────────謁見の間
「関西弁?」
「は?」
「は?」
一瞬の沈黙────
そして
その沈黙の中にある一つの空白を見極め───
「脳味噌ブチ撒けなッ!!」
──先手必勝。
服の袖口に縫い付けたポケットから、数日前に木原さんに貰ったM6をローラの脳天めがけてぶっ放す。
「ッ?! 甘いっ!!」
しかし、ローラがあらかじめ張っていたと思われる魔術の防御膜によって、弾丸はあらぬ方向へとそれて行く。
「クカカッ......やっぱり、どンだけ強くても、魔術師ってのァどこまでも魔術師なンだなァローラ......」
今撃った弾は『金属操作』で位置情報を完璧に掴んでいた。
ローラが防御膜を張っているという事など、最初からお見通し。問題は、その防御膜がローラの身体を中心としてどの範囲まで展開されているのか?そして、その防御膜が
防御膜にも数種類ある。
濃密度の魔力の膜を展開し、衝撃そのものを真正面から相殺して身を守る物理寄りの防御膜。
魔力の膜が常に渦を巻くように存在し、対象を受け流す事で身を守る魔術寄りの防御膜。
力の波を一定範囲に放出し、対象の速度を落とし最終的には落下させる、物理魔術共に防げるが、正直言って実用性の無い防御膜。
放った弾丸の軌道や速度からして、ローラの防御膜は1番目に上げたものの応用版といったところか。
大方、その膨大な魔力を多面体の
「........?」
ローラは言葉の意味が分からないらしく、訝しげな顔でこちらの様子を伺っている。
「解らなくてもいいよ。どーせここで死ぬんだから...サ!!」
続けざまにJDJを撃つ。もちろん『原点越え』による最大強化付きで、だ。
今度のは元の威力もあり、そのコーラの缶にも匹敵するサイズの弾丸は、ローラの作った防御膜を......。
「......ありゃ?壊れてない?」
「だから甘いと言いけるのよ、識城」
ドヤ顔のローラが、玉座の肘掛けを指でトントンと叩いた。途端、小型ながらも明らかに対都市砲撃魔術レベルの魔力を秘めた魔術陣が、天井を埋め尽くした。
「あっはは....ちょっと今の能力じゃヤバいヤツかな?」
そう言うと、ローラは人差し指を立てた。
「
「
「
「馬鹿にされたるのが嫌といふだけにありきよ。.....それじゃあ、バイバイ」
瞬間───辺りは強烈な光に飲まれ、音は消えた─────
─────────
魔術組織の中でも三本の指に入るイギリス清教。
その中で結成された戦闘特化の少数精鋭組織『
しかし、その本部である城は、たった2人の交戦が原因で滅茶苦茶に破壊されていた。
ほんの数十分前まで城内を色鮮やかに見せていた装飾はそのことごとくが砂埃に犯され、先程までの荘厳さなど見る影もなく、むしろどこぞの幽霊屋敷に勝るとも劣らない不気味さを醸し出していた。
先程まで最大主教、ローラ=スチュアートが座っていた玉座も傷にまみれており、例え今これを盗み出し『荒れ屋敷の奥に眠っていた物をそのまま引っ張り出して来た』と言っても、誰も疑うまい。
謁見の間の隅には、その『
この死体の様に動かなくなった3人の所為で、その場の不気味さに拍車がかかっているのは言うまでもない。
砂塵が辺りを覆い、城内の殆どの人間が視界を失っている中、この惨事を巻き起こした張本人は────
「......生きたりてあるな」
平然とした顔でそう言った。
──────言いやがった
「......まぁ、全ては命あっての物種っていうけどさ....今のはあまり......まぁ気分のいいものじゃあないなぁ」
砂塵を巻き上げ視界を晴らし、未だ余裕の表情を貼り付けたローラを殺気の篭った眼で見据える。
「うーん、今のはまぁまぁ効きけると思いたりてはいたけど、服の端が焦げる程度といふのはちと自信をなきにしたる要因よね....」
「...そこなんだよねぇ....そこが問題大問題」
