吾輩は使徒である   作:-Msk-

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どうも、久しぶり(一年弱)です。
ちょくちょく「生存報告」やら「瀕死報告」をしていた作者です。

ここで皆さんにお知らせがあります。
詳しくは「後書き」を参照ください。

ちなみに今回のテーマは――

・レイナーレ、アーシアの軽い絶望。
・ゼルエル、「■」を理解し始める。

――です。

それではどうぞ。


Ⅴ 放課後のラグナロク

 オーディンが駒王に来るようだ。

 

 駒王に来る、といってもプライベートというわけではなく、公務とプライベートの半々らしい。詳しいことは知らない。

 

 ここ最近、『禍の団(カオス・ブリゲード)』の英雄派が駒王にちょっかいを出しているのに関係あるのだろうか。

 

 一昨日もリアス・グレモリー達が討伐に向かったようだが、それにしても少し多い。もう少し駒王の警戒レベルを上げるべきだと思う。

 

 駒王は三大勢力と私の和平が結ばれた地だ。それは同時に駒王がどこの勢力にも属さない中立の地ということ。だが悪魔であるリアス・グレモリーが統治しているので、完全な中立とは言い切れない。故に各勢力から人員が駒王に派遣されているのだ。

 

 悪魔からはリアス・グレモリーとその眷属

 

 天使からは転生天使と化した紫藤イリナ。

 

 堕天使からは『神の子を見張る者(グリゴリ)』の総督であるアザゼル。

 

 こうして三大勢力から最低一人ずつ駒王に滞在し、一応の中立を作り上げた。実際に中立なのかはまた別の話しだ。写真も裏より表の方が重要だろう? それと同じだ。中立を作り上げたという事実が大切なのだ。

 

 『禍の団(カオス・ブリゲード)』の英雄派は、ただやみくもに駒王を襲っているだけではないと予想を立てた。

 

 何度か私がいる駒王教会にも英雄派の襲撃があったのだが、襲撃者全員が何らかの英雄の子孫であり、神器(セイクリッド・ギア)を所有していたのだ。

 

 一度なら偶然だ。だが二度、三度と神器(セイクリッド・ギア)所有者のみが襲撃してきた。これは偶然ではないだろう。

 

 恐らく神器(セイクリッド・ギア)所有者に、当人よりも格上の者と戦わせることによって無理やり禁手(バランス・ブレイカー)に至らせようとしているのだ。そうだな……十人死のうが、一人が至ればそれで良い。数より質といったところだろうか。なんともテロリストらしい思考回路である。

 

 近々大規模な襲撃がありそうだ。警戒をしておいて損はないだろう。

 

 このことをレイナーレとアーシアに伝えると、二人は一層鍛錬に力を入れ始めた。

 

 レイナーレはそろそろ壁にぶつかる頃だ。それをどう乗り超えるかが問題になってくる。アーシアは……想い次第か。一体二人はどのような進化をするのだろうか。

 

 相も変わらずに楽しみである。

 

 

「それでアザゼル、私のティータイムを邪魔するとはどういう了見だ」

「はっはっは、すまねぇすまねぇ。でもよ、和平組んでるんだしこのぐらいはいいじゃねぇか」

「咄嗟に消し飛ばしそうになったのだが……貴様がそれでいいなら――」

「すまん。次からはしっかりと扉をノックしてから入るようにする」

 

 

 アザゼルは一切無駄のない動作で頭を下げた。

 

 私の背後に転移してきたアザゼルだが、後一瞬でも気配を識別するのが遅かったらA.T.フィールドで駒王の果てまで弾き飛ばしていたところだった。いや、その前に肉体が耐えきれずに爆散するか。

 

 

「それで何をしに来たアザゼル」

「おっとそうだったそうだった。オーディンが駒王に来るのは知ってるだろ? それ関係だ」

「護衛を手伝え、とでも言うつもりか?」

「わかってるじゃねぇか。その通りだ」

 

 

 私達にオーディンの護衛をしろということか。

 

 アースガルズの主神を態々護衛するような事態とは一体どんな面倒事だろうか。そんな私の考えを見透かすようにアザゼルが続けた。

 

 

「最近オーディンの周りが騒がしくてな。駒王で色々やるつもりなんだが……それを良しとしない奴に邪魔されそうでな」

「身内の面倒をこちらに持ち出すのか……」

「まぁそう言うな。これもお前が望んだ『自由』の為だと思えよ」

 

 

 自由が簡単に手に入るものではないことは私が一番良く知っているつもりだ。大昔の大戦での経験がまさにそれだ。

 

 だがあの時とはまた別の面倒臭さがある。

 

 私が大戦時にしたことと言えば、二天龍の攻撃から自らの身を守っただけ。あとは他の使徒のA.T.フィールドが勝手に貫かれて後ろに待機していた神に攻撃が当たって死んだ。そして私も他の使徒同様に死んだと思われ、自由を手に入れた。

 

 今回はどうだろうか? オーディンの護衛をしなければならない。

 

 護衛、と言えばただ対象を守るだけだと思うかもしれないが、これがまた曲者だ。対象が自分の好き勝手に動いてみろ、それに無理やり合わせなければならないのだ。

 

 そして極め付けには拘束時間が長い。下手をすれば一日全てを対象に捧げなければならない。……護衛なら当たり前か? そこのところは私には判断しかねる。

 

 何せ私が護衛――というよりも守護をしていたのは神。基本的には天使共に指図をするだけで、本人が動き回ることがなかったのだ。荒事が起きればA.T.フィールドを張って防ぐだけの簡単な作業だったのだから。

 

 

「……黙るなよ。怖ぇだろうが」

「アザゼル、貴様分かって言ってるだろう」

「かぁ~ったく、そういう建前にしとけってことだよ。今の駒王と同じようにな」

 

 

 建前か。表向きの考えか。そういうことなら納得しても良い、か?

