド・ギア)所有者である兵藤一誠を殺している。かき集めているというより、味方に付かなかった者は皆殺しにした、という方が正しいだろう。

 

 私からしてみれば、堕天使も天使も悪魔も、やっていることに大差はない。

 

 天使――悪魔や堕天使などの異種族などに接触し、慈悲を与えた者は問答無用で追放する。アーシアが良い例だろう。

 

 悪魔――眷属に勧誘し、拒否されれば殺す。眷属になればなったで使い潰され、トレードされ、捨てられる。一部の上級悪魔がしていることだが、それを取り締まらない魔王も魔王だろう。黙認している可能性もある。

 

 こうして考えてみると、どの陣営もろくなことをしていない。人間を道具か何かと勘違いしているのだろうか? この世界は人間界のはずだが……どうにも人間が不憫(ふびん)である。冥界や天界から人外が人間界を侵略していると捉えられても何も反論できそうにないな。

 

 神器(セイクリッド・ギア)所有者をかき集めている理由を述べたアザゼルは、「和平を結ぼう」と提案した。それに賛同するミカエルと魔王二人。私にも問われたが、無言で頷いた。

 

 和平を結びたいなら勝手に結べばいい、というのが本音である。三大勢力のどの陣営にも属していない私からしてみれば、全く持って関係ない。三大勢力間で戦争がおきようが、参戦する義務はないのだから。

 

 

「――と、こんなところだろうか?」

 

 

 サーゼクスが顔を緩ませる。それを確認した各陣営のトップも顔を緩ませる。随分と平和ボケしたものだ。

 

 感じないのだろうか? 私達を監視するこの不快な気配を。オカルト研究部の部室の方へ何者かの気配が近づいていることを。大方、三大勢力のトップが集まるこの会談を襲撃しに来た者だろう。

 

 

「さて、それじゃあ俺達以外に、世界に影響及ぼしそうなやつらへ意見を聞こうか。無敵のドラゴン様と――神が創り上げた最終兵器にな。まずはヴァーリ、お前は世界をどうしたい?」

 

 

 アザゼルめ、随分と自由な発言ではなか。私のことを「神が創り上げた最終兵器」とは……ふむ、よく考えてみればその通りだな。何も可笑しなところはない。(まさ)しくその通りである。

 

 ヴァーリとは白龍皇の名前のようだ。ヴァーリは「強い奴と戦えればいい」と答えた。

 

 対して、赤龍帝である兵藤一誠は「和平でひとつお願いします!!」「平和ですよね!!」「平和が一番です!!」「部長とエッチがしたいです!!」と、己の欲望――主に性欲を全面に押し出した返答だった。

 

 今代の二天龍は対象的だ。片や、戦を望み、自らの戦闘欲を満たしたい。片や、自らの惚れた女を抱きたい、平和に過ごしたい。……今代の二天龍はどうなるのだろうか。少々楽しみだ。

 

 ヴァーリと兵藤一誠の行けんを聞き終えたアザゼルは、ニヒルと笑い私に視線を向けてきた。

 

 

「二天龍には聞いたことだし……残るはお前だけだぜ――使徒さんよ。まずは名乗ってもらおうじゃないか」

 

 

 なるほど……そういえば私は一度もしっかしと名を名乗っていない。

 

 

「私はゼルエル。第――」

 

 

 瞬間、私以外の世界が停止した。

 

 

 

† † †

 

 

 

 ミカエルは窓から外の様子を確認している。サーゼクスとグレイフィア・ルキフグスは二人で話し込んでいる。アザゼルは兵藤一誠の覚醒を確認していた。

 

 私の付き人であるレイナーレとアーシアは、時間の檻に囚われずに、ミカエルやその他陣営のトップの者と同じタイミングで覚醒した。……ふむ、どうやら上手くいったようだ。

 

 世界が停止する寸前に私、レイナーレ、アーシアを囲むようにA.T.フィールドを展開したのだ。私以外は少々影響は受けてしまったようだが、特に問題は無い。

 

