とある魔術の原点越え R   作:会話5

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皆さんこんにちは。最近友人とカラオケに入り浸って延々と歌い続けるのが楽し過ぎる作者です。今回は前回の『ジョブチェンジ』を五和視点にした物+回想です。

ところで、皆さんはカラオケでどんな歌を歌いますか?友人1はもっぱらA◯Bだったりス◯マ◯イッチだったりの定番ソングです。友人2は中々渋い歌を歌っています。作者の定番曲は.....定番...曲、は......。

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>エキセントリック少年ボウイ<
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どうしてこうなった。



ジョブチェンジ【五和】

「みんな、今日は新しい仲間がこの天草式十字凄教に来てくれたのよな」

 

 

 

その出会いは

 

 

いつかすら覚えていないほどに衝撃的だった。

 

 

 

 

 

─────────

 

 

 

「さ、いつまでも隠れてないで、そろそろ自己紹介くらいするのよな」

 

 

そう言って建宮さんが手を引いて連れてきたのは、まだ10歳かそのくらいの、女の子。

 

 

「......間宮識城」

 

 

 

「.........え」

 

 

訂正

 

 

女の子にしか見えない男の子。

気付いた理由は声が男の声だったからなのだが、もしそれが無かったら、あらぬ誤解を生むところだった。

 

 

建宮さん以外の仲間も『彼』の事を女の子だと思っていたらしく、驚きの声を漏らしていた。

 

 

 

「.....それだけか?もっとこう.....他に言う事がある気がするのよな」

 

 

そんな私達の様子を察したのか、自分の名前を言ったきり何もしなくなった少年に、自己紹介の続きをさせようとする建宮さん。

 

そして数秒後、少年が口を開いた。

 

 

「認識の【識】にお城の【城】で識城」

 

 

瞬間、まるで打ち合わせをしていたかの様な完璧なタイミングでその場にいた仲間が建宮さんを含めて全員ずっこけた。

 

どうやらこの少年、随分な秘密主義を持っているのか、何も言わない。

 

さて、どうしたものかと考えていると、女教皇様が少年の前にしゃがんだ。

 

 

「好きな動物はなんですか?」

 

 

と思ったら、唐突に質問を始めた。

 

しかし、頑なに自分の名前以外の情報を話さなかった少年に好きな動物なんて聞いても答える訳がないだろうと、私はそう思ったのだが──────。

 

 

「猫」

 

 

──────答えた。

 

しかも、中々に可愛らしい回答だ。

 

 

 

「おや、以外ですね。男の子は皆強い動物が好きなだと思っていました。ちなみに、猫のどこが好きなんですか?」

 

「全部」

 

「そんなに好かれていたら猫も幸せですね」

 

「知らん」

 

 

もしかして、名前しか言わなかったのは『聞かれてないから』なのかもしれない。

でも、そうだとしたら小さい割に随分と融通の利かない子供だ。

 

 

「あ、自己紹介が遅れましたね。私は神裂─────」

 

「知ってる」

 

「........え?」

 

 

知ってる?

 

今、知ってるって言った?

 

いや、おかしい事ではない。

女教皇様はとても有名な御方だ。

こんな小さな子でも、いやこんな小さな子だからこそ知っているのだろう。

 

でも、人の自己紹介を遮るのは常識的ではないんじゃないのか?なんて思っていたら、少年がこっちを向いた。

 

 

「知ってる。人の自己紹介はちゃんと最後まで聞かないといけない。それは非常識。でも、人の顔を忘れて、覚えてないから初めましてのやり直しは、もっと非常識」

 

「知り合いかよ.....」

 

 

そんな声が後ろから聞こえた。

 

いや、そんな筈はない。

 

私が尊敬する女教皇様は、とても強くて、それでいてその強さを鼻にかけないもう一つの強さを持っている、人思いの素晴らしい人。

前だって、数年前に顔を合わせただけの人の事を覚えていらっしゃった。

 

そんな女教皇様が、知り合いの顔を忘れる事なんて.....。

 

 

 

「......すみません....貴方は、私を知っているのですか?どうにも見覚えがなくて...私達、どこで会いました?」

 

「戦場で一回。殴ったろ、俺」

 

「うぇ?!お前女教皇様に殴られたのか!?よく無事だったな!」

 

「殴られてない。殴った。ごめんね、あれ痛かったでしょ?」

 

 

 

 

.............は?

