ピシャリと言い切った飛鳥。それを聞いたガルド=ガスパーは怒りで体を震わしていたが、それでも自称紳士として言葉を選んでいるようだった。
「お、お言葉ですがレデ
「黙りなさい」
ガチン!とガルドは不自然な形で、勢いよく口を閉じて黙り込んだ。本人は混乱したように口を開閉させようともがいているが、全く声が出ない。
「………!?…………!??」
「私の話はまだ終わってないわ。貴方からはまだまだ聞き出さなければいけないことがあるのだもの。貴方はそこに座って、私の質問に答え続けなさい」
飛鳥の言葉に力が宿り、今度は椅子にヒビが入るほどの勢いで座り込む。ガルドは完全にパニックに陥っていた。どういう手段かは分からないが、手足の自由が完全に奪われて抵抗することさえできなくなっているのだ。その様子に驚いた猫耳の店員が急いで飛鳥達に駆け寄る。
「お、お客さん!当店でのもめ事は控えてくださ―――」
「おかわりーー!」
「ちょうどいいわ。店員さん、骨付き肉を追加で50個お願いするわ。あと、猫耳の店員さんも第三者として聞いていって欲しいの。多分、面白いことが聞けるはずよ」
首を傾げる猫耳の店員を制して、飛鳥は言葉を続ける。その内容はこうだった。
ガルドのコミュニティは、コミュニティそのものを賭けてのゲームで連戦連勝して大きくしていったと言うが、コミュニティそのものを賭けることは頻繁に起こり得るものなのか? その答えはノーだった。では、どうして何回もコミュニティを賭けたゲームを行うことが出来たのか? その問いにガルドはこう答えた。まず相手ギルドの女子供を攫って脅迫した。それに動じないギルドは、まず周りのギルドを吸収しゲームに乗らざるを得ない状況に圧迫したと。さらに、吸収したコミュニティを従順に働かせるために、各コミュニティごとに子供を数人人質にとったらしい。しかも、その子供たちはもう全員食い殺されたという。それを聞いた飛鳥は。
「黙れ」
ガチン!!とガルドの口が先ほど以上に勢いよく閉ざされた。飛鳥の声は先ほど以上に凄みを増し、魂ごと鷲掴むような勢いでガルドを締め付ける。
「素晴らしいわ。ここまで絵に描いたような外道とはそうそう出会えなくてよ。流石は人外魔境の箱庭の世界といったところかしら………ねえジン君?」
飛鳥の冷ややかな視線に慌てて否定する。
「彼のような悪党は箱庭でもそうそういません」
「そう?それはそれで残念。―――ところで、今の証言で箱庭の法がこの外道を裁くことはできるかしら?」
「厳しいです。吸収したコミュニティから人質をとったり、身内の仲間を殺すのは勿論違法ですが………裁かれるまでに彼が箱庭の外に逃げ出してしまえば、それまでです」
それはある意味で裁きといえなくもない。リーダーであるガルドがコミュニティを去れば、烏合の衆でしかない『フォレス・ガロ』が瓦解するのは目に見えている。しかし飛鳥はそれで満足しなかった。
「そう、なら仕方がないわ」
苛立たしげに指をパチンと鳴らす。それが合図だったのだろう。ガルドを縛り付けていた力は霧散し、体に自由が戻る。怒り狂ったガルドはカフェテラスのテーブルを勢いよく砕くと。
「こ…………この小娘がァァァァァァァ!!」
雄叫びと共にその体を激変させた。巨躯を包むタキシードは膨張する後背筋で弾け飛び、体毛は変色して黒と黄色のストライプ模様が浮かび上がる。彼のギフトは人狼などに近い系譜を持つ。通称、ワータイガーと呼ばれる混在種だった。
「テメェ、どういうつもりか知らねえが………俺の上に誰が居るかわかってんだろうなァ!?箱庭第六六六外門を守る魔王が俺の後見人だぞ!!俺に喧嘩を売るってことはその魔王にも喧嘩を売るってことだ!その意味が
「黙りなさい。私の話はまだ終わってないわ」
ガチン、とまた勢いよく黙る。しかし今の怒りはそれだけでは止まらない。ガルドは丸太のように太い剛腕を振り上げて飛鳥に襲いかかる。それに割って入るように耀が腕を伸ばした。
「喧嘩はダメ」
耀が腕をつかむ。更に腕を回すようにしてガルドの巨躯を回転させて押さえつけた。それを見て飛鳥は楽しそうに笑いながら言った。
「さて、貴方には破滅以外のどんな道も残されていないの。でも、私は貴方のコミュニティが瓦解する程度の事では満足できないのよ。そこで、皆に提案なのだけれど―――私達と『ギフトゲーム』をしましょう。貴方の『フォレス・ガロ』存続と『ノーネーム』の誇りと魂を賭けて、ね」
さて、次回はついにあの和服ロリの登場だ。