1時間後
「あ、あり得ない。あり得ないのですよ。まさか話を聞いてもらうために小1時間も消費してしまうとは。学級崩壊とはきっとこのような状況を言うに違いないのデス」
「いいからさっさと進めろ」
半ば本気の涙を浮かばせながら黒ウサギは話を聞いてもらえる状況を作ることに成功した。その状況を作り出すために自慢のウサギ耳を引っ張られたり、勝手にどこかへ行こうとするルフィを引き止めるために肉を大量に用意するなど、その苦労は想像を絶するほどだったと後の黒ウサギは語っていた。問題児たちは黒ウサギの前の岸辺に座り込み、彼女の話を『聞くだけ聞こう』という程度には耳を傾けている。
黒ウサギは気を取り直して咳払いをし、両手を広げて、この世界、『箱庭』についての説明を始めた。その説明はこういうものだった。
1つ、この世界は強大な力、いわゆる『ギフト』を保持している者たちが面白おかしく生活するための『ギフトゲーム』を行うことが出来るステージである。
1つ、異世界から呼び出されたギフト保持者は箱庭で生活するためには必ず『コミュニティ』に所属しなければならない。
1つ、『ギフトゲーム』の勝者はゲームの『主催者』が提示した商品を手に入れることが出来る。
1つ、『主催者』は誰でもなることが出来る。また、『ギフトゲーム』の難易度が高ければ高いほど見返りも大きくなる。
1つ、『ギフトゲーム』に参加するには条件にあう掛け金が必要。また、ゲームの参加はコミュニティ同士のゲームを除けば、それぞれの期日内に登録をすればいい。
と、1通り箱庭についての説明をし終えた黒ウサギは問題児たちに1枚の封書を取り出した。
「さて。皆さんの召喚を依頼した黒ウサギには、箱庭の世界における全ての質問に答える義務がございます。が、それらを全て語るには少々お時間がかかるでしょう。新たな同士候補である皆さんをいつまでも野外に出しておくのは忍びない。ここから先は我らのコミュニティでお話をさせていただきたいのですが……よろしいです?」
「待てよ。まだ俺が質問してないだろ」
静聴していた十六夜が威圧的な声を上げて立つ。ずっと刻まれていた軽薄な笑顔が無くなっていることに気づいた黒ウサギは、構えるように聞き返した。
「……どういった質問です?ルールですか?ゲームそのものですか?」
「そんなのはどうでもいい。腹の底からどうでもいいぜ、黒ウサギ。ここでお前に向かってルールを問いただしたところで何かが変わるわけじゃねえんだ。世界のルールを変えようとするのは革命家の仕事であって、プレイヤーの仕事じゃねえ。俺が聞きたいのは……たった1つ、手紙に書いてあることだけだ」
十六夜は視線を黒ウサギから外し、ほかの3人を見まわし、巨大な天幕によって覆われた都市に向ける。彼は何もかも見下すような視線で一言。
「この世界は……面白いか?」
「…………」
他の問題児たちも無言で返事を待つ。彼らを呼んだ手紙にはこう書かれていた。
『家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨てて箱庭に来い』と。
それに見合うだけの催し物があるのかどうかこそ、彼らにとって1番重要なことだった。
「YES。『ギフトゲーム』は人を超えた者たちだけが参加できる神魔の遊戯。箱庭の世界は外界より格段に面白いと、黒ウサギは保証します!」
ちなみにこの時、ルフィは開始3秒で寝ていたというのはここだけの話。