 窓から外を見れば、赤やら青やら黄やらの閃光が迸っている。魔法を私達のいる会議室――校舎に放っているのだ。しかし、校舎に張られた結界がそれを防いでいる。実害は皆無だ。

 

 襲撃の理由はタイミングを考えれば誰でも想像がつく。――和平の邪魔である。

 

 いつの時代もそうだ。数千年前から全く変わらない。勢力と勢力が和平を結ぼうとすると、何処ぞの組織が邪魔をする。

 

 今回の襲撃者は魔法使いである。悪魔の魔力体系を伝説の魔術師とされている『マーリン・アンブロジウス』が独自に解釈し、再構築したのが魔術や魔法だ。その魔法を使う者を魔法使いと呼ぶ。

 

 放たれている魔法の威力から考えるに、一人か二人しか中級悪魔程度の実力を持っていない。だからと言って余裕というわけではない。

 

 四大熾天使(セラフ)の一人であるミカエル。堕天使の総督であるアザゼル。四大魔王の一人であるサーゼクス・ルシファーにセラフォルー・レヴィアタン。さらには二天龍がいる。これだけの者が揃っているのにも拘わらず向こうから手を出してきたのだ。何かしらの策があるのだろう。

 

 アザゼルがベラベラを得意そうに話しているのを盗み聞きしたのだが、どうやら先ほどの時間停止はグレモリーの娘――リアス・グレモリーの僧侶(ビショップ)であるギャスパー・ヴラディが関係しているようだ。 

 

 ギャスパー・ヴラディは神器(セイクリッド・ギア)を所有しているらしい。その所有している神器(セイクリッド・ギア)がテロリストによって、強制的に禁手(バランス・ブレイカー)状態にさせられた――ということらしい。

 

 ……ふざけているのだろうか。指定された会談場所に来て襲撃を受ける。その原因はサーゼクスの妹であるリアス・グレモリーの眷属だと? どれだけ警戒心がないのだ。

 

 余談だが、時間停止から逃れることが出来ているのはこの部屋にいる者のみらしい。校舎の外で待機していた天使、堕天使、悪魔は全員停止しているようだ。力量不足の下級ばかり連れてきたのだろうか? 

 

 アザゼルが無数の光槍で外にいる雑魚を殺した。それを見た兵藤一誠が驚愕していた。……あの程度なら兵藤一誠でも可能だろうに。極限まで倍加すれば難なく殺りとげそうだが……微妙である。

 

 この学園は結界で囲われているのにも関わらず、雑魚共は結界内に出現した。ここから導き出されるのは、この敷地内に外の転移用魔法陣とこちらを繋げている奴がいるということだ。

 

 室内を見回す。丁度リアス・グレモリーが眷属を数名連れて転移しているところである。そしてアザゼルがヴァーリに命令を下した。ヴァーリは禁手化(バランス・ブレイク)をし、会議室の窓を開き空へ飛び出していった。

 

 ……待て。そういえば堕天使は神器(セイクリッド・ギア)をかき集めていたはずだ。もしやこの襲撃に備える為だったのか? もしくは、この襲撃は予想外で、別組織の襲撃に備えたか。どちらにせよ聞かねばわからない。

 

 

「アザゼル。貴様が神器(セイクリッド・ギア)所有者をかき集めていたのはこの襲撃に備える為か?」

「半分当たりで半分外れだ。俺が神器(セイクリッド・ギア)所有者をかき集めていたのは、ある組織への対策。っつうか、自衛の手段のためか」

 

 

 アザゼルにしては珍しく、真面目な顔をしている。それほど状況は切羽詰まっているのだろう。

 

 

「その組織とは何だ?」

「――『禍の団(カオス・ブリゲード)』だ」

 

 

 聞いたことのない名だ。最近できた組織なのだろうか?