 

 

「まぁレイナーレやアルジェントのいい訓練にもなるんじゃねぇの?」

「死と隣り合わせだがな」

「そこはまぁ……な。お前さんがいれば問題ねぇだろ」

「………」

「違うのか?」

 

 

 瞬きをして意外そうな顔をされても困る。

 

 まず、何故私がレイナーレとアーシアを助ける前提で話をしているのだ。何故私が二人を助けると思っているのだ。身内だから助けるのは当然。懇意にしているのだから助けるのは当然。そんな風に思っているのだろうか? ならば言わせてもらおう。

 

 否。断じて否だ。

 

 私から自主的に二人を助けることなど、余程の事が無い限りあり得ない。……待て、それでは余程のことがあったら動くということではないか……?

 

 分からない。何だコレは。分からないぞ。

 

 まぁいい。今は放っておこう。緊急を要するものでもないし、そこまで重要視する必要はない。その内自然に理解できるようになるだろう。

 

 こんなこともまた、新しい。

 

 それにだ。前回のレーティングゲーム襲撃の際は、私に少し面白い助言をくれた。その借りを返す、そう思えばいい。

 

 だが一先ずは――。

 

 

「護衛の件、正式に断らせてもらう」

「はぁ……まぁ仕方ねぇわな。お前さんに頼むのはサーゼクスに頼むのと同じようなもんだし」

「ただし。本当にどうしようもなくなったら再びここに来い。話だけは聞いてやる」

「……お前さん、変わったな」

 

 

 私が、変わった……。

 

 私が、変わった、か……。

 

 

「まぁこっちとしちゃあ、ほんの少しでも力を借りれる可能性ができただけでももうけもんだ。天下の使徒様がいればどんな敵でも楽勝だしな」

「……だといいがな」

「ん? なんだよ、その気持ち悪い言い方は」

 

 

 そう言い、顔をしかめたアザゼル。

 

 アザゼルも、アザゼル以外の各勢力のトップは使徒について勘違いしている点がいくつかある。

 

 まず初めに、使徒は戦闘に置いては他を追従させないほど強力な兵器だが、それ以外は点で役に立たない。

 

 次に、使徒は絶対無敵というわけではない。現に過去、私以外の使徒が二天龍のブレスをA.T.フィールドで受けきれなかった。

 

 最後に、使徒には弱点が二つあるということだ。

 

 最後の二つある弱点が割と厄介なのだ。一つは即死確定のものだし、もう一つは私の戦闘行動が制限されてしまうほどのものだ。

 

 この弱点を二つ同時に突かれたら、さすがの私も死にかけるだろう。いや、死ぬな。

 

 はぁ、とため息を吐きアザゼルが、 

 

 

「まぁいいか。それじゃあ頼んだぜ。詳細は後日知らせる」

「あぁ……」

 

 

 とりあえずは目の前の案件からだ。それから考えても遅くはないだろう。

 

 それにしても私が変わったとは……。これもレイナーレとアーシアの影響なのだろうか。

 

 

 

† † †

 

 

 

 案の定、オーディンは襲撃にあったようだ。しかもその襲撃者が襲撃者なので面倒な事態になったらしい。

 

 北欧の悪神ロキ――。

 

 オーディンと同じ北欧神話の神が今回の襲撃者だ。

 

 ロキ曰く、他の勢力の仲良く和平を結ぶのが気に入らないのだとか。

 

 襲撃者がロキだけならそこまで面倒なことはなかっただろう。オーディンやアザゼルといった、勢力トップクラスの者がいるのだから、数の暴力を使えば完封だって可能だったはずだ。

 

 ロキが、フェンリルを召喚したのだ。

 

 フェンリル――。

 

 神を喰らう狼と書いて神喰狼(フェンリル)。その名のとおり、神を喰らう――つまりは神を殺す牙を持つ狼だ。

 

 その牙は確実に神を殺しにかかる。神を殺せるのだから、堕天使や悪魔だってただでは済まない。

 

 話によれば兵藤一誠がリアス・グレモリーを(かば)い、フェンリルの牙の餌食になったようだ。その兵藤一誠を治療しようと周りが動くが、それをロキが防いだ。

 

 ならば兵藤一誠は死んだかと言えば否だ。

 

 白龍皇――ヴァーリ・ルシファーが援護に入って事なきを得たらしい。そして二天龍を見れたことに満足したロキは、再びオーディンが会談をするときに現れると宣言して撤退していった。

 

 現状、ロキとフェンリルの相手をアザゼルたちでするのは不可能に近い。ロキはともかくとして、フェンリルが邪魔なのだ。

 