 

 

 

 

「殴.......った?君が、女教皇様を?」

 

「殴った。思い出した?その時俺こんな感じで髪の毛結んで───」

 

 

「何を馬鹿な事を言ってるの!女教皇様は聖人の!!」

 

 

聖人の中でもトップクラスの魔術師で、普通の人間が、ましてや子供が倒せるわけない。

 

そう言おうと思った。

 

許せなかった。

 

私の尊敬する女教皇様を殴っただなんて嘘を平然と吐くなんて。

 

そんなの──────

 

 

 

「待ってください、五和」

 

 

 

「....女教皇........様........?」

 

 

 

そん、なの....

 

 

 

「ちゃんと思い出しました....」

 

 

 

そんなのって、ありえない。

 

 

 

「思い出した?痛かった?」

 

「はい、とっても痛かったですよ?」

 

「悪い事しちゃった。今はもう大丈夫?」

 

「大丈夫ですよ、私はすごく強いんですから」

 

 

 

いや、何かの冗談だ。

 

きっと、話を合わせてるだけに違いない。

 

そう、思ってた。

 

 

 

そう、思い込もうとしてた。

 

 

でも、すぐに本当だと気付かされた。

彼は、戦場にいた時間は私よりも少ない。

けど、戦った数や、()()()()()時間が桁違いなんだと、すぐに分かった。

 

 

人の殺し方

 

建物の壊し方

 

嘘の吐き方

 

 

そして、人の壊し方

 

 

全部、天然の物で

全部、私達よりも容赦が無くて

全部、見るに堪えないものばかりで

 

その度に気付かされる

 

この子は

 

いや、このヒトは

 

自分よりも強いと。

 

 

 

 

新しい家(十字教教会)に馴染んだ頃、私は聞いてみた。

 

 

「君は、戦場で生存するにあたって、何が一番重要だと思う?」

 

 

彼は言った。

 

答えは簡単。一つは規則を守らない事。二つ目は身体を鍛える事。そして3つ目は──────。

 

 

 

 

 

「自分の為に殺す事」

 

「自分の......為に.......?」

 

「うん。どんな事言ったって、何かする時は絶対に自分の為に()()()()んだ。だれかに言われてしたことだって、自分の身を安全な位置に置くためにしてる。()()を隠したままだと、()()を指摘されたり、自分でその行動に疑問を持ってしまった時、隙が出来るからさ。そんな卑怯で無意味で非生産的な事に専念するより、自分の全てを馬鹿にしてった方がいいんだ」

 

 

 

彼は笑顔でそう言った。

 

その笑顔はあまりにも無邪気で、隠してる事なんて一つも無い、一点の曇りも屈託もないその笑顔が、とても哀しいものだと思った。

 

 

 

「..........ねえ」

 

喋り掛ける

 

「なに?」

 

首を傾げて聞き返す

 

そして

 

「君は......君は一体、何があったの?」

 

一歩、踏み入ろうとする

 

「....無いよ」

 

拒否される

 

「ウソ」

 

半歩、踏み入ろうとする

 

「無いよ」

 

蹴り出される

 

「ウソ」

 

土足で踏み込もうとする

 

「無いっ!」

 

「──────ッ」

 

拒絶される

 

 

「無い.....何も....何も無いんだよ.......」

 

「!」

 

「俺にはもう.......!?」

 

 

抱き締める

 

強く、強く抱き締める

 

無言で、ただただ抱き締める

 

 

「.........何も言わない」

 

 

自分はまだ『部外者』だから

 

 

「........」

 

「私は五和。お姉さんって呼んでもいいよ」

 

「......五和のチャンネー」

 

「それは無し」

 

「知ってる」

 

 

 

 

─────それから

 

彼はすっかり私達十字教メンバーに馴染み、段々と色々な事を話してくれるようになった。

 

複数の人格があって、気に入った人や好きな人に性格や喋り方が似ていくこととか。

好きな食べ物は肉類や寿司だけど、地味に一番好きなのは里芋の煮っ転がしだとか、趣味はその時自分がしたいと思った事をするこで、特に決まった事はしないとか、そういう普通の会話が出来る様になった。

 

 

そして──

 

 

────姉以外の家族.....つまり、両親が死んでいるなんていう、踏み込んだ暗い事も。

 