 

 

「トップは誰だ?」

「『赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)』と『白い龍(バニシング・ドラゴン)』の他に強大で凶悪なドラゴンだよ」

 

 

 なるほど……龍神共か。二天龍の他に強大で凶悪なドラゴンと言ったら、邪龍か龍王、龍神ぐらいしか思い浮かばない。邪龍や龍王は大したことはないが、龍神は少々厄介だ。

 

 『無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)』オーフィスに、『真なる赤龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)』グレートレッド。どちらも龍神で、オーフィスは無限を、グレートレッドは夢幻を司り、対になる存在である。

 

 龍神と呼ばれるだけあり、オーフィスにしろグレートレッドにしろ、私と同等かそれ以上の戦闘力を有している。私と龍神がまともにぶつかり合えば、世界の一つや二つ消滅してもおかしくはない。実際、数百年前に次元の狭間で一度戦ったのだが、あの次元の狭間が攻撃に耐えきれずに空間に穴を開けていた。

 

 二柱の龍神のうち、自由に動き回れるのは――

 

 

「オーフィスか?」

「その通りだ」

 

 

 アザゼルだけではなく、サーゼクスやセラフォルー、ミカエルの表情が険しくなった。

 

 

「そう、オーフィスが『禍の団(カオス・ブリゲード)』のトップです」

 

 

 聞こえてきた声は会議室にいる者の誰のものでもない。では誰の声か? そんなもの――現在進行で床に展開されている魔法陣を展開した者からに決まっているだろう。

 

 随分と懐かしい魔力だ。以前この魔力を感じ取ったのは三大勢力同士の戦争の時。――魔王だ。魔王の血族の生き残りだ。間違いない。

 

 サーゼクスやセラフォルーのような力だけで成り上がった魔王ではない。その身に流れている血や魔力――肉体を構成している全てが魔王としての素材。生まれながらの魔王。

 

 展開されている魔法陣を構成している式、及びに魔力から考えるに魔法陣を展開したのはレヴィアタンだろう。

 

 

「――レヴィアタンの魔法陣」

 

 

 サーゼクスの一言で私の考察が正しいことが確定した。

 

 

「ごきげんよう、現魔王のサーゼクス殿」

「先代レヴィアタンの血を引く者。カテレア・レヴィアタン。これはどういうことだ?」

 

 

 レヴィアタンの名はカテレアか。まぁ呼び方は「レヴィアタン」から変えるつもりはないが。

 

 レヴィアタンがサーゼクスの問いに答えた。

 

 どうやら、魔王の血族――旧魔王派の者は、そのほとんどが『禍の団(カオス・ブリゲード)』に協力することを決めたようだ。今回のこの襲撃も旧魔王派が受け持っているようである。

 

 理由は、和平会談の逆の考え――神と先代魔王がいないのならば、この世界を変革すべきだ。そう結論づけたようだ。新世界を取り仕切ると。

 

 サーゼクスが皮肉気に笑う。

 

 

「……天使、堕天使、悪魔の反逆者が集まって自分達だけの世界、自分達が支配する新しい地球を欲したわけか。それのまとめ役が『ウロボロス』オーフィス」

 

 

 オーフィスと戦うことも考えなければならないか。……世界の一つや二つ吹き飛ぼうが構わないが面倒である。

 

 

「カテレアちゃん!! どうしてこんな!!」

 

 

 セラフォルーの叫びにレヴィアタンが憎々しげな睨みを見せる。

 

 

「セラフォルー、私から『レヴィアタン』の座を奪っておいて、よくもぬけぬけと!! 私は正統なるレヴィアタンの血を引いていたのです!! 私こそが魔王に相応しかった!!」

「カテレアちゃん……わ、私は――」

「セラフォルー、安心なさい。今日、この場であなたを殺して、私が魔王レヴィアタンを名乗ります。そして、オーフィスには新世界の神となってもらいます。彼は象徴であればいいだけ。あとの『システム』と法、理念は私達が構築する。ミカエル、アザゼル、そしてルシファー――サーゼクス、あなたたちの時代は終えてもらいます」

 

 

 ミカエル、サーゼクス、セラフォルーの表情が陰る。だがアザゼルだけは愉快そうに笑っていた。

 

 

