突然ですが、オレオレ詐欺って待ち構えてからかかって来た時の高揚感が半端じゃないですよね。
適当に嘘の話をして、最後の最後に特大の大嘘を吐いて電話を切るんです。例えば「うちに息子はいねェ!娘になったンだよォ!!」みたいに、たまーにどっかのブログで出るものを引用してみたりするんです。
ごめんなさい家の電子機器が全滅してて一個一個直すのに時間がかかったのですと言い訳させてくださいお願いします。
「何なんだよここ最近の運気の下がり様は.....」
ここまで偶然という名の奇跡が重なってくると、怒りを通り越し呆れ、更にそれを突破して泣きそうになってくる。
いや、最早嘆くより他ないだろう。
この状況。
囲まれたのだ。
上条勢力に。
なんだというのだこの戦闘続きの日々は。
別に、自分は現魔術師で、暗部に足突っ込んで、イロイロヤバい仕事も馬鹿みたいに掛け持ちしてる時期もあった。
しかし、こんな事は今まで一度も無かった。
夜襲もあった、奇襲もあった、爆撃も水攻めも不意打ちも掃討作戦も、今までの人生で、俺は色んな戦いを経験して来た。
しかし、だがしかし。
こんな事は初めてだった。
ローラの引き渡しに失敗してダメージを負ったかと思えば丁度いいタイミングで上条が到着し周りの人間を鼓舞して復帰させ、当然逃げ帰れる訳もなく発見され囲まれる。
相変わらずの長ったらしい説教の果てに生まれるこの雰囲気。
全員が全員上条の語る意味の無い
ああ、ムカつく。
そして、早く帰って着替えたい。
どれだけ取り繕っても、性別を忘れる事は出来ない。
そして服装が女なだけに、男の声や性格を出すのは気が引ける。
せめて女の声女の口調でこの服装の事を靄に隠したいのだ。
「......間宮識城!」
おっと、上条の説教が終わったようだ。
さて、ここからどうしたものか。
「何、そんな張り切って大声出しちゃって」
「お前が今こいつらに何をしたか、わかってんのか?!」
どーせこいつらはお前を信じてたそれを裏切ったがどーのとか、心のなんたらとか言うんだろう?お前みたいな自己中心的な偽善者の言う事なんざ簡単に予測できるっての。
「皆はお前の事を信じて────」
ほら、やっぱりこれだ。
ぽっと出の癖して好き勝手言いやがって。
自分が加勢してる奴は自分の味方だから全員いいヤツだとか、それに近い"友人の事を親や教師に良く伝えたい小学校低学年"的思考も丸分かりだ。
「あーあーわかってるわかってる。わかってるンだけどねェ貴方。逆にこいつらが私にナニしよーとしたか分かってンのォ?上司に命令されたか知らンが、こいつらいきなり私の事殺す気で出てきたのよ?むしろ裏切られたのはこっちの方なンだけど、そこんとこどうよ」
「ふざけんな!今まで一緒に戦って来た仲間だろうが!それすら信用出来ねえってのか?!」
「いやいや私チョー真面目に言ってる。仲間を信用?一緒に戦って来たァ?馬鹿ァ?こっちに明確な殺意を向け、更にそれを形容する凶器を向けて来た時点で、そいつとは敵同士なの」
「敵同士だ?!何言ってんだ!!例え武器を向けて来たとしても、それでも!信じてやるのが仲間ってモンじゃねえのか?!ああ!?」
「...メンドクセエよお前.....何信じろって?無理無理、まず相手が私を信じてない、こっちも信じる気が無い。ホラ、無駄。まずな、AさんがBさんを信じてるかどうかの前に、BさんがAさんを信じてるかどうかを分かろうよ」
「.....こいつらが、お前の事を信じてないって言うのか...?」
「そのとーり!いぐざくとりー!ら、すとらーだ!そーゆー事さ!お前が言うには裏切ったのは私だけだって言うンだろう?こいつらを攻撃した私が!こいつらの気持ちを裏切り信用を利用したクソ野郎なンだろう?!だったらまず、そうなる理由は?!そうなった理由は?!答えろよ!答えてみろよ!!」
「ッ.....!!」
「答えれねーよなァ?だって、まずこいつらが私に刃を向けた時点で、こいつらが私を信用していない証拠....そうなればそこまで。信用や信頼は無かった事になって、最早裏切りすら存在しなくなる。跡に残るのは、ただの一方通行な空想に縛られた馬鹿共だけ...私もその独りさ」
俺の発言が終わっても、上条は反論の言葉を出さない。
どころか、逆に説教されたガキみてえな顔して俯いて.....まるで時が経って自分の言動が風化して行くのを待つ小学生だ。
よく見れば、周りの奴ら全員が同じ様に俯いている。