 

私達の距離は、少しずつ、確実に、近付いていった。

 

彼はこうも言った。

 

俺はみんなの事が好きだ。

みんなも俺の事が好きって言ってくれる。

どっちも好きってことは、俺達はきっと友達だ。

 

そうして私達は友達になっていた。

 

それからの変化は早かった。

 

いつの間にか彼の背はぐんぐん伸びていって、ここ(十字教)に来た時は建宮さんの膝くらいだったのが、気付けば私と同じくらいになっていた。

 

その見た目や人格から、私は彼の事を『識城』から『間宮さん』と呼ぶようになって、間宮さんは私の事を『おねーちゃん』から『五和』と呼び捨てにするようになった。

 

 

そしてある日、女教皇様がイギリス清教の所属になって、教会を離れてしまった。

 

あの人は多望なのだ。

仕方ない事だ。

 

そう思っても、やはり寂しいと思ってしまう。

 

そんな中、また一人『友達』が私達の元を離れて行った。

 

間宮さんだ。

 

間宮さんは、教皇代理と暫く話し合いをした後教会を出て行き、数日して突然使い魔を送って来た。

 

小さな鳥の使い魔の足に括り付けられた紙にはぶっきらぼうな文字で

 

 

 

『学園都市に行く。多分もう帰らない。』

 

 

 

とだけ書いてあって、それから本当に間宮さんは帰って来なかった。

 

この『間宮識城失踪事件』の情報は、瞬く間にに魔術界に広まった。

 

それもそうだろう。なんたって彼は天草式の事実最高戦力なのだから。

 

 

彼の魔術は特殊なもので、心象風景を生み出しその中で己の人格を人の形で具現化させて戦うというものだ。

 

つまり、彼は一人で一つの軍隊を作れるのだ。

それも、その一人一人がトップレベルの戦闘力を持った....否、あの女教皇を一対一で倒した()()となれば、その殲滅力は計り知れない。

 

誰もがその存在を利用したがった。

どの組織との交渉にも、彼の名前が出てきた。

誰もがその存在を盾にしてきた。

 

もしかしたら、そんな生活が嫌だったのかもしれない。利用され続ける日々が面倒だったのかもしれない。

 

だが、理由はどうあれそんな男が突然失踪したとなれば、敵味方双方大騒ぎになるのは当然だった。

 

組織は色々な『対策』を立てていた。

 

裏切り、殲滅、復讐、報復、あらゆるマイナス方面の予想をして、その全てが無駄だと分かった時には、すでに数ヶ月が経過していた。

 

 

 

何も無い、空虚な時間。

 

私はボーッとしている事が多くなった。

 

気が付いたら日が暮れているなんてザラで、部屋の掃除をする時もそうだった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

コンコン、とノックをして部屋の扉を開ける。

 

 

「失礼しま...」

 

 

言い終わる前に気付く。

 

 

この部屋には、もう誰もいないという事に

 

 

「.....私、何やってんだろ」

 

 

本当、駄目だなあ。

 

そんな事を呟いて、部屋の中を見渡す。

 

 

 

誰もいなくなった部屋に残された、何着かの服。

 

その中には、私と間宮さんで選んだ服も混じっていて、私はすぐに()()()()を思い出す。そして私はみるみるうちに深い深い追憶の海の底に沈み──────

 

 

 

「───あれ、もうこんな時間....」

 

 

 

ふとした時には既に数時間が経っていて、結局は色々と考えた挙句何もせず、パタパタと積もった埃を掃除して終わり。

 

そんな事ばっかりだった。

 

 

それからもずっとこの感覚は続き、遂に戦闘にも支障が出ようとしていた頃、教会に厄介事の種が放り込まれた。

 

 

オルソラ=アクィナス

 

 

『解読と共に十字教の時代が終わる』などと言われている文書『法の書』を解読したローマ正教のシスター。

 

この手に余る大きな荷物をどうしようかと考えながら教会前の掃除をしていると、今度は随分ととんでもない人物が現れた。

 

 

 

「お久しぶりです、五和。誠に勝手ながら、帰って参りました」

 

 

 

 

申し訳なさそうな笑みを浮かべながら、間宮さんが帰って来たのだ。

 

少し口調や雰囲気も変わっていたが、帰って来た。

 

帰って来てくれた。

 

 

そこからはまあ色々あったのだが.......色々...と....