 そこでヴァーリ・ルシファーは、共闘を申し入れた。正確には、赤龍帝である兵藤一誠との共同戦線を張るということ。

 

 ヴァーリ・ルシファーが共同戦線を張る理由は至って単純であった。ロキとフェンリルと戦ってみたいという、戦闘狂らしい理由だ。

 

 共同戦線が決定し、残るはロキとフェンリルの対策。これは五大龍王の『終末の大龍(スリーピング・ドラゴン)』ミドガルズオルムに尋ねることで解決をしたらしい。

 

 その結果、フェンリルの対策にはグレイプニルの強化が挙げられた。北欧に住むダークエルフの長老がドワーフの加工品に宿った魔法を強化する術を知っているとのこと。後にそこへ向かい、グレイプニルの強化を図るようだ。

 

 ロキの対策にはミョルニルを撃ち込むという、シンプルな提案がされた。とはいえ、雷神トールが素直にミョルニルを貸し出すかと言えば否だ。よって、グレイプニルの強化を頼むダークエルフとドワーフが持っているはずのミョルニルのレプリカを拝借できれば拝借する方向となった。

 

 まぁそのミョルニルはオーディンが隠し持ってたらしいのだが。

 

 アザゼルの立てた作戦は、会談の会場でロキを待ち伏せし、そこからソーナ・シトリーとその眷属がリアス・グレモリーとその眷属、その他共同戦線を張る者たち、ロキ、フェンリルを頑丈な採石場跡地に転移させる。

 

 ロキ対策の主軸は兵藤一誠とヴァーリ・ルシファーの二人。二天龍の力で潰しに行く。

 

 フェンリルの相手は残りの者たちが強化されたグレイプニルと使い、捕縛。その後に殺す。

 

 フェンリルをオーディンのもとへ絶対に行かせないようにするための戦法だ。神殺しの牙に貫かれれば、オーディンとて殺されるだろうからな。

 

 この情報を届けに来たアザゼルは机を挟んで私と優雅にティータイムをしている。

 

 

 

「――と、まぁこんな感じに修羅場なんだわ」

 

 

 紅茶を啜りながらアザゼルはソファの背もたれへ身体を預けた。

 

 

「まぁミドガルズオルムのおかげでどうにかこうにか戦えそうだ。でもな、フェンリルが強化されていたという前例があるからな……」

「不安か?」

「あぁ……。できればお前さんにも出張ってほしい」

 

 

 アザゼルが珍しく真剣な眼差しを向けてくる。それほど切羽が詰まっている状況なのだろう。

 

 しかしどうしたものだろうか。前に言った通り、これはレイナーレとアーシアでは少々荷が重い。

 

 いや、アーシアを仲間の回復だけに専念させ、レイナーレとアーシアの護衛として置いておけば問題はないか。そしてもしもがあれば――。

 

 二人にも絶望というものを味合わせるのもいいか。

 

 絶望は強さへのステップだ。絶望を乗り越えなければ新たな力は身につかず、絶望を知らぬものは簡単に心を折られる。兵藤一誠が強敵に何度でも立ち向かうことができるのは絶望を乗り越えたからだ。

 

 考えてもみろ。普通の人間、それも学生が死を経験しているのだ。これ以上の絶望はないだろう。少なくとも私は死を超える絶望を知らない。

 

 兵藤一誠の心の強さはここにあると私は思うのだ。

 

 そんな心の強さをレイナーレとアーシアの二人にも持ってほしい。相対した敵の精神攻撃に耐えられる強靭な精神を、逆境など何度でも跳ね飛ばす強靭な精神を、絶望を味わってもなお前に進むことのできる強靭な精神を。

 

 その全てを身に着け――次のステージへ至ってくれ。

 

 弱者(そちらがわ)から強者(こちらがわ)へ至って私を楽しませてくれ。

 

 今の私の楽しみは二人の成長。二人がどこまで行けるのかを確かめるのが最大の娯楽。私がレイナーレとアーシアに再会してできた新たな娯楽だ。

 

 さぁ――可能性を見せてみろ。

 

 

「――いいだろう。アザゼル、私もレイナーレとアーシアを連れて参戦しよう」

「本当か! いやー助かった! ダメ元で来たからなー、まさか了承をもらえるとは思わなかったぜ」

「だが基本的にはレイナーレとアーシアに戦わせる。私は後方支援しかしない」

「それでも十分だ。俺たちが死んだら代わりにオーディンを守ってもらえればそれでな」

「そのぐらいはする。それに私が行くのだ、誰一人死者など出ない」

 

 

 神を守るために創られた使徒だ。他者を守ることに関しては負けるはずなどない。

 

 ……待て、何故私は全員を守る気でいる。レイナーレとアーシアならまだしも、その他の奴らまで守る気になっているのだ。

 

 

「やっぱりお前さん、変わったな。何ていうか……人間っぽくなったな」

「私が……人間のように……だと……?」

「人間っぽくっていうか、なんつーか……。あぁ、そうだ。きっと――」

 

 

 ――お前さんにも「心」ってやつが生まれたんじゃねぇか?

