東方 混純録〜月の希望の章〜illusion raid(イリュージョン レイド)   作:秘幻

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第1話《Re:start》

本当の『闇』とは何なのか?

考えたことはありますか?

『正義』の形と言うものを考えたことはありますか?

どれも聞いたことがあることばかりの言葉であり、あまり違和感を感じたりはしません。しかし、もしあなたの語る『正義』が『闇』であったら?

もし、今言われているその『闇』が本当の『正義』だったら?

 

昔、奴隷制度などは善と考えられていました。しかしそれらは時の流れと共に悪へと変わりました。

何故昔は善だったのか?

時の流れが変えていったから?

 

そうなると、時の流れが今の『優しさ』や『思いやり』も悪へと変えてしまうのでしょうか?

これらの答えを知る人はいるのでしょうか?

私達は間違えた事を教えられていたのでしょうか?

それはまるで昔の教育の一部の様に?

 

考えてみてください、今の『正義』は完璧で、最高の正義ですか?

教えて下さい、『闇』は全て消えるべきなのですか?消え去るものなのですか?

 

答えてください、このーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『知ったかぶりな神様』に、あなた達の答えを………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東方混純録◆次元を超えた希望

 

〜月の希望の章〜illusion raid(イリュージョン レイド)

 

 

 

 

 

 

時刻は丑三つ時、星々が空をまたたき、辺りを静かな闇がひっそりと広がっている。

そんな中に明るい光が出ている場所が一つ。

博麗神社の明かりが漏れてチラチラと光っている。そして、博麗神社の中から人の声がする。

いや、人と言うよりは『妖怪』が正解だろう。

 

 

 

萃香「ぷは〜〜!いや〜、大人数でやりたかったけど、こう言うのも良いねぇ!」

 

 

 

頬を赤くし、ひゃっくりをしながら酒瓶を机にドン!と叩きつけたのは鬼の萃香である。

すでに萃香の周りにかなりの数の酒瓶が転がっており、かなりの量を飲んでいるのが一目瞭然である。

そしてその姿を見て呆れる人物が二人………。

 

 

 

霊夢「なーにが大人数でよ、そんなのめんどくさいじゃない。」

 

 

 

萃香「何言ってんのよ〜霊夢、実は霊夢もやりたいんだろ〜?」

 

 

 

霊夢「シバくわよ?」

 

 

 

萃香「何怖いこと言ってるんだよ?なぁ、智里(ちさと)。お前も何か言ってやれよ〜。」

 

 

 

一人は、萃香が寄りかかりながら肩に手を回した人物の霊夢、そしてもう一人はそんな萃香をげんなりとした様子で見る智里であった。

木野 智里(きの ちさと)、この幻想郷の住民の一人である。人間であり、吸血鬼でもある彼は、色々な意味で幻想郷の住民達と対等に張り合っている。

いつもと変わらない幻想郷の日常である。そう、智里の右目についている眼帯を除けば………。

 

 

 

智里「………悪いな、霊夢の方が正論だ。」

 

 

 

萃香「あによう!!私と酒を飲むのが嫌だってのか〜!」

 

 

 

智里「何故そうなる。」

 

 

 

智里は酒瓶を振り回しながらプンプン怒っている萃香を見ながら苦笑する。そしてそう言うと立ち上がる。

 

 

 

智里「ちょっと夜風に当たって来る。」

 

 

 

そう言うと智里は部屋を出た。

季節は夏であるが、やはり夜に吹く風は涼しい。

エアコンなどと言ったオーバーテクノロジーの塊が存在していない幻想郷で涼しくなるといえばこう言ったことで涼しくなるものだ。智里自身も、この方が好きだった。

夜風に当たっていた智里だったが、何かの気配を感じると顔色を変えて、境内に出る。

すると、そこには狐の面を付け、ベンチコートぐらいの大きさがあろう白い法被を着た人物が立っていた。

ここは幻想郷、訳の分からない事や輩がいるこの世界ではあまり変わったことでは無かったが、どうやらこの狐面の男は何かが違う様だ。

 

 

 

???「木野 智里だね?」

 

 

 

智里「………!そうだ。あんたは何者だ?」

 

 

 

狐面の男は智里の名前を言っていたが、智里自身にあんな友達がいた記憶は無い。そんな人物が話しかけてくるとなると、警戒するのは当たり前である。しかし、その男は智里にこんなことを言う。

 

 

 

???「まぁまぁ、警戒しないでくれ。別に取って食おうなんて考えてないよ。」

 

 

 

まるで勘違いをしている子供を相手するかの様な口調で智里が警戒していることを言い当てる。

只者では無い、智里の直感がそう訴えかけている中で、狐面の男はさらに驚くことを言った。

 

 

 

 

???「今回、私がここに来たのは『君の右目』のことについてだよ。」

 

 

 

智里「………なんで知っている?」

 

 

 

智里は狐面の男にそう問いかける。すると狐面の男は「ま、有名だし?」などと訳の分からないことを言う。

 

 

 

???「君の右目の呪い、それ、解かなければ君は『暗黒』のしもべになっちゃうよ。」

 

 

 

智里「………暗黒?」

 

 

 

???「そ、暗黒のしもべ。君の右目に呪いをかけてった奴らもそう。」

 

 

 