「ハハハ。お前――いや、お前ら、こぞって世界の変革かよ」

「そうです。それが一番正しいのですよ、アザゼル。この世界は――」

「腐敗している? 人間が愚か? 地球が滅ぶ? おいおいおい、今時流行らないぜ?」

 

 

 腹を抱えて笑うアザゼル。レヴィアタンは目元を引きつらせている。……腹を抱えるほど笑えるかは疑問だが、滑稽ではある。

 

 腐敗しているのは悪魔、天使、堕天使の廃れた考え方だ。人間が愚かなのではない。人間を利用しようと考える悪魔、天使、堕天使が愚かなのだ。地球が滅ぶ原因をつくっているのは人間ではなく、悪魔、天使、堕天使ではないか?

 

 

「アザゼル、貴方も貴方なのですよ。それだけの力を有していながら、今の世界に満足などと――」

「言ってろ。お前らの目的はあまりに陳腐(ちんぷ)で酷すぎる。なのにそういう奴らに限ってやたらと強いんだよな。まったく、傍迷惑だ。レヴィアタンの末裔、お前のセリフ、一番最初に死ぬ敵役のそれだぜ?」

「アザゼル!! 貴方はどこまで私達を愚弄する!!」

 

 

 カテレアが激怒し、全身から魔力を迸らせる。殺る気満々のようだ。

 

 

「お前ら、俺がやるからな。手を出すんじゃねぇぞ?」

 

 

 アザゼルが薄暗いオーラを纏う。

 

 手を出すか出さないかは状況による。レヴィアタンが私に攻撃を仕掛けてきたのならば反撃――殲滅しようではないか。身内に攻撃が放たれたら倍にして返そうではないか。

 

 アザゼルが窓際に向かって一撃を放つ。窓際を全て吹き飛ばしたが、レヴィアタンにはかすりもしていないようだ。

 

 

「旧魔王レヴィアタンの末裔。『終末の怪物』の一匹。相手としては悪くない。カテレア・レヴィアタン、俺といっちょハルマゲドンとでもシャレこもうか?」

「望むところよ、堕ちた天使の総督!!」

 

 

 アザゼルとレヴィアタンが飛び上がる。その余波で瓦礫が私と、その背後に控えるレイナーレとアーシアに向かって飛んできた。だがA.T.フィールドが発動し、全て私の目前で砂塵と化する。

 

 

「――ゼルエル様」

 

 

 私を呼んだのは背後にいるレイナーレ。

 

 

「何だ?」

「私は校庭の掃除をしようと思うのですが……」

「好きにしろ」

「かしこまりました。――では」

 

 

 頷いたレイナーレは二対四枚の漆黒の翼を生やし、校庭へ飛んでいった。……翼の数が二枚増えている。鍛錬の成果だろうか?

 

 今回の敵は、レイナーレが相手をするのには丁度良い。敵構成員のほとんどが下級から中級なのだ。今のレイナーレなら油断さえしなければ死ぬことはないだろう。例え負傷しようが、死んでさえいなければアーシアが完治してくれる。

 

  

「アーシア、レイナーレが負傷した際は頼むぞ」

「はい!! もちろんです!!」

 

 

 アーシアもこう言っていることだ。レイナーレが死ぬことは九〇パーセント無いだろう。残りの一〇パーセントがやってきたのなら、私が出張るまでだ。レイナーレには私の暇つぶしをしてもらっているのだ。何もせずに見ているという選択肢は無い。

 

 アザゼルはレヴィアタンの相手を、レイナーレと会議室に残っているグレモリー眷属は校庭で掃除をしている。ミカエル、サーゼクス、セラフォルーは駒王学園の周囲に張られている結界を強化し続けている。アザゼルと魔王の血族が殺り合っているのだから当然である。少しでも緩めば学園外にも被害が及ぶだろう。

 

 私は特に何もしていない。会議室内にあるソファにアーシアと座り、アーシアが淹れた紅茶をアーシアと共に飲んでいるだけだ。

 