 

 アザゼルの言葉が何故か頭の中を駆け回る。

 

 私が、神に創られた兵器である私が、そんな私に「心」が生まれただと? 私の今まで感じていた違和感は「心」によるものだというのだろうか。

 

 この違和感こそが「心」なのだろうか――。

 

 

「まぁ、いい。決戦の時刻になったら向かう。それまではこちらもやることをやらせてもらう」

「オーケーオーケー。それじゃあ当日は頼んだぜ」

 

 

 アザゼルが「あばよ」と言い、軽く手を上げて転移をしていったの見送り、再びティーカップを持ち上げる。

 

 一口、また一口を紅茶を飲む。そして気づけばティーカップの中は空になっていた――。

 

 

 

✝ ✝ ✝

 

 

 

 決戦当日。すでに日は落ち、夜となっている。つまりは決戦の時刻になっているといことだ。

 

 私、レイナーレ、アーシアはオーディンが日本の神々と会談をする都内のとある高層高級ホテルの屋上にいた。私たちの他には、リアス・グレモリーとその眷属、オーディンの付き人であるヴァルキリー―ロスヴァイセ、少し離れた場所にヴァーリ・ルシファーたちがいる。

 

 周囲のビルの屋上にはソーナ・シトリーとその眷属が各々配置され、待機している。仕事が仕事なだけに、ある程度離れていた方が楽なのだろう。

 

 アザゼルは会談での仲介役を担うためにオーディンの傍にいる。

 

 ビルの遥か上空には『魔龍聖(ブレイズ・ミーティア・ドラゴン)』タンニーンが待機している。流石に姿を見られてはまずいと思ったのか、普通の人間には見られないように術式を展開している。

 

 

「――ゼルエル様、始まりました」

 

 

 レイナーレが銀の懐中時計から私に視線を移した。どうやらオーディンたちの会談が始まったようだ。

 

 だが、それと同時にロキも現れたようだ。

 

 ホテル上空の空間が歪み、大きな穴が開いていく。そこから姿を現したのはロキとフェンリルだ。正面から正々堂々とは、悪神らしからぬ行為だ。油断をさそって背後から一突きでもしてくるのかと思っていたが、予想が外れてしまった。

 

 

『目標確認――作戦開始』

 

 

 耳につけさせられていた小型通信機からバラキエルの声が聞こえてくるのと同時に、ホテル一帯を包み込むように結界魔方陣が展開し始める。ソーナ・シトリーとその眷属たちが仕事を始めたのだろう。

 

 ロキはそれを感知しているはずだが、不敵に笑みを浮かべるだけで抵抗はしなかった。まるでこの状況を楽しんでいるようだ。

 

 光に包まれた三秒後、そこには今まで見ていた屋上からの風景ではなく、大きく開けた採石場跡地が広がっていた。

 

 屋上にいた全員の転移が確認でき、前方にはロキとフェンリルの姿も確認できた。

 

 リアス・グレモリーがロキと二言三言会話をし終えたところで、二天龍が禁手化(バランス・ブレイク)をした。

 

 その様子を見たロキは歓喜に声を荒げた。

 

 

「これは素晴らしい! 二天龍がこのロキを倒すべく共闘するとういうのか! こんなに胸が高鳴ることはないぞッ!」

 

 

 空中からヴァーリ・ルシファーが、それに合わせて地上から兵藤一誠が仕掛ける。それを高笑いをしながらロキが受ける。

 

 ヴァーリ・ルシファーは北欧の魔術を、兵藤一誠はミョルニル・レプリカを振り回すが、ロキにしっかりとした一撃を入れることができない。

 

 特に兵藤一誠はミョルニル・レプリカの制御ができていないようだ。しかし少し考えてみれば当然の結果か。

 

 ミョルニルは力強く、そして純粋な心の持ち主にしか十全に扱うことを良しとしない。邪心の塊とも言える兵藤一誠が扱いこなすことは不可能だろう。

 

 

「そろそろこちらも本格的な攻撃に移ろうかッ!」

 

 

 ロキが指を鳴らすと、後ろに控えていたフェンリルが一歩前に進みだす。

 

 

「――神を殺す牙。それを持つ我が(しもべ)フェンリル! 一度でもかまれればたちまち滅びをもたらすぞ! お前たちがこの獣に勝てるというのならばかかってくるがいいッ!」

 

 

 ロキがフェンリルに指示を出したその瞬間、リアス・グレモリーが手を上げた。

 

 

「にゃん♪」

 

 

 ヴァーリ・ルシファーの仲間である猫又――黒歌が笑むのと同時にその周囲に魔法陣が展開し、地面から太い鎖が出現する。

 

 あれがグレイプニルか。鎖自体に複雑に術式を編み込んであるのがわかる。あれだけ複雑に術式を編み込むとは……私には到底無理だ。

 

 使徒には細かい作業――術式を何百にも編み込むことができる者もいたが、私にそんなことはできない。私はどちらかと言えば高火力で敵を一度に大多数殲滅するのが得意なパワー型だ。

 

 ダークエルフの強化が余程効いたのか、ロキによってグレイプニルの対策を施されていたフェンリルは身動きをとることを許されず、グレイプニルに縛り上げられていた。

 

 これで残るはロキのみ――と、行けば楽だったのだろう。

 

 フェンリルを捕縛されたのにも関わらずロキは不敵に笑みを浮かべ、両腕を広げた。

 

