東方 混純録〜月の希望の章〜illusion raid(イリュージョン レイド)   作:秘幻

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第2話《過去の再来》

幻想郷………百夢草原、

かつては青々とした芝生が辺り一帯に生えていて、おとぎ話に出てくるそうな綺麗さを持っていたが、今は巻き起こっている戦闘により焼土となっていた。

 

 

 

妖夢「全軍突撃!狙うはあの巨大ダークアルブです!!」

 

 

 

妖夢が刀を向けるとその方向に向かって大勢の人達が走り、又は飛んで行く。

多くは妖怪である様だ。ある者は刀を持ち、ある者は鎌や棍棒などと………装備も武器もバラバラで統一感が無い軍勢が攻めて行く。攻めて行く先には巨大なカニの様な化け物が蠢いていた。さらにその周りには無数の死兵のダークアルブがいる。

死兵のダークアルブは中世の兵士の姿をしたダークアルブである。顔は骸骨の為、死んだ戦士達の遺体を操っているのではいのだろうかと言う説もある。

 

 

 

『奴らを地獄に葬ってやれ!!』

 

 

 

カニの様な化け物がそう叫ぶと死兵のダークアルブ達も妖夢達の軍に向かって刀などを構えて走ってくる。

お互いの兵士がぶつかり合い、金属音があちこちで鳴り響き始める。

 

 

 

妖夢「はぁぁぁ!!」

 

 

 

妖夢は一人、敵のど真ん中に斬り込んで行く。

四方八方から斬りかかってくる死兵を次々と斬り捨て、カニの様な化け物に近づいて行く。

 

 

 

妖夢「魔術隊!あのダークアルブに向けて一斉射撃!!」

 

 

 

妖夢の合図で杖を持ち、最初にいた位置にいる数人が呪文の詠唱を始める。詠唱が終わると、杖をカニの様な化け物に向ける。すると杖の先から出た靄の様な物がカニの様な化け物に向かって飛んで行き、それらが当たると巨大な闇の玉になり、カニの様な化け物を引きずり込もうとする。

 

 

 

『グオオオオ!?』

 

 

 

妖夢「このまま押して下さい!一気に畳み掛けます!!」

 

 

 

妖夢の合図と同時に兵士達が「おぉーー!!」と言い、さらなる進撃を開始する。

 

 

 

▽△▽△▽△○△▽△▽△▽

 

 

 

智里「………これは………。」

 

 

 

確かに俺はくだらない戦争を終わらせるとは言ったが………これは………。

智里は自分の立っている崖の下を除く、そこには………。

 

 

 

『殺せぇぇ!一匹残らず殺せ!』

 

 

 

「来たぞぉ!全員、防衛体制を取れぇ!!」

 

 

 

まさかの戦闘、そう、俺は戦争中の場所のど真ん中に放り出されたのだ。

 

 

 

智里(暁の野郎!!)

 

 

 

暁を心の中で罵倒しながら刀を構える。

今いる丘には誰もいないが、あちこちで爆煙や爆発音がなっているのでいつ、誰が来るか分からない。

すると強い風が後ろから吹いてくる。目を細めながら後ろを向く。すると智里と、その周りのほとんどをを覆う程の影に飲まれる。

智里は上を向く。

 

 

 

智里「………デカっ!?」

 

 

 

思わずそう叫んでしまう。それ程智里の上を動いている物はデカイのである。

体を見ると甲殻類独特の見た目が特徴的である。例えれば、今自分の真上を通り過ぎようとしている巨大な怪物は例えるならカニである。

上を動いている巨大なカニを眺めていると、横から声が聞こえてくる。

 

 

 

???「………?あなたは幻想郷側の人間ですか?」

 

 

 

智里が声のした方を向くと、そこにはフードを被った人物が立っていた。

フードを被った人物は智里の顔を見ると驚きの声を上げる。

 

 

 

???「………あなたは!?智里!?」

 

 

 

智里「………!?おいちょっと待て!何故俺の事を………!」

 

 

 

智里が聞こうとしたがそれを中断する。

フードを被った人物の後ろから数人の死兵が姿を現したからだ。フードを被った人物は後ろの気配を感じ、サイドステップで死兵達から距離を取る。

 

 

 

智里(………こいつら!?)

