今回は地の文がありません。次の章の構想中です。
──────一般道
アニェーゼ部隊や上条勢力との戦いから、既に数週間が経っていた。
何の音沙汰もなく、下品な上司が現れることもなかった。
変化といえば、識城がアニェーゼ達の事情を聞き『共感』した上で、結局天草式の教会でアニェーゼ部隊のシスター達を匿ったことだ。そこから謎の発展をして共にひとつ屋根の下で暮らすことになったのだが────
「....疲れますね...」
───疲れる
ある1人はあれが嫌いだこれが嫌いだと文句を言い。またある1人は捨てないでくれと虚ろな目で訴えてくる。十人十色とはよく言ったものだ。全身から溢れ出るオーラが、白からどぎついショッキングピンクまで......そう、まるで慣用色名帳を見ているような気分になる。
.....つまり、何が言いたいかというと『辛い』。
1人1人の対応に異様に体力を削られるのだ。
そして結局、そこから脱出するために買い出しを申し出て現在に至るということだ。
すると、道を歩いていた男に声をかけられた。
面倒だと思いながら後ろを向くと、裏路地で不良青年を蹴散らしている光景が鮮明に思い浮かぶ、ヤのつく職業の人みたいな男がいた。
「────世界に足りないものはなーんだ?」
男は、突然そんなことを聞いてきた。
「───献身的な愛...愛という名の覚悟だと、ワタシはそう思っています」
なんだこいつはと思いながらそう答えた
すると男は自分の意見に興味を持ったのか───
「ほう....その意見、詳しく教えてくれないかな」
────と、言ってきた
断るのも面倒なので、近くのカフェに行って話すことにした
──────とあるカフェ、端の席
「話を聞いてくれてありがとう。俺の名前は御坂旅掛だ。君の名前は?」
「....間宮識城...認識の識にお城の城で識城です」
「ふむ、識城君だね。早速だけど、さっきの続きを聞かせてくれないか?」
「ええ...この世界には、愛という言葉がありますが、人間はどうやっても、一人の人間しか愛せません。二人いると言うのなら、それはただ『好みだ』とか『気に入ってる』程度でしかありません」
「...続けてくれ」
「逆に、誰一人として愛せない人間もいます。そんな人間は可哀想だと思う人もいるでしょう。こんな自分は嫌だと思う人もいるでしょう。でも、それでも、その人を愛する人がいれば『どうにか』なるかもしれません。まあ『その人を愛する人がいれば』の話ですがね」
「ふむ...では、君は愛する人がいるのかい?」
「ええ、いますよ。この世で一番の存在...その人のためならば、どんな人間すらも切り捨てる覚悟をワタシは持っています」
「...どんな人間すらも切り捨てる...か」
「はい。そうしなければ『愛する人を守る』事などできません」
「......」
「人間は小さな生き物です。どれだけ強くても、老いれば死にます。どれだけ強くても、脳を壊されれば死にます。そしてどれだけ頑張っても、死んだ人は生き返りません」
「....続けて」
「人間は弱い生き物です。どれだけ強くても、どれだけ頑張っても、守れる人数は決まっています。大の字になって盾になっても、守れるのはその範囲の人だけ....だから『全部』でも『出来るだけ』でもなく『一人の愛する人だけを命を賭して守る』のです。それが、愛するという事だと、ワタシは思っています」
「....なら、質問だ」
「なんでしょう」
「君は、愛する人の命と世界中の人間の命を天秤にかけられるか?」
「当然ですね」
「...どちらが重い?」
「愛する人ですよ」
「.......」
「.......」
「───君は、そうあって欲しいのか?」
「世界中の人間に...ですか?」
「そうだ」
「はい」
「そうなった場合、この世界がどうなるか、君は分かっているのか?」
「ええ、正に『愛は戦争』...そんな世界になりますね」
「....君は、そんな世界が平和になると思っているのか?」
「思っていませんよ。元々、ワタシは世界に平和なんて望んでいません。ただ、落ちてくる火の粉は振り払うんですけどね」
「.......」
「逆に、人が人を助けて世界が平和になると思っているんですか?」
「どういう意味だい?」
「その前に...貴方は、御坂美琴さんを知っていますか?」
「娘を知っているのか?」
「ここは『質問を質問で返すな』と言えばいいんですかね」
「おっと、すまんな。さっき言った通り、俺は美琴の父親だ」
「そうですか、では次話す時は『その公害じみた理不尽な攻撃をやめろ』と言っておいてください....あやや、話が逸れてしまう...さて、えーっと....ああそうそう、貴方は上条当麻をご存知で?」
「どうやらうちの娘が迷惑をかけているようだな。きつく言い聞かせておこう」
「お願いしました」
「ああ。で、上条当麻君だったかね?直接会ったことはないが、美琴がよく話していたよ。『変な右手を持ってるツンツン頭のやつがいるんだ』ってね」
「それが上条当麻で間違い無いかと」
「ふむふむ....あぁ、あとこうも言っていた。『髪の長い女みたいなやつもいて、そいつはとにかく女みたいで変なやつなんだ』とね。多分これって、君のことなんじゃないかな?」
「....そうでしょうね。彼女は理不尽ですから....あら...」
「おっと、すまない。また話を逸らしてしまった」
「いえいえ、大丈夫です。まあ、何が言いたいかと言うとですね。はっきりと言わなくとも、ワタシは上条当麻が大嫌いだということです。勝手な言い分ですが、ワタシの世界観、価値観からすると彼こそがワタシの最も嫌う人物の一つです」
「何故だい?困っている人を助ける好青年じゃないか」
「まあ、そこだけ聞くと『いい奴』ですが、彼の『人助け』や『正義』は、とても身勝手なものです。他人の意思を、苦悩を感じ取り共に共感して解決しに行くのではなく、ただ否定して.....『幻想殺し』なんて大層なモノを持っているくせに、他人にチョコレートの砂糖漬け並に甘い幻想を振り撒いて怒鳴り散らして....
「.....君は───君は、ヒーローに憧れているのかい?」
「...いいえ、全く。何故、そう思うのですか?」
「いや、なんとなく...ね」
「そうですか」
「じゃあもう一つ」
「....」
「君は、ヒーローに憧れていたんじゃあないのか?」
「.....どうでしょうね?昔は、ヒーローなんてモノも、正義なんてモノも、全く知らない...
「というと君は...いや、これ以上は言わないほうがいいね」
「そうしていただけると光栄です」
「..ふむ...ではこれで。今日は話をしてくれてありがとう。金は出しておく。ゆっくりしていってくれ」
「お言葉に甘えて.....こちらこそ...今日は、愚痴を聞いてくれてありがとうございます」
そこで話は終わり、適当に挨拶をして帰った。
しかし、あれが御坂美琴の父親か....また違う意味でぶっ飛んだ人だったな...
────────天草式十字凄教教会
「あ、おかえりなさい間宮さん。どこに行ってたんですか?」
「ただいま帰りました。今日は、買い出し途中で変わった方とお話をしたんですよ」
「へえ、どんな人だったんですか?」
「まあ、精神論の探求者ですかね」
「へえ~、本当に変わってますね」
「ふふ...五和も会って話してみてはどうですか?面白い話が聞けるかもしれませんよ」
....凄えことになった。
次回から新章『科学-減点回帰』編です。投稿ペースが遅くなります。すいません。