 

「スペックは落ちるが――」

 

 

 ロキの両サイドの空間が激しく歪み出した。その空間の歪みから、新たな獣が顔をのぞかせた。

 

 

「スコルッ! ハティッ!」

 

 

 ロキの声に呼応するかのようにそれらは天に向かって吠えた。

 

 

「ヤルンヴィドに住まう巨人族の女を狼に変えて、フェンリルと交わらせた。その結果生まれたのがこの二匹だ。親よりも多少スペックは劣るが、牙は健在だ。十分に神、そして貴殿らを葬れるだろう」

 

 

 子の製造方法などどうでもいいが、面倒になったことには変わりがない。

 

 神殺しの牙を持つ獣が二体。一体をレイナーレとアーシアに対処させ、残りをその他の者たちに任せればいいか。

 

 

「レイナーレ、アーシア。お前たち二人で一匹を相手しろ」

「かしこまりました」

「わ、わかりました。頑張ってみます」

 

 

 意気揚々と二人は私の前に出た。

 

 レイナーレは三対六枚の翼を展開し、アーシアは自身の神器(セイクリッド・ギア)――『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』を発現した。

 

 

「ゼルエル! 二人だけで劣化しているとはいえフェンリルの子を倒せるわけないでしょう!? 私たちも援護を――」

「要らない。そんなことよりも貴様らはもう一体を確実に殺せ。決して二人に近づけるな」

「――もうっ! わかったわよ! 皆、もう一体は確実に私達で相手するわよ!」

「「「了解!」」」

 

 

 リアス・グレモリーが眷属たちに指示を出したのを確認して、レイナーレたちに視線を戻す。

 

 アーシアは私の隣で、神器(セイクリッド・ギア)のオーラを弓の形状にして待機している。完全に後方支援に徹するつもりのようだ。

 

 レイナーレは前に見せた『多重強化(デュアル・ブースト)』を使用しながら光槍で相手を翻弄している。だが致命傷を与えるには至らない。

 

 レイナーレが相手に少量しかダメージが入れられないのが厳しいな。このままではレイナーレのスタミナ切れで負けるのが目に見えている。

 

 アーシアはアーシアで、そのことに気づいたのか相手を過剰回復させて、少しでもダメージが入るように努力をしている。それも身体全体をまんべんなく過剰回復させるのではなく、前足、後ろ足、関節など、一点に集中させている。

 

 フェンリルの子とはいえ、その体は巨大だ。一度に全身を過剰回復させようとしても効果は分散してしまい、中途半端な状態になってしまう。例え全身の過剰回復に成功したとしても、その労力は通常の倍では効かないだろう。

 

 しかし。

 

 前足、後ろ足、関節など、重要な部分に一点集中させればどうだろうか。前足、後ろ足なら駆けることができなくなる。関節ならば支えを失い倒れ伏すことになる。

 

 このように、やり方次第では巨大な敵も殺すまでには至らないが、行動を制限することはできるのだ。そしてそれをアーシアは見事にやってのけた。

 

 治療を施す者は、何千、何万も治療対象を見るのだ。必然的に、身体構造のどこが脆いのか分かるようになる。

 

 それがこれの結果だ。

 

 アーシアは見事に敵の前足、後ろ足、関節を過剰回復で破壊し、レイナーレに攻撃の隙を与えた。だが、それでも打倒は叶わない。レイナーレは格上に有効な決定打に欠けているのだ。

 

 恐らく、決定打不足を解消するために生み出されたであろう『多重強化(デュアル・ブースト)』だが、それでもまだ足りない。

 

 レイナーレの使う『多重強化(デュアル・ブースト)』は、あくまでも足し算なのだ。「1+1」をいくら繰り返しても急激に数が増えることはない。

 

 しかし、これが掛け算になれば別だ。「1×8」ならば同じ工程の量でも足し算の四倍の効果を得ることができる。

 

 これをレイナーレができるようになれば勝てる可能性も少しは上がるだろう。

 

 私はレイナーレとアーシアがフェンリルの子に勝てるとは思っていない。むしろ何もできずに一方的に殺されると思っていた。

 

 しかし内容を見てみればどうだろうか、決定打を入れることは叶わないにしろ、相手に決定打を打たせることなく応戦できているではないか。

 

 ――と、そんなことを考えていれば二人とも前足の餌食になったな。

 

 どうやら集中力が切れたところを狙い打たれたようだ。アーシアの過剰回復で壊れていたはずの前足で弾き飛ばされていた。

 

 ふむ、狙われたアーシアをレイナーレが庇ったところをまとめてやられたようだ。おかげでレイナーレは全身が骨折したせいで、軟体生物のようになっているが、アーシアはほぼ無傷だ。

 

 フェンリルの子は、追い打ちをかけるようにレイナーレを治療しているアーシアに向かって前足を振り上げた。

 

 これ以上は無理か。程よい絶望も味わえただろうし――出るか。

 

 私はアーシアとフェンリルの子との間に転移し、A.T.フィールドを展開する。

 

 振り下ろされた前足はA.T.フィールドに接触し、弾き返される。再び前足が振り下ろされるが、再びA.T.フィールドが弾き返す。

 

 

「アーシア、今のうちにレイナーレを完治させろ」

「は、はい! レイナーレさん、もう少しの辛抱ですから!」

 