 

 

 

智里の右目は眼帯で塞がれていて、何も見えない筈だが、死兵達の型を取った様な紫色の靄が右目から見えていた。

右目の呪いの能力らしき物に驚いているとフードを被った人物がフードを取る。すると見慣れた顔が現れた。

 

 

 

智里「………お前は、確か想鵐?」

 

 

 

白野 想鵐、智里は以前彼に会っている。

会っていると言ってもあまり話をしなかったが………。

 

 

 

想鵐「また会えて光栄………と言いたい所だけど、今はお預けだね。」

 

 

 

智里「………だな。」

 

 

 

そう言うと二人は戦闘態勢に入る。

それと同時に死兵達も襲いかかって来る。

 

 

 

想鵐「悪いけど構っている暇はない。」

 

 

 

そう言うと想鵐は鳥の形をした弾幕を放つ。

放たれた弾幕はどれ一つ外れること無く、数ある分だけ死兵に当たる。

当たった時に出た爆煙で周りは煙で覆われる。その煙に紛れて智里は現れ、残りの死兵を全て斬り捨てる。

 

 

 

智里「………なぁ、想鵐。今ここで何が起きてるか教えてくれないか?」

 

 

 

智里が刀をしまいながらそう聞くと、想鵐はため息をつく。

 

 

 

想鵐「………悪い、詳しい事はわからない。急にここに連れて来られたもんだからな………。」

 

 

 

智里「………いきなり?」

 

 

 

想鵐「そうだ、いきなりだったよ。」

 

 

 

そう言っていると声がかかる。

 

 

 

???「まるであの時みたいに?」

 

 

 

その言葉に二人は戦闘態勢に再び入るが、二人の視界にある人物の姿が入ると二人の体から力が抜ける。

 

 

 

智里「………お前は………。」

 

 

 

想鵐「………テュワナ?」

 

 

 

二人の前には赤い髪の女性が立っていた。

テュワナ、二人が会った世界にいた機械人、確か生物兵器に腹部を貫かれて死んだ筈では………。

 

 

 

テュワナ「………久しぶりだね二人とも!会いたかったよ!」

 

 

 

テュワナがまんべんの笑みでそう言う。

すると想鵐は手のひらを彼女に向ける。

 

 

 

智里「………想鵐?」

 

 

 

この体制は弾幕を放つ時と同じである。そう考えていると想鵐はテュワナを睨む。

 

 

 

想鵐「………誰だ、お前?」

 

 

 

智里・テュワナ「「………!」」

 

 

 

想鵐がそう言うとテュワナは説得を始める。

 

 

 

テュワナ「どうしたの想鵐?私の事忘れちゃったの?嫌ね〜。」

 

 

 

テュワナのその口調で智里も理解をする。

 

 

 

智里「お前………あの時の女じゃない?」

 

 

 

すると智里の右目が反応する。これは………。

それと同時にテュワナのフリをした人物が怪しい笑みを浮かべる。

 

 

 

テュワナ?「あ〜あ、つまらないなぁ〜。ラブコメみたいな展開にしてあげようと思ったのにな。」

 

 

 

想鵐「知らない人とお付き合いする気はサラサラ無いな。」

 

 

 

智里だから分かることだが、さっきの死兵達とはまた違う靄が智里の右目には見えていた。

こいつはヤバイ、見るからに女性っぽいから試してみるか………?

智里は目を黄色にする。これは魔眼の能力の一つ、拘束眼である。対象者を拘束することが出来る。

どうやら効果は効いている様だ。テュワナらしき人物はまるで何か透明な縄に締め付けられたかの様になる。

 

 

 

テュワナ?「………!おぉ!」

 

 

 

想鵐「智里、お前の能力か?」

 

 

 

智里「あぁ、しばらくは相手を拘束しとく事が出来ると思う。」

 

 

 

想鵐も、智里の目が黄色くなっているのを確認し、それが能力であると理解する。

縛れればこちらの物である。想鵐はこの女から情報を手に入れることにする。

 

 

 

想鵐「お前もあの怪物の手下か何かか?」

 

 

 

テュワナ?「んなわけ無いじゃん。僕がここのボスだし。」

 

 

 

想鵐「と言うことはボスは他にも複数いるんだな?」

 

 

 

テュワナ?「そーだよ。ま、第一僕はそいつら嫌いだけど。」

 

 

 

想鵐(………と言うことはこいつらは幹部か何かで、更にその上に上層部がある感じか?)