「不服か?」
「不服だよ。実はねー、今発現させてる能力は『一方通行』って言ってねー、私ちゃんのいっちばん大好きな親友の能力なんよ。ここまでオッケー?」
「......!? だ、大好き?!識城が『大好き』と言いけるか?!い、一体その能力者とはいかなる人物にありけるや.....!?」
「....ま、今それは置いといて....ローラの魔術は今、この能力を破ってワタシの服を焦がした.....確かに、ワタシの演算能力が及んでいないってのもある。そこは素直に悔しい。同時にそこが問題。あっくんと同じ条件で.....いや、魔術師である以上、対魔術の式を組み立てる土台はあっくんよりも優遇されているのに、それなのに反射を突破された。これが不服だ」
「.....つまり、その友の能力を破られ、最強の名を汚してしまったと、識城は思いけるといふ訳ね?」
「...短くまとめてくれちゃってありがとサン.....まあ、そーゆーこと。だから、他の能力は使わずこの能力だけで戦おうかなーって考えてる訳よ」
「そんな
『やれやだ』とでも言わんばかりに首を振り、溜息を吐くローラ。その仕草は他人が見れば....否、誰が見てもムカつくか。
とは言え、ローラの言っていることは正しい。さっきの攻撃が本気でないことなど明白。あれ以上の威力のを出されたら服を焦がされるだけじゃ済まないだろう。
あのレベルの魔術となると『方向』を操る前にこっちが殺られる。ならどうするか?能力、超能力、科学、非科学......。
「....ダメだ、わっかんね」
全く思いつかない。そう言えば、この能力『一方通行』を使えるのは1分弱....いや、2分寸前までは使えるか?ダメだこりゃ。今ならウルトラマンの辛さが分かる。アイツはこんな気持ちで戦ってたんだなーってくらいしか思わないが、つまりどれだけ効率良く戦うかが問題だ。
時間との勝負....究極の短距離走だ。
「考え事は終わりけるか?識城よ」
「ヒュー、やっさしいー!待っててくれたんかよ。余裕たっぷりだなァ」
「まあ、これが最期の会話になりたるのだから、この時間を有意義に過ごしたいのよ」
最期.....ねェ......。
「どっちの最期かは.....聞くまでも無ェ.....な!」
足元のベクトルを操作し、音速を超えた速度でローラに突貫し、肉薄する。
「なっ....?!奇怪な!」
その驚きの声を無視し、周りのベクトルを滅茶苦茶に集中させる。
そして、思い切り引ききった拳をローラの防御膜に渾身の力でぶち込んで無理矢理粉砕する。
すぐさまローラが術式を組み立てるが、遅い。
「もういっぱぁぁぁあああつ!!!」
屈んだ様な体制から、全身の力と集められるだけのベクトルを込めた左アッパーを、ローラの顎へクリーンヒットさせ、そのまま力任せに振り抜く。
何の悲鳴も上げることなく.....いや、ただ単に聞こえなかっただけかもしれないが、とにかくローラはぶっ飛んだ。
とてもチープな表現だが、本当に、文字通り、ローラはぶっ飛んだ。
分かる人は少ないかも知れないが、グラップラー刃牙最大トーナメント編35巻でマックシングが出たジャックがアレクサンダーガーレンをぶん殴った時....いや、それ以上にぶっ飛んだ気がする。
「.....ッ.....痛え....!」
そう言えば、学生寮に置いてあった漫画はどこにしまっただろうか?なんて下らない事を考えていると、急な頭痛に見舞われた。
流石に無理をし過ぎたか...。
「まぁいい、とにかくローラをぶちのめさないと.....」
そう呟いて歩き出そうとしたその時だった。
城壁を
今回かなり投稿が遅れました。
「『最後通知』が御坂妹より一万円安いのって何か理由があるの?」という質問を受けたのですが、簡単に言うと『最後通知』は元々ただの消耗品として作られた軍用クローンで安かったからです。