 

 アーシアは慌てて『神器(セイクリッド・ギア)』を発動させ、レイナーレの治療に入った。

 

 全身の複雑骨折で生きているレイナーレもいよいよ化物らしくなってきているな。それを見て平然としているアーシアも肝が据わってきたとでも言うべきだろうか。確かディオドラ・アスタロトを過剰治癒で爆散させた時もこんな感じだっただろうか。

 

 私が自らの意志で二人の助けに出なかったのだが、あそこで私がしゃしゃり出たとしても、レイナーレに良い顔はされなかっただろう。

 

 私が命令を出し、それをレイナーレが受け取ったにも関わらず私がレイナーレに下した命令に介入する。命令された本人として、これ程面白くないものもないだろう。

 

 まぁ――

 

 

「――ひとつ、フェンリルの子の力を見せてもらおうか」

 

 

 子とはいえど、フェンリルの血を継いでいるのだ。その力は相当なものである。油断して胸部のコアをかみ砕かれては元も子もない。故に手加減は無しだ。

 

 A.T.フィールドをフェンリルの子の頭上に多重展開し収束、重力ごとありとあらゆるものをプレスする。A.T.フィールドが触れるその瞬間にフェンリルの子は攻撃を察知したのか、その場を飛び退いた。

 

 凄まじい戦闘勘だ。今の一撃で完全に殺しにかかったのだが、尻尾しか潰すことができなかった。いや、尻尾を潰せただけでもマシと考えるべきだろうか。

 

 尻尾のある生物にとって、尻尾は高速移動中の方向転換を助けているのだ。尻尾を失うことは即ち、高速移動性の減少だ。これで攻撃が当たりやすくなる――はずだ。

 

 考えてみれば、尻尾が無くなったのなら魔力でそれを補えばいいだけのこと。大して意味は無かったな。むしろ警戒を仰いでしまったかもしれない。だが――

 

 それの何が問題なのだ。

 

 警戒を仰いでしまったのなら警戒しても躱せない、躱すことのできない攻撃をすればいいだけのこと。

 

 A.T.フィールドで形成された三対六枚の翼を展開し、そのうちの四枚でフェンリルの子の四肢を射抜く。無論、フェンリルの子は翼から逃げようと走るが、やはり尻尾がない影響なのか簡単に捕らえることができた。

 

 捕縛したフェンリルの子から視線を外さずに、そして警戒を怠らずにA.T.フィールドで槍を創造する。創造するのは忌々しい深紅の槍。私達使徒を一撃で仕留める槍だ。

 

 右手に槍の感触が生まれる。

 

 A.T.フィールドで創られた刃が捻じれ合って一つになったその槍をフェンリルの子に向けて放つ。回転運動をして一直線に進むソレは、空間を歪めながらフェンリルの子を貫いた。

 

 フェンリルの子は血肉と化した。

 

 

「ゼルエル様……御手を煩わせてしまい申し訳――」

「良い」

 

 

 戦闘終了直後、レイナーレが飛んできて謝罪をしようとしたがそれを途中でやめさせる。

 

 

「今回の件は私が原因だ。故にお前達が気に病み、私に謝罪することは一切ない」

「かし、こまりました……。以後、一層の精進をしたいと思います」

 

 

 ぎこちなく一礼したレイナーレは、どこか納得をしていないようだった。

 

 レイナーレは充分精進をしていると私は思う。私と違い睡眠などが必要なはずのレイナーレだが、いつ寝ているのかが分からないほど日々鍛錬を積み重ねている。何がそこまで彼女を駆り立てるのかは知らないが、少しオーバーワークだと思う。

 

 

「レイナーレ、私は向こうで新たに現れたミドガルズオルムの量産体を片付けてくる。――アーシアを任せたぞ」

「――かしこまりました」

 

 

 しっかりとした言葉で了承をしたレイナーレから視線を外し、ミドガルズオルム達に視線を移す。

 

 ミドガルズオルム達はどれもタンニーン程の大きさで、オリジナルには程遠いものだが、一体一体の強さは龍王のソレと変わらないようだ。ドラゴンのオーラがにじみ出ている。

 

 ミドガルズオルムの数は五。流石に一度に五体の相手をするのは面倒だが、そこはアザゼル達が相手取っている個体ではない個体を相手にすれば一度に相手をする数は減る。

 

 しかし。

 

 そんな悠長に事を進めていては、ロキに二天龍が殺される可能性がある。例え殺されなかったとしても、死ぬ寸前まで追い込まれ、歴代の所有者の意識体に呑まれて『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』を暴走状態で発動するかもしれない。

 

 そうなっては私も所有者を殺さずに『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』を封じ込めることはできないだろう。生かすか殺すか、そのギリギリの力加減をできるほど私は器用ではない。

 

 ヴァーリ・ルシファーはともかくとして、兵藤一誠を殺したらリアス・グレモリー達だけではなくサーゼクス・ルシファーも色々と言ってきそうだ。サーゼクス・ルシファーは兵藤一誠を気に入っているようだからな。

 

 では。

 

 

「容赦はしない。――死ね」

 

 

 一度目を瞑り、そして開く。

 