 

 

 

想鵐が考え事をしていると智里がテュワナらしき人物に話しかける。

 

 

 

智里「所で、何でお前はテュワナ………だったっけか?その女の姿をしてる?そいつは死んーーーあぁ、済まない。」

 

 

 

智里は少し寂しそうな顔をした想鵐に謝る。するとテュワナらしき人物も喋り始める。

 

 

 

テュワナ?「別に?機械人だったらあり得なくない話だけど?ましてやこの機体、量産型になる筈だった物だし?一個や二個あって、それが消えても問題無いじゃーーーー!!?」

 

 

 

テュワナらしき人物の顔面を想鵐が勢い良く掴む。

 

 

 

想鵐「………確かにそうだろうな。けどな、あいつとの出会いは、そんなちっぽけな終わり方じゃ済まねぇんだよ!!」

 

 

 

智里「お、落ち着け想鵐!」

 

 

 

智里は想鵐がこんな形で怒りをあらわにするのを見て驚いた。

自分はあまり関わらなかったからかもしれないが、何故か怒りの感情は出なかった。最近の自分は何かがおかしい………。

するとテュワナらしき人物は笑みを浮かべる。

 

 

 

テュワナ?「別に僕が量産型だなんて言ってないじゃん。この体は僕のじゃ無いし?」

 

 

 

想鵐「………どう言うことだ?」

 

 

 

想鵐の顔面を掴む力が少し抜ける。

 

 

 

テュワナ?「………服、上げて見な。」

 

 

 

想鵐「………は?何行って………っておいちょっと!?マジでやるか普通!?」

 

 

 

想鵐がいきなり言われて戸惑っている所を、智里は躊躇い無くテュワナらしき人物の服をめくって上げる。

すると二人の表情が一気に変わる。

 

 

 

智里「………これは………一体。」

 

 

 

想鵐「そんな………まさかお前は?」

 

 

 

テュワナ?「………ヒヒ!びっくりしたでしょ〜。」

 

 

 

テュワナらしき人物の腹部には大きな丸く、黒い物が付いていた。それが体の中にも入っていると理解するのに時間はいらなかった。

結論を言えば………テュワナだ。自分達が出会ったテュワナの体である。この傷跡は想鵐を庇った時に貫かれた穴である。しかもこの黒い物体にも見覚えが、二人にはあった。

 

 

 

想鵐「………そうか、全部繋がった。お前は………。」

 

 

 

想鵐が弾幕を放つ用意をする。

智里も刀をゆっくりと取り出す。

 

 

 

テュワナ?「思い出してくれた?あれから僕は色々な勉強をしたんだよ〜。」

 

 

 

こいつは、テュワナの体を被ったあの生物兵器だ!

 

 

 

智里「何故だ?お前は死んだ筈だろ。」

 

 

 

テュワナ?「そうだよ、僕自身は死んじゃった。けど死ぬ前に腕を切り落としておいて、お前達が消えた後にこの体を手に入れたってこと。」

 

 

 

今すぐにでもこいつをぶっ飛ばしたい。二人の意見は一致していた。だが、奴の体はテュワナの物である。ましてや、もしかしたらテュワナの意識もあるかもしれないなどの問題もあり、迂闊に手が出せない。

 

 

 

テュワナ?「さてっ………と。」

 

 

 

そう言うと生物兵器は伸びをする。どうやら拘束眼の拘束が解けた様だ。

 

 

 

智里「………やるぞ、想鵐!」

 

 

 

 

想鵐「分かってる!」

 

 

 

 

そう言い合うと二人は生物兵器に向かって走って行く。

すると、生物兵器は両手を上に勢い良く伸ばし、こちらに向けて振り下ろす。その時、手から無数の黒い帯の様な物が出現する。

 

 

 

想鵐・智里「「………!」」

 

 

 

二人はバックステップでそれを避ける。そして二手に分かれて攻撃を始める。

 

 

 

智里「くらえ!」

 

 

 

想鵐「散乱『分鳥』!」

 

 

 

智里はオオカミを作り、生物兵器を襲わせ、想鵐は鳥型の弾幕を飛ばす。

すると生物兵器は両手を上げて、手から出ている黒い物質を盾状にすることでそれらの攻撃を防ぐ。

 

 

 

智里「………チッ、使い慣れてやがる。」

 

 

 

そう言うと、オオカミを作って飛ばしながら走って生物兵器に近づいて行く。

生物兵器は盾状にしていた黒い物質を無数の鞭にすると腕を振り、鞭を使ってオオカミを弾く。

オオカミを使って空いた隙を狙って斬りかかる。

生物兵器はギリギリでそれを避けると、智里を蹴る。

 

 

 

智里「グッ!」

 

 

 

智里は次の攻撃を受けない様に距離を取る。

そこに想鵐が隙を与えまいと弾幕を放ち続ける。

 