そう言うと智里の脳裏にその時の事が蘇る。

その時も今日の様な星のよく出ている夜だった。散歩をしていた智里は木の陰から現れた二体の怪物に襲撃された。その二体は最初、幻想郷にいる妖怪か何かかと思っていたが違った。奴らは自らを『ダークアルブ』と名乗っていた。

智里はダークアルブと交戦し、勝利することが出来たが、不意を突かれ、右目を切り裂かれてしまう。その時一体のダークアルブが言っていた言葉も覚えている。

 

 

 

 

『お前に呪いをかけた、これでお前は『二つ』の呪いを手に入れた、覚えておけ。俺はお前を救ってやったのさ………。』

 

 

 

 

 

この言葉の意味は今だに分かっていない。

ダークアルブに切り裂かれた右目は智里の完治能力によって治るかと思ったが、切り裂かれた傷は治らず、ましては眼球は刻印の入ったような状態である。

 

 

 

智里「………この呪いの治し方を知ってるのか?」

 

 

 

そう聞くが狐面の男は首を横に振る。

 

 

 

???「残念だけど、それは分からない。」

 

 

 

智里「なら何故呪いの話を持ち出す?」

 

 

 

???「確かに治し方は知らない。しかし、治せるかもしれない所は知っている。」

 

 

 

智里「………何だと?」

 

 

 

この話、正直言えば胡散臭い、しかし今の智里にこの話を切り捨てる余裕は既に無かった。

右目の呪いは既に対象者である智里に対して呪いの効力を出している。

 

 

 

???「教えて上げよう。だが、タダでとは言えない。」

 

 

 

智里「………タダより安い物は無い………と?」

 

 

 

???「そういうこと。」

 

 

 

仮面を被っているため、表情は分からないが、智里には、この狐面の男が笑っていることが想像出来た。

 

 

 

???「私が君にその場所を教え、更にその場所への扉を開いて上げよう。しかしだ、それの変わりに私から頼み事………いや、交換条件が一つある。」

 

 

 

智里「………何だ?」

 

 

 

???「現在、その場所は『暗黒』との全面戦争に突入している。正直言えば生きて帰れる保証はごく僅かだ。」

 

 

 

そこまで言われると、この男が自分に要求して来る物がとてつもなくデカイ話だろう………そして、智里の予想は当たってしまう。

 

 

 

???「オブラートに包むつもりも無いから大胆に言う。現在、幻想郷は終焉の道を歩んでいる。こうしている間にも『暗黒』の魔の手は刻々と幻想郷の命を削っている。そこでだ、君はその幻想郷に向かい『暗黒』の撃破する。そうすれば、自然と呪いの解く方法も手に入る筈だ。」

 

 

 

智里「………つまり、死ねって言ってる様な物………ってことか?」

 

 

 

智里の言葉に躊躇いも無く返事を返す。

 

 

 

???「そうだ、言っておくが、無事で帰って来れる程、戦争は甘くは無い。」

 

 

 

智里「だよな………。」

 

 

 

自分には周り以上………いや、異常と言っても良いだろう、回復力がある。死ぬ事は滅多に無い。

しかしだ、話は異世界の幻想郷である。必ずしも今の自分がいる世界と同じとは言えない。恐らく自分の能力を超える能力を持っている敵とも遭遇するだろう。

そうなれば、今まで無かった『死』が隣り合わせになるのだ。

そう考えていると体が震えていることが分かった。

怖くて震えているのか?違う、今の自分はそれが怖くて震えているんじゃ無い………。

 

 

『そこに行きたくてウズウズしている自分』に恐れているんだ。

 

 

初めてである。自分が怖いだなんて。けど………

 

 

 

智里「………どの道にしろ、死がついてるんだ………なら………。」

 

 

 

そう言いながら智里はギュッと手を拳にする。

 

 

 

智里「行ってやるよ。訳の分からない戦争終わらせて、この呪いも解いてやる。」

 

 

 

???「………その勢いだ、それでは。」

 

 

 

そう言うと、狐面の男は後ろを向くと手を伸ばす。すると地面から白い光を放っているゲートが地面から現れる。

ゲートを出した狐面の男は再び智里の方を向く。

 

 

 

???「ここから先は悲劇と悲しみの世界だ。覚悟は良いかい?」

 

 

 

智里はそう言われ、一歩踏み出そうとしてあることを思い出し、笑う。

それは紛れも無く、今の様な始まりだった。白い服に白い帽子を被った神が自分を侵略されかかっている世界に勝手に連れて行かれた。

そこでは酷い世界が繰り広げられていた。しかし、酷いだけでは無かった。自分には頼もしい仲間がいた。

 

 

 

 

智里「………あ〜あ、俺には死神がくっついてるのかな?」

 

 

 

そう言うと智里は踏み出し、白く光るゲートの中へと歩いていく。すると途中で止まり、振り返ると狐面の男に聞く。

 

 

 

智里「そう言えば聞いてなかった。あんたの名前は?」

 

 

 

そう言うと、狐面の男は少し俯いた後、再び面のついた顔を上げる。

 

 

 

暁「………暁(あかつき)だ、光になれなかった英雄、そして………世界を知ろうとする者だ。」

 

 

 

智里「………そうか。」

 

 

 

そう言うと智里は歩き出し、光の中へと消えて行く。

そんな後ろ姿を見ながら暁は呟いた。

 

 

 

暁「………済まない、英雄達よ。その世界は『私が救えなかった世界』の様になろうとしている。どうかーーー」

 

 

 

 

二度と、悲劇を産まない様に………世界を、救ってくれ。





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