 私の眼から不可視の破壊光線がミドガルズオルム達に向かって伸びる。バラバラに飛んでいるだとかは一切関係ない。この破壊光線は私の思うがままに動かすことができる。

 

 右に逃げようが、左に逃げようが、上に逃げようが、下に逃げようが、私の視界から出さえしなければ必ず当てることができる。

 

 予定通りしっかりとミドガルズオルム達をとらえた破壊光線は、全てのミドガルズオルムを蒸発させた。あとはフェンリルとフェンリルの子の片割れのみ。これで状況はこちらが優勢になった。なったはずなのだが……

 

 

「我、目覚めるは――」

 

 

 何故――白龍皇は、ヴァーリ・ルシファーは覇龍(ジャガーノート・ドライブ)の呪文を唱えているのだ。

 

 ヴァーリ・ルシファーが呪文を一節唱える度にドラゴンのオーラが辺りに吹き荒れる。まるで自らの存在を世界に誇示するかのようだ。

 

 その身に負っている傷の度合から考えるに、禁手(バランス・ブレイカー)では倒しきれないと判断した故に覇龍(ジャガーノート・ドライブ)を発動させたのだろう。アザゼルが少しの間だけなら制御も可能と言っていたからな。

 

 あとは――プライドか。

 

 ヴァーリ・ルシファーの戦う者としてのプライド。どのようなプライドを持っているのかは分からないが、それは死んでも守りたいものなのだろう。――死と隣り合わせの覇龍(ジャガーノート・ドライブ)を発動させたのだから。

 

 

「黒歌! 俺とフェンリルを予定のポイントに転送しろッ!」

 

 

 光り輝くヴァーリ・ルシファーはそう叫ぶ。黒歌もそれを聞いてにんまり笑うと、手をヴァーリに向けて宙で動かしていた。

 

 この転送は、彼の転送だけではなくグレイプニルも一緒に送っている。

 

 なるほど、鎖付きのフェンリルの子なら覇龍(ジャガーノート・ドライブ)を発動させたヴァーリ・ルシファーなら勝てるだろう。

 

 

「朱乃!」

 

 

 唐突にリアス・グレモリーの悲鳴が聞こえる。視線を向けると、今まさにフェンリルの子にかまれようとしている姫島朱乃の姿があった。

 

 姫島朱乃を助けようと、兵藤一誠がロキから離れる。その兵藤一誠をロキが魔術を打ち出して殺そうとするのだが、それをロスヴァイセとタンニーンが援護をしてどうにか防ぎ切った。

 

 そして。

 

 フェンリルの子の牙が姫島朱乃の体に喰らいつく――はずだった。

 

 ザシュッ、という肉に牙が突き刺さる鈍い音。牙に貫かれたのは姫島朱乃ではなく――バラキエルだった。

 

 バラキエルが姫島朱乃を庇う形で牙に背中から貫かれていた。

 

 

「ごふっ!」

 

 

 バラキエルの口から血が大量にこぼれ出る。背中の傷口からも大量の血が流れ出ている。

 

 

「アーシア、バラキエルを回復させろ」

「わかりました!」

 

 

 アーシアはその場で淡い緑色の光を発生させて、バラキエルへオーラを飛ばす。

 

 淡い光に包まれたバラキエルの傷が少しずつだが癒えていく。

 

 姫島朱乃、バラキエル、兵藤一誠は何やら話し込んでいるようだが、私には関係ない。そろそろロキを仕留めてこの面倒な護衛という仕事を終わらせたいのだ。

 

 ロキを殺すための行動を起こそうとしたその時、兵藤一誠の叫び声が聞こえてきた。

 

 

「乳神さまって、どこの神話体系の神様だ!?」

 

 

 空気が、凍った。

 

 時間が、止まった。

 

 周囲で殺し合いをしていた敵味方全員が間の抜けた顔で戦闘を中断させ、全員が兵藤一誠に視線を送っていた。

 

 

「……ッ! リアス嬢ぉぉぉぉぉッ!あいつの頭に回復をかけてやってくれぇぇっ! 致命傷だぁぁっ!」

 

 

 タンニーンの叫び声が辺りに響き渡る。

 

 そうだ、私も固まっている場合ではない。

 

 

「アーシア、兵藤一誠の頭に回復のオーラを飛ばしてやれ。あれは重症だ」

「は、はいっ!」

 

 

 少し嫌悪感を顔に表しながらアーシアは私の言う通り、回復のオーラを兵藤一誠の頭に飛ばした。

 

 だが一向に兵藤一誠が正気に戻る気配がない。それどころか、

 

 

「違いますから! ゼルエル様、俺は正常ですって! 確かに朱乃さんのおっぱいが自分は乳の精霊だって!」

 

 

 弁明をしようとしたのだろう。だがそれは自分の頭がおかしいことを証明してしまっているぞ。

 

 

「貴様……! うちの娘がそんなわけのわからないものだと言うのか……! おのれ、おっぱいドラゴン……!」

 

 

 先ほど傷がふさがったばかりにも関わらず、バラキエルは体に雷光を迸らせ怒りを露わにしている。

 

 そしてここで再びアーシアが兵藤一誠の頭に回復のオーラを飛ばす。

 

 私はアーシアに無言で首を振る。

 