 

 

テュワナ?「当たらない、当たらな〜〜いっと!」

 

 

 

想鵐「危な!?」

 

 

 

想鵐は上から降りおりて来た帯を避ける。

再び想鵐が斬りかかるがやはり避けられる。

二人は息を切らせながら隣に並ぶ。

 

 

 

智里「くそ、余計な勉強しやがって。」

 

 

 

テュワナ?「え〜?そんなこと無いよ〜。今こうして『君達を殺せる』んだからさ〜?」

 

 

 

生物兵器はテュワナの顔でニヤ〜と笑う。

想鵐の方から歯ぎしりした様な音が聞こえる。仲間思いな想鵐なだけに、これは許せないだろう。

智里はため息をついて、一歩前に出る。

 

 

 

智里「………援護、頼めるよな?」

 

 

 

想鵐「勿論だ。」

 

 

 

智里「そんじゃ、頼むぞ!」

 

 

 

そう言うと智里は走り出す。すると生物兵器は帯状にしていた両手から出ている物質を無数の触手の様な物に変えると、智里に向けて飛ばす。

かなりの数がある。幾つもの触手の様な物を避ける。目標を失った触手の様な物は地面に刺さる。

しかし、数が数なだけに、避けるのがキツイ位置から数本襲ってくる。するとその数本は飛んできた弾幕に弾かれる。

 

 

 

想鵐「やれ!智里!!」

 

 

 

智里「分かってらぁぁぁ!!」

 

 

 

智里は飛んで来る触手の様な物の群れをかわしきり、生物兵器の懐に入り込む。

 

 

 

テュワナ?「やべ!?」

 

 

 

智里「悪いな!彼女を返させて貰うぞ!」

 

 

 

そう言うと智里はテュワナの体の腹部に手を突っ込む。

そして掴むと思いっきり引っ張る。

 

 

 

テュワナ?「まさか物理で!?やらせるかぁ!!」

 

 

 

そう言いながら生物兵器は智里を引き離そうと両手で智里の顔を押す。

 

 

 

智里「………後で奢れよ想鵐ぅ!!」

 

 

 

そう言い切ると「オラァ!」と腕を思いっきり振る。

すると黒い物体がテュワナの体からあり得ない程の量が出てくる。

 

 

 

『ギャアアアアアアアア!!?』

 

 

 

智里「想鵐!!」

 

 

 

想鵐「任せろ!!」

 

 

 

想鵐は出てきた黒い物体に手を向ける。

 

 

 

『や、やめろぉぉぉぉ!!』

 

 

 

想鵐「天課『天鳥歌』!!」

 

 

 

想鵐から放たれた四つの七色に光る鳥は全て黒い物体に当たり、黒い物体と共に消滅する。

 

 

 

『ギャアアアアアアアア!』

 

 

 

最後に生物兵器の悲鳴が消えると、辺りは戦争の遠くから聞こえてくる爆発音などだけが支配する。

二人は近づくと手をグーにしてお互いの拳をぶつける。

 

 

 

想鵐「………ありがとな智里、お陰でスッキリした。」

 

 

 

智里「お互い様だ。気にするな。」

 

 

 

そう言いながら二人は笑あった後、倒れているテュワナの亡骸に近づく。

 

 

 

智里「………戦争だってのは知ってたが、まさか過去の亡霊まで姿を現すとはな………。」

 

 

 

想鵐「………下手をすれば他の奴らも。」

 

 

 

そう言いながら想鵐はテュワナの亡骸を持ち上げる。

 

 

 

智里「とにかく、俺はこの戦争を止めなければならない。それよりもお前は………」

 

 

 

智里はそう言いかけた所でやめ、眉間を抑える。

想鵐は頭の上に(?)のマークを浮かばせている。

 

 

 

智里「………目を開けろテュワナ、お前が起きてるのはもう知ってる。」

 

 

 

想鵐「え!?」

 

 

 

想鵐が慌ててテュワナの顔を見る。

するとテュワナはパッチリと目を開ける。

 

 

 

テュワナ「………何故バレた?」

 

 

 

テュワナはあの時の様に無表情で、愛想の無い口調でそう聞く。

 

 

 

智里「頬が赤くなってたのと、想鵐の服にシワが入ったこと。」

 

 

 

テュワナ「………対した洞察力、感服する。」

 

 

 

智里「そりゃどうも。」

 

 

 

想鵐「え?え?ええぇ!!?」

 

 

 

ただ一人、呆然としている想鵐だった。




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