 レイナーレが掃除をしに行った上にアザゼルまで出張ったのだ。私が自ら掃除をする必要はないだろう。まぁ私やアーシア目がけて攻撃が放たれたら、反撃はさせてもらうが。

 

 

 

† † †

 

 

 

 ヴァーリが裏切った。

 

 レヴィアタンと戦っていたアザゼルを、ヴァーリが魔力弾を放って吹き飛ばしたのだ。死んではいないが、ある程度のダメージは受けただろう。レイナーレは既に私の下に戻ってきている。ヴァーリが裏切ったことによって、状況が大きく変わったことを理解したのだろう。

 

 しかし面倒なことになった。ルシファーの末裔で白龍皇が敵に回ったのだ。アザゼルやグレモリー眷属だけでは対処しきれないだろう。だからと言って、態々自ら戦いに行くのは御免だ。だが――

 

 

「怪我は――無いようだな」

「御手を煩わせて申し訳ありません」

「あ、ありがとうございます」

 

 

 ――私達の身に火の粉が降りかかってきたのだ。対象を殲滅する理由はできた。

 

 人工神器(セイクリッド・ギア)を疑似禁手化(バランス・ブレイク)させ、黄金の鎧を身に纏ったアザゼル。オーフィスの蛇を呑むことによって、パワーアップをしたレヴィアタン。そんな二人の攻撃の余波がこちらに飛んできたのだ。無論、全てA.T.フィールドが防いだのだが。

 

 

「レイナーレ、アーシア。レヴィアタンを始末してくる」

「いってらっしゃいませ、ゼルエル様」

「無茶だけはしちゃだめですよ!!」

「あぁ……」

 

 

 無茶、無茶か……そんな事、今の今まで考えたこともない。アーシアに言われたことによって、初めて「無茶」ということを考えた。

 

 戦闘において、戦闘用に創られた私はどこからどこまでが無茶なのだろうか? 相手をひたすら殲滅し、時には神の肉壁になる。そんな私の無茶とは一体何なのだろうか? ……考えるだけ無駄か。

 

 レヴィアタンとアザゼルは空中戦をしている。故に私は、A.T.フィールドで形成された三対六枚の翼を展開する。

 

 アザゼルが明けた壁の穴を通り、会議室――校舎の外に出る。そして翼を羽ばたかせ、レヴィアタンの下へ飛翔する。途中、魔法使いが魔法を放ってきたが、全てA.T.フィールドが防いだ。魔法を放ってきた魔法使いは、全員翼で首を刈り取る。

 

 空中で目紛(めまぐ)るしい戦闘を繰り広げているレヴィアタンとアザゼル。互いに注意を引きあっているせいか、未だ私に気付いた様子はない。――いや、アザゼルは気付いている。私の方を見て口元を釣り上げたからな。

 

 四枚の翼を、レヴィアタンの首を目がけて伸ばし――刈り取る。頭と胴体が綺麗に離れ、切断面からは血が噴き出している。

 

 レヴィアタンは随分と頭に血が上っていたようだ。私が伸ばした翼に全く気付かずにアザゼルに攻撃を仕掛け続けていた。冷静さを欠けば、普段は何ともない攻撃に気付かず、あっさりと死ぬのだ。それをレヴィアタンは体現してくれた。

 

 残るは白龍皇――ヴァーリか。

 

 ここで赤白大戦を実現させてもいいが、兵藤一誠が負けるのが目に見えて――

 

 

「やはり無駄か……」

 

 

 ――なるほど。ヴァーリは余程私と戦いたいらしい。

 

 ヴァーリの放った魔力弾がA.T.フィールドに接触し、霧散した。不意打ちのつもりなのだろうか? それとも宣戦布告か? どちらにせよ、私に向かって魔力弾を放つという明確な敵意が確認できたのだ。――反撃しようではないか。

 

 ヴァーリの頭上にA.T.フィールドを多重展開し――圧する。為されるがままに地面に叩き付けられるヴァーリ。地面にはヴァーリを中心としたクレーターが出来上がる。

 