 

そう言えば間宮さんが帰って来てから殆ど喋っていなかった気がする。

どちらかと言うとアニェーゼ部隊のシスター達の方が間宮さんと喋っていた時間もくっ付いていた頻度も高かった気が.....。

 

 

...........

 

 

..................

 

 

 

...............................

 

 

 

 

今度、甘えてみよう。

 

 

さて、間宮さんが帰って来て変わった事と言えば、まずアニェーゼ部隊のシスター達が十字教の下で暮らすようになった事だ。

 

元々教会の大きさに比べ人数が少なく、すかすかだった講堂は、今やシスターで溢れ返っている。

 

 

そんな状況の教会をほっぽいて、間宮さんはまた学園都市に戻ってしまった。

 

 

 

 

また、心に大きな穴が空いてしまったような感覚に陥る。

 

 

 

 

 

その感覚は、あの時も同じだった

 

 

 

「じゃあね、五和。我が最信だった友よ」

 

 

彼に別れを告げられた時

 

 

思ったのだ

 

 

 

辛い

 

 

 

 

最初からあったものじゃないのに

 

ソレが無くても平気で暮らせれたのに

 

いつもなら、他の事をしていたのに

 

なんで、こんなにも辛い

 

なんで、こんなにも寂しい

 

なんで、こんなにも胸が締め付けられる

 

 

それはきっと、私がとてもワガママな女だからなのだろう。

 

満たされていないのだ

 

満足するにはまだ遠い

 

誰に潤すことができよう

 

この渇き

 

いや、満たせる者はここにはいない

 

彼だけだ

 

間宮識城

 

彼だけが、この渇きを、この空腹を

 

満たしてくれるのだ

 

 

きっと、これが間宮さんの言っていた『愛』なのだろう

 

私は、間宮さんを愛しているのだ

 

 

だから

 

 

 

「それですぐ考えて、すぐ決めたんです」

 

 

「間宮さんに、付いて行こうって.....!」

 

 

この身を捧げようと思った

 

一生付いて行きます

 

そう言った時の間宮さんの顔といったら....

少しだけ昔を思い出した

 

あの時、私が小さかった彼を抱き締めた時を。

 

 

 

それから私は間宮さんに付いて学園都市に行く事になった。けど、途中で追っ手の魔術師に襲撃された。

 

ああ、私と間宮さんの時間を邪魔するな。

 

そんな奴は苦しんで殺されてしまえ

 

 

私に

 

 

戦っている時、間宮さんがこっちを見ていた。

 

嬉しい

 

その視線に満面の笑みで答えると、顔を背けられた。もう、恥ずかしがり屋なところは変わらないんですから。

 

そして、魔術師を全滅させて学園都市に向かって再出発というところで、間宮さんに呼び止められた。

 

 

 

「どうしました?」

 

 

 

小首を傾げて答えると、間宮さんは二振りの剣を差し出して、こう言った。

 

 

「五和。お前が、いや俺逹がいつかあいつら────建宮や、仲間だった奴と戦う事になった時、あいつらと殺し合いをする事になった時、これを使え」

 

 

 

────お前がもし()()()()というのなら、これを受け取れ────

 

 

 

ああ

 

 

ああ

 

 

なんて嬉しい

 

 

なんて素晴らしい

 

 

これはきっと

 

 

 

 

エンゲージリングなのだろう。

 

 

 

 

指輪の代わりに剣を差し出してプロポーズ。

 

これ程間宮さんらしい告白があるだろうか?

 

いや、無い

 

これ以上の告白()は、この世には無い

 

ならば答えは決まっている

 

 

 

「私は、貴方を、間宮さんの事を愛しています。なら、受け取らないなんて選択肢はありませんよ」

 

 

 

そう言って、剣を受け取る。

 

ああ、幸せだ

 

 

 

 

私は今

 

 

 

とても満たされている

 

 

 

 




なんだか五和がとんでもない事を口走ってますが、決して恋愛ものには分類されないと願っていたい。

次回、やっと学園都市に帰還です。

ちなみに
8歳で魔術師→途中で逃亡→天草式へ→13歳で学園都市→途中で天草式に戻る→14歳で学園都市帰還→沙良識死亡→復讐→16歳で現在

という時系列?となっております。
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