「......」
「........」
「...」
何とも言えない沈黙に耐え切れず、遂に識城が口を開く
「...お前らは、一体何をしているんだ?」
先日学園都市の科学の力の片鱗に叩きのめされた筈の
因みに、二人とも無傷である。
何故か?答えは『冥土帰し』。あのカエル顔の医者の治療技術は、側から見れば『新しい部位を作っている』とか『物理法則を無視している』としか思えない。
『少し』大袈裟に言うと『時間を巻き戻している』。
昔、識城も冥土返しに命を救われたのだが、完璧に『直った』自分の体を見て真っ先に出た言葉が『イカれてる』だった。
それほどに、彼の治療技術はとんでもないのだ。
「...なんだ?俺が天草式を抜けて科学の街に戻ったのが、そんなに気に食わなかったのかよ」
「僕は別にどうも思わなかったんだがね。まあ、気になるのは理由だね。君が重度のシスコン野郎なのは前から知ってるけど...何か事件でもあったのかい?」
「......」
「教えてください、識城。貴方の姉....沙良識さんに、何かあったのですか?」
そうだ。そう言えば、神裂と姉は一応知り合いだったな。
「......」
「...識城...!」
「......死んだよ」
二人の間に戦慄が走る
「──ッ?!」
「なんだと!?」
「死んだんだよ、姉さんは。この街の能力者に殺された」
「そ、そんな馬鹿な....!!」
「....俺が天草式を抜けて
識城の表情は変わっていない。が、その手はとても強く握られていた
「.....」
「く....!」
しまった。やってしまった。と二人は己の発言を恨んだ。俯いているため、その長い髪が影を作り、顔はよく見えないが、きっと彼は酷い顔をしているだろう。
「すみません。軽率でした」
「....悪かった。君の傷を抉るような真似をしてしまった」
すらりと頭を下げ、土下座の様な姿勢をとる神裂とステイル。識城はそれを無表情で見ていたが、突然二人の頭を掴み、前を向かせる
「....謝るな、こっちが虚しくなって来る」
それだけ言って、識城は部屋を出て行く
部屋は、なんとも言えない静寂に包まれた
────────
「....なんか、申し訳ないってヤツだ」
彼は歩道を歩きながら、そんな事をつぶやいていた
────────とあるスーパー
「いらっしゃいませである」
男性店員の愛想の良さそうな声を無視しながら、識城は買い物カゴを持って缶コーヒーが置いてあるコーナーへ向かう。周りの人間に注目されているが、もうそれは慣れた。
ただ
「ねえ、キミ可愛いね。どう?俺たちと遊ばない?」
こういうのは困る
自分はソッチ系の人間じゃあない
───が
「Unfortunately,No I'm not the only speak English even know Japanese. 《生憎、私は日本語は分かっても英語しか喋れないの》」
「??」
「え?」
───からかってみると面白いものだ
「I'm sorry.」
声帯模写で、姉と同じ声を出して喋る。
相手は初対面。下手な事をしなければバレることはない
「え?あ、っと...オーケー?」
「???」
「
それだけ言ってその場を立ち去る。だが、知っている人は知っている。彼が男だということ。そして、普通に日本語を喋れること。
「....行くか」
「お、おう」
だが、誰もそれを言わない
理由は『なんとなく気分がいいから』である
「.....ふ」
少しだけ気分が良くなったところで、缶コーヒーがぎっしりと入った買い物カゴをレジに置く
「いらっしゃいませである。...缶コーヒーが....123456.....」
後ろには誰も並んでいない。良かった、もし誰か並んでいたら確実に怒られる。怖くはないが面倒なのは嫌だ。
「全部で12,960円のお買い上げである」
「.....」
金を払いながら識城は考える。
この店員、何処かで見た気がする。
この妙な喋り方といい、体格といい、全身から溢れるオーラのようなものといい。見覚えがある気がする。
「ありがとうなのである。次のお客様、4番レジが空いたのである」
「あーらウィリアムちゃん、今日も男前ねぇ~」
「ぐふっ」
あのおばさん、今なんてった?
ウィリアム?ウィリアムって言ったのか?!
間違いねえ、絶対アイツ『神の右席』の後方のアックアだ。
「ありがとうなのである。孝子殿も相変わらず美人なのである」
「あーらお上手!でも嬉しいわぁ~!」
「....」
一応、土御門に報告をしておこう....おや?
「おやおや?.....あれは....!」
識城の視線の先には、一人の少年が立っていた。先程の彼と同じく、カゴにガシャガシャと缶コーヒーを放り込んでいる。
識城はその少年の肩にポンと手を置く。
少年は振り返り、そして驚嘆する。
「オマエ....!!」
「久しぶりだね、あっくん」
──────地下街
「まさか、オマエが生きてるとは思わなかったぜ。今まで何処に行ってたンだァ?」
「色んなとこに行ったよ。ローマの教会で護衛やったり、九州の教会でドンパチやったり....」
「へェ、オマエも苦労してンのなァ」
「そういうあっくんはどうなんだい?」
「まァ、そこまで変わらねェなァ...あァ、この前研究所蒸発させた」
「....物理的に?」
「あァ、プラズマでなァ...クカカッ!」
「はっはっは!相変わらずやる事の規模が別次元だなァあっくんは!」
二人は心底愉快といった風に笑う。
その異様な雰囲気に通行人の川が割れているのだが、彼らは全く気にしない。むしろ歩き易くて好都合だ。
「お、あそこのひよこ饅頭美味しそう」
「相変わらず甘いモンが好きだなァオマエは...」
「コーヒーは苦い方が好きだけどね。あ、はい。ここで食べます。あと二箱お土産用に...ありがとうございます」
「カカ、よく分かってンじゃねェか」
「さァ、食べよう。あそこの席が空いてる」
「おォ」
────────
「チチチチチチ」
「...で、オマエは何やってンだァ?」
「チチチチ、ふふふ....噛み付かないとはいい子だな」
「....」
「オレ、ヒヨコノピースケ」
ひよこ饅頭を動かしながら、器用にひよこの鳴き真似をする識城
屋台のおじさんが暖かそうな顔をして微笑んでいる
「......」
「オレサマ、オマエ、マルカジリ」
「なァ、そのピースケ食っていいかァ?」
「キャー、タベラレルー」
ひよこ饅頭で寸劇を繰り広げる識城と、それを完全に無視してもさもさと饅頭を頬張る一方通行
「...ヌフン」
先程からこちらを見ていたおじさんは笑いを堪えきれず、顔面が崩壊している
「.........」
平日の地下街はとても平和だった
しょーもないギャグは多分ここまでです。
次回、色々大変なことになります。