 終わりか――と思いきや、ヴァーリはゆっくりと震えながら立ち上がった。なるほど、アザゼルに歴代最強の白龍皇と言われるだけはある。

 

 立ち上がったヴァーリと目が合う。

 

 

「流石……としか言いようがない」

「そうか」

「そうさ!! 圧倒的な力の差!! これほどまでかッ!?」

 

 

 とても楽しそうに笑っている。どうやら身体の芯から戦闘狂いのようだ。通常なら圧倒的なまでの力の差から絶望するはずだ。それなのに笑っている。生粋の戦闘狂である。

 

 

「アルビオン、こんな状況だ。覇龍(ジャガーノート・ドライブ)を使うしかないと思うのだが?」

『否定はしない。――が、危険だ』

「だがやるしかないだろう。――我、目覚めるは、覇の理に――」

 

 

 この状況で覇龍(ジャガーノート・ドライブ)を発動させるつもりか。しかし黙って覇龍(ジャガーノート・ドライブ)の発動を私が待つと思っているのか? 

 

 覇龍(ジャガーノート・ドライブ)は、一つだけ明確な弱点がある。

 

 自我の損失? 寿命の減少? 否――呪文の詠唱である。

 

 呪文の詠唱は、どんなに少なくとも五秒はかかる。その五秒があれば、私は相手を最低五回は殺すことができる。

 

 ヴァーリに向けて四枚の翼を伸ばす。その首を切断――というところでヴァーリの姿が消えた。転移したのだろう。地面に転移魔法陣が展開されている。

 

 

「ヴァーリ、危ないところだったぜぃ」

 

 

 次から次へと……ミカエルやサーゼクスは何をしている? 結界を補強しているのではないのか? 

 

 

 

† † †

 

 

 

 結局、ヴァーリには逃げられた。逃がした、という方が正しいか。

 

 ヴァーリを転移させた侵入者は美猴(びこう)――闘戦勝仏の末裔である。その美猴(びこう)と共に転移するヴァーリを、私は一切手出しをせずに見逃した。無論、何の考えなしに取った行動ではない。

 

 現在、私達は「ヴァーリが白龍皇」という事実を知ることが出来ている。仮にヴァーリを殺したとしよう。――一体次の白龍皇は誰になる? 

 

 また一から探さなければならない。和平を結び、体勢を整えようとしている今、次代の白龍皇の確認などに力を注ぐ訳にもいかない。そして新たな白龍皇が『禍の団(カオス・ブリゲード)』以外の組織に付いたらどうなる? またややこしいことになるだろう。

 

 ――と、いうのがミカエル達に言った建前である。

 

 本音は、どうでもいいのだ。あの状況でのこのこ逃げるのならそれまでの存在。注意する必要はない。それに戦闘狂なのだから、暗殺の類は仕掛けず、真正面から私に挑んでくるだろう。それなら警戒するに値はしない。

 

 例え暗殺をしに来たとしても、駒王教会には仕掛けを仕掛けてある。私は自分の身を守るぐらいは訳ない。

 

 各陣営のトップは、それぞれ(せわ)しなく連絡を取っている。私は別にそのようなことをしなくていい。故にソファに座り、レイナーレが淹れた紅茶を飲んでいるだけだ。隣にはアーシアがいる。カップを両手で持ち、ちびちびと紅茶を啜っている。……そこまで熱くはないと思うのだが。猫舌なのだろうか?

 

 今回の件により、赤龍帝と白龍皇は対立した。これでいつも通りの赤白大戦が起こることがほぼ確定した。だが今回の赤白大戦は今までに無い展開になりそうだ。――面白そうである。

 

 それに加えて三大勢力の和平。これが他の陣営に伝われば波乱は免れないだろう。和平を快く思わない陣営は確実に何か仕掛けてくる。

 

 ――新しい。時代が今日動いた。昨日と今日は全く別の時代だ。これから世界はどう廻るのだろうな。少々楽しみである。

 




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2015/06/23 切り取ってしまっていた文章を追加。
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