開戦
───某所、とある廃ビル
誰もいない、いや、誰も入ることの出来ない筈の廃ビルに、 爆音が鳴り響く。続いて怒声と悲鳴。
これは、学園都市の闇に潜む者達の断末魔。
「ハァ...ッ....なんだよアイツ?!あんな能力者、資料に...ッ...載ってなかったぞ?!!」
薄暗い路地裏をアタッシュケースを抱えながら走る黒服の男。
額には大粒の汗。真っ黒なスーツは砂埃に塗れ、呼吸も荒く髪は乱れており、その顔に一切の余裕は無い。
「ハッ...ハァ、ハァ....!!」
ひたすら駆け抜ける。
まるで、なにかに怯えるかのように。
何かを、恐れるかのように。
やがて道が開けてきた。光が見える。
路地裏から抜け、走るのをやめる。
────もう大丈夫だ、助かった
「───こ、ここまでくれば─」
「ここまでくれば───なんだって?」
「────な─ッ」
黒壇の様に黒い長髪と、その長髪を束ねる大きな三日月の髪留めが特徴的な少年、
少女とも見間違えそうな小綺麗な風貌は、男にはバケモノに見えたかもしれないし、魔女に見えたかもしれない。
「さて、ゲームオーバーだクソ野郎。さっさと第4位の居場所を吐きやがれ」
「......」
識城は、その風貌とはかけ離れたドスの効いた低い声で男を脅す。
しかし、先程から情けなく逃げ回っていたこの男も、下っ端とはいえ闇の世界を生きる人間である。
そう簡単には吐くまいと、唇を噛んでその意思を示す。
しかし、そんな意思表示など彼の知った事ではない。どこからともなく取り出した小口径の銃で、男の耳を撃ち飛ばす。
銃口から出る煙をどこぞのガンマンの如くフッと吹き消し、クルクルと銃を回す。
「言い方を変えるかァ?俺に第4位の居場所を吐いてその端金持ってお家に帰るか、喋らずにここで俺に殺されるか....。さァ、どっちだ?」
男は依然口を閉じたまま。
これは随分と忍耐のある男───
「...わ、わかった...。俺の知る限りの情報は教える...」
........そういう事もないようだ。
「グッド。いい選択だ...。じゃあ、話してもらおォか。第4位...麦野沈利の情報をよォ....」
「む、麦野沈利....レ、Level5序列第4位....。暗部組織『アイテム』に所属してる...。能力は『
「新人教育係から迷い込んだか?」
「.......」
「おっと、話が逸れる。で、その『アイテム』の構成員と能力についての情報は?」
「構成人数は、麦野沈利、絹旗最愛、滝壺理后、フレンダ=セイヴェルンの四人だ」
いつの間にか識城は男の前に座っており、喋り方も少々フランクになっていた。それを見た男は、緊張の糸が緩んだのか、黙る時間が短くなっていた。
耳を撃ち飛ばされたと言うのに。
闇の人間というのはなんとも不思議なものだ。
痛がる素振りも見せない。警戒する事もない。
善悪の判断などない。殺しに心が揺るがない。
その癖して死ぬのだけは一丁前に嫌がる。
本当に不思議だ。
そんなくだらない考えを打ち消して、識城は再度男に向き直る。
「....全員のLevelと能力の詳しい情報を聞かせてくれ」
「絹旗最愛、能力はLevel4『
衝撃の緩和は不可。ならば、コンクリートブロックかバットで殴り抜ければなんとかなるだろう。
それが無理なら槍で刺せばいい。
「次」
「滝壺理后、能力はLevel4『
逃げるつもりなどない。だから追跡されることはない。いや、追跡と言ってるが、『観測』と言う事は追い回すだけの能力ではなく、レーダー...つまり近付く相手も見つけられる筈だ。
面倒な能力だ。
「次ィ」
「フレンダ=セイヴェルン、能力は不明。アポートに順ずる能力...らしい....」
「不明...だァ?....ッチ...」
面倒だな....。
「.....まあ、強かろうが弱かろうが、その時はその時だな。情報サンキュー。もう帰っていいぜ」
「本当に....見逃すのか?」
「あ?」
「俺が『アイテム』の連中にこのことを伝えるかもしれないんだぞ」
「その方が好都合さ」
「な.......!?」
「その方が好都合だと言ったんだ。分かったら帰れ。殺すぞ」
「.....ッ!」
脅しの域を超えた言葉を受け、男は逃げる様に...否、逃げ去った。
その後姿を尻目に、少年間宮識城は、はァと大きな溜息を吐いて眼光を鋭くし────
「....さて、始めるとするか。中学三年生vs暗部組織『アイテム』────まァ、大丈夫さ、あっくんに比べれりゃあ───」
「────比べれりゃあ───なんだって?」
「ッ!!!」
殺気と共に、一撃必殺技のレーザーが飛んでくる。
どうやら、こちらの動きは気付かれていたらしい。
さあ、ここから先は一方通行。後戻りは出来ない。
今回、いきなりの戦闘開始です。前と同じくらいには出来てると思うんですが....どうでしょう。
次回、主人公の能力が出ます。