ここはもうこの流れで言いたい事言って帰ろう。
そうしよう。
「....なァ、五和...」
「............」
「私はね、ああ言って殴ってしたけどさ。ちょっとだけ寂しかった」
「────ッ──」
「それこそ、信用も、信頼も、全部最初っから無かったンだなァって。でも、もしかしたらって思って、話しかけてみたが、帰って来たのは光る刃と明確な殺意。別に深い関係でもねェのに、なンで寂しかったかって、そりゃ五和。お前の事を腹ァ割って話せるヤツだって、ずっとそう思ってたからなのさ」
「──!─!.....ッ!」
「まァ、それだけだよ。.......じゃあね、バイバイ五和。我が最信だった友よ」
ふらつく足で上条勢力の作った輪っかを抜け出す。
その中の誰もが、その場に突っ立ったまま俺を止める事はしなかったのは意外だった。
◇
「ぐ....ふ...ゴホッ...ハ...ァ......ハァ....」
なんとか戦闘続きのこの状況から抜け出す事に成功したが、また新たな問題に直面する。
今度は今まで好き放題暴れ回ったツケなのか、急に呼吸が苦しくなり、足も腕も、更には頭までもがうまく機能しなくなってきたのだ。
「あーあ....ッ...サ....イアク.....こんな時に限って、何にも出来ないんだから.......」
困ったものだ、我ながら。
そんな事を考えている内に、段々と視界が霞んできた。
あれだけ戦場をかき回して大暴れして....その最期がこれか...なんとも情けないものだ。
「.......?」
己の人生ここまでと、最後が一方通行の前でないのが残念だとか考えていると、妙な浮遊感を感じた。
それに、段々意識が明白になっていく。
これは────
「.......五和.........?」
「.......間宮さん.....」
やれやれ、ここまできてまたそれか。
「.....私の名前を口癖みたいにしないで.....」
──────
「...これでもう大丈夫ですよ。傷は完治しました」
「..............」
「どうしました?」
いやいやいやいや
「どうしましたじゃないでしょ。何故?何故私をここで治癒したの?自分の手で殺すため?生け捕りにして突き出すため?」
「そのどれでもありませんよ。.......私、間宮さんの気持ちを聞いた時、思ったんです。私は、私は間宮さんに何て酷い事をしてしまったんだろうって」
「..............」
「それで、すぐ考えて、すぐ決めたんです」
「.......なんて?」
「間宮さんに付いて行こうって......!」
「.......なんて?」
「間宮さんに、付いて行こうって」
「なんでそうなったの?さっき私バイバイって言ったよね?それに私結構アレな事したよ?ステイルにぶつけたり蹴ったり.....」
「それでも、です」
こうなった五和は誰にも止められないというのはよく知っているつもりでいたが、今度は何があったと言うんだ。
打ち所が悪かったのか?そうなのか?
「.....でも、いいの?」
「何がです?」
「私に付いて行くという事は、貴女が尊敬してた神裂や、ついさっき仲間だった上条勢力。それに、それこそ魔術界さえ裏切る事になるのよ?」
「ふふ.....」
「....えっ」
「さっき間宮さんが言ったばかりじゃないですか?信用も信頼も無ければ、そこに裏切りなど存在しないって...ふふ」
五和の発言に一瞬思考が停止する。
なんか、五和がすごい方向に進化した気がしてならない。
そのまま何も言えずにいると、五和は更に爆弾発言を連発し続ける。
「間宮さんがそう言った時、私を含めて誰も弁解しませんでしたよね?つまりそれは迷ったという事。それすなわち信用しきってないという事。ならばそこに信用も信頼も何もありませんよ。そしてそもそも、嘘情報を流すような上層部に信用なんて皆無!ならばそこに裏切りは無く、私は間宮さんと同じく長期休暇を頂く...という事です!」
「なんか.....」
「はい?」
「強くなりましたね、イロイロと....」
「うふふ!
「......うん........うん?」
「愛してますよ、間宮さん!」
「........五和......」
「はい!」
「........靭くなりましたね......なんかもうホント....イロイロと」
なんと、五和が属性憑きで仲間になりました。
ここから学園都市内部、つまり『最後通知』との戦いになります。