 アーシアもそれで全てを察してくれたのだろう、悲し気な表情でゆっくりと頷いた。

 

 既に手遅れだとわかってくれたか。

 

 

『い、いや、みんな聞いてくれ。確かに俺にも乳の精霊とやらの声が聞こえる……。俺の知らない世界の力を感じる。残念な結果だが、こいつは異世界の神の使いを呼び寄せたらしい』

 

 

 ドライグの言葉に私は少しだけ驚く。

 

 今、ドライグは、「異世界の神の使いを呼び寄せた」と言った。

 

 異世界――。

 

 そう、異世界だ。

 

 私がこちらの世界に来る前の世界もこちらの世界からしたら異世界。やはり異世界は存在するということだろう。

 

 そして乳神とやらが一誠の前に現れたように、もしかしたら私にもこの世界でやらなければならないことがある――のだろうか。

 

 私が前の世界――前世で人類を襲ったのは星を取り返すためだ。

 

 本来私たちが支配するはずだった地球という星を取り返すために、リリスと接触・融合して『サードインパクト』を引き起こして生命体のリセットを行うためだった。

 

 まさかこの世界で神が私たち使徒を創造したのは――。

 

 いや、待て。

 

 そうだとすれば、なぜ早くに私たちに地球を襲わせなかった。なぜ神器(セイクリッド・ギア)というシステムを創ってばら撒いたのだ。

 

 わからない。わかないぞ。

 

 この世界は私が思っているよりも複雑なのかもしれない。そして世界と同じように、使徒の存在も複雑なのかもしれない。

 

 これは兵藤一誠の頭がおかしいの一言で片づけるわけにはいかないな。

 

 本当に余計なことに気づかせてくれたな兵藤一誠め……。

 

 私以外の面々は全員が兵藤一誠の戯言として処理しているようだが、これは大問題だ。

 

 兵藤一誠の一言で時間が停止した戦場だったが、黒炎――ヴリドラの登場によって再始動する。

 

 どうやらソーナ・シトリーの眷属の匙元士郎にヴリドラの神器(セイクリッド・ギア)を全て移植する作業は成功したようだ。

 

 だがどうにも力を制御しきれていないのか、あちこちに黒炎をまき散らしている。そのおかげでロキの動きも少しながら抑えられているのだが、このままでは敵味方関係なく燃やしそうだ。

 

 この状況を止めるべく、兵藤一誠が匙元士郎とやり取りをした。

 

 同じドラゴン系の神器(セイクリッド・ギア)を持つもの同士、何かしらのつながりがあったのだろう。

 

 匙元士郎が黒炎を制御し始めるのを確認した兵藤一誠は、ミョルニル・レプリカを持ってロキへ突撃していった。

 

 ロキから兵藤一誠に向かって魔術が撃ちだされるのだが、兵藤一誠はそれを避けずに突撃を続ける。

 

 そこで匙元士郎の黒炎がロキに払われ、ロキが逃走を図る。

 

 だがそれを姫島朱乃とバラキエルの雷光によって阻止される。

 

 その隙に匙元士郎が再び黒炎でロキの動きを封じ――

 

 

「おりゃあああああッ! 俺式ミョルニルゥゥゥゥゥッ!」

 

 

 ミョルニル・レプリカがロキの頭に突き刺さる。

 

 

「いまだぁぁぁぁあああああああッ!いくぜ、ドライグッッ!」

『応!』

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!』

『Transfer!!』

 

 

 倍化した力をミョルニル・レプリカに譲渡したその瞬間、凄まじい量の雷が発生する。

 

 特大と言っても過言ではない一撃がロキを呑み込む。その姿は既に崩れていた。

 

 ロキが、地面に墜落していく。

 

 

「……聖書に記されし神が、なぜ禁手(バランス・ブレイカー)という現象と……神滅具(ロンギヌス)などという神を殺せるだけの道具を消さずに残したのか……。こういうことが起きると想定していたのか……? なぜ、人間に神殺しの(すべ)を持たせようとした……?」

 

 

 それだけを言い残して、完全に意識を手放した。

 

 なるほど、私の疑問は私だけのものではなかったということか。

 

 確かに不思議だろう。

 

 神が自らを殺せる術を人間に託したのだから。

 

 ところで。

 

 ロキが言った、あの関係。

 

 それが私の前世に似ているところがあるのに、気づいただろうか――。

 

 

 




次の話、さっさと投稿できそうです。
そして次の話で重大なあります。

ほら、年末年始じゃないですか。
休み、貰えたんですよね。
休みに出されるノルマもそこまで多くないので、執筆に回せる時間が増やせそうなんですよね。

まぁ季節が冬なので雪山に行ったりだとか、冬コミ行ったりだとか、FGOの終局特異点回ったりとかありますけどね。

やったりますよ、えぇ。

一日最低1000文字以上ずつ書いていけば十日前後で仕上がるはず!
頑張ります。

進捗情報はツイッターで流していくつもりです。
フォローすると更新時間がすぐにわかるかも。
あぁ、フォローしてくれたらちゃんと返しますので。
「@3939_sun」です。

ついでにFGOのフレもちびちび募集したいです。
固定ツイにサポート編成乗せときますね。
コメくれればやりとりしますんで。

では、これからもよろしくお願いします。
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