──────帰路
「そういえばさ」
「ン?」
「俺はあっくんのことあっくんって呼んでるけど、あっくんはもう俺のことシキって呼んでくれないのかい?」
「...ンァ?」
惚けた声を出す一方通行。
正に予想外、といった顔をしている。
「昔はそう呼んでくれたじゃないか」
「ェ、あァ....呼ンで欲しいのか?」
「うん」
「....シキ」
「あァ!」
玩具を貰った子供の様に、本当に嬉しそうに笑う識城。その笑顔に一方通行は戸惑う。
《自分という闇が、コイツの隣に居てもいいのか》と、そう思ったのだ。
「.....」
「いいに決まってるじゃん」
「は?!なンで俺が考えてることが...!!」
「顔に出てた。分かり易すぎだぜ」
「....嘘だろォ?」
「本当だよ」
「......」
「...あっくん」
「なンだ」
「俺は、あっくんが何をしても、世界を敵に回しても、誰になんと言われても、あっくんの親友だよ」
「...本当かァ?」
「本当さ!」
どんと自分の胸を叩いて返事をする識城。
「...やっぱり、オマエは変わり者だなァ、シキ」
「そんなもんさ」
「そォかよ...おっと」
「着いちゃったか」
「あァ.......あァ?」
「....」
彼らに目の前には、屋根が吹き飛んだ学生寮があった
「.......」
「........」
「...ァ...あァんの....クソ野郎ォ共がァァアアア!!!」
そう叫びながら走っていく識城を追いつつ、一方通行は思った。
『どこの誰かは知らないが、可哀想な奴らだ』
───と
────────識城の自室
「!! 識城!!!」
「ああクッソボケ共が!!やっぱりテメェらか!!順番に並べェ!ぶちのめして...やる...ァ?」
ほんの3秒前までは、上条達を殴る事が一番だと思っていた識城だったが、部屋の奥にいる『とんでもない濃度の魔力を体に纏っているインデックス』を見ると3秒後には、この目の前の怪物を倒す事が一番になっていた。
「なんだこれ...おィ、神裂!オマエら何した?!」
「イ、インデックスには首輪が付けられていたのです!!」
「....シキ」
「残念、そこのセンターマンは変態じゃなくて痴女だ!」
識城の手には、いつの間にか小銃が握られていた。
『アイテム』の幹部から奪った『アポート』の能力である。
瞬間、狭い部屋に乾いた音が反響する。
識城がインデックスに向けて小銃を撃ったのだ。
威力は控え目ながらも、直撃すれば重症、脳天なら即死。それを戸惑い無く撃つあたり、インデックスの身の心配をする気は無いようだ。
少女の身にはオーバーなダメージを与えるはずの銃弾は、しかし、インデックスの前に現れた障壁に阻まれた。
「随分と嫌なことを思い出させてくれる...」
「──侵入者個人に対して最も効果的な魔術術式の組み込みに成功──これより『聖ジョージの聖域』を発動し────新たな侵入者を発見。計算──計算──計算──...優先順に変更は無し───上条当麻の撃破を最優先します」
「うわ、俺上条よりザコいって思われた」
不快感を覚える識城を他所に、インデックスの前に血の様に赤い魔法陣が現れる
「な...あの子に魔力は無い筈....!!」
「それも嘘だったってことさ...!」
「何言ってンだァ?こいつら」
「あー...後で説明するよ」
「インデックス...!」
インデックスの前の空間が裂け、その亀裂から光の柱が発射される
「まさか?!
『幻想殺し』でも打ち消せない
そう神裂が言いかけた瞬間、彼女の横を、何か四角い物体が通り過ぎた。
放たれた光の柱は、その四角い物体に直撃し────
────その軌道を大きく変えた───
「!?」
「なんだと?!」
それは鏡だった。全身を写すための鏡。強化された鏡は、必殺の一撃を『反射』したのだ。
────が
「....光の粒子に魔術的な...いや、光そのもののエネルギー....あ、やっべ」
識城がぶつぶつと何かを呟いている間に鏡が消滅してしまった。この部屋にもう鏡は無い。あとは上条の右手のみ────
上条が前に出ようとしたその時───
「ッ!!何を?!」
光の柱の前に躍り出る人影───
「舐めンな、三下」
────一方通行だ───
「それは10万3000冊の原典を組み合わせた必殺の一撃!止められるものでは───」
「だから...舐めンなっつってンだろォが!!」
一方通行の手が光の柱に触れた瞬間、その必殺の一撃は呆気なく霧散した。
「この街、学園都市で魔術の知識があるのはシキだけじゃねェンだよ...
部屋にいる全員がその顔を驚愕の色に染める中、一方通行が指を鳴らした。
一体どんな操作を行ったというのか、インデックスが組み上げていた術式は一瞬で消失した。
「術式の消失を確認。新たな術式を───」
インデックスがまた新たな術式を構成しようとした瞬間────
「ウォォオオオアアアアア!!!」
突然、上条当麻が雄叫びを上げながらインデックスに突撃して行った。
「....は?」
「なンだアイツ」
呆れたような、または馬鹿にするような声が上がる中、上条当麻は直進し、インデックスの額に触れた。
ガラスの砕けるような音と共に、インデックスの目に映っていた魔方陣が消え失せた。
これでおしまい───
そんな空気が部屋を包み込もうとした時だった。
ヒラリ、と羽が舞い降りた。
一枚───二枚───三枚───
ヒラヒラ、ヒラヒラと舞い降りる七枚の光の羽。
────上条当麻は、インデックスの小さな体を抱き締めたまま、最期まで動く事は無かった─────
オーマイガッ上条さんが死んじまったぜ(棒)。というわけで、上条さんは記憶喪失です。
次回、主人公のちょっとした